医師としてキャリアを積んでいく中で、「転科したい」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか?
転科は医師の4割程度が考えたことがあるというデータもあり、珍しくはありません。
とは言っても、転科すると今後のキャリアに大きく影響するため、慎重にならざるを得ないでしょう。
この記事では、
「どのくらいの医師が転科を考えているの?」
「転科するとなったら、どういう方法でするのがいい?」
「転科のメリットとデメリットをちゃんと知りたい」
といった、転科に関する悩みや不安を持つ医師に、転職エージェントの視点で答えます。
転科する方法は、次の3つがあります。
- 同じ院内で異動する
- 転職する
- 開業する
転科のメリットとデメリットも整理したので、ぜひ参考にしてください。
「転科したい」と思ったことのある医師の割合
冒頭で「転科したい」と考える医師が4割程度いるとご紹介しました。
株式会社メディウェルが医師1,683名に対して行ったアンケートで、以下のような結果が出ています。
「過去・現在を含め転科したいと思ったことはない」が59%と最も多く、「過去に転科したいと思ったことがある」が31%、「現在転科したいと思っている」は10%という結果でした。現在・過去を含めて「転科したい」と思ったことのある医師は全体の4割程度となっています。
*引用:医師転職ドットコム「医師は「転科」についてどう思っている?人気の転科先は?」
医師はキャリアプランを描くことが重要です。
しかし、研修を進めていき、臨床をこなしていく中で、やりたい事とは違うと考えることも出てくるでしょう。
そうしたキャリア形成中に生まれてくる悩みや、今の職場に対する不満などから転科を考えるのは、決して珍しいことではないのです。
ちなみに、同アンケートで転科を考える医師が多かったのは以下の診療科でした。
- 救急救命科
- 健診、人間ドック
- 放射線科
- リハビリテーション科
一方で精神科や循環器内科など、転科を考える医師が少ない診療科も見受けられます。 あわせて読みたい
医師が転科する3つの方法
転科を決意した場合、どのような方法で転科するのが理想的でしょうか?
転科の方法としては、以下の3つがあります。
- 同じ院内で異動
- 転職
- 開業
ここからは、それぞれの選択肢での転科の方法や、向き不向きなどを見ていきましょう。
(1) 同じ院内で異動により転科する
1つ目は、現在勤めている病院内で異動する方法です。
やり方としては一番手間もなくスムーズだと言えます。
ただし、病院の規模や人員数によって望みが叶わない可能性もあるので、注意が必要です。
同じ院内で転科しやすい例としては、主に2つのパターンがあります。
- 転科しても専門臓器が変わらないケース
- 現状でも補助業務などを担当している診療科への異動
前者は、消化器外科から消化器内科へ転科すると言ったケースが当てはまります。 あわせて読みたい
後者は、転科したい診療科の手術補助などの業務を普段から行なっているといった場合です。
(2) 別の病院へ転職して転科する
2つ目は、今の病院を退職し、転職で新たな診療科を目指す方法です。
現在と異なる臓器を扱う場合や、現在の病院にない診療科を目指す場合は、この方法が主流となります。
転科する場合専門分野が変わり、同じ院内の異動もハードルが高くなるので、転職してしまった方が早いことが多いのです。
また当然ながら、転科したい診療科が今いる病院になければ、転職するしか道はありません。
転科することで、新たに学ぶことが数多くあります。
転職で転科をすることで、環境を一新させ、新たな気持ちで取り組むことが成功への近道となるでしょう。
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(3) 開業して転科する
そして3つ目の方法が「開業」です。
勤務医と異なり、自分の方針で治療を展開できるので、転科としては一番スムーズでやりやすいと言えるでしょう。
開業時に転科する場合、現在の専門からあまり離れていないケースが多いのが特徴です。
たとえば、次のようなケースです。
元の科目 | 転科先の科目 |
---|---|
麻酔科 | 整形外科医 |
耳鼻咽喉科 | 内科 |
外科 | 皮膚科 |
しかしながら、開業には当然のことですが、莫大な資金と準備が必要です。 あわせて読みたい あわせて読みたい
「転科したいから開業する」のではなく、「開業に向けて必要な転科をする」傾向があるのが実情と言えるでしょう。
医師が転科する3つのメリット
医師が転科することで得られる最大のメリットは「望みが叶う」「不満が解消する」といったことです。
もう少し具体的に分けてみると、下記の3つのメリットがあります。
- 働き方を変えられる
- 収入アップを狙える
- よりやりがいを見出せる
まずはメリットを詳しく見ていきましょう。
①働き方を変えられる
特に外科系の医師に多く聞かれる転科の動機が、「今の仕事が体力的にきつい」というものです。
当直や緊急対応などが多く、体力的にきついという場合、今後歳を重ねていくとますます辛さは増してゆくでしょう。
女性医師で出産や育児のために、勤務時間の調整や休暇取得がしやすい働き方を目指して転科したり、常勤から非常勤へ働き方を変えることはよくあります。
転職や転科をすることには、これらの激務や体力的な負担が減らせると言うメリットがあります。
QOL(生活の質)向上を目的とした転科は珍しいことではありません。
転科を選択するなら、転科後に新たな学びを積み重ねるという労力が新たに必要です。
今がきついために転科を希望するのであれば、体力があって学習する余力もあるうちがチャンスと言えます。
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②将来的な収入アップを狙える
将来的に開業を計画している場合や、家族のために収入の底上げを目指して転科を考えるケースもあるでしょう。
医師の収入は勤め先の医療機関や地域によって変わってきますが、診療科によっても大きく変化します。
今いる診療科より大幅な収入アップを狙えるのも転科の大きなメリットです。
収入アップを目指す医師が選ぶ傾向のある診療科は、美容皮膚科や透析医療などが挙げられます。
現在の診療科に近いもので、収入アップが見込めそうな診療科を選ぶと、転科してもスムーズに経験を積み重ねられるでしょう。
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③よりやりがいを見出せる
当初のキャリアプランが自分に合っていないと感じて、転科を選択する医師もいるでしょう。
また、勤務先で新しい情報に触れて発見があり、新たにやりたいことが見つかるケースもあります。
自分の希望や技術の向上が、叶っていく喜びを得られることも転科のメリットです。
やりがいを求める医師の転科先としては、先進医療の分野などがあります。
自分が興味を持ち、やりがいを見出した分野に飛び込むことで、新鮮な気持ちのまま医療と向き合うことができます。 あわせて読みたい
医師として長く活躍するための大きな原動力となるでしょう。
医師が転科するデメリット
医師の転科は、前向きになれるメリットがあることをご紹介しました。
しかし一方で、リスクやデメリットがあることも忘れてはいけません。
転職や転科には労力が必要ですし、失敗のリスクも伴います。
決断する前に、デメリットにもしっかりと目を向けて、慎重な判断が必要です。
ここからは、転科に伴うデメリットをご紹介します。
①キャリアや実績を失う
転科することによる最大のデメリットは、今まで積み上げてきたキャリアや実績を失うことです。 あわせて読みたい
属性の近い診療科や、現職と同じ臓器を扱う診療科であれば、このデメリットを多少は減らすことができます。
しかし新たな診療科では、たとえ同じ歳でも、その道でずっとやってきている医師にスキルや経験で差をつけられてのスタートとなります。
転科には、そうしたストレスを乗り越えていける強さが必要となってくるのです。
②学び直す必要がある
もう1つのデメリットは、転科してもすぐに活躍できるわけではないということです。
当然のことながら、新たな診療科では一から学び直しが必要になります。
医師になるまでの大学時代や研修医時代のような気持ちで、再びスタートラインに立たなければならないのです。
もちろん、医師としての基礎知識は培ってきていますので、ゼロからではないのは確かでしょう。しかし、もう一度研修医からやり直すぐらいの覚悟は持っておくべきだと言えます。 あわせて読みたい
逆に言えば、この壁を乗り越えることで、転科前の診療科での経験も活かすことも可能となるのです。
転科に適切な年齢とは?
このように、転科にはメリットもデメリットも存在します。
決断には慎重な検討が必要なのは言うまでもありません。
それでは、実際に転科するならどのタイミングがベストでしょうか?
結論は「早いほど良い」と言えます。
転科するということは、新たなキャリアを築き始めるということです。
早めに転科を決断し実行することで、より多くの患者や症例に向き合うこともできるのです。
また、医師が転科を考える要素の1つに「キャリアプラン上でのタイミング」もあります。
30代などの若いうちに転科を考えた場合は、ここまで述べてきた通り早めに決断した方が有利です。
一方、40代〜50代ではキャリアプラン通りに進んでいるかを考えながら、必要に応じて転科を選択するケースがあります。
セカンドキャリアまで見据えて慎重に検討することが望ましい年代です。
また、開業を見据えて準備のため転科に踏み切る医師もこの年代に多く見られます。
この場合は開業時期から逆算し、タイミングを合わせて転科することになります。
50代〜60代の医師が生涯現役を貫くために、負担の少ない診療科へ転身するというタイミングもあります。 あわせて読みたい
このケースも、キャリアプランを事前にしっかり考えて、転科するなら早めに準備しておいた方がいいでしょう。
転科するべきか悩んでいるならプロに相談するのがおすすめ
医師が転科を考える時、以下の2つのパターンが考えられます。
- 初めから明確に「この診療科に転科したい」と決まっている
- 「今の職場が辛いので転科して状況を変えたい」=転科先は決まっていない
特に後者の場合、診療科を選ぶのは難しく、転科先の希望がはっきりしていても、転科を受け入れてくれる病院を探すのも大変です。 あわせて読みたい
さらに、
「自分にはどの診療科が向いているのか」
「どの程度勉強し直す必要があるか」
「転科でも転職できる受け入れ先はあるのか」
「転科して専門医を目指したいが、それが可能な病院はどこか」
など、決意した後も悩ましい問題が山積みです。
そこで、転科を検討する医師に利用してほしいのが転職エージェントです。
転職エージェントは、同じような悩みを抱えている人をたくさんサポートしてきています。
医師のキャリアプランを考えることから寄り添ってくれる、医師専門の転職エージェントもたくさんあります。
登録だけなら無料でできますし、登録したからといって必ず転職しなくてはならないということもありません。
「転科した方がいいのかな」「転科したいけどどの科にすればいいのかな」と迷い始めたら、まずは相談してみることをおすすめします。
まとめ(医師が転科する時の注意点)
医師にとって転科は思い切った決断です。
しかし、長い目でキャリアプランを考え、コツコツと積み重ねていく上で、転科はさほど珍しいものでもありません。
4割もの医師が一度は考える「転科」には、メリットもデメリットもありますが、最終的に医師としての技量を上げることができるのは事実です。
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転科先を探す苦労などもありますが、医療機関側は「きちんとした動機や理由を持って転科する医師は、きちんと働いてくれる」と言う認識を持っています。
病院側としても、優秀な医師が確保できるという期待から、転科する医師に寛容なところは意外と多いのです。
しかしながら、転科や転職を決意しても、どの病院が自分に適しているのかを探すことはなかなか簡単ではありません。
根気良く求人を探す必要がありますが、求人情報では年収や給与などの条件はわかっても、自分の転科の目的が実現できる職場なのかはなかなか見えてきません。
キャリア形成に悩み、転職や転科を考えた時は、まずはその道のプロである転職エージェントに相談してみてください。
きっと、解決の糸口が見つけられるでしょう。