医療法人を退職した際に、退職金がどれくらい受け取れるか気になっている方は多いのではないでしょうか。
医師は退職金をもらえないと言われることもあり、実際にどうなのか知りたい方も多いでしょう。

本記事では、医療法人の退職金の相場や、医師の退職金事情について解説します。医療法人や医師として働いている方は、ぜひ参考にしてください。

医療法人に勤める医師の退職金の相場とは

医療法人に勤めている医師の退職金の相場は、一般的には1,000万〜2,000万円が相場と言われています。
これはあくまでも目安であり、正確な金額を一概に出すことはできません。なぜなら、勤続年数や月額報酬、法人の規模などのさまざまな要素が重なって計算されるからです。
法人ごとの退職金規定によっても大きく異なるため、各法人に応じた計算をする必要があります。

また、医療法人で役員を務めている場合、役員退職金の計算方法は「最終報酬月額×従事年数(役員としての在任年数)×功績倍率」となります。
功績倍率の考え方も法人によって異なるため、気になる方は退職金規定を確認しましょう。

退職金にかかる税金は?

退職金には通常の給料と同じく、所得税がかかります。
しかし、通常の給料とは異なり、
退職所得控除が適用されるため、税負担は軽減されています。退職金所得控除額の計算方法は以下の通りです。

勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(最低額80万円)
勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

通常の所得税の計算に、上記の控除を適用させたものが退職金にかかる税金です。
例えば、退職金が1,000万円程度で30年近く働いている場合は、控除を適用すると課税退職額が0になるため、所得税は発生しません。このように、控除によって所得税が発生しないケースもあります。

医療法人の退職金の積立方法

医療法人が退職金を準備する方法は、内部留保、生命保険、中小企業退職金共済などがあります。

内部留保とは一般的に、利益から税金や役員報酬などの社外流出分を差し引き、法人内に蓄積されたお金のことを指します。会計上の勘定科目では「利益剰余金」に該当します。
しかし、医療法人は非営利法人なので、剰余金の配当・分配ができません。そこで、内部留保を経営者や従業員に還元するために、退職金に利用するという方法があります。
しかし退職金の額次第では、内部留保だけでは不足する可能性があるため注意が必要です。

生命保険の場合は、要件を満たすことで積立金を経費計上できる点がメリットです。
しかし、実際に支払った保険金額よりも、保険会社から支払われる金額のほうが少なくなる可能性がある点がデメリットです。

中小企業退職金共済は、事業主が毎月共済に掛金を支払い、従業員の退職金を積み立てていく制度です。
要件を満たしていれば医療法人でも加入できます。
国の助成が受けられるため、
掛け金よりも積立金額が高くなる点がメリットです。ただし生命保険とは違い、万一のことがあった場合の死亡退職金としての機能はありません。

医師は退職金がもらえないと言われる理由

医師は退職金がもらえないと言われることがあります。
先ほども述べたように、法人によって退職金規定が異なるからです。
医療法人で働いているすべての方が退職金がもらえるわけではありません。また、退職金は勤続年数に左右されますが、転職した場合は勤続年数がリセットされてしまいます。

医療法人だけでなく、医師全般に目を向けると、働き方によっても退職金がもらえないケースがあるとわかります。
例えば医局に勤めている医師の場合、人事異動による転勤であっても勤続年数がリセットされてしまうため、退職金でもらえる額が少なくなります。

また、企業の産業医として働いている場合は、契約社員や嘱託としての雇用が多く、退職金がもらえないことが多いです。
専属産業医で正社員として雇用されている場合は退職金がありますが、稀なケースです。

医師が退職金をもらえる3つのケース

医師が退職金をもらえるケースは以下の3つです。

  • 大規模病院や大学病院に長期間勤務した場合
  • 医局の紹介による病院に勤務した場合
  • 退職金制度のある職場で雇用契約を結んで勤務した場合

1.大規模病院や大学病院に長期間勤務した場合

大規模病院や大学病院は退職金制度が整っている可能性が高く、長期間勤務した場合、ある程度の額の退職金が見込めます。
具体的にどれくらい勤務すれば良いかは、勤務先の規定によって異なります。
また先述の通り、大学の医局の場合は転勤により勤続年数がリセットされる点に注意が必要です。

2.医局の紹介による病院に勤務した場合

医局の紹介による病院に勤務した場合も退職金がもらえる可能性が高いです。しかし、勤務先が変わると退職金はリセットされるため注意しましょう。

また退職金制度の導入を義務付ける法律は存在しないため、退職金がもらえる可能性が高いとはいえ、念のため勤務先の規定を確認したほうが無難です。

3.退職金制度のある職場で雇用契約を結んで勤務した場合

当然ですが、退職金制度のある職場で雇用契約を結んで勤務した場合は、規定に準じて退職金が支払われます。
退職金制度の有無や支給条件はほとんどの場合、
雇用契約書や就業規則等に記載されているため、契約時に内容をしっかり確認しましょう。

医師が退職金をもらえない4つのケース

医師が退職金をもらえないケースは以下の4つです。

  • 退職金制度のない職場の場合
  • 勤続年数が不足している場合
  • フリーランスや開業医の場合
  • 理事長の退職金が否認された場合

1.退職金制度のない職場の場合

職場に退職金制度がない場合は、退職金の支給はありません。勤務している最中に退職金規定が追加される可能性もありますが、入社時に規定がなければ、ほぼもらえないと考えておきましょう。
退職金を重視するのであれば、入社前に規定について確認しておく必要があります。

2.勤続年数が不足している場合

退職金規定があっても基準となる勤続年数が不足している場合は、退職金が受け取れない可能性があります。
退職金の算出方法に定額制を採用している場合は、勤続年数に応じて退職金が決まっているため、規定の年数を満たしていない場合はもらえません。

3.フリーランスや開業医の場合

複数の医院で非常勤として働くフリーランスの医師は、非正規雇用にあたるため退職金を受け取ることはできません。
開業医の場合は、医療法人化した場合のみ、形式的には勤務医に戻るため退職金を受け取ることが可能です。一般的にはフリーランスも開業医も退職金なしと考えておきましょう。

4.理事長で退職金が否認された場合

医療法人の理事長として働いている場合は、社員総会の議事録が適切に作成されていないと、税務当局に否認され、結果として退職金を受け取ることができなくなる可能性があります。
作成さえすれば良いというわけではなく、実際に社員総会が開催されているかどうかがポイントです。
開催日時や場所、出席した人物などを正確に記載する必要があります。

医師の退職金の算定方法は4種類

医師の退職金の策定方法は主に4種類あります。

  • 定額制度
  • 基本給連動型退職金制度
  • 別テーブル制度
  • ポイント制

1.定額制度

定額制度とは勤続年数と退職事由のみで退職金を決める制度です。
退職事由とは退職の理由のことであり、雇用側の都合か自己都合かで判断されます。
個人の病院への貢献度がポイントにならない点が、定額制度の特徴です。

2.基本給連動型退職金制度

退職時の基本給や在職年数、退職事由などから退職金の金額を決める制度です。
基本給が上がっている場合は、退職金が高額になることも珍しくありません。
在籍年数が長ければ長いほど、退職金の額は多くなります。

3.別テーブル制度

先ほどの基本給連動型退職金制度とは違い、別テーブル制度は給与とは連動しません。
勤務年数に応じて定められている基準額に、退職時の役割の等級に応じた係数を掛け合わせて、退職金の額を算出します。退職時にどれだけ重要なポジションにいるかが大切です。

4.ポイント制

在籍年数と等級、役職での滞留年数などをポイントに変換し、ポイント単価をかけて退職金を算出する方法です。ポイント単価は医療機関ごとに独自に定めます。
退職時の役職が重要になるため、出世のスピードによって退職金の額に差がつきます。勤務医のモチベーションが上がりやすい計算方法です。

医師が老後の資金に困らないようにやるべきこと

医師が老後の資金に困らないようにするためには、以下の実践がおすすめです。

  • 退職金のもらえる職場に早めに転職する
  • 収入源を増やす
  • 投資や資産運用をする

1.退職金のもらえる職場に早めに転職する

まずは退職金のもらえる職場への転職を検討しましょう。大きい病院であっても必ず退職金制度があるとは限りません。
転職前には退職金規定の有無について十分に確認する必要があります。
退職金は勤続年数が影響するため、なるべく早く動くことが大切です。

2.収入源を増やす

退職金だけをあてにするのではなく、副業やアルバイトなどで収入源を増やして、老後資金を蓄えておくのもおすすめです。
しかし、医師として働いている方は、余暇の時間が少ない場合もあるでしょう。
人によっては副業のための時間を捻出できない可能性もあるため、時間に余裕のある方にしかできない方法です。

3.投資や資産運用をする

投資やNISA、iDeCoなどで計画的に資産運用をするのもおすすめです。
ただし資産運用を行う場合は、必ずしも資産が増えるとは限らない点には注意しておきましょう。
また、毎月の積立金額を高額に設定してしまうと日々の生活が苦しくなる可能性もあります。最初のうちは、少額から始められて節税対策にもなるNISAやiDeCoがおすすめです。

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まとめ(医療法人の退職金の相場はどれくらい?)

医療法人で働いている医師が退職金を受け取れるかどうかは、勤務先の規定次第です。まずは自分が勤めている医療法人の就業規則等を確認し、退職金制度の有無や中身を確認しましょう。もし納得のいくような退職金制度が整っていなかった場合は、ぜひ転職も視野に入れてください。

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