勤務医が働く病院は、国公立の病院や大学病院、民間の病院などさまざまです。
その中でも、大学病院の年収は低めの傾向があります。
しかし、高いスキルや医療的な見地を養うために、研修先として大学病院を選ぶ医師も多くいるでしょう。

この記事では、
「私立大学病院で働く医師の年収はいくらくらい?」
「私立大学病院の年収は他の病院と比べるとどうなの?」
「私立大学病院勤めだけど、年収をアップするためにはどうしたらいい?」
といった、私立大学病院に勤める医師の年収の悩みについて、転職エージェントの視点から解説していきます。

結果から言えば、私立大学病院は民間の病院に比べると年収は低い傾向にあります。
また、診療科によっても変わるため、ランキング形式で紹介するので参考にしてください。

医師の収入アップ方法として、ポピュラーな下記3つについても詳しく解説します。

  • アルバイト
  • 副業
  • 転職

私立大学病院で働く医師の年収とは?

初めに、私立大学病院で働く医師の年収がどのくらいか見ていきましょう。
平均年収は、おおよそ1,000万円程度と言われています。

当然ながら、勤務先での役職や地域、診療科などによって差は出てきます。
病院の経営状態によっても年収は変わってきますので、あくまで参考程度に考えてください。

既に私立大学病院で勤務されている医師は、自身の年収と比較してみるといいでしょう。
次章からは、役職別の平均年収を少し詳しく見ていきます。

【役職別】年収平均

人事院の「職種別従業員数、平均年齢及び平均支給額資料2015」のデータを基にRAY Cruise Inc.が作成した、民間病院での役職別平均年収をまとめた表です。

 調査実人員調査人員(復元後)平均年齢平均年収
病院長70人591人61.6歳2,085万円
副院長221人1,892人57.7歳1,821万円
医科長673人7,856人51.4歳1,515万円
医師1,324人20,170人42.3歳1,168万円

医師転職コンシェルジュ「医師の平均給与・平均年収」より引用

民間病院での医師全体の平均年収は1,168万円です。
国公立の大学病院では、教授や学部長レベル(表では医科長・副院長に相当)になると平均年収が1,000万を超えてきます。
しかし、講師や准教授(表では医師・医科長に相当)の場合は500万円〜800万円程度で、民間病院と比べるとかなり低めです。

さらに20代の研修医ですと年収は3〜400万円程度であることも多く、一般的な職業の大卒サラリーマンとほぼ同レベルというケースも少なくありません。
私立大学病院は、国公立よりは収入が若干多い傾向はあるものの、100万円〜200万円程度割り増しぐらいです。
民間病院の医師と比べるとどうしても見劣りが感じられます。

【役職別】年収の内訳

先ほどと同様に「平均年齢及び平均支給額資料2015」を基に分析された年収内訳です。

 月額額面(A)うち時間外手当(B)(A)-(B)うち通勤手当
病院長174万円5.7万円168万円2.1万円
副院長152万円7.6万円144万円1.4万円
医科長126万円12.5万円114万円2.5万円
医師97万円11.4万円86万円1.9万円

医師転職コンシェルジュ「医師の平均給与・平均年収」より引用

ここで注目したいのが、時間外手当の額です。
現場で働く医師や医科長クラスの給与では、時間外手当が多くなっているのが分かります。

当直やオンコールといった、一般診療時間外の業務が1割近い収入を占めている状態です。
今後は2024問題とも言われている働き方改革によって、この数字に変化が出てくる可能性はありえるでしょう。
一方で大学病院の場合、役職がついてくるとこれらの手当はほとんどなくなります。

他の病院との比較

私立大学病院とその他の病院との年収はどの程度違うのでしょうか?
病院別の平均年収を比較してみました。

医療機関平均年収
医療法人(民間病院)1,640万円
公立病院1,513万円
社会保険病院1,469万円
公的病院1,433万円
国立病院1,431万円
その他医療機関1,419万円

*参照:医師転職コンシェルジュ「医師の平均給与・平均年収」

医療業界以外の目線で見れば、企業の規模が大きいほど平均年収も高いと考えます。
しかしながら、医療業界では反比例的な傾向があり、医院やクリニックといった個人開業の医療機関の方が平均年収が高くなりがちです。

私立大学病院の場合、国公立と比べると若干高いものの、准教授レベルでもようやく8〜900万円程度の平均年収です。
民間病院と比べるとかなり低いことが分かります。

一方で大学病院には、収入面よりも研究や研鑽に有利な環境を求める医師にはメリットがあります。

たとえ医局での収入の少なさに不満があっても、医師としてやりたいことができる環境があるかを冷静に考えることも重要と言えるでしょう。

医師転職お役立ちnavi 公式 Instagram 医師キャリアに関する有益な情報を発信中!

診療科別の年収ランキング

ここまでは、全てを平均した状態で年収を見てきました。
収入額は医療機関や地域のほかに、診療科によっても差があります。

年収アップを狙う場合、どの診療科を選ぶかも重要となります。
主な診療科別の平均年収を以下にまとめてみました。

診療科平均年収
脳神経外科1,480万円
産科・産婦人科1,466万円
外科1,374万円
麻酔科1,355万円
整形外科1,290万円
呼吸器・消化器・循環器科1,267万円
内科1,247万円
精神科1,230万円
小児科1,220万円
救急科1,215万円
放射線科1,103万円
眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科1,079万円

*参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

平均年収1位は脳神経外科で1,480万円、一方で一番低いのは眼科などで1,079万円と、その差は400万円近くに及びます。
最も平均年収が高い脳神経外科は、脳内出血など緊急を要する場合の手術にも対応しなくてはなりません。時間外の対応が増えた分、手当の収入が増えているという構造があります。

同じように、産科も急な分娩などでオンコールの対応が必要となってくるため、時間外手当が多くなってきます。
また、これらの診療科は、少しのミスが患者に多大な影響を与えてしまうリスクがあることも特徴です。

単純に考えれば、年収が高い診療科ほど、仕事の負担やリスクも高くなるといえるでしょう。

更なる収入アップを狙う3つの方法

私立大学病院に勤める医師が収入アップを狙うには、いくつか方法があります。

代表的なものが、下記3つです。

  1. アルバイトをする
  2. 副業を持つ
  3. 転職する

ここからは、収入アップのための方法について詳しくご紹介していきます。

①アルバイト

アルバイトは、医師にとってはポピュラーな収入アップ方法です。
主なアルバイトには、当直や健康診断といったものがあります。
また、休日を利用して非常勤やスポット勤務をする医師も多くいますし、麻酔医や透析医といった特殊な診療科でのアルバイトもあります。
さらに昨今はコロナワクチン接種のアルバイトなどもあり、医師のアルバイト求人は豊富にある状態です。

アルバイトをすることで見込める収入アップは、職種によっても変わってきます。
例えば当直アルバイトの相場は、1回あたり3〜10万円程度と言われています。
健康診断やワクチン接種といったアルバイトは、時給換算で1万円程度のところが多く、勤務時間は4〜6時間程度が一般的です。

仮に1回のアルバイトで6〜7万円稼ぐとして、それを月に4回行うと年収ベースでは228万円〜336万円の収入増となる計算です。

アルバイトをする際に注意しておきたいのは、常勤先の就業規則です。
医師が副業を持つことは、法の下では自由ですが、勤務先の規則によっては禁止されていることもあります。
特に大学病院の場合は、禁止しているケースが多いと言われているため注意が必要です。

②副業

アルバイトと似ていますが、もう一つ「副業を持つ」という方法を紹介します。

例えば、下記のような仕事があります。

  • 医療関係の記事執筆や監修
  • コンサルタントとして医療アドバイスを行う

元々持っている知見をフルに活用できますし、治療行為とは違いリスクも少なく、仕事によっては隙間時間を有効に活用することも可能です。
アルバイトはどうしても拘束時間が発生しますが、上記のような副業はクラウドソーシングなどで自分で受注すれば時間の自由が利くケースもあります。

また、報酬額も高額なものが多いです。
中には非常勤やスポットアルバイトより割の良いものもあるようです。
「当直バイトをするのは体力的に辛い」などと思う方は、こうした副業を探してみるのもおすすめできます。

ただし、継続した収入になる保証がないというデメリットもあります。
特にクラウドソーシングなどで受注する仕事は、1回限りのものも少なくありません。
案件を求めて常に探す手間も考慮しておくと良いでしょう。

③転職

より良い待遇を求めて転職するというのも、収入アップが叶う方法の一つです。
そもそも医師は、大学卒業後に入職した病院にずっと在籍する方が少ないといえるのではないでしょうか。
それくらい医師にとって転職とはポピュラーなものです。
特に臨床現場での活動を選択した医師であれば、いろいろな病院を渡り歩くことは、そのまま臨床経験の蓄積につながります。

しかしながら、医師の転職には多大な労力が必要なことも事実です。
理由としては、転職先を探す情報収集が、他の業種に比べて大変なことが挙げられます。
また、現在の勤務先を退職するにも時間や手間がかかるため、今の仕事をしながら個人で転職活動を行うのは多大な労力が必要です。
また、医師不足を理由に、今の職場を辞めづらいといったことも考えられます。

そこで有効活用していただきたいのが転職エージェントです。
登録は無料で、専任のキャリアアドバイザーが医師一人一人の希望や適性、キャリアプランに寄り添ったアドバイスや提案をしてくれます。

医師の転職に特化したエージェントも数多くあり、その情報量は目を見張るものがあります。
自分一人で探すよりもはるかに多くの選択肢の中から、理想の転職先を見つけることが可能になります。



まとめ(私立大学病院の医師の年収)

この記事では、私立大学病院の医師の年収について見てきました。
私立大学病院の年収は、国公立の大学病院よりは多いが、民間病院と比べると少ないことが分かったかと思います。

しかし、大学病院には小さなクリニックにはない設備や環境があるのも事実で、専門的なスキルの取得にも有利な面があります。
医師としてどんな道を歩いていきたいのか、しっかりとしたキャリアプランを早めに立てることで、今の収入が妥当なのかの判断もつきやすいのではないでしょうか。

その上で、収入アップを望むのであれば、アルバイトや副業で副収入を得るか、民間病院など収入の良いところへ転職する方法があります。

医師の転職には労力がかかりますので、転職エージェントに相談してみるといいでしょう。転職エージェントにはキャリアプランや収入など、医師の悩みに向き合ってきた実績があります。
医師一人一人の悩みに寄り添ってくれるので、将来的なキャリアも見据えたサポートが期待できるでしょう。