「老後2,000万円問題」など、老後の資金についての話題には関心の高い方が多いのではないでしょうか。
医師も例外ではなく、高収入と言われる職業であっても、いつか来る引退の時に備えた貯蓄が必要です。

では、引退までにどのくらいの貯金があれば安心なのでしょうか。

「勤務医の貯金額はどのくらい?」
「引退までの貯金額の目標は?」
「高収入だとやっぱり税金が高い?」

この記事では、医師の貯蓄事情や引退までに貯めておくと安心な貯金額の目安について解説します。
貯蓄を増やしたいけどうまく増えていないという方も、ぜひ参考にしてください。


勤務医の貯蓄額はどのくらい?

勤務医が実際にどのくらい貯蓄しているかについては、転職エージェント各社がアンケート調査を行っていて、興味の高さをうかがい知ることができます。
しかし、どの調査でも、目標とする貯蓄額と実際の貯金額には開きがある状態です。

貯蓄の目標額としては、3,000万〜1億5,000万円と幅広い範囲で回答が集まっています。
実際の貯金額ではゼロ〜3,000万円の範囲内に8割の回答が集まっていて、理想通りの貯蓄ができているという医師は少ないです。
確かに年収が高くなってくると、貯蓄額は多くなる傾向は見られます。

ただし、年収で3,000万円程度までの医師の中には、貯蓄ゼロ〜100万円未満という方も1〜2割近くいるという回答もありました。
したがって、貯蓄がない勤務医というのもあまり珍しくないのかもしれません。

リタイアまでにどのくらい貯蓄すべき? 目標貯金額をチェック

医師はリタイアまでにどのくらいの貯蓄をすべきなのでしょうか。
それは、現役時代の働き方によっても変わってきます。
医師の働き方は、大雑把に分ければ勤務医かフリーランス、または開業医というところになるでしょう。
それぞれについて目標貯蓄額を見ていきましょう。

勤務医の場合は5,000万円

病院や検診期間などに勤める勤務医の場合、定年退職がリタイアのタイミングになるというケースが多くなるでしょう。
一般的には65歳が定年となります。
老後資金としては、この定年退職した65歳から大体30年分くらいを準備するのが目安となるでしょう。

どのくらいの生活レベルを保つのかによって、必要な資金は変わってきます。
勤務医の場合、同じ病院でずっと働いていれば、退職金があります。
また、厚生年金にも加入していることになるため、その分を見越して貯蓄額の目標が立てられるというメリットがあるのです。

退職金は、勤続年数や勤め先の病院によって変わってきますが、仮に3,000万円もらえるのであれば、30年間の生活費に割り振ると、360ヶ月分で毎月83,000円は確保できます。
さらに、年金受給額分がプラスできますが、こちらは40年程度の厚生年金加入で20万〜30万円程度の給付が受けられると仮定すると、月の生活費は28万〜38万円程度の計算となります。

当たり前のことですが、老後資金としては、衣食住以外のお金のことも考えなくてはなりません。
趣味に費やすお金や、健康維持のためのスポーツジム利用や交際費などさまざまです。
こうした支出も踏まえて、例えば月に50万円程度の生活費を見込むのであれば、ここまでの試算分を差し引いてみましょう。

月当たり12万〜22万円が不足分となりますので、これを30年分で4,320万〜7,920万円が貯金目標額となります。
もらえる年金や退職金は人によって条件が変わってきますので、目安としては5,000万円程度貯められれば安心と言えそうです。

フリーランス医の場合は一億円

フリーランスで働く医師の場合、勤務医と違って退職金をもらうことができません。
さらに、年金も国民年金になるため、毎月の受給額も大きく下回ってしまいます。
国民年金の給付額は保険料を納付した月数や物価変動などで変わってきますが、例えば30〜65歳までの35年間を納付した場合で、月に6万〜6.5万円程度の受給が目安です。

勤務医同様に、月の生活費を50万円確保するとしたら、差額の44万円の30年分となり、必要な老後資金は1.5億円程度と高額になってしまいます。
倹約した生活を送るとしても、最低でも1億円程度の貯蓄はしておいたほうが良いでしょう。

フリーランス医師の場合、収入自体は常勤で勤める医師より高額になる傾向があります。
この高収入を活かし、貯蓄だけでなく資産運用なども活用して、賢く資産形成していく必要がありそうです。
例えば積立投資で毎月10万〜15万円程度を35年ほど投資し続けると、年利3%程度で4,500万円〜6,500万円程度の資産形成が目指せます。

ちなみに1億円の老後資金を貯められた場合、国民年金と合算して、大体月当たりの生活費が33万〜35万円程度になる計算です。
(1億円÷360ヶ月=約28万円プラス国民年金6万円前後)

また、フリーランスの場合は、勤務先を選べば必ずしも65歳でリタイアというわけでもありません。
現役をいつまで続けるかによっても、準備すべき老後資金額は変わってくるでしょう。

開業医の場合もやっぱり一億円

​​開業医の場合も、老後資金を準備する考え方としては、フリーランス勤務の医師と変わりがありません。
しかし、フリーランス医と大きく異なる点として、自分のクリニックがあるという点が挙げられます。
メリットとしては、自分の好きなタイミングまで現役続行ができるということでしょう。
仮に自分自身の現役続行が難しくなっても、後身の医師を雇うことで、経営者としての収入が維持できるのです。

逆に、開業時に資金融資を受けていると、毎月の返済を背負っていることになります。
このため、貯蓄を増やすペースは勤務医やフリーランス医のようにいかないということもあるでしょう。
ただし、最終的にクリニックを売却すればそこで得られる利益も老後資金に充てることができます。
いつまで働くか、引退後のクリニックをどうするかを含めた計画をあらかじめしっかりと立てておくことで、老後資金の貯蓄を楽に行うことも可能になってきます。

こうした自由度の高さは開業医の強みと言えますが、体を壊して働けなくなるなどの不測の事態に備えておくことも大切です。
保健的な意味合いも含めて、フリーランス医師同様に1億円程度は資金を貯めておくと安心できます。

医師転職お役立ちnavi 公式 Instagram 医師キャリアに関する有益な情報を発信中!

貯金できない医師もいる? 医師のお財布事情

序盤でも触れましたが、年収水準が3,000万円に達していても、実際の貯金額はゼロに等しいという医師が一定数います。
貯蓄が得意かそうでないかという個人の特性は別に考えても、医師には貯金がしづらい事情があるのでしょうか?
ここからは、医師のお財布事情について見ていきます。

一口に医師といっても収入レベルは異なる

「医師は高収入」とはよく言われますが、その実態は人によってさまざまです。
働き方一つ取っても、常勤医なのか、開業医なのか、またフリーランス医なのかで変わってきますし、診療科によっても収入額は違うでしょう。
開業医やフリーランスで働く場合は、診る患者数が増えればそのまま収入アップに直結すると考えるのが一般的です。
勤務医であれば、勤続年数や役職に応じて職場内で昇給していくスタイルとなります。

どちらにしても、医師としてスキルアップしていくことが前提となっていて、ある程度一人前と認めてもらえる域に達して初めて「高収入」が実現するということに変わりはありません。

このため、医師は常に研修や勉強会に参加し、資格取得を目指すことになります。
実は、こうした研鑽のための費用が意外とかかるため、プライベートに回せるお金が多くないという医師も少なくないのです。
また、20代のうちは研修中であり、研修先に大学病院を選んでいる場合は、収入自体が低いという医師も大勢います。
この状態では貯金をするのは難しいため、貯蓄を始める時期が遅くなってしまうのです。

高収入だと税金が高額になる

ある程度ベテランの域に達して高収入が得られるようになっている方でも、なかなか思うように貯蓄できないというケースも見られます。
そこには、所得税や社会保険料といった給与から引かれる金額の負担があるのです。
勤務医の平均年収は、厚生労働省の「医療経済実態調査報告」によれば、1,488万円となっています。

これぐらいの収入があると、収入額に対して所得税の割合が高くなってきますし、子育て費用の補助対象からも外れてしまうでしょう。
手取りが思ったほど多くならない上に、こうした子育てにかかるお金などの面でも不利になっているのです。

勤務医が平均年収レベルの収入に達するのは大体30代後半以降という傾向があり、その段階では結婚して子どももいるというケースが多いでしょう。
子育て費用や住宅ローンなど、ライフステージ的にも出費が嵩むタイミングとも重なってくるという方も少なくないと思います。
このため、貯蓄に回すゆとりが思ったほどなくなってしまい、結果として理想の貯蓄額を貯めることが難しいと感じてしまうのです。

独身でも貯金できない場合がある

独身時代のうちからコツコツと貯蓄ができれば、将来的にも楽になるのは自明の理です。
しかし、独身の医師でも生活レベルによっては貯蓄が難しいという方も見受けられます。
たとえ収入が高くても、医師同士の付き合いでは高収入同士ということで、散財する金額も多くなりがちになってしまうこともあるでしょう。

また、医局に所属している医師の場合は転勤も多く、その都度引越しを伴うことも珍しくありません。
度々の引越し代や転居に伴う細かい出費などで、なかなか貯金が増えにくいといった事情も考えられます。

確かに若いうちは収入がある程度あると、気ままに散財してしまうこともあるかもしれません。
しかし、この先結婚や出産、住宅購入や子どもの教育費、とライフイベントの発生に応じた出費も待っています。
さらに最終的には自分自身の老後資金も必要となってくるため、独身時代に貯蓄の習慣をつけておくことはとても重要です。

もし、収入が心もとなくて、散財はしていないけど貯金もできていないという場合は、収入を底上げするための転職を検討するのも一つの方法です。
忙しい仕事の合間を縫って転職活動をするとなると大変だし無理と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を上手に利用することで、医師としてのキャリアプランや収入など、叶えたい条件に合った仕事が探しやすくなります。


まとめ(医師の貯蓄について)

「医師は高収入」とよく言われますが、医師のお財布事情としては、理想通りの貯蓄ができているという方はあまり多くないようです。
その背景には収入が高いゆえに負担が重くなる税金や子育て費用といったやむを得ない面もあります。

しかしその一方で、生活レベルを周囲と合わせるために無駄に散財をしているという方もいるのではないでしょうか。
また、若手の医師や、大学病院勤務などでそもそもあまり収入が高くないために貯蓄が増やせないという方もいるかもしれません。

老後2,000万円問題など、老後資金を上手に貯めておくことは、これからの時代より重要になってくるでしょう。
20代から計画的に貯蓄ができていればいいですが、30〜40代からでも遅くはありません。
生活を見直して、少しずつでも貯蓄するようにしたり、収入アップを目指すことで貯蓄ができるようにするなどの解決策があります。

医師が収入アップを目指すには、転職するという決断もあるでしょう。
転職を失敗させないためにおすすめなのが医師専門の転職エージェント「メッドアイ」の利用です。
医師の場合、収入だけでなく、医師としてどういうキャリアを積んでいきたいかや、どういう働き方をしたいかも大切です。
転職エージェント「メッドアイ」を利用することで、そうした要望をしっかり汲み取った転職先探しがしやすくなります。