「労働衛生コンサルタントの魅力は?」
「労働衛生コンサルタントと産業医の違いは?」

この記事では、労働衛生コンサルタントの資格取得を検討中の方に向けて、転職エージェント視点から、労働衛生コンサルタントについて詳しく解説します。
需要・メリット・産業医との比較や仕事内容についても紹介しているので、参考にしてください。

労働衛生コンサルタントとは?

労働衛生コンサルタントは、厚生労働大臣に認められた国家資格です。
主な仕事は事業所における労働環境の監査や改善策の指導です。
医師にとってメリットとなるのは、保健衛生区分に合格すれば産業医の資格同様に利用でき、更新の必要がないということです。

企業の健康経営が重視されている今、そのスペシャリストと言える労働衛生コンサルタントは需要を増しており、医師としてのキャリアを広げるには最適な資格です。
合格率は3割程度と取得の難しい資格ではありますが、産業医の上位資格として目指す価値のある資格と言えるでしょう。

労働衛生コンサルタントの需要と市場価値

ここでは労働衛生コンサルタントの需要と市場価値について解説します。

  • 労働衛生に対する関心が社会的に高まっている
  • 増える需要に対して供給が追い付いていないのが現状

労働衛生に対する関心が社会的に高まっている

近年、過剰な時間外労働による過労死などがニュースになったことに伴い、事業所で働く労働者の衛生管理対策がより一層強く求められるようになりました。

労働衛生コンサルタントは、劣悪な職場環境などが原因となって引き起こる労働者のメンタルヘルスの低下に対して事業所に改善を促す役目を果たします。
社会的問題が拡大しないためにも、高度な専門知識をもつ労働衛生コンサルタントの関心は今後ますます高まっていくことでしょう。

増える需要に対して供給が追い付いていない現状

事業所における労働衛生コンサルタントの需要は急増する一方で、全く供給が追い付いていないのが現状だといえます。
理由は筆記試験合格率が全体の約3割程度の難関な資格だからです。

資格保有者は増加しているもののまだまだ追い付いていないので事業所としても労働衛生コンサルタントを据えて事業を行うことが急務となっています。

労働衛生コンサルタントの役割と職務内容

ここでは、労働衛生コンサルタントの役割と職務内容を解説します。

  • 職場環境の監査や評価
  • 職場の安全管理指導やリスク評価
  • 法律や規制に基づいた助言や指導

職場環境の監査や評価

職場の労働環境を監査し、労働者の職場環境の安全性を確保するための評価を行います。
事業所内の作業環境を確認し、事故や健康被害が起こりうる前に改善案を提示してリスクを避けるよう指導をするのが、労働衛生コンサルタントの役割です。

これらの指導は定期的に行うことで職場環境の安全性が保たれ、事業所における事故を未然に防ぐ重要な仕事を担っています。

職場の安全管理指導やリスク評価

事業所内の安全対策だけでなく、現場や周辺の安全対策が適切かどうか判断し、労働災害を未然に防ぐ具体的な施策を事業所に提供します。
例えば、事業所内に換気装置や局所排気装置、粉じん防止装置などが適切に設置されているかなどの確認を行ないます。

また、近隣への騒音・分煙などの問題がないか確認をして、業務との因果関係がないか判断することも重要な任務です。
設備不良などの問題がないか、適切な設置基準を満たしているかを判断し、これまでの規則に変更・追加の必要性があれば提案を行います。

法律や規制に基づいた助言や指導

労働衛生コンサルタントとして、法律や規制に基づいた助言や指導も行います。
労働基準法では、原則として1日8時間、週に40時間を超えて労働させてはいけません。(引用:厚生労働省「労働時間・休日」)

今後ますます高齢化社会が進む日本の労働問題の動向も踏まえ、労働衛生の観点から、事業所に安全で働きやすい職場環境の助言や安全教育指導も務めとなります。
厚生労働省では、「誰もが安全に安心して働くことができる社会を実現する」と労働衛生コンサルタントの今後の活躍に期待しています。(出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト2.労働安全・衛生コンサルタントへの期待」より一部抜粋)

医師が労働衛生コンサルタントを取得するメリット

ここからは、労働衛生コンサルタントを取得するメリットを解説します。

  • 筆記試験が免除される
  • 産業医資格の更新が不要
  • 産業医よりも活躍の幅が広い
  • キャリアが安定する
  • 収入増加が見込める

筆記試験が免除される

労働衛生コンサルタントの資格試験は、一次試験(筆記)と二次試験(口述試験)があります。
医師で、かつ以下講習を修了すれば、保健衛生区分において全科目の筆記試験が免除されます。

  • 公益社団法人日本医師会が行う「産業医学講習会」
  • 公益社団法人日本歯科医師会が行う「産業医学講習会」
  • 学校法人産業医科大学が行う「産業医学基本講座」

一方、上記講習を修了していない医師は「労働衛生一般」「健康管理」2科目が免除の対象です。

産業医資格の更新が不要

労働衛生コンサルタントは永年資格であり、更新が不要です。そして、保健衛生区分に合格すれば産業医資格としても利用できます。
反対に「日本医師会認定産業医」であり続けるためには5年毎の更新が必要です。

厳密には認定産業医ではなくなるだけで産業医としての活動は可能なのですが、企業に提出する資料が期限切れのものとなってしまうため更新を行うのが一般的です。
この更新を煩わしく思い、労働衛生コンサルタントの資格を「永続的な産業医資格」として取得・活用している医師が多くいます。

産業医よりも活躍の幅が広い

労働衛生コンサルタントは、産業医よりも活躍の幅が広がりやすいのもメリットです。
労働衛生コンサルタントは、産業医が指導する健康管理についてはもちろん、事業場の安全衛生評価やシステムの構築にも携わります。
特に有害作業を行う事業所では専門的な知識が求められることが多く、労働衛生コンサルタントの取得が案件獲得へと繋がる可能性は高いでしょう。

キャリアが安定する

労働衛生コンサルタントの資格をもつ医師は今後も需要が高まっていくことが予想されるため、キャリアの安定が保障されます。
労働衛生コンサルタントは、事業所の安全性の評価及び指導・労働者の健康管理・事業所内外の安全管理の指導改善の提案など業務内容が多岐に渡ります。

その一方で資格保有者の数が未だ追いついておらず、今後より注目を集める資格となるため、キャリアを安定させたい方には特におすすめです。

収入増加が見込める

労働衛生コンサルタントが求められる業界では、報酬も増加する傾向にあります。
その他、事業所の規模によっては収入の増加が見込めるでしょう。

医師が労働衛生コンサルタントの資格を取得すると、産業医としての高い知識と経験を示す根拠となります。よって、より専門性が求められる職場での案件獲得がしやすくなり、報酬アップにもつながる可能性があります。

労働衛生コンサルタントと産業医を比較

ここでは、労働衛生コンサルタントと産業医の違いについて解説します。
労働衛生コンサルタントは、職場全体の安全性向上や法的遵守に関わる幅広い役割を担っているのに対し、産業医は従業員の健康管理が主な役割です。

 労働衛生コンサルタント産業医
役割職場全体の安全性向上や法的遵守従業員の健康管理
資格労働安全衛生法で規定される厚生労働省管轄の国家資格医師免許、かつ以下の要件のいずれかを満たすこと
1.日本医師会の産業医基礎研修の修了
2.産業医科大学の産業医学基礎講座の修了
3.労働衛生コンサルタント試験・保健衛生区分の合格4.大学で労働衛生科目を担当する/していた教授・准教授・講師の経験を有する者
キャリアパス「労働安全コンサルタント」も視野に入れることが望ましい「労働衛生コンサルタント」「日本産業衛生学会認定の専門医資格」を取得することが望ましい
収入面【事務所に所属した場合】
年収600万円~700万円
【独立開業した場合】
働き方や能力次第では年収1,000万円以上
【常勤産業医】
年収1,000万円~1,300万円
【非常勤産業医】
時給制:時給8,000円~15,000円
単価制:4万円~5万円(1回2時間程度勤務)
専門スキル労働災害の防止に関する専門的な知識や情報を事業場に提供すること従業員と面談により、身体面・メンタル面の問題に応じて休職・復職の措置を命じることが可能

労働衛生コンサルタントの資格を取得するには

ここでは、労働衛生コンサルタントの資格取得に関する基本情報を紹介します。

  • 受験資格
  • 試験の内容
  • 勉強方法

受験資格

医師免許取得者であれば受験可能。
ここでは、27ある受験資格者のうち、医師及び医療従事者に関する情報のみを抜粋して紹介します。

受験資格添付書類
医師法(昭和23年法律第201号)第9条の医師国家試験に合格した者、同法第36条第1項の規定により医師免許を受けた者とみなされた者及び同法第41条の規定により医師免許を受けることができる者・免許証の写し又は合格証の写し
歯科医師法(昭和23年法律第202号)第9条の歯科医師国家試験に合格した者、同法第33条第1項の規定により歯科医師免許を受けた者とみなされた者及び同法第42条の規定により歯科医師免許を受けることができる者・免許証の写し又は合格証の写し
薬剤師・免許証の写し
保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第2条の保健師として10年以上その業務に従事した者・免許証の写し
・経歴等証明書

その他の受験資格者は以下のサイトを参照してください。
(引用:公益財団法人安全衛生技術試験協会

試験の内容

試験は、筆記試験及び口述試験による。

試験科目方法試験時間
労働衛生一般択一式2時間
労働衛生関係法令択一式1時間
健康管理・労働衛生工学記述式
(試験の区分のうち、いずれか1科目を選択)
2時間

【科目免除】
以下の講習を修了した医師は保健衛生区分において、筆記試験が全科目免除となる。

  • 公益社団法人日本医師会が行う「産業医学講習会」
  • 公益社団法人日本歯科医師会が行う「産業医学講習会」
  • 学校法人産業医科大学が行う「産業医学基本講座」


それ以外の医師は、「労働衛生一般」及び「健康管理」が免除となる。

勉強方法

  1. 『労働衛生のしおり』(中央労働災害防止協会編)を読み、最新動向トピックや業務上疾病の発生状況の統計データなどを参照する。
  2. 筆記試験の過去問を解き、知識を整理しながら覚える。
  3. 一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会が主催する講習会・研修会に参加し、対策を固める。

まとめ(労働衛生コンサルタント徹底解説)

労働衛生コンサルタントは今後もますます需要が高まる職業です。
合格率は約3割と難関ですが、その分収入面には期待がもてるでしょう。

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