がん治療やレントゲン検査などで活躍する放射線科の医師は、他の診療科とは少し異なる独特な知識を要します。
他科から放射線科への転科の検討や、放射線科医がより良い環境で働くために、転職を考えている場合、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

「放射線科への転職を考えているけど、他の科と比べるとどんな雰囲気なんだろう」
「転職先の候補として放射線科に興味があるけど、特別な資格も必要なのかな」
「放射線科内での転職を考えているけど、総合病院とクリニックでは忙しさは変わるかな」

この記事では、放射線科医の働き方や年収事情、メリットやデメリットをご紹介します。
放射線科医の転職で考えるべきことについても詳しく解説しますので参考にしてください。

放射線科の業務内容は? 必要な経験や資格はある?

放射線科医の仕事は、読影と治療の2つに分かれます。
どちらで働くかによって、必要な資格や業務内容が変わります。
まずは読影と治療とで、それぞれの働き方と、必要な資格について解説します。

放射線科医に必要な資格とは

放射線科医として働いていくには、放射線専門医と、放射線診断専門医または放射線治療専門医のどちらかを取得することが必要です。
医師国家試験合格後、初期臨床研修を終えてから、放射線科専門医を受験するための専攻医研修を3年かけて履修します。
専門医認定試験合格後は、放射線診断か放射線治療のどちらかを選択して2年間の研修を受け、専門医試験を突破することになります。
この間に実務でも経験を積んでいくことになりますが、医大卒業から最短でも5年の研修期間がかかるのです。

画像診断医(放射線診断専門医)としての業務とは

CTやMRIなどの画像診断が主な業務となる放射線診断専門医は、デスクワークに近い働き方となります。
検査画像から疾患の有無や大きさなどを見極め、治療方針の決定に影響を与えることから、正確な判断が必要です。

外科や内科などさまざまな診療科からの依頼をこなしていかなくてはならず、忙しく働くことにはなりますが、時間外労働やオンコール待機などはあまりありません。
このため、勤務時間は安定するため、ワークライフバランスを保った働き方がしやすい特徴があります。
ただし、収入は他の診療科に比べると低めの傾向です。
年収事情については後述しますが、収入アップのためには放射線診断専門医資格をとっておくことがおすすめです。

放射線治療医(放射線治療専門医)としての業務とは

放射線治療を専門とする医師の場合、代表的な仕事はがんの治療です。
がんの放射線治療はスケジュールを組んで行っていくため、それだけに従事するのであれば、残業などはあまりない場合もあります。
しかし勤務先の病院の対応範囲によっては、コイル塞栓や動脈塞栓術といった血管の治療に携わることもあります。
こうした治療はくも膜下出血などの緊急的なケースが多いため、オンコール待機や当直などの時間外勤務も多くなりがちです。

時間外勤務が発生する分、読影業務よりはやや年収は高めになることが多くなります。
医師によっては、緊急対応が可能な麻酔科や脳血管治療などの専門医資格を合わせて取ることで高収入を得ている人もいます。

放射線科の年収は?

ここからは、放射線科で働く医師の年収についてご紹介します。
医師の年収は診療科や勤め先の規模、経験年数などで大きく変わるため、平均値を参照しながら解説していきます。

放射線科の年収は他の科に比べると低めの傾向がある

労働政策研究・研修機構が発表している「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、放射線科医の平均年収は1,103.3万円でした。

データ上では放射線診断専門医と放射線治療専門医は一緒になっているものの、他の診療科と比較すると低めの傾向であることがわかります。

順位診療科目平均年収
1位脳神経外科1,480.3万円
2位産科・婦人科1,466.3万円
3位外科1,374.2万円
4位麻酔科1,335.2万円
5位整形外科1,289.9万円
6位呼吸器科・消化器科・循環器科1,267.2万円
7位内科1,247.4万円
8位精神科1,230.2万円
9位小児科1,220.5万円
10位救急科1,215.3万円
11位その他1,171.5万円
12位放射線科1,103.3万円
13位眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科1,078.7万円

(労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参照し作成)

放射線科の年収は年齢とともに上がりやすくなる

放射線科医の年収は、他の診療科同様に、年齢が上がるほど上昇していく傾向があります。
その背景には、専門医資格を取れるまでの年数がかかることと、画像読影の診断経験が重視されるという特徴があるのです。

画像読影は病状の進行状況や箇所の特定を求められるため、難しいスキルの1つとなっています。
豊富な経験がある医師ほど医療機関から重宝されるため、高条件の求人も出てくるようになり、高収入を実現できるようになります。
年齢が上がるほど、関連する多量域の資格を取得するなどで幅も広がるため、より収入をアップさせている人も少なくないようです。

放射線科で働くメリット

放射線科で働くことで、どのようなやりがいやメリットがあるのかを気にしたことはありませんか。
どの診療科でもそれぞれの特徴やメリットがあるように、放射線科にもメリットはしっかりとあります。
ここからは放射線科で働くことのメリットをご紹介します。

患者さんの回復が目に見えやすい

放射線科医が自分自身で担当患者を持つことは少ないと思います。
しかし、他の先生の担当患者であっても、患者さんの回復を間近にみられる存在であるのが放射線科医です。
放射線診断であれば、経過を診るための検査でレントゲン撮影や読影を行うことになります。
また、読影結果を担当医師と共有しながら治療の方針を決めたりする場面にも関わるのです。
放射線治療医なら、直接的に治療に立ち会うため、やはり患者さんの回復状況を実感しながら働くことができます。

より専門的で深い知識を得やすい

放射線科医は特定の臓器や疾病のことだけに特化するのではなく、全身の臓器や血管の知識を必要とします。
画像診断であれば体のどこに症状があってどれくらいの進行度なのかを見極めなくてはなりません。
診断に必要な疾病の知識も学ぶことになり、幅広い知識を得ることができます。

治療でも治療対象の部位だけでなくその周辺の臓器や血管への影響を鑑みながら行うため、実務を通してもこうした知識が身につきやすいのです。
手術にもかかわることで、麻酔医や外科医と連携もあり、関連知識も吸収できる環境で働くことになります。

ワークライフバランスを確保しやすい

放射線科医は他科の医師の依頼を受けて協業で診断や治療にあたることが多くなります。
忙しく働くことにはなるものの、基本的には予約制のような、時間の決まった働き方となることがほとんどです。
直接患者を担当するケースもあまりなく、当直やオンコールが少ないことも放射線科医の特徴です。
このことが、ワークライフバランスを確保しやすいというメリットにつながります。
時間外労働が少ないことで収入は他科の医師より低めになるかもしれませんが、その分時間にはゆとりを持つことができそうです。

放射線科で働くデメリット

放射線科医が他科の医師より大変だと感じる点もあります。
デメリットと捉えるかどうかは人それぞれですが、ここでは代表的なポイントをご紹介します。

他の科に比べ年収が低い

すでにご紹介していますが、放射線科医は時間外労働が少ない傾向があることから、その分収入水準も低くなりがちです。
しかし、資格取得や経験の積み重ねで評価を上げていくことで、収入をアップさせることもできます。
また、放射線治療医の道を進み、手術などに積極的に関わっていければ、外科医などと同様の忙しさになる分収入を上げることが可能です。

時間内に業務が詰め込まれやすい

放射線科の業務は他の診療科の依頼ベースで進んでいきます。
規模の大きい病院の場合などは、依頼数も増えることになり、業務時間内に多くの依頼が詰め込まれるケースも少なくありません。
時間外労働はなくとも、時間内は目一杯の業務量があり、とにかく忙しいという病院もよく見られます。

被爆のリスクがある

放射線科医には被曝のリスクがついて回ります。
医療従事者の中でもとくに放射線科医と放射線技師は被曝量が多く、IVR治療に関わる医師などは被曝リスクが高くなっています。
医師の安全を守るためのガイドラインに沿った対策を徹底し、常に被曝リスクを考慮しながら業務を進めていく必要があるのです。

放射線科へ転職する際に考えたいこと3選

放射線科医を目指したいという方や、現在放射線科で働いていて転職を考える方が気にしておきたいポイントはいくつかあります。
放射線科は診断と治療のどちらかを選んで働くことになりますが、両者はかなり働き方に違いがあるからです。
転職する際にとくに気をつけたいポイントを3つご紹介します。

どの業務内容が自分に合っているかを検討する

放射線科医の仕事内容は、病院の方針や規模によって変わってくる側面があります。
例えば、診療科の多い総合病院であれば、検査や治療の依頼も多く忙しくなりますし、救急受け入れ病院なら手術の機会も増えるでしょう。
入院設備のないクリニックではレントゲン検査の撮影だけが業務になるケースもあります。
がんセンターのような、放射線科医なしでは仕事が進まないという病院もありますので、どういった医療機関で働くかを選ぶことで働き方が大きく変わってきます。

自分の希望するライフスタイルを考える

放射線科に転職する場合、画像診断医として働くか放射線治療医として働くかを選ばなくてはなりません。
画像診断医はデスクワークが中心となり、時間外労働も少ないのが特徴です。
一方の放射線治療医は緊急対応も含めた治療がメインとなるため、オンコール対応や当直も発生します。
資格取得にも時間がかかるため、これから放射線科医を目指すのであれば、早めの転職と研修開始が望ましいでしょう。

医師専門の転職エージェントを活用する

医師の転職では、診療科の違いを問わず、情報収集が大きな鍵となります。
放射線科医が転職する場合は、病院の規模や診療科の種類、治療方針や力を入れている症例などをよく知っておくことが大切です。
調査と比較検討が十分でないと、転職してから「思っていたのと違う」という失敗につながるリスクも高くなってしまいます。

医師の転職では、プロの転職エージェントを利用するのがおすすめの方法です。
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まとめ(放射線科への転職)

放射線科医の仕事は、現代医療にとって欠くことのできない領域です。
病気の進行状態を把握するための各種検査や、放射線治療や血管に関する治療を専門に行い、担当医師と協業で患者の回復を見届けることができる、やりがいのある分野と言えます。
働き方によっては、ワークライフバランスも保ちやすいですが、その分収入は低めになる可能性もあります。

収入アップのために転職を考えるのであれば、放射線科医としてどういう働き方をしたいのかをよく考え、転職先選びを慎重に行うことが大切です。
医師の転職では、情報収集や面接対策だけでなく、現職の退職や引き継ぎにも労力を必要とします。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談することは、転職活動をスムーズに進めることにもつながり、転職にまつわる諸々の手続きもトータルサポートされるのでおすすめです。