医師の仕事は押し並べてハードワークであるといえます。
人命を預かるというストレスもあり、人間関係が複雑な環境で働いているという方も少なくないでしょう。
そのような環境を変えるために転職を決断するという医師は一定数いるのも事実です。
では、医師の転職は、キャリア形成上不利になってしまうものなのでしょうか。

「医師にはなぜ転職が多い?」
「転職すると不利になる?」
「キャリアップのための転職は可能?」

この記事では、医師が転職を決断する理由と、転職を成功させるためのポイントを解説します。
転職の失敗パターンやその理由についてもご紹介しますので参考にしてください。


医師に多い主な転職理由

医師の転職理由に注目すると、ネガティブな理由とポジティブな理由とに分かれる傾向があることがわかります。
よく聞かれる理由を、ネガティブなものと、ポジティブなものに分けてまとめてみました。

ネガティブな理由ポジティブな理由
過労で耐えられない、心身の不調があるワークライフバランス向上のため
給料が安いなど待遇面の不満専門性を高めたいため
今の職が合っていないと感じる開業医や転科を目指すため
人間関係のストレス企業で働きたい

ネガティブな理由とポジティブな理由を見比べてみると、表裏一体の関係にあることがわかりますでしょうか。
ネガティブな理由が先行してしまうと、次の職場でもまたネガティブな面が気になってしまい、転職を繰り返すことも考えられます。
あまりに転職が度重なってしまうと、自身の市場価値を下げることにもつながってしまいます。

そこで、転職を考え始めたら、まずその理由を冷静に自己分析してみましょう。
ネガティブな理由であると感じたら、転職の前に解決策を考えることが大切です。
解決策として転職を選ぶ場合、転職先に求める要件が、自ずと整理されている状態になりますから、次の職場で「こんなはずではなかった」と感じてしまうリスクを減らすことにもつながります。

もちろん、現時点で業務に支障が出るほどに体調が悪化してしまっているという場合は、理由などはさておき、すぐに転職なり退職して静養なりの対応をしたほうがいいでしょう。
出産育児や家族の介護など、いわゆる「物理的な理由」も、キャリアプランより優先して、働き方を調整すべきです。

医師の転職回数の傾向

医師は転職が珍しくない職業と言われていて、医師の半数近くが転職経験や転職を考えたことがあるという数字も出ています。(参照:日経メディカルキャリア
では、医師はどのくらいの回数転職するものなのでしょうか。
ここからは、医師の転職回数の傾向をご紹介します。

医師の転職回数は平均4~5回ほど

医師が転職する回数は、勤務する医療機関や置かれる環境によって変わってきます。
平均すると大体4〜5回程度の転職を経験する医師が多いのが実情です。
他業種の会社員の場合と比べると多めな印象があり、「医師は転職が多い職業」という認識は間違いではないでしょう。
医師は経験を蓄積するためやスキルを学ぶための環境を求めて転職することもありますし、医療業界全体が人手不足の状態ですから、転職先に困ることはない状態です。

大学病院で働く医師は転職回数が少なめの傾向

転職が珍しくない医師の世界ですが、大学病院で働いている医師に関しては、転職回数が少なめだと言われています。
研究や学会など、臨床現場以外の仕事も多いことから、民間病院より忙しいケースも多いのが大学病院の特徴です。
医局員を派遣することで地域の医療が成り立っているところもあり、周囲の状況を見て転職を思いとどまるというケースも聞かれます。

民間病院や診療所で働く医師は転職が多目の傾向

民間の病院や町のクリニックなどで働いている医師は、平均値に近い、3〜5回程度の転職を経験するという方も少なくありません。
大学病院のような義務感からくる転職の断念や、職場側の強い引き留めなどがあまりないという背景がうかがえます。
その一方で、大学病院ほど設備が整った環境も少なくなるため、キャリアアップを目指す医師ほど、より設備の整った環境を目指して転職するというケースもあるのです。

医師が転職に失敗するパターン

転職では、転職先の情報をよく調べて、自分の希望と合っているかを吟味する必要があります。
吟味をおろそかにしてしまうと、転職してから「こんなはずではなかった」という思いをしてしまうケースも。
ここでは、医師の転職で失敗してしまったというケースの代表的なものをご紹介します。

収入が思ったより下がってしまう

激務解消のための転職でよく聞かれるのが、想像よりも収入ダウンしてしまったというケースです。
勤務時間を減らすことばかりに注意を払っていて、給与がどの程度になるのかの試算がおろそかになってしまうと、想定以上に年収が下がってしまうことになりかねません。
体力的に無理のない働き方をすることは大事ですが、お金も生活には欠かせない要素です。
「どれくらいまでなら収入ダウンしてもいい」かを、事前に把握しておくと、トラブルを回避できます。

待遇はいいが、仕事がハードになってしまった

逆のパターンで、収入アップのために待遇面だけを重要視して転職してしまうのも問題です。
たしかに年収はアップできるのでしょうが、高収入や高条件の裏には何かしらの理由があるものだと考えておきましょう。
待遇改善を求めるのであれば、ワークライフバランスをどこまで犠牲にできるかを、やはり事前にプランニングしておくと安心です。

仕事内容や進め方が想像と違う

キャリア形成のため、より多くの症例が診られる病院を探した結果、配属された業務がサポート役だった、というケースも時々聞かれるものです。
転職当初は試用期間として仕方ないという場合もありますが、病院によっては数年間はサポートの仕事をすると決めているところもあります。
試用期間があるのか、ある場合はその期間の長さを確認すると同時に、自分のやりたい仕事ができるのかをダイレクトに確認するといいでしょう。

人間関係がうまくいかなかった

転職先で人間関係が良好に構築できるかどうかは、行ってみないとわからないというのが実際のところです。
現在の職場で人間関係を苦にして転職する場合は、同じことを繰り返してしまうリスクがあります。
過去の人間関係を断ち切ったら、まったく新しい気持ちで一から新しい関係を築いていく心構えを持つことが大切です。

勤務条件が聞いていた話と違う

勤務曜日や時間帯などが、事前にチェックしていた求人票と異なるというケースもよく聞かれます。
入職してから「話が違う」とならないよう、面接時に勤務条件や自身の希望をきちんと確認しておきましょう。
もし希望の勤務条件と合わないことが面接の段階でわかれば、交渉次第ではこちらの希望が叶うかもしれません。

知人の紹介で安易に転職してしまった

転職先を探していたら、知人の紹介で条件のいいところがあったのでよく調べないで転職する、というケースも危険です。
転職後の勤務条件などがマッチしていないと感じても、紹介者の手前すぐに辞めるわけにもいかないでしょう。
たとえ事情をよく知った知人からの紹介であっても、通常の転職活動と同じように、転職先の情報収集をしっかりしておくことがポイントです。

医師の転職が失敗してしまう主な理由

医師が転職に失敗してしまうケースはいろいろありますが、理由は以下の3つの点に絞られます。

  • 転職したい理由の分析が足りない
  • 転職先の情報収集が足りない
  • 早く転職したいという焦り

1つずつ詳しく解説します。

転職したい理由の分析が足りない

転職したいという思いだけで理由をよく考えないで転職活動を始めてしまうと、失敗のリスクが高まります。
「なぜ転職したいのか」を冷静に分析し、転職したい理由を明確にし、客観的に突き詰めてみましょう。
その理由を解決するためにはどのような条件の職場に行けばいいのか、転職することで収入がどのくらい変わるかなどをシミュレーションするのです。
転職せずに解決できないか他の選択肢も考えてみると、より具体的な職場に求めるイメージがつきやすくなります。

転職先の情報収集が足りない

医師の転職活動では、情報収集が何よりもカギになります。
給与や勤務時間といった基本的な求人情報だけではなく、どのような症例を診察できるのか、院内の設備や人員体制といった情報も欲しいものです。
ハードワークの解消や欲しいスキルが身につけられるかどうかなど、転職動機となっているポイントばかりに注目して、その他の情報収集がおろそかになってしまうことも考えられます。
そうなると、転職してから「思っていたのと違う」となってしまうかもしれません。

早く転職したいという焦り

とくにネガティブな理由で転職を希望していると、転職先探しを急ぎがちになるのではないでしょうか。
医師の転職は、情報収集から今の職場の退職まで、半年から1年ぐらいはかけるつもりで転職活動をするのがおすすめです。
じっくりと納得いくまで情報収集をして、面接を重ねることで、失敗のリスクを確実に減らせます。

転職を成功させるための3つのポイント

焦ってしまったり情報収集が足りないと失敗のリスクが高まります。
転職を成功させるために大切なのは、次の3つのポイントです。

  1. 転職エージェントに相談する
  2. ゆとりあるスケジュールで転職活動をする
  3. 専門医資格を取得してから転職する

タスクやチェックすべきポイントが多い医師の転職では、成功のためのポイントを押さえることが大切です。
それぞれを詳しくご紹介します。

転職エージェントに相談する

転職エージェントに相談することで、転職活動全般にわたって、さまざまなサポートが受けられます。
情報収集では、転職エージェントが持っている多くの医療機関の情報を提供してもらえますし、希望条件に合った求人が探しやすくなります。
また、転職理由や今後のキャリアプランについても相談でき、自分を客観的に見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
さらに、サポートを受けながら転職活動することで、現在の自分の市場価値も見えてくるため、今後のことを計画しやすくなるというメリットもあります。

ゆとりあるスケジュールで転職活動する

転職活動は、十分なスケジュール感を持って行いましょう。
情報収集にかける時間や、面接に必要な経歴書の準備など事務的な作業の時間を切り詰めてしまうと、転職失敗のリスクを増やすことにつながります。
転職の目処が立ったら、今の仕事を辞める準備もしなくてはいけません。
医師が退職をする場合、ほとんどの病院で半年以上前に意思を伝えることが良いとされています。
理由としては、業務の引き継ぎと、退職で生じる欠員補充の目処をつけるためです。
いきなり「来月辞めます」というのが通るケースはほとんどないと言えるでしょう。

専門医資格を取得してから転職する

体調不良や家族の介護など、差し迫った理由で転職するのでない限りは、専門医資格を取得してから転職するという方法がおすすめです。
医師の転職先はおおくありますが、採用基準として専門医資格の有無が関わってくることも少なくありません。
自分の市場価値を十分高めてからの転職であれば、より有利な転職先が見つけやすくなるのです。

まとめ(医師から他職種に転職するには?)

医師は他の職種と若干異なり、キャリア形成の段階で必要になることからも、転職をすることが珍しくない職業です。
転職の理由は人それぞれではありますが、転職を成功させるためには、十分な情報収集が欠かせません。
そのためには、スケジュールにゆとりを持つことが大切です。

自分一人で転職先探しをしていると、客観的な判断がしづらくなるため、転職エージェントに相談することをおすすめします。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」にはキャリアプランをまるごと相談することもできるため、より理想に近い転職先を探しやすくなるでしょう。
面接対策や今の職場の退職についても相談しながら進められるので、心強い存在です。
「転職したい」「転職したほうがいいのかな」と思ったら、まずは無料で気軽に登録し、悩みを共有することから始めてみてはいかがでしょうか。