医療現場は命を預かる厳しさゆえにハラスメントが起きやすい職場であると言えます。そんな医療機関での上司や先輩からのパワーハラスメント(パワハラ)について、気になっている方も多いのではないでしょうか。悪気はなくても相手が苦痛を感じればパワハラとなる可能性があり、セクハラ同様に難しい問題です。

  • 医師のパワハラはどんなケース?
  • 医師が被害者・加害者になるパワハラ事例は?
  • パワハラに遭ったらどうすべき?

このように思っている方に向けて、プロの転職エージェントが医療現場でのパワハラ事例などについて解説します。医師という立場にある以上、パワハラの加害者になってしまう可能性も否めません。パワハラと受け取られないようにするためにもぜひ参考にしてください。

医療現場におけるパワハラ事例

医療現場におけるパワハラにはどのようなものがあるのでしょうか。

ケース1)上司の医師

医療機関でよく見られるのは、上司に当たる医師からのパワハラです。
命に関わる仕事である医師はミスが許されない場面も多く、若手への指導に熱が入り過ぎてしまうこともあるでしょう。
しかし行き過ぎた指導はパワハラと捉えられかねません。

また緊急性の高い診療科や人手不足の現場では、イライラや焦りが叱責につながるなどしてパワハラになるケースもあるでしょう。

その他、上司と意見が食い違い無視されるなどの行為があった場合もパワハラとなる可能性があります。

ケース2)看護師やスタッフ

看護師などの医療従事者は同じ部門の上司からのパワハラもありますが、立場が上となる医師からのパワハラもよく見られるケースです。

また新人医師がベテラン看護師などに嫌がらせをされることもパワハラに当たります。

医師から患者の場合は「ドクターハラスメント」

医師が加害者となるハラスメントのうち、相手が患者である場合は「ドクターハラスメント(ドクハラ)」と呼ばれています。
例えば「病気になったのはあなたの行いのせい」などといった発言を指します。

医師自身は嫌がらせのつもりはなくても、患者自身が自分の人となりを否定されたと感じるような不快な発言は、ドクハラに当たる可能性があるでしょう。

パワハラと受け取られやすい言動や行動

パワハラに該当しやすい行動には以下のようなものがあります。

  • 露骨な無視
  • 話しかけた時の対応(怒るなど)
  • 追い詰める叱り方
  • 過度もしくは過小すぎる要求
  • プライベートの詮索

ここでは各項目について詳しく解説します。

露骨な無視

挨拶をしても返さない、話しかけても返事をしないなどの行為、つまり「無視」はパワハラです。

立場が上である上司や先輩から無視されることで業務が進まないなどの弊害があり、労働者としての環境が侵害されていることに当たります。

同じように同僚たちから無視され、職場で孤立させられることもパワハラです。

話しかけた時の対応

忙しい時や考え事をしている時など、話しかけると怒りを露わにすることもパワハラになります。

業務に関わる連絡はいち早く伝える必要があり、伝えないことで業務に支障を来す可能性もあります。
その行為に対して怒るということは、間違いなくパワハラであると言えるでしょう。

追い詰める叱り方

大声で怒鳴るのはもちろん、侮辱的な発言をしたり精神的に追い詰めたりするような行為はパワハラに該当します。
例えば「バカなのか」「そんなことだからダメなんだ」などといった言葉を浴びせたり、一つのミスについて長時間にわたり繰り返し叱責されたりといったことなどがあります。

過度もしくは過小すぎる要求

過大、もしくは過小な要求もパワハラと捉えられる可能性があります。
過大な要求とは、明らかにやり遂げるのが不可能な仕事を押し付けられるなどすることです。
一方、過小な要求は能力に見合った仕事を与えられない、例えば書類の仕分けや電話番だけを延々とさせられたり、ひどい場合はまったく仕事を与えられなかったりすることなどが挙げられます。

プライベートの詮索

プライベートなことに関してあれこれ詮索する、つまりプライバシーを侵害するような行為もパワハラです。
有給休暇に何をするのか、どこへ行くのかなどの報告を義務付けられたり家庭環境や交際相手のことを執拗に聞き出そうとしたり、就業時間外に業務と関係ないメールを送って返信を強要することなどが該当します。

パワハラ被害にあったらどうする? 知っておきたいこと

パワハラは職務上の地位を利用して行われる行為であるため、防ぎようがない場合もあります。
もしパワハラにあってしまったら、どういった行動をすべきなのでしょうか。

周囲や相談窓口に相談してみる

パワハラを受けている場合、まずは信頼できる人物に相談してみましょう。
慌ただしい医療現場では、パワハラが行われている状況に周囲が気づかない場合も多いでしょう。
パワハラの現状を誰かと共有しておくことで、今後の状況次第では助けになってくれることもあります。
また、相談できる人がいないようなケースでは、職場のハラスメント相談窓口などを活用しましょう。

パワハラの内容は記録しておく

パワハラを受けた場合、可能な限り記録を残しておくことが大切です。
証拠がない場合「言った言わない」のトラブルに発展するうえに、相手側に反撃の余地を与えてしまいます。

またパワハラの被害状況によっては、加害者や職場を訴えることになるかもしれません。
このような場合も含めメールの文章や加害者の言動の録音・録画などがあると、裁判の際に役立つでしょう。

病院勤務の医師がパワハラで訴えたらどうなる?

医師が退職に伴いパワハラで訴えを起こした場合、パワハラの加害者である上司のほか病院側も訴えられます。
病院には医師および医療従事者を、パワハラのない安全な環境で勤務させる義務があります。
そのためパワハラを黙認していた病院側も訴えることができるのです。
パワハラによる慰謝料は被害内容や程度によって異なりますが、おおよそ50万~100万円になると言われています。
そのため、加害者と職場の両方を訴えて勝った場合は最大200万円程度を受け取れます

ただしパワハラは裁判にならないことが多く、被害者の医師が十分な証拠を持っている場合は、病院側が示談金で解決する方法を求めてくる可能性があります。

医療現場のパワハラ・知識向上&研修に役立つコンテンツ

厚生労働省「医療従事者の勤務環境の改善について」のページでは、暴力や迷惑行為に関する基礎知識などについて学習できる動画が用意されています。
患者から脅迫や強要、暴行などがあった場合の事例とその対応がメインのコンテンツですが、パワハラに関しても何らかのヒントが得られるかもしれません。
ぜひ参考にしてください。

また「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第3版)」も、パワハラの予防から対策までを網羅できる資料です。
職場のハラスメント予防・解決に向けたポータルサイト「あかるい職場応援団」では、パワハラ被害で悩む方や、管理者が加害者にならないために役立つ動画などを掲載しています。
個人での学習のほか、職場研修などにも活用できます。

パワハラが続くなら転職を検討

現在パワハラに悩んでいる方で、信頼できる人物や職場のパワハラ相談窓口に相談する方法での解決が難しい場合は、職場を変えることも視野に入れておきましょう
しかし、忙しい医師が働きながら転職活動を行うのは簡単なことではありません。
そんなときはプロのコンサルタントに相談してみましょう。

医師転職専門エージェント「メッドアイ」は、パワハラのない風通しの良い職場へ転職を全力でサポートします。ぜひ一度相談してみてください。


まとめ(医師とパワハラについて)

パワハラは職場での地位などを背景に、業務の範囲を超えた行いにより精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させたりする行為です。
医療現場では上司などからパワハラを受けることが多く、その内容は追い詰めるような叱責や露骨な無視、プライベートの詮索などが挙げられます。

もしパワハラを受けてしまった場合には、まず信頼できる人物に相談したり職場の相談窓口に相談したりしましょう
また、パワハラから受ける精神的・身体的ダメージが大きかった場合は訴訟を起こすことも考え、言動の録音・録画やメールなどの証拠を残しておくことが大切です。

しかし自分の力ではなかなかパワハラを解決することができない場合は、転職を検討したほうが良い場合もあるでしょう。

医師の転職に特化した転職エージェント「メッドアイ」なら、より活躍できる働きやすい職場へ転職したいという希望を叶えます。
自分1人で悩まずに、ぜひ気軽に相談してみてください。