長時間労働であることを承知の上で医師になったとしても、やはり疲労を感じて「しんどくなってきた」と思っている医師もいるのではないでしょうか。
- 「医師の労働時間はどのくらい?」
- 「医師の2024年問題とは?」
- 「勤務医がしんどくなってきたら?」
今回はこのような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが医師の労働時間の実態やしんどくなった時の解決策などを解説します。
後半では医師の転職に関する有益な情報もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
医師の労働時間の実態は? 過酷な現状
まず初めに、医師の労働時間の実態や過酷な現状について解説していきます。
- 勤務医の1週間当たりの平均労働時間
- 勤務医の性別・年代別の勤務時間
医師の置かれている現状をきちんと理解することで、正しい解決策が見えてきます。
勤務医の1週間当たりの平均労働時間
医師の1週間当たりの平均労働時間はどれくらいなのでしょうか?
医師の中でも激務で知られている勤務医を例に出して見てみましょう。
労働時間 | 割合 |
---|---|
20時間未満 | 8.20% |
20~40時間未満 | 5.70% |
40~50時間未満 | 21.80% |
50~60時間未満 | 24.40% |
60~70時間未満 | 20.00% |
70~80時間未満 | 10.00% |
80時間以上 | 10.00% |
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の結果では、勤務医の1週間当たりの平均労働時間は53.2時間でした。
そして、全体の4割が1週間当たり60時間以上働いているという現状も明るみに出ました。
労働基準法第32条によって定められた法定労働時間が週40時間なので、1週間当たりの労働時間が60時間の場合、時間外労働時間は1週間当たり60-40=20時間です。
月の時間外労働時間に換算すると20×4(週間)=80時間となります。
厚生労働省が警告する「過労死ライン」は月間80時間の時間外労働なので、4割の医師が「過労死ライン」を超えて働いていることがわかります。
特に若手医師に対する負担は大きく、厚生労働省による「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」では、20代の勤務医の平均勤務時間は、1週間当たり約55時間にも及ぶという結果が出ました。
参考:「医師の勤務実態及び働き方の 意向等に関する調査」
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勤務医の性別・年代別の勤務時間(1週間当たり)
次に、勤務医の性別・年代別の勤務時間(1週間当たり)を見ていきましょう。
年代 | 勤務医(常勤) | 勤務医(非常勤) | ||
---|---|---|---|---|
診療・診療外 | 当直・オンコール | 診療・診療外 | 当直・オンコール | |
男性・20代 | 57.3(時間) | 18.8 | 55.8 | 14.2 |
男性・30代 | 56.4 | 18.7 | 54.2 | 16.5 |
男性・40代 | 55.2 | 17.1 | 45.5 | 8.6 |
男性・50代 | 51.8 | 13.8 | 37.6 | 8.9 |
男性・60代 | 45.5 | 8 | 30.3 | 5 |
女性・20代 | 53.5 | 13 | 54.5 | 12.7 |
女性・30代 | 45.2 | 10.7 | 36.7 | 4.9 |
女性・40代 | 41.4 | 9 | 25.3 | 1 |
女性・50代 | 44.2 | 7.8 | 25.5 | 1.8 |
女性・60代 | 39.3 | 3.4 | 25.9 | 1.3 |
参考:「医師の勤務実態及び働き方の 意向等に関する調査」P.13 , P.14
同じく、厚生労働省による「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」の結果を見てみると、女性医師に比べて男性医師のほうが勤務時間が長い傾向にあるということがわかります。
しかし、だからといって男性医師にのみ大きな負担がのしかかっているという訳ではなく、性差問わず全体を通して過重労働の傾向にあるということは疑いようのない事実です。 あわせて読みたい
医師の労働環境と2024年問題
続いては、医師の労働環境と2024年問題について解説していきます。
- 医師の2024年問題とは
- 労働環境の悪さが及ぼす影響とは
2024年問題が生まれた背景には、医師の置かれる過酷な現状が関係しているのです。
医師の2024年問題とは
医師の2024年問題とは、政府による「働き方改革関連法」の労働時間の上限規制に伴い発生した問題になります。
「働き方改革」では、これまで一般の企業を対象として一連の法規制を行っていましたが、2024年4月からは勤務医にも罰則付き時間外労働時間の規制が適用されることとなりました。
従って、現行の体制が大幅な変更を余儀なくされる分岐点である2024年が、業界内外から注目されるようになったのです。
参考:厚生労働省「第11回医師の働き方改革に関する検討会(平成30年11月9日)資料」
医師の労働時間や労働環境の改善が急がれる大きな理由としては、近年における医師の過労死や労災認定の問題が考えられます。
過労死等防止調査研究センターの調査によると、2010~2015年の5年間で医師の精神障害事案は8件、医師の心臓・脳疾患は17件が報告されています。
医師の健康状態が悪化することは、すなわち医療の質・安全性の確保が困難になることと同義であり、早急な対応が検討される議題です。
医師の労働基準法に違反した長時間労働の原因としては以下のようなものが挙げられます。
- 慢性的な人手不足
- オンコール・休日診療
- 教育・指導
- 管理的業務
- 学会・論文作成
これらは、勤務医の罰則付き時間外労働時間の規制の円滑な実施において大きな課題となっています。
医師の「働き方改革」が急がれる理由についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。 あわせて読みたい
労働環境の悪さが及ぼす影響とは
医師の労働環境の悪さが及ぼす影響としては、大きくわけて二つが考えられます。
一つ目は、医師自身の健康への悪影響です。
当然のことながら、「過労死ライン」を超える長時間労働が医師の健康に悪影響を与えていることは間違いありません。
労働時間の増加と反比例するように睡眠時間が削られることによって、心身ともに疲弊する上、回復する時間も十分に取れないという悪循環が発生します。
二つ目は、医療ミスの原因となる悪影響です。
ただでさえ人手が足りないことや診療時間の不足に加え、自身の睡眠不足などによって注意力が散漫になることで誤診の可能性が大幅に高まります。
さらに、当直業務における夜勤などが不規則に入ってくることも考えると、集中力や判断力の低下は避けられないでしょう。 あわせて読みたい
勤務医がしんどくなった時は? 3つの解決策
このような環境下でなかなか改善が見込めない場合、どのような手段を取ればよいのでしょうか?
どうしても勤務医がしんどくなった時には、下記の3つの解決策を実行されることをおすすめします。
- 常勤から非常勤・アルバイトになる
- 他の医療機関へ転職する
- 開業する
現状から脱却したい勤務医の方は、ぜひ検討してみてください。
常勤から非常勤・アルバイトになる
常勤から非常勤・アルバイトになることで、労働時間の削減が見込まれます。
体の疲労や心の辛さがピークに達しそうな時は、まずは休暇を取り、十分な睡眠時間を確保することが何よりも優先されるのです。
しかし常勤の場合、周囲の環境要因などによってそれが叶わないことも多いでしょう。
そんな時には、非常勤やアルバイトといった労働体制に身を置くことで、強制的に労働時間や労働日数自体を少なくすることが可能です。 あわせて読みたい
近年では、非常勤やアルバイトなどの待遇でも福利厚生が充実していますので、比較的安心して転身することが可能となっています。
他の医療機関へ転職する
他の医療機関へ転職することで労働時間や労働環境の改善が見られるケースがあります。
特に、大病院から診療所・クリニックなどに転職すると、自身への肉体的・精神的な負担が大幅に軽くなることも期待できるでしょう。
医局の過密なスケジュールや人間関係のしがらみに心身ともに疲弊しているという方は、市民病院などへの転職もおすすめです。
自身の適性に合う職場環境を確保することができれば、現状における悩みを一挙に解消することも不可能ではありません。
ただ、日々の業務の傍ら、転職の情報収集を一人ですることは非常に大変です。
本格的に転職を検討される際には、プロの転職エージェントに相談されることをおすすめします。
医師専門転職エージェント「メッドアイ」なら、医師のキャリアプランに合った職場探しを全力でサポートします。
開業する
現状を大幅に変えたいということであれば、思い切って開業するというのも一つの手です。
病院やクリニックを問わず、勤務医の場合には一定の制限が課せられます。
雇われの身分である以上、人間関係や上からの圧力など、どうしてもすべてを改善するのには限界があります。
そこで、候補として挙がってくるのが開業医になるという選択肢です。
開業医になれば、勤務時間や業務内容を自身の好きなように設定できるようになります。
従って、勤務医のままでは成し得なかった程の大幅な労働環境の改善が期待できるでしょう。
ただし、開業には基本的に多額の資金や綿密な事業計画など事前の準備が必須になります。
開業を検討される際にはその点を考慮して、十分な余裕を持った上で実行に移されることをおすすめします。
開業の詳しい手順については、下記の記事を参考にしてみてください。 あわせて読みたい
まとめ(働きすぎてしんどい医師)
今回は、医師の過酷な現状やその解決策について解説してきました。
<医師の労働時間の実態は? 過酷な現状について>
- 勤務医の1週間当たりの平均労働時間は53.2時間
- 勤務医の性別・年代別の勤務時間は20代の男性医師が一番長い傾向にある
<医師の労働環境と2024年問題とは?>
- 医師の2024年問題とは「働き方改革関連法」の労働時間の上限規制に伴い発生した問題
- 労働環境の悪さが及ぼす影響には医師自身の健康や医療ミスの原因となる悪影響がある
<勤務医がしんどくなった時は? 3つの解決策について>
- 常勤から非常勤・アルバイトになる
- 他の医療機関へ転職する
- 開業する
「働き方改革」により大幅な改善が見込まれるものの、医師の労働時間や労働環境にはまだまだ多くの不安や課題が残っています。
自身の置かれている現状の改善を切に願うのであれば、ただ政府や周囲の環境に結論をゆだねるのではなく、自分自身でより良い環境を模索することが急務だと言えるでしょう。
自身のキャリアプランとして転職も視野に入れているという方は、まずはプロの転職エージェントに相談されてみることをおすすめします。
医師専門転職エージェント「メッドアイ」なら、医師のキャリアプランに合った職場探しを全力でサポートします。