医師は激務で疲れが蓄積しがちな職業です。
長期にわたり過度な疲労が続くと、心身に異常をきたし「医者にならなきゃよかった…」と思う事態を引き起こすかもしれません。
そうなる前に、何かできることはないのでしょうか?
- 「医師の疲れの原因とは?」
- 「医師の体の不調につながりそうな要因は何?」
- 「医師のメンタルヘルス問題はどうなってるの?」
今回は、このような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが医師の疲れの原因や具体的な解消方法をお教えします。 あわせて読みたい
もし現在の働き方に限界を感じているという方は、医師の転職に関する情報もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
医師の疲れの原因は?
疲労対策を講じる前に、まずは疲れの原因を知ることが重要です。
医師の疲れの原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
大きくわけて以下の2つが考えられます。
- 激務
- 複雑な人間関係
一つずつ詳しく見ていきましょう。
激務
一つ目に、医師の業務が激務であることが挙げられます。
今回は、医師の中でも特に苛烈と言われている勤務医の業務内容を例に見てみましょう。
勤務医の労働環境でまず問題となるのは、長時間労働です。
日本の労働者全体における1週間の労働時間は、平均「35〜42時間」が最も多い割合(36.7%)となっています。
一方で、勤務医における1週間の労働時間は平均「50時間以上」と、中央値の「38.5時間」と比べても、10時間以上の差があるのです。
参考:医師の長時間労働の実態について
参考:労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の要約
上記の長時間労働に加えて、イレギュラーな働き方も激務と言われる要因です。
医療現場には、医師が交代制で現場を担当する「当直」という仕組みがありますが、当直には日勤だけではなく夜勤も含まれています。
毎日の業務の中に夜勤が不規則に入ってくると、当然、生活リズムも崩れやすくなるでしょう。
また、多くの医療現場で採用されている主治医制(患者1人に対して医師1人が担当する仕組み)により、担当する患者が入院している場合、その容態によっては曜日や昼夜を問わずに駆けつける必要が出てきます。
その結果、泊まり込みや休日出勤が日常茶飯事になるのです。
さらに、急患や担当する患者以外のフォローに回る必要があることも加味すると、その過酷さがおわかりいただけるかと思います。 あわせて読みたい
ここでは勤務医を例に出しましたが、その他の医師においても同様の問題が発生していることは想像に難くありません。
複雑な人間関係
二つ目に、複雑な人間関係が挙げられます。
医師は業務上さまざまなタイプの人間と関わらなければなりません。
その結果、人間関係の悩みも持ちやすくなると言えます。
同業である医師以外にも、看護師、病院職員、外部のスタッフ、患者さんやそのご家族など、他者とのコミュニケーションを取る機会が非常に多いです。 あわせて読みたい
そういった状況に長く置かれると、常に愛想を振りまかなければならないことに気疲れしてしまうかもしれません。
また、職場での上下関係や派閥争いなどに神経をすり減らすこともあるでしょう。
特に、医局の場合はそういったしがらみが多くストレスが溜まりやすい上に、立場が弱い研修医などはパワハラやいじめの標的になることも考えられます。
その他、人事異動によって度々発生する人間関係のリセットもこの問題に拍車をかけています。 あわせて読みたい
定期的に一から人間関係を構築しなければならないというのは、精神的にかなりの負担がかかる状況にあると言えるでしょう。
医師と体の疲れ・医者の不養生って本当?
続いては医師の疲れの原因の中でも、体の疲れに着目して医師の肉体疲労が回復しにくい原因をご紹介します。
多くの医師が不養生だと言われる理由としては、主に以下の2点が挙げられます。
- 栄養バランスとは程遠い食生活
- 睡眠不足と運動不足
これらはすべての医師に当てはまるわけではありませんが、肉体疲労が回復しにくい原因であることは間違いありません。
栄養バランスとは程遠い食生活
まず、栄養バランスとは程遠い食生活が挙げられます。
基本的に、医師は昼食や夕食を病院内でとることが多いです。
病院の立地自体がサラリーマンが多く働くような都心部に少なく、周辺に定食屋などがないことが多いため、外食をするとなると院内の食堂などに限られます。
しかし、ただでさえハードワークの医師が、食堂でゆっくりと食事をする時間を確保することは非常に難しいです。 あわせて読みたい
その結果、カップラーメンやレトルトカレー、コンビニのおにぎりなど、手軽に用意できる栄養バランスを度外視したスピード重視の食事になりがちなのです。
睡眠不足&運動不足
次に、睡眠不足・運動不足であることが挙げられます。
睡眠不足に関しては、当直業務によるところが大きいです。
当直業務は急性期病院に勤務している場合、1週間に1~2回の頻度で割り当てられます。
当直には夜勤も含まれるため、夜通し一睡もできない状況が発生することもしばしばあるのです。
翌日の朝から通常の勤務が入っている場合には、30時間以上にも及ぶ連続勤務になってしまうこともあります。
医師の常勤は多くの場合1週間当たり4.5~5日の勤務が基本となります(0.5日は半日勤務のことを指し、土曜日をそのような勤務形態にする病院が多いです)。
ただし、そこには当直勤務を含んでおらず、実質の労働時間は週5.5日~6日勤務で時間にして44~48時間。
そこに残業時間も加えると、実際の労働時間は週に60~70時間(あるいはそれ以上)にも及ぶ計算になります。
このような不規則で長時間の労働が続くことによって、慢性的な睡眠不足に陥ってしまうのです。 あわせて読みたい
また、睡眠が満足に取れないことによって日中の活動量が減り、併発して運動不足にも陥ってしまうという負の連鎖が巻き起こっています。
医師と心の疲れ(1)メンタルヘルスの不調
医師の心の疲れには、メンタルヘルスの不調が大きく関係しています。
- うつ病になる医師の割合
- 医師自身が行えるメンタルケア
上記2項目について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
うつ病になる医師の割合
2015年に日本医師会が実施した調査によると、医師全体の内、中等度以上の抑うつ症状を持つ割合が6.5%、重度のうつ病の割合が0.9%にも及ぶ結果となりました。
さらに、自殺のリスクがある医師の割合は3.6%と、約30人に一人の医師が自殺のリスクにさらされていることがわかりました。
医師自身が行えるメンタルケア
このような環境下において、医師自身が行えるメンタルケアにはどのようなものがあるのでしょうか?
専門家により提唱される最も簡単で最も効果的なケア方法は、睡眠時間を十分に確保することです。
上記の資料制作にも携わった、保坂サイコオンコロジー・クリニック院長であり、聖路加国際病院診療教育アドバイザーの保坂隆氏は、うつ病発症のリスクは睡眠時間が6~7時間の人間を1とすると、5時間以下の人間では2倍以上になると発言しています。
また、同氏はうつ病と関係する4つの因子のうち、残業時間以外の他3つはすべて睡眠に関する内容だったことを提示し、寝付きの良さや目覚めた時の満足感を自身で確認するだけでも自身のストレス度をチェックする指標となると語っています。 あわせて読みたい
医師と心の疲れ(2)バーンアウト(燃え尽き症候群)
心の疲れに関連する内容として、バーンアウト(燃え尽き症候群)についても解説していきます。
- バーンアウトとはどんな状態か
- バーンアウトの危険信号と対策
事前にバーンアウトの状態を把握し、きちんとした対策方法を理解しておくことが大切です。
バーンアウトとはどんな状態か
そもそもバーンアウトとはどんな状態のことを指すのでしょうか?
バーンアウトとは、それまで一つの物事に没頭していた人間が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失って、社会に適応できなくなることを指します。
日常的に過度のストレスにさらされることにより発症する、うつ病の一種であるとも考えられています。
主な症状として挙げられるのは、以下のようなものです。
- イライラが募る
- アルコールの量が増える
- 朝起きられない
- 職場に行きたくない
このような症状が原因で仕事が手につかなくなったり、人とのコミュニケーションが難しくなったりします。
その他、病気に対する抵抗力の低下や、人生に対してネガティブになることから、家庭環境の崩壊や最悪の場合、自殺や過労死に至ることもある大変危険な精神疾患です。
日本語では直訳して「燃え尽き症候群」とも呼ばれています。
参考:バーンアウトシンドローム(厚生労働省) あわせて読みたい
バーンアウトの危険信号と対策
バーンアウトに陥らないためには、危険信号を早めにキャッチすることが大切です。
危険信号の3つの兆し:罪悪感、自己懐疑、誇大義務感
- 休暇をとれない
- リラックスできない
- 限界を設定できない
- 慢性的な不満足感がある
- 家族関係が不安定になる
- 自己満足と自己中心の混同
- 責任に対する不十分な感覚
上記の危険信号が表れたら、すぐにでも休息を取るようにしましょう。
精神的に不安定な状況下においては、何においても十分な休息をとることが優先されます。
危険信号を放置したままでいると、下記のような人格の変化が表れ、自身の体調や周囲の人間との関係が悪化してしまう恐れがあります。
人格の変化
- 皮肉やため息が多くなる
- 怒りっぽくなる
- 遅刻するようになる
- 仕事に責任感を持たなくなる
- 暴飲暴食になる
- 不定愁訴の体調不良が表れる
自身の異変を敏感に察知して、その都度リフレッシュすることができれば、バーンアウトに陥ることなく心身の健康を維持することが可能です。 あわせて読みたい
医師のバーンアウトに関するよくある質問
Q 医師が疲れを感じやすいのは、どんなときですか?
長時間労働や当直・夜勤などによる生活リズムの乱れ、
チーム医療や医局内の人間関係のストレスなどが重なると、疲労を感じやすくなります。
また、患者さんや同僚への責任感が強い方ほど、無意識のうちに休息を後回しにしてしまう傾向があります。
Q 体の疲れが抜けにくいとき、何から見直すべきでしょうか?
まずは睡眠・食事・軽い運動の3つです。
・睡眠:仮眠を含めた「短時間でも質の高い休息」を意識する
・食事:タンパク質と野菜を意識し、過度なカフェイン・糖分を控える
・運動:ストレッチや軽い筋トレなど、5分でも「体を動かす時間」を作る
忙しい勤務の中でも、小さな習慣を積み重ねることで回復力は変わります。
Q 精神的に「もう無理かも」と感じたとき、どうすればいいですか?
一時的な疲労ではなく、「仕事への意欲低下」「イライラ」「自己否定感」などが続く場合、バーンアウト(燃え尽き症候群)の初期サインである可能性があります。
まずは休息を取り、信頼できる同僚や上司に話すこと。それでも改善しないときは、専門機関や産業医への相談も検討しましょう。
Q 疲れを感じても、休めない状況ではどうすればいいですか?
完全な休暇が難しい場合でも、
・当直明けの移動時間に「音楽やラジオで頭を切り替える」
・昼休みに外へ出て日光を浴びる
・短時間でも“業務以外の話”をする
といった小さな切り替えが有効です。
忙しさの中で「何も考えずに過ごす時間」を確保できるかがポイントです。
Q 疲れを後回しにしていると、どんな影響が出やすいですか?
多くの医師が経験するのは、集中力の低下や判断ミスの増加です。
また、慢性的な疲労は免疫力や思考の柔軟性にも影響し、結果的に業務効率が下がります。
自分のパフォーマンスを守る意味でも、早めの対処が大切です。
Q バーンアウトを防ぐために、日常でできることはありますか?
・短時間でも「頭を空にする時間」を意識的に取る
・家族・同僚など“職場以外の人間関係”を維持する
・定期的に自分のキャリアや働き方を見直す
「頑張り続ける」よりも、「続けられる環境を作る」ことが最も重要です。
Q 疲労やストレスが限界に近いとき、環境を変える判断は?
以下のような状態が続く場合は、勤務環境を見直すタイミングです。
・睡眠や休息を取っても疲れが抜けない
・業務への集中が続かない、感情が不安定になる
・医師としてのやりがいを感じられなくなっている
そうした場合は、勤務負担の少ない職場への転職や働き方の変更を検討してみてもいいでしょう。
第三者の視点でキャリアを整理することが、再出発のきっかけになることもあります。
心身の疲れが解消できない時は転職を検討
どうしても心身の疲れが解消できない時は転職を検討することも一つの手です。
自身のことを「メンタルが強い」「体力もある」人間だと高を括り、日々蓄積する疲れを放置したままでいると、気づいた時には心身が悲鳴をあげているという状態にもなりかねません。
そうなる前に、自身にとってより良い環境に転職することができれば、心身の疲れの原因が一挙に解消すると共に、現在よりもさらに上位のキャリア形成にも繋がっていきます。
一人で決断することに不安があるという方は、一度転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
第三者によるアドバイスを貰うことによって、自身の適性を見つめなおすきっかけになるかもしれません。
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まとめ(疲れた医師について)
今回は、医師の疲れの原因や解消方法について解説してきました。
<医師の疲れの原因は?>
- 激務
- 複雑な人間関係
<医師の肉体疲労が回復しにくい原因とは?>
- 栄養バランスとは程遠い食生活
- 睡眠不足&運動不足
<医師のメンタルヘルスの不調について>
- うつ病になる医師の割合は30人に一人
- 医師自身が行えるメンタルケアは十分な睡眠をとること
<医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)について>
- バーンアウトとは燃え尽きたように意欲を失い社会に適応できなくなること
- バーンアウトの対策方法は危険信号を察知し早めの休息をとること
疲れの解消方法としては、睡眠や休息をとることが共通して重要となることがおわかりいただけたかと思います。
ただし、「あまりにも辛すぎる」「改善の余地がない」という場合は、転職することも検討してみましょう。
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