勤務医として働く場には、国公立・私立の大学病院、民間病院などさまざまな選択肢があります。その中でも大学病院は、専門的なスキルや研究環境が整っている反面、年収が比較的低い傾向にあるのが現実です。
この記事では、
- 私立大学病院で働く医師の年収はどのくらいか
- 他の医療機関と比べて年収はどう違うのか
- 収入を増やすための具体的な方法
といった疑問に、医師専門の転職エージェントの視点からお答えしていきます。
私立大学病院の年収は、国公立大学病院よりやや高めですが、民間病院には届かないのが実情です。
本記事では、私立大学病院の医師の平均年収や収入を上げるための具体策まで詳しく紹介します。
私立大学病院で働く医師の年収の実態
厚生労働省「第24回医療経済実態調査」によると、私立大学病院を含む「その他(学校法人等)」の医師の平均年収は約1,460万円です。
国公立大学病院よりやや高めですが、民間病院(医療法人)に比べるとやや低い水準となっています。
ここでは、経営母体別の平均年収について、厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」データを基に紹介します。
経営母体 | 病院長の平均年収 | 医師の平均年収 |
---|---|---|
国立 | 1,908万円 | 1,410万円 |
公立 | 2,088万円 | 1,455万円 |
公的 | 2,242万円 | 1,451万円 |
社会保険関係法人 | 2,059万円 | 1,282万円 |
医療法人(民間) | 3,021万円 | 1,498万円 |
その他(学校法人等) | 2,368万円 | 1,463万円 |
※出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」より
※「その他」には、私立大学病院を運営する学校法人が含まれます。
この表から分かる通り、医療法人(民間病院)に勤める医師の平均年収は約1,498万円と最も高い水準にあります。 あわせて読みたい
一方で、私立大学病院が含まれる「その他」では、約1,463万円と、若干低めの水準です。
大学病院の場合、教育・研究機関としての性格が強く、臨床だけに集中できない勤務環境も影響していると考えられます。
また、病院長の年収においても、民間医療法人で約3,000万円超と非常に高額であるのに対し、
「その他(学校法人)」では2,368万円程度にとどまっており、運営母体によって大きな差が出ています。
給与と賞与のバランスに見る各医療機関の特徴
医師の年収は「月給」と「賞与(ボーナス)」で構成されますが、医療機関によってその割合には特徴があります。
以下は、厚生労働省「第24回 医療経済実態調査」から抜粋した、医師の給与・賞与・年収の平均値です。
経営母体 | 医師の年間給与 | 賞与 | 合計年収 |
---|---|---|---|
国立 | 1,148万円 | 262万円 | 1,410万円 |
公立 | 1,241万円 | 214万円 | 1,455万円 |
公的 | 1,248万円 | 202万円 | 1,451万円 |
社会保険関係法人 | 1,024万円 | 258万円 | 1,282万円 |
医療法人(民間) | 1,449万円 | 49万円 | 1,498万円 |
その他(学校法人等) | 1,340万円 | 123万円 | 1,463万円 |
※出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」より
表から読み取れるのは、私立大学病院が含まれる「その他」では、賞与の比率が医療法人よりは高めである一方、国立や社会保険系の病院と比べると控えめな点です。
例えば、民間の医療法人では基本給が高く、賞与の割合は年収全体の3%程度とわずか。一方で国立病院では賞与の割合が18%前後と、年収の中でも大きな割合を占めています。
私立大学病院の給与体系はその中間にあり、賞与に頼りすぎず、月々の給与も飛び抜けて高いわけではないという、比較的バランスの取れた構成といえるでしょう。 あわせて読みたい
転職やキャリアを検討する際には、単に年収の「金額」だけでなく、どのように支給されるかという点もチェックしておくと、より現実的な判断がしやすくなります。
診療科別の年収差も大きい
ここまでは、全てを平均した状態で年収を見てきました。
収入額は医療機関や地域のほかに、診療科によっても差があります。
年収アップを狙う場合、どの診療科を選ぶかも重要となります。
主な診療科別の平均年収を以下にまとめてみました。
診療科 | 平均年収 |
---|---|
脳神経外科 | 1,480万円 |
産科・産婦人科 | 1,466万円 |
外科 | 1,374万円 |
麻酔科 | 1,355万円 |
整形外科 | 1,290万円 |
呼吸器・消化器・循環器科 | 1,267万円 |
内科 | 1,247万円 |
精神科 | 1,230万円 |
小児科 | 1,220万円 |
救急科 | 1,215万円 |
放射線科 | 1,103万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科 | 1,079万円 |
*参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
平均年収1位は脳神経外科で1,480万円、一方で一番低いのは眼科などで1,079万円と、その差は400万円近くに及びます。
最も平均年収が高い脳神経外科は、脳内出血など緊急を要する場合の手術にも対応しなくてはなりません。時間外の対応が増えた分、手当の収入が増えているという構造があります。
同じように、産科も急な分娩などでオンコールの対応が必要となってくるため、時間外手当が多くなってきます。
また、これらの診療科は、少しのミスが患者に多大な影響を与えてしまうリスクがあることも特徴です。
単純に考えれば、年収が高い診療科ほど、仕事の負担やリスクも高くなるといえるでしょう。
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更なる収入アップを狙う3つの方法
私立大学病院に勤める医師が収入アップを狙うには、いくつか方法があります。
代表的なものが、下記3つです。
- アルバイトをする
- 副業を持つ
- 転職する
ここからは、収入アップのための方法について詳しくご紹介していきます。
①アルバイト
アルバイトは、医師にとってはポピュラーな収入アップ方法です。
主なアルバイトには、当直や健康診断といったものがあります。
また、休日を利用して非常勤やスポット勤務をする医師も多くいますし、麻酔医や透析医といった特殊な診療科でのアルバイトもあります。
さらに昨今はコロナワクチン接種のアルバイトなどもあり、医師のアルバイト求人は豊富にある状態です。
アルバイトをすることで見込める収入アップは、職種によっても変わってきます。
例えば当直アルバイトの相場は、1回あたり3〜10万円程度と言われています。
健康診断やワクチン接種といったアルバイトは、時給換算で1万円程度のところが多く、勤務時間は4〜6時間程度が一般的です。
仮に1回のアルバイトで6〜7万円稼ぐとして、それを月に4回行うと年収ベースでは228万円〜336万円の収入増となる計算です。
アルバイトをする際に注意しておきたいのは、常勤先の就業規則です。
医師が副業を持つことは、法の下では自由ですが、勤務先の規則によっては禁止されていることもあります。
特に大学病院の場合は、禁止しているケースが多いと言われているため注意が必要です。
②副業
アルバイトと似ていますが、もう一つ「副業を持つ」という方法を紹介します。
例えば、下記のような仕事があります。
- 医療関係の記事執筆や監修
- コンサルタントとして医療アドバイスを行う
元々持っている知見をフルに活用できますし、治療行為とは違いリスクも少なく、仕事によっては隙間時間を有効に活用することも可能です。
アルバイトはどうしても拘束時間が発生しますが、上記のような副業はクラウドソーシングなどで自分で受注すれば時間の自由が利くケースもあります。
また、報酬額も高額なものが多いです。
中には非常勤やスポットアルバイトより割の良いものもあるようです。
「当直バイトをするのは体力的に辛い」などと思う方は、こうした副業を探してみるのもおすすめできます。
ただし、継続した収入になる保証がないというデメリットもあります。 あわせて読みたい
特にクラウドソーシングなどで受注する仕事は、1回限りのものも少なくありません。
案件を求めて常に探す手間も考慮しておくと良いでしょう。
③転職
より良い待遇を求めて転職するというのも、収入アップが叶う方法の一つです。
そもそも医師は、大学卒業後に入職した病院にずっと在籍する方が少ないといえるのではないでしょうか。
それくらい医師にとって転職とはポピュラーなものです。
特に臨床現場での活動を選択した医師であれば、いろいろな病院を渡り歩くことは、そのまま臨床経験の蓄積につながります。
しかしながら、医師の転職には多大な労力が必要なことも事実です。
理由としては、転職先を探す情報収集が、他の業種に比べて大変なことが挙げられます。
また、現在の勤務先を退職するにも時間や手間がかかるため、今の仕事をしながら個人で転職活動を行うのは多大な労力が必要です。
また、医師不足を理由に、今の職場を辞めづらいといったことも考えられます。
そこで有効活用していただきたいのが転職エージェントです。
登録は無料で、専任のキャリアアドバイザーが医師一人一人の希望や適性、キャリアプランに寄り添ったアドバイスや提案をしてくれます。
医師の転職に特化したエージェントも数多くあり、その情報量は目を見張るものがあります。
自分一人で探すよりもはるかに多くの選択肢の中から、理想の転職先を見つけることが可能になります。
今後のキャリアを考えるうえでのポイント
私立大学病院は、年収面で民間病院には及ばないものの、最先端の医療技術や専門性を高められる環境が整っている点が大きな魅力です。
研究や教育の機会にも恵まれており、将来的に大学の教職や専門医資格の取得を目指す医師にとっては、貴重なキャリアステップになるでしょう。
一方で、大学病院での業務は臨床に加えて学会活動や論文執筆なども求められることが多く、ワークライフバランスに課題を感じる医師も少なくありません。
そのため、どのような働き方やライフスタイルを理想とするのかを明確にし、それに合ったキャリアパスを検討することが重要です。
「専門性の追求」か「収入重視」か、あるいは「家庭との両立」か──何を優先するかによって、選ぶべき職場も変わってきます。
特に30代以降は、将来のキャリアや年収に大きく影響する分岐点になります。定期的に自身のキャリアを振り返ることをおすすめします。
まとめ(私立大学病院の医師の年収)
私立大学病院の医師の平均年収は、国公立大学病院よりやや高く、民間病院よりはやや低い約1,460万円前後です。
給与と賞与のバランスは比較的均衡しており、診療科や役職によっても大きく差があります。
収入を上げたい場合は、アルバイトや副業によって副収入を得る方法のほか、民間病院など待遇の良い職場への転職も選択肢となります。
転職を検討する際は、情報収集や手続きが大変なため、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用するのが現実的です。
将来を見据えたキャリアの相談ができ、より自分に合った働き方を見つける手助けをしてくれるでしょう。