医師になるまでには長い時間と多大な努力が必要とされます。
苦労して取得した医師免許ですから、そのまま医師として働くことになる人がほとんどですし、当たり前だと感じられるでしょう。
しかし、医師の仕事はハードですし、人の命を預かる重責もあり、ストレスが溜まりやすいのも事実です。

憧れを抱き努力を重ねて医師になったけど、臨床現場で働いていくうちに辛くなってしまい、他の業種に転職を考える人も少なくありません。

「医師から他職種の仕事に転職するのは?」
「医師を辞めても医師免許を活かせる仕事はある?」

この記事では、医師が他の業種に転職するなら、どのような業種が向いているのかをご紹介します。
また、医師の仕事を離れたいと考えている人に見つめ直して欲しいポイントもご紹介しますので参考にしてください。


医師が他職種に転職することは可能?

医師が医師以外の仕事に転職することは、結論から言ってしまうと、全く問題ありません。
医師免許を取得したからといって、医師以外の職業につけないということはありませんし、医師が向いていないと思ったら思い切って医療業界以外に転身するのもいいでしょう。
しかしながら、せっかく取得した医師免許を無駄にするような転職をしている方は、あまりいないのが実情です。

その理由としては、医師は他の業種に比べても収入が高いですし、そもそも医師免許を取得するまでにかかった費用や時間を考えるともったいないことなどが考えられます。
実際、「医師が向いていない」と感じる方が転身する場合、医師専門を活かした転職をしている傾向が見られるのです。

臨床現場でなければ、医師が一番感じる「命を預かるストレス」はとりあえずなくなるため、臨床以外の仕事に就くというケースはよく聞かれます。

医師を辞めたい・他職種で働きたい主な理由

まず、医師が「医師を辞めたい」と思ってしまう理由について、代表的なものをいくつかご紹介します。
必ずしも、他の業種に転職しなくても解決できる理由もありますが、辛い時ほど他の仕事の方が良さそうだと感じることもあるでしょう。

それぞれの理由について詳しくご紹介します。

激務が辛く耐えられない

厚生労働省がまとめている「働き方改革をめぐる動向」によれば、まだまだ医師の労働時間は長く、全体の2割強の医師は、週あたりの労働時間が80時間を超えています。

特に病床数の多い病院や救命救急機能を有する病院、大学病院では割合が高く、80時間越えが4〜5割近い結果となっているのです。
こうした過重労働が当たり前な状態では、心身の疲れが蓄積してしまい、耐えられないと感じてしまう医師がいるのも当然のことでしょう。

人の命に関わるため精神的な負担が大きい

医師の仕事は人の命に直接関わる場面も少なくありません。
重責がプレッシャーとなり、つらさを感じてしまうという方もいるでしょう。

元々はそうした覚悟を持っていても、いざ働き始めてみたら、予想していたよりも強いプレッシャーだったという声も聞かれます。

患者とのトラブルと隣り合わせ

人の命を預かるプレッシャーに加えて、患者との関わり方にも難しいものがあります。
医師と患者、それに患者の家族との関係性を作ることが上手くいかないと、治療もうまく進められません。

また、ミスなどからトラブルに発展することもあり、気を抜けない状況が辛いという方もいます。

現職では理想のキャリアが実現できない

人間関係がうまくいかなかったり、環境が自分に合っていないなどの理由で、思い描いたキャリア形成ができていないと感じるケースです。
医師としてのやりがいそのものを失っていないのであれば、こちらも転職するなどで新しい環境を手に入れることができます。

しかし、転職や退職を受け入れてもらえないなどの事情から、医師という職業そのものへの情熱を失ってしまうこともあるようです。

勤務量が評価されていないと感じる

特に若手の医師に聞かれる理由の一つに、待遇への不満があります。
医師は高収入とは言われるものの、実は若手のうちは他業種とあまり違わない年収だというケースも珍しくないのです。

しかし、若手ほど当直回数が多かったり、研修や上司のサポートといった雑務が発生するなど、何かと忙しくなってしまいます。
息つく間もない忙しさの割に、評価されていないと感じてしまうと、やりがいも見失ってしまうのでしょう。

臨床医以外で医師におすすめの職場・職種

医師を辞めたいと思って転職を考えるのであれば、医師免許を活かした仕事を探す方が無難です。

一昔前であれば、医師免許を取得したら、臨床の現場で働くか、研究者又は大学教授を目指すかのどちらかになることがほとんどでした。
しかし今では、医師免許や医師としての経験を活かせる仕事の選択肢は豊富にあります。

ここからは、臨床医以外で医師免許を活かして働けるおすすめの職業をご紹介します。

健診医

臨床の現場で働き続ける自信はなくとも、医療には携わっていたいと考えるなら、検診医がおすすめです。
ハードワークに限界を感じ、ワークライフバランスを見直したいという方にも向いています。

開発職・研究職

研究の道へ進むのも、臨床以外で医師免許を活かせる方法です。
医師として患者を診ることはほとんどなくなりますが、医学の発展に尽くすことで、医師としてのやりがいを感じられる職業です。

製薬会社の開発職(メディカルドクター)なども人気があり、臨床のストレスを感じることなく働くことができます。

介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)は、高齢者が自宅で生活できるよう、リハビリやケアを受ける施設です。
このため、急性期の患者と向き合う臨床とは違った働き方ができます。

ソーシャルワーカーやリハビリスタッフなどと協業して高齢者のケアを行うため、チームワークを持って働くことが得意な方に向いている職業です。

産業医

産業医の仕事は、会社組織で働く労働者の健康管理や指導などです。

所属する企業によって必要とされる見識も変わってくるため、視野を広げることができるというメリットもあります。

臨床医からの転身先として人気があり、資格認定も必要なので、チャレンジのハードルはやや高いですが、残業も少なく働きやすい環境で仕事ができます。

保険会社の社医

保険会社で働く社医の主な仕事は、保険加入の申込者に健康状態の診査を行なったり、保険金支払いの際の妥当性の判断をしたりすることです。
保険会社の社員として働くため、臨床現場のようなハードワークからは解放されます。

また、医師の仕事が「患者のため」という視点で行うのに対し、社医の仕事は「保険の業務遂行のため」という視点に変わるため、最初はギャップを感じるかもしれません。

公務員

医師免許を持っていると、医療技官や矯正医官、公衆衛生医師といった公務員として働くこともできます。
医療技官は保健医療に関する制度作りを担い、矯正医官は刑務所などの矯正施設で働きます。
国家公務員として働くことで、充実した福利厚生を受けることができる点はメリットです。

地方公務員として保健所などで働く公衆衛生医師も、地域の住民の健康維持に貢献できるやりがいのある仕事です。

ベンチャー企業やコンサルタント会社

昨今は医療系のサービスを展開するベンチャー企業も増えてきています。
医療業界や医師としての知識を活かして働くことができ、会社によってはそれなりに高い年収が得られるケースもあります。

また、医療系メディアの記事執筆や監修などで起業するという方も見受けられるようになってきました。

医師から他職種へ転職する際の注意点

医師が他業種へ転職を考える場合、気を付けておきたいポイントがいくつかあります。
それは、医師という仕事と他業種では、価値観が異なることが様々にあるからです。

いざ転職してから「やっぱり医療の仕事の方がやりがいがあったな」と後悔することのないように、客観的に自分を見つめてみてはいかがでしょうか。

自分の価値を見出しておく

医師になるために努力をしてきたことは、医師免許という資格とともに、大きな武器となります。
しかし、その武器だけでは医療業界以外では通用しないことも多々あるのです。
一度医師の仕事のことを忘れて、自分には本来どのような強みがあるのか、どんな働き方が向いているのか(あるいは好きなのか)、見つめ直してみてください。

自分に「医者としての技量」以外に、どんな価値や強み、アピールポイントがあるのかを考えてみて、目指す業種がそれとマッチしているのかをチェックしてみることをお勧めします。

若いうちに他職種へ転職したほうがいい

他業種への転職を考える場合、早めの決断がカギとなります。
医師の場合は経験を積めば積むほど市場価値が上がることはご承知のことでしょう。

そのため、年齢がある程度いってからの転職の方が有利となります。
しかし、今までの経験とは全く異なる仕事をするとなると、伸び代のある若い人材の方が喜ばれるのです。

医師としての経験を加味して採用してくれる企業であっても、パワーがあり吸収力がある若い応募者を優先する向きは多少なりともあると思っていた方がいいでしょう。

年収・キャリアが下がりやすい

医師から他の業界に転身するということは、どんなケースであってもキャリアダウンになるということを覚悟しておく必要があります。
若手のうちは大きな違いはないものの、将来的な年収は医者の方が多くなりますし、社会的地位についても同様です。
医療業界でなくとも、医師の資格を必要とされていて、年収が高いことが見込める転職先を見極めなくてはなりません。

もちろん、キャリアや収入ではない別の目的を求めていくのであれば構わないことです。
しかし、将来のライフプランを考える上で、収入を重視するのであれば、この点はしっかり考えた転職活動をする必要があります。

医師が転職活動する方法

医師が転職を考えるとき、医師として別の医療機関への転職を目指すなら、医師専門の転職エージェントを活用することがおすすめです。
しかし、異業種への転職では利用できなさそうだと考える方もいるのではないでしょうか。

ここまで触れてきた通り、医師から別の業界へ転職を考えるとしても、医師専門や医師の経験を求められる仕事を探すケースは数多くあります。

しかし、「本当に医師を辞めたいのか」がはっきりしていない状態であれば、一度医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に悩みを相談してみるのも賢い方法です。
実は抱えている悩みや、キャリアプランへのモヤモヤした思いは、医師を続けながら解消できるかもしれないからです。
環境を変えたり、転科をするなど、キャリアプランを見つめ直してみるきっかけにもなります。

医師を続けられるかどうか悩んでしまったら、気軽に相談してみてください。

まとめ(医師から他職種に転職するには?)

医師が他業種へ転職するには、思い切った決断が必要です。
医師の資格は国家資格の中でも取得が困難で、時間もお金もかかるため、一度取った資格を手放すことには慎重すぎるほどの検討をした方がいいでしょう。
しかし、どうしても臨床現場で働くことが難しいのであれば、臨床以外でも医師が働けるフィールドはたくさんあります。

他業種へ行きたい明確な目的がある場合は別としても、臨床の仕事を続ける自信がないという理由であれば、一度医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談することをおすすめします。
キャリアプランの見つめ直しから、一人ひとりにマッチした働き方の提案まで、細かいサポートを受けることで、進んで行くべき道が見えてくるかもしれません。