医師の転職でUターンやIターンをするケースというと、これまでは実家の医院や病院を継ぐか、ご縁があった土地でクリニックを継承するというパターンが多く聞かれました。
また、家業を継がずとも、親の介護等で地元に帰り、地域の医療施設に転職するというケースもよく聞くものです。
しかし、近年では地方の医療機関の求人に条件の良いものが見られることから、興味を持つという方も増えてきています。

「都会と地方で年収に差はあるのか?」
「UターンやIターンで転職するメリット・デメリットは?」
「地方で働くことを決めた後は?」

この記事では、UターンやIターンで地方に転職するメリットや注意点を、転職エージェントの視点から解説します。
地域医療の現状や課題についてもご紹介しますので、興味のある方は参考にしてください。


地域医療の現状と課題は?

初めに、地域医療の現状を見ていきましょう。
都心の病院や大学病院にしか勤務経験がない医師が地方に転職すると、生活環境だけでなく、職場環境も大きく変わります。
第一に、地方での求人条件が高待遇であることからも、医師の偏在は明らかです。
医師一人当たりが担当する業務は増える傾向があり、病院によっては都市部で働くよりも忙しいということも珍しくありません。
また、患者に占める高齢者の割合が増えるのも、地方の特色と言えるでしょう。
もちろん地域によって違いはありますが、それでも高齢者の人口割合は都市部と比べると多くなっています。

さらに地域医療構想で定義している地域内での医療需要の解決についても、不利な点があるのは否めません。
地方に行けば行くほど、医療機関の数は減る傾向がありますし、高度な設備がある病院も限られてきます。
難しい症例に対応する時に、都市部と比べると医療機関連携でも難しい面が出てくることを知っておく必要があります。

地方は医師不足・年収は都会より多い?

地方における医師不足は、年々深刻なものとなっています。
その分を補うため、地方での医師求人は年収条件が高めに設定されているものも見受けられるのが実情です。
実際に、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を見てみると、平均年収では岩手県や鹿児島県、福井県といった地方がランキングのトップを占めています。
少しでも良い条件で求人して、医師を集めたいという思惑が見て取れるでしょう。

転職サイトなどで検索してみても、東京よりも地方都市のほうが高待遇の求人を見つけられるケースも多い傾向です。
地方へUターン転職することで、収入アップが叶う可能性は比較的高いと言えるでしょう。
ただし、高条件の求人であるほど、実際の業務負荷などが想定よりも重いというケースはありうるということを念頭に置いておく必要がありそうです。

地方での開業や医師の年収については、こちらの記事も参考にしてください。

医師のUターン・Iターン転職・4つのメリット

医師が転職でUターンやIターンをすることには、収入面以外にもメリットがあります。
ここからは、地方で働くことで得られる

  • 地域貢献
  • 高齢者医療への貢献
  • 働きやすい環境
  • 開業のチャンス

といった4つのメリットについて、詳しくご紹介します。

地域への貢献

医師の仕事はダイレクトに人助けをする側面があるので、あまり地域性は関係ないという見方もあります。
しかし、生まれ育った故郷や、何かしらのご縁をもらった愛着のある地域で働くことで、その地域に貢献できるという「やりがい」は、働く上でのモチベーションをアップしてくれるでしょう。

Uターンを決断する医師の中には、故郷に恩を返したいと考える人も少なくありません。
また、大学で地域医療に関する知識を得ることで興味を持ち、地域医療の道に進みたいと考えてIターンをするケースも見受けられます。
その地域のために働くという実感が感じられることで、充実感を得られるのは医師に限ったことではありません。
ですが、医師の場合は特に地域に欠かせない必要な業種であることもあり、一層の充実感があるのではないでしょうか。

高齢者医療への貢献

地域医療に携わることは、そのまま高齢者医療に深く関わることにつながると言えるでしょう。
超高齢化社会の到来と言われている昨今では、高齢者医療へのニーズは高まる一方です。
単に病気の治療だけでなく、高齢者が地域の中で自分らしく生活できるために、医療ができる役割は必要不可欠となっています。

さらに、地方の医療機関では、医師一人一人が持つ裁量が多いところもよくあり、医師が自分の判断で患者の最善を考えて動くことができるケースも多いです。
さまざまな経験を積むことができるため、医師として必要な経験値を上げていくことができる環境でもあります。
地域医療に興味を持つ方の中には、キャリアアップのためにと考える人も少なくないようです。

働きやすい環境

Uターンの場合、転職先は慣れ親しんだ地元ということになります。
土地柄にも通じているし、地元の知り合いや友人とも再びつながることもあるでしょう。
勝手のわかっている環境ですので、やりやすさを感じられるのではないでしょうか。
さらに、子育て世代であれば、実家や親族のサポートを受けることもできるかもしれません。

都市部の病院のような機能的な働き方はできなくなるケースもありますが、その分落ち着いて仕事に向き合えるという声も聞かれます。
勤務条件や地元での環境によっては、働きやすさが格段にアップできる可能性があるのです。
また、地方の医療機関の場合、自治体による医師への支援策が充実しているところも多く、生活面でも負担が減らせるケースも見受けられます。

開業もチャンス

キャリアプランのゴールを開業と考えている医師の場合、地方で開業するほうがやりやすいというメリットもあります。
都市部と異なりクリニックの数が足りていない場所があるなど、競合が少ないという特徴があるからです。
さらに元々医療機関の数が足りていないということは、需要もあるということでもあります。
したがって開業後の集患もある程度見込むことが可能なのです。

また、開業資金の面でも、地方であれば地代が安く済みますし、賃貸物件の家賃も低く抑えられます。
人件費も都市部よりは抑えられるので、全体の運営コスト面でも開業しやすいと言えるでしょう。

医師のUターン・Iターン転職・デメリットと注意点

UターンやIターンによる地方への転職については、デメリットもそれなりにあります。
しかし、物事の捉え方によっては、ちょっと気をつけたり考え方を変えることで強みとなることもあるでしょう。
ここからは、Uターン転職で地方へ移るときに気をつけたい注意点やデメリットとなり得るポイントについてご紹介します。

生活環境の大きな変化

都市部と地方とでは、生活環境に大きな違いがあることを認識しておくことが大切です。
まず生活には車が必須となりますし、子どもがいる場合、学校までの通学にも送迎が必要になることがあります。
家族を伴って移るのであれば、家族の協力や理解も必要となってくるのです。

また、地方では人間関係が濃厚な地域が多くあります。
休日に近所を散歩したり出かけた先などで患者さんやそのご家族と会うということもあるでしょう。
さらに、都心部へのアクセスに時間がかかることから、学会などに参加するのが大変になるという点でも注意が必要です。

医療設備の差

先進医療に携わりたいと考えている場合は、地方だと不利なことも少なくないでしょう。
設備の整った医療機関が圧倒的に少なく、勤務先の設備だけでは対応しきれないというケースも出てくることがあります。
また、自由診療分野でも最新の知識を得られる機会が少ない傾向があり、こうした分野で専門医資格を取ったり、キャリアを積みたい場合には向いていないかもしれません。

自分の描くキャリアプランと、Uターン先で求められている医療ニーズに齟齬がないかどうかを検討してから判断することをおすすめします。

医療機関によっては激務

繰り返しになりますが、慢性的な医師不足に加え、医師が都市部に集中してしまうという偏在現象が起きているのが現在の状況です。
地方の医療機関では医師の数が足りないということも珍しくなく、勤務先によっては人手不足をカバーするために激務を強いられる可能性もあります。
必ずしも地方の病院に行くと負荷が上がるというわけではありませんが、以前より忙しくなったと実感する医師も少なくないようです。
転職先を探す際には、忙しさの面や同僚や上司と相談しながら仕事を進められるかどうかといった環境も慎重に調べておくといいでしょう。

求人情報が少ない

当たり前ではありますが、地方の医療機関の数は都市部に比べると少ないです。
このため、当然ながら求人情報も都市部と比べると少ないということになります。
さらに前項で触れた通り、医師数の偏在という問題もあり、、地方の病院では当直が増えるなど、一人の医師が請け負う業務の量が多くなることも予想されます。

UターンやIターンの転職を検討する場合、転職活動をする苦労も多くなってしまいます。
そこで、転職エージェントを活用し、希望する地域にどのような求人があるかという情報を効率的にあつめることがおすすめです。
メッドアイでは、全国の医療機関の情報を提供していますので、まずはどんな求人があるのかだけでもお気軽にご相談ください。

Uターン・Iターンを決めたら後はどうする?

Uターンを決断し、転職先の目星がついたのであれば、気をつけておきたいのが「今の職場の退職」です。
これは地方か都市部かに関係なく、転職を決断したら大事にしておきたいポイントと言えます。
特に医師の場合は、今の職場を円満退職できるよう気を配るべきでしょう。
医療業界は思わぬところにもつながりがあり、退職時にトラブルを起こしてしまうと、自ずと転職先にも評判が伝わりやすいという特徴があります。

また、医師が退職する場合、引き継ぎにも時間を要します。
なるべく半年前ぐらいには、退職の意思をきちんと伝えることが大切です。
円満退職のポイントとしては、ポジティブな退職理由を持ち、今までの感謝の気持ちを持って誠意ある伝え方をするといいでしょう。

医師の円満退職については、こちらの記事でも詳しく解説しています。


まとめ(医師のUターン転職について)

医師が転職でUターンやIターンをする背景には、これまでは主に家業の継承や家庭の都合があげられていました。
しかし最近では、地域医療への興味や、慣れ親しんだ地域で落ち着いて活躍したいといった動機もよく聞かれています。
地方で働く場合、都市部の医療機関とは異なる文化や風習もあり、環境の変化は大きなものとなるでしょう。
しかし、ゆとりを持って働ける喜びや、地域に密着して貢献できるというやりがいはひとしおだと感じる方も少なくないようです。


地方では医療機関の数が少なく、その分求人情報も少ないという特性があります。
また、医師の数が少ないことから、担当患者数が増えたり業務負荷が増すという可能性も出てくるでしょう。
このため、転職先探しや情報収集は慎重に行う必要があると言えるのです。
せっかくの大きな決断ですから、転職で失敗して後悔しないよう、情報量の多い転職エージェント「メッドアイ」を活用することをおすすめします。