仕事をしていく上で、QOL(Quality Of Life)を意識することはとても大切です。
それは医師でも同じことで、特に激務で知られる職業でもありますので、気にしている方は多いのではないでしょうか。

「QOLが高いと言われている診療科の特徴は?」
「QOL重視で診療科を選ぶならどこ?」

この記事では、QOLを重視した働き方をしたい医師のために、転職エージェントの視点で、QOL重視派におすすめの診療科をご紹介します。
また、女性医師に人気がある診療科についても解説しますので参考にしてください。


QOLが高いとされる診療科の特徴は?

QOLが高い職場というのはどういう職場なのでしょうか。
医師で言えば、単純に「忙しくない科」「楽な科」であるということだけではないと思っていたほうがいいでしょう。

もちろん、プライベートの時間を確保するためには、激務度合いが少ないことは重要です。
しかし単純に職場が暇だと、医師としてしっかり経験を積んでいくことに対しては支障が出てきてしまいます。
ここからは、QOLが重視できる職場とはどのようなものなのかを見ていきます。

1.当直やオンコールが少ないorない

医師の労働時間が長時間に及ぶ大きな要因の一つに、当直業務やオンコール待機があります。

当直が回ってくる回数が多いと、それだけプライベートの時間は減ってしまいます。
なるべく当直が少ない職場を選ぶことがQOLを高めるために必要です。
当直やオンコールといった時間外業務は、診療科の特性や病院の規模、所属する医師の人数によって変わってきます。

QOLを重視して働きたい場合は、当直が少ない診療科を選ぶか、あるいは所属医師人数が多く、当直頻度が少ない職場を選ぶと良いでしょう。
また、個人経営のクリニックなど、救急対応や入院設備のない職場を選ぶことでも、当直やオンコールを免れることができます。

2.残業や長時間の手術が少ない

当直がなくても残業が常態化しているような職場や、外科など長時間手術や対応が発生するような診療科も、プライベートの時間を削ってしまいます。

特に20-30代のうちは収入が高くないので、アルバイトをする医師も大勢います。
そんな時に、本業が残業ばかりだと、アルバイトの予定も入れづらくなってしまい、思った通りのスケジュールで動きづらくなってしまいます。

さらに、結婚して子どもができれば、子育てのための時間も必要となってきます。
ライフステージに必要なプライベート時間の確保が難しい診療科や職場は、QOLを重視したいというタイプの方には向いていないと言えそうです。

3.転職や開業がしやすい

QOLを重視する人の中には、ライフイベントやプライベートのためだけでなく、医師としてのスキルアップをスムーズに行いたいという方もいるでしょう。
そうしたケースでは、時間管理のしやすさだけでなく、医師一人ひとりの成長を阻害しないかどうかも重要な要素となってきます。

より多くの症例を求めて転職を希望した際に転職しやすいかどうかや、開業のための後押しをしてくれる風土があるかどうかということです。
また、QOLを高く保てないことを理由に医局を辞めたり転職をしたりする場合にも、次の職場では転職や開業にも理解があるかどうかは見極めることをおすすめします。

研修医の志望の変化で見る人気の診療科

ここに、厚生労働省が行ったアンケート調査の結果があります。
これは臨床研修に臨んだ研修医に向けたアンケートで、研修開始前の希望診療科と、研修終了後の希望診療科に変化があったかどうかを問うものです。

診療科研修前希望者数研修後希望者数増減率
小児科574438-23.6%
産婦人科449371-17.3%
外科系765654-14.5%
内科系2,5582,363-7.0%
救急科184175-4%
病理診断科6059-1.6%
整形外科509511+0.3%
脳神経外科185202+9.1%
眼科210252+20.0%
形成外科132164+24.2%
麻酔科262333+27.0%
耳鼻咽喉科162208+28.3%
精神科268353+31.7%
皮膚科164220+34.1%
泌尿器科187253+35.2%
放射線科114166+45.6%
リハビリ科3761+64.8%

*厚生労働省「令和2年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」(P31〜)を参照に作成

臨床研修で実際に希望する診療科を体験した結果、内科や外科、小児科や産婦人科が大きく希望者を減らしていることがわかります。
その一方で、精神科、皮膚科、放射線科、リハビリテーション科などは大きく希望者を増やしているのです。

希望者の減少率が大きい診療科は、長時間勤務や当直などが多いことでも知られていて、ハードな診療科と言える物が目立ちます。
このアンケートの数値がそのままQOLの高さを示すというものではありません。
しかし、実体験に基づく希望先の変化というのは、ある程度参考になるのではないでしょうか。

【女医にも人気】高QOLの診療科5選

特に女性医師においては、出産という男性医師にはないライフイベントがあります。
子どもを産むという選択をした場合、必ずキャリアにブランクが発生することになり、さらに出産後の子育て期間においてもワークライフバランスを重視する傾向が見られるのです。

ここでは、そんな女性医師に人気がある診療科を、QOL観点からご紹介します。

1.眼科

眼科は女性医師が多い診療科です。
厚生労働省が推進する「女性医師キャリア支援モデル普及推進事業」に関する資料では、眼科の女性医師割合を37.9%としています。
眼科の働き方の特徴としては、入院設備を持たないクリニックが多く、予約制で治療を行うところもあることから、労働時間が長くなりにくいというのが眼科の特徴です。眼鏡やコンタクト用処方箋を出すなどの緊急性が低い業務や、白内障やレーシックといった手術も予約制で対応できることが多いことです。

また、このことから、治療にあたっての精神面でのストレスも比較的軽いと言われています。
こうした特性が、「働き方を調整しやすい診療科」として認識されているため、女性医師が多く見られると考えられます。

2.皮膚科・形成美容外科

皮膚科も女性医師の占める割合が高く、眼科よりも多い46.1%の女性医師が在籍しています。
形成美容外科では27.1%を女性医師が占めています。
皮膚科や美容形成外科も眼科と同様に、予約診療制のクリニックが主流になっていますし、病院勤務でも外来が中心となるため、夜勤が発生しにくくなるのです。

さらに元々女性医師の比率が高い環境であることから、出産や子育てへの理解もある職場が多いと言えるでしょう。
QOLが高い状態で働き続けられる診療科のため、女性に選ばれる傾向が強という結果になっているようです。
その一方で、美容や外見に関わる手術があるなど技術の研鑽や責任感の高さが求められる側面があります。

3.放射線科

放射線科の女性医師割合は23.3%です。
放射線科は、当直やオンコールが少ないのが特徴です。
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、放射線科の日直・宿直については、日直は月当たり0〜2回で全体の96.5%、宿直は90.3%を占めています。

また、日当直0回の割合も日直60.5%、宿直59.6%ととても高いのです。
放射線科の医師の仕事内容としては、レントゲン画像から病理診断を行う画像読影と、がん治療などに携わる放射線治療があります。
特に画像読影の業務はデスクワークとなり、ある程度自分のペースで仕事を進めることが可能です。
ワークライフバランスをとりやすく、身体的負担も少ない環境だと言えるでしょう。

4.耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科も、働き方を選べる診療科として女性医師に人気があり、その割合は20.4%となっています。

耳鼻咽喉科の場合は、勤務先の地域性や病院の規模などによって状況が変わるため注意が必要です。
例えば大きな病院の耳鼻咽喉科の場合は、難しい症例や手術などの対応でハードワークになる傾向も見られます。
逆に街中のクリニックでは、花粉症などのアレルギーや鼻炎、咽頭炎といった軽症対応が多くなる傾向です。

また、耳鼻咽喉科は開業がしやすい診療科でもあり、自分のクリニックを持つことで、働き方をコントロールすることも可能です。

5.病理診断科

病理診断科は直接の患者対応が発生しないため、時間の調整がつけやすい診療科です。
医師の中では数は少なく、疾病の確定診断を行うという重要な業務を担うことから、幅広い知識が必要になります。

また、依頼してきた臨床医に的確に回答できる文章力やコミュニケーション能力も必要となり、病理医へのハードルはそれなりに高いというのが実情です。
しかし、適性があれば、実際の業務では非常にワークライフバランスをとりやすく、デスクワーク中心となり、体力的な負担が軽い職場でもあるのです。
病理診断科も女性医師の割合が高く、最近では若手の女性医師が増えている傾向があります。

病理診断科の詳しい業務内容や働き方については、こちらの記事も参考にしてください。

【臨床以外】高QOLの職場2選

QOLを重視して働きたいのであれば、医療機関以外の仕事を選ぶという方法もあります。
医師免許を活かした仕事はいろいろあり、臨床現場だけがすべてではありません。
ここからは、臨床以外の仕事でQOLを保てる仕事をご紹介します。

1.産業医

臨床現場以外の医師の仕事先として産業医に人気があるのはご承知の通りです。
企業内で働くことになり、患者対応がないため緊急呼び出しや当直もありません。
さらに、嘱託で働くことによって働く日数も減らすことができ、週に数回の勤務で済むケースもあります。
主な業務は企業の従業員に対する健康管理や面接指導、労働環境改善指導などで、平均年収が高くなるケースもあります。

2.公務員

医師免許があると、公務員として働く道も選択可能です。
代表的なものとしては、自治体の保健センターなどで働く公衆衛生医師や、保健所で地域の健康づくり推進を担う仕事もあります。
公務員として働くと、臨床現場よりは若干年収は下がるものの、福利厚生の充実ぶりは魅力です。

また、平常時であれば残業などの心配もかなり少なくなり、ワークライフバランスも保ちやすい職場と言えます。


まとめ(医師とQOL重視の診療科について)

QOLを重視して働きたいのであれば、職場選びは重要なポイントと言えます。
医師の場合は診療科によっても左右される面があり、脳神経外科などのハードな診療科にいると、高いQOLを保つのは難しいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、職場を上手に選ぶことで、可能な範囲でワークライフバランスを向上させることは十分可能です。

また、診療科のこだわりを変えられるのであれば、病理診断科や皮膚科といった、ワークライフバランスのとりやすい診療科へ転科するという方法もあります。

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必ず転職するというわけでなくても、QOLとキャリアプランを両立させるためには、まず相談してみることをおすすめします。