女性外科医の数の少なさにはいくつかの理由があります。例えばジェンダーバイアスやライフステージの変化などが挙げられます。

  • なぜ女性の外科医は少ないのか詳しく知りたい
  • 女性が外科医になるのは難しいのか知りたい
  • 女性医師の将来性について知りたい

このように思っている方に向けて、本記事では女性の外科医が少ない理由や、女性医師の課題やキャリアの築き方について紹介します。

医師の男女比の割合は?

厚生労働省が発表した統計をもとに、医師全体の男女比と外科医の男女比の実態について解説します。

医師全体の男女比

厚生労働省が公表した令和2年の医師・歯科医師・薬剤師統計によると、医師の総数は339,623人で、そのうち男性は262,077人(77.2%)、女性は77,546人(22.8%)となっており、男性のほうが圧倒的に多いことがわかります。
前回の平成30年の統計と比べると、男性は6,625人(2.6%)、女性は5,788人(8.1%)と増加しており、女性のほうが増加率は高いものの、男女の差はほとんど縮まっていません。

施設や診療科によっても異なりますが、全体としては男性が優勢な状況が続いており、女性の割合は依然として低いことが浮き彫りになっています。
出典:『厚労省:医師・歯科医師・薬剤師統計

外科医の男女比

前述の資料によれば、外科は男性が92.2%、女性が7.8%という男女比となっており、他の診療科に比べても、女性医師の割合が極めて少ないことがわかります。
外科の中でも、心臓血管外科や気管食道外科などは、女性医師の割合が1%以下という科目もあります。
出典:『厚労省:医師・歯科医師・薬剤師統計

女性の医師が少ない3つの理由

女性医師が少ない背景として、考えられる主な理由を3つ解説します。

1.休職率・離職率が高いため

休職率とは医師が一時的に仕事をやめる割合のことで、離職率とは医師が完全に仕事を辞める割合のことです。
女性医師の70.0%が出産を理由に、38.3%が子育てを理由に休職や離職をしているというデータがあります。女性医師の休職率・離職率が高いことがうかがえます。

また女性医師の休職期間で最も多いのが「6ヶ月〜1年未満」ですが、「1年以上」休職した人の割合も多く、全体の40%近くにのぼります。
女性医師は出産や子育てというライフイベントによって、キャリアの継続が困難になる可能性が高いと言えます。
出典:『厚労省: 女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について

2.常勤への復職が難しいため

休職や離職をした後に、常勤として復職することは容易ではありません。常勤への復職が難しい理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 医学的な知識や技術のブランク:休職後、医学的知識のブランクや、業務に対する不安が常勤への復帰を難しくしています。復職前や復職後に研修や勉強会などに参加する必要がありますが、機会や時間が十分に確保できない場合があります。
  • 勤務時間や勤務形態の不適合:常勤として復職する場合、長時間労働や夜勤などの負担が大きいことがあります。厚生労働省の統計によれば、女性医師の復職後はパートタイムの割合が高く、常勤を選ぶ割合が少ないことが示されています。
  • 職場環境や人間関係の不適応:復職した医師に対する職場の理解やサポートが不十分な場合があります。例えば復職した医師に対して、仕事の負担や責任を減らすことや、急な欠勤や早退に対応することができない場合などです。

出典:『厚労省:女性医師に関する現状と国における支援策について

3.仕事と家事の両立が難しいため

女性医師は仕事と家事の両立に多くの困難を抱えています。
日本社会においては、女性が家事や育児を担うという考えが一部残っており、女性医師の仕事と家事の両立を妨げています。
仕事と家事の両立が難しい理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 家事や育児の負担が大きい:女性医師は、男性医師に比べて家事や育児にかける時間が長いというデータがあります。子どものいる女性医師の週の家事労働時間は35時間となっており、子どものいる男性医師の3時間と比較して顕著に多いようです。また51.4%が配偶者の家事・育児への協力は「不十分・どちらかといえば不十分」「まったく協力しない」と回答しており、家庭内の役割分担が不均衡であることがわかります。
  • 仕事の負担が大きい:女性医師は家事や育児の負担に加えて、仕事の負担も大きいです。医師の仕事は長時間労働や夜勤などの過酷な条件が多く、体力的にも精神的にも消耗するためです。
  • 保育所の不足や高額な費用:仕事と家事の両立には保育所などの外部のサポートが必要になる場合がありますが、保育所不足や高額な費用が問題となっています。保育所の費用は、地域や所得によって異なりますが、月額数万円にもなることがあります。

出典:『医師における性別役割分担 ―診療時間と家事労働時間の男女比較―
出典:『日本医師会:女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書

特に女性の外科医が少ない2つの理由

女性医師の中でも特に外科医が少ない事は、外科医特有の理由が影響しています。

1.24時間365日の対応が求められるから

外科医は当直やオンコールが頻繁にあり、急患の手術や救急患者の対応が不可欠です。このため結婚や子育てをしている女性にとっては、外科医の職業を選択しにくい状況が生まれています。

外科医は他の診療科に比べても労働時間が長く、緊急時には即座の対応が求められるため、他の科と比べて家庭との両立が特に難しいです。
家庭との両立を考えるという観点からは柔軟な働き方や労働時間の調整が必要なため、女性外科医の減少を招いているといえます。
従って女性が外科医として活躍するためには家族やパートナーの協力が必要です。共同で家事や育児を分担し、支え合えると仕事と家庭を両立させられるでしょう。
出典:『勤務医の就労実態と意識に関する調査

2.昔ながらの風潮があるから

現在、女性が医師として働くことに対する理解は進んでいますが、医療機関では責任のある立場に女性外科医を置くことが難しいという風潮が依然として残っています。
繰り返しになりますが、「外科医の勤務時間の長さ」と「緊急時には迅速な対応が必要」という特殊な労働環境が影響しています。身体的負担の大きい環境に耐えうる医師、万が一のときに対応できる医師でないと、外科医は務まらないという風潮があります。

多様性の時代とはいえ、このような風潮が依然として存在している医療機関では、女性が外科医の職に就くことを難しくしています。

女性外科医の増加を促すための施策

女性外科医の増加を促進するため、自治体や民間機関が展開している就労支援事業の内容を紹介します。

自治体による女性医師の就労支援事業

女性医師が仕事と家庭の両立をしやすくするため、各都道府県や市町村では幅広い就労支援事業を実施しています。
例えば、相談窓口の設置や復職に向けた勤務先の紹介、専門的な研修の提供、仕事と家庭の両立に関するアドバイスなどです。
また医療機関には研修経費の補助や勤務環境の改善に向けた支援を行い、女性医師の復職を促進しています。
国全体では、医療機関内の保育所整備を進め、院内保育所には補助金を提供しています。現在43.8%の病院が院内保育を実施しており、その割合は増加傾向です。
出典:『厚生省:女性医師離職防止・復職支援について

民間機関による女性医師の支援事業

民間機関による女性医師の支援事業は、女性医師の就労支援やキャリアアップ支援、ネットワーク構築支援など、さまざまな形で行われています。

例えば日本医師会が運営する「女性医師支援センター」は、都道府県医師会と連携して多彩な支援を提供しています。
具体的には講習会の開催や女性医師の相談窓口の設置、託児サービスの促進や補助、職業紹介事務所を通じた医師確保の支援などです。

また女性医師バンクを通じて、個々のライフステージに合わせた施設を提案し、医師としてのキャリア継続をサポートしています。
女性医師像の提示や就業環境の改善に関する講習会も実施され、女性医師が仕事を続けやすい環境づくりが進められています。
出典:『日本医師会女性医師支援センター

女性外科医がキャリアを築くための3つのポイント

女性外科医がキャリアを築く上での重要なポイントを3つ紹介します。

1.時短勤務制度が活用できるか確認する

女性外科医がキャリアを維持するには、時短勤務制度の活用がおすすめです。
時短勤務制度を利用すると、外科医の仕事と家庭のバランスをとりやすくなるでしょう。
ただし注意点として、時短勤務制度は「育児・介護休業法」によって義務化されていますが、入職1年未満の場合や子どもが3歳以上の場合は利用できないことがあります。

また、厚生労働省による法的な規定はないものの、正社員と同等の待遇で短い労働時間で働く短時間正社員制度を導入している医療機関も存在します。

女性外科医が時短制度を活用できるかどうかは、所属する医療機関の方針や制度に大きく左右されるため、入職前に確認が必要です。柔軟な働き方ができる環境であれば、キャリアと家庭の両立がしやすくなるでしょう。

2.当直・時間外勤務の免除が可能な職場を選ぶ

当直や時間外勤務は、仕事と家庭の両立を目指す女性外科医にとって負担が大きいため、免除が可能な職場を選ぶことが望ましいです。

時短勤務制度によって、当直・時間外勤務の免除も可能です。権利として認められているものの取りづらい雰囲気がある場合は、元々残業の少ない職場や当直のない職場を選びましょう。

3.託児施設がある職場を選ぶ

近年では規模の大きな医療機関が院内に託児所を設けたり、近隣の託児所と提携したりして、女性外科医が安心して働ける環境づくりに力を入れています。
託児施設があれば、子どもを預けて仕事に集中できますし、外科医としてのスキルを維持するために研修や勉強会に参加できます。

しかしながら、託児所があっても受け入れ年齢に制限があり預けることが難しい場合や、開所時間に間に合わない場合、待機児童の問題も見受けられるため、事前によく確認しましょう。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

医師の働き方に悩む女性にとって、外科医としての道は特に厳しいものがあります。
こうした状況で働き方に悩んだら、医師専門の転職エージェントがおすすめです。
その中でも「メッドアイ」は、無料相談や非公開求人の提供など、医師のニーズに特化したサポートを行っています。
少しでも転職を検討しているなら、まずは相談だけしてみるのも一つの方法です。

まとめ(女性の外科医が少ないのはなぜ?)

今回は、なぜ女性の外科医が少ないのかについて解説しました。
外科医としての道は女性にとって厳しく、休職率・離職率が高いこと、復職の難しさ、仕事と家事の両立の難しさなどがあります。
女性の医師が外科医として働くためには、柔軟な働き方を可能にする時短制度の活用、当直や時間外勤務の免除が可能な職場の選択、託児施設の利用などの方法が挙げられます。
また、女性医師の復職を支援するための施策や転職エージェントの利用も一つの選択肢です。働き方に悩むなら、医師転職エージェント「メッドアイ」の無料相談や非公開求人提供を活用してみましょう。転職を検討中なら、まずは相談だけでもしてみることをおすすめします。