目標やキャリアプランを立て努力を積み重ねて医師になった方でも日々の仕事の大変さなどから、辞めたいと感じてしまうことがあるかもしれません。
また職場の環境に恵まれず、収入や人間関係などを苦にして辞めたいと思っている方もいるのではないでしょうか。

「医者を辞める場合のメリットやデメリットが知りたい」
「医者を辞めた場合の選択肢について知りたい」

この記事では医者を辞めたいと考えている方に、辞めてしまった場合のメリットとデメリットをご紹介します。
またすぐに辞めたほうがいいケースや、医師を辞めた後の仕事の選択肢についても解説しますので参考にしてください。

医者を辞めたいと感じてしまう5つの理由

日本医師ユニオンが2022年に発表した「勤務医労働実態調査」を見ると、医者を辞めたいと思ったことがある人の割合が、約6割にのぼっていることがわかります。
どのような理由で辞めたいと思うのかをパターン別にまとめると、以下のようになりました。

  • 激務が苦痛
  • プレッシャー
  • 転勤の多さ
  • 人間関係の悩み
  • 待遇面での不満

それぞれの理由について、詳しく解説します。

1.激務が苦痛である

医師の仕事は激務になりがちです。
入院病棟がある病院に勤めていれば定期的な当直業務が避けられません。

また外科や救急科といった緊急対応が必要な診療科の場合、オンコール待機などもあります。
これによって休日出勤や長時間労働が増えるため、体力的にも精神的にも負担が大きく、「辞めたい」という気持ちになってしまう医師が少なからずいます。

2.過度なプレッシャーがある

医師は言うまでもなく患者の健康や生命に直接関わることになります。
他人の命を預かるプレッシャーは決して軽くなく、重い責任感を感じながら働いている人もたくさんいます。
また激務で疲れを感じながら働くことにより、ミスを犯すのではないかという緊張感も感じることになります。
一度ミスを犯してしまうと、患者の命を脅かす危険があるだけでなく、医療訴訟のリスクも負うことになってしまいます。
こうしたプレッシャーがつらく、やめる理由となるケースも珍しくありません。

3.転勤が多すぎる

医局に所属している医師の場合、転勤の多さも負担に感じることがあります。
特に若手医師の場合、転勤することで経験が積めるというメリットはあるものの、転居を伴うほど遠かったり、医局的には「転勤」でも、実質は「転職」となることも問題です。
転職して間もないうちは、ボーナスも支給されませんし、有給休暇などの福利厚生でもデメリットがあります。

さらに結婚して家族がいる場合は、転勤が家族全員に影響を与えてしまうことも負担に感じるでしょう。
転勤のない職場へ転職したいという理由で辞めることにつながっていきます。

4.人間関係の悩みがある

スタッフ数の多い大病院や大学病院、医局などで働いている勤務医は、複雑な人間関係の中で働いていくことになります。
相性がいいこともあれば悪いことも当然あるでしょう。
医局内の派閥や、医師以外の病院スタッフとの人間関係が良好でないと、つらい思いをして働くことになります。
人間関係が理由で辞めたいと思うケースは、珍しいことではありません。

5.待遇面での不満がある

労働時間が長くハードな職場でも、報酬が思ったより多くなかった場合にも、やりがいを見出しづらくなってしまいます。
公立病院や大学病院は民間病院と比べると給料が低い傾向があるため、こうした医療機関に勤めているとそう感じる医師もいるのではないでしょうか。
確かに大学病院や公立病院の場合、経験が積めたり最新の医療機器に触れられるといったメリットはあります。
しかし待遇が不満な状態がずっと続いていると、さすがにやりがいを感じづらくなってしまうのではないでしょうか。

辞めたくても医者を続ける3つの理由

前項で紹介したさまざまな理由から、多くの人が一度は医者を辞めたいと考えていることがわかりました。
しかし実際には医者を辞めることはせず、引き続き医者として働くことを選んでいる人もたくさんいます。

辞めたいと思っても、それでも医師として働き続ける理由には、どのようなものがあるのでしょうか。3つのポイントに絞ってご紹介します。

1.高収入であること

若手のうちはまだ高収入に達していない方もいるでしょうが、医師の平均年収は病院勤務医で1,400万円を超え、他の職業と比べても高い水準です。(厚生労働省「第23回医療経済実態調査の報告」より)
さらに開業医で成功していれば、より多くの収入を得ている方もいるでしょう。

医者を辞めて別の仕事を始めても、今までと同水準の年収を維持するのが難しいため、今のまま頑張り続ける方は多いでしょう。
また、若手でまだ収入が少ないという方であっても、より待遇の良い職場を見つけて転職するほうが、医者を辞めるよりは年収アップを狙いやすいです。

2.やりがいが大きいこと

医者という職業は、人の命や健康に直接関与します。
つらいことが多いのは事実ですが、元気になった患者を間近に見られる喜びを大きく感じられる職業です。
苦労が報われる経験を積み重ねるほど、目の前の悩みよりも、元々持っていたやりがいを捨てることが忍びなく、辞めることを思いとどまるケースも聞かれます。

医学の進歩で以前は難しかった治療が可能になったという場合にも、医者としてのやりがいを思い出し、もう少し頑張ってみようと思わせる原動力になるのかもしれません。
医者を目指した当初の気持ちを振り返り、辞職を思いとどまるという選択をする方は少なくありません。

3.成長を感じやすいこと

やりがいの部分と重なる面もありますが、医者として働いていると、毎日何かしらの成長を感じる機会があるのではないでしょうか。
常に学びが必要な職業だからこそ、頑張った分だけ成長を実感できるのも、医者の醍醐味の1つです。
研修や学会などで最新の情報や知識、技術をインプットしていく機会が多いのも、医者の特徴と言えます。
他業にシフトしてしまうと、こうした機会が減るのが一般的で、目に見える成長という実感を得にくいのではないかと考える方は、引き続き医者を続ける傾向が見られます。

医者を辞めたいと感じたらメリットとデメリットを考えよう

仕事がつらくなったり、適性がないと感じて医師を辞めようとした場合、そこにはメリットとデメリットが両方存在します。
これは医師に限ったことではないかもしれませんが、望みを叶える一方で、失うものもあるということです。医師であれば、以下のようなメリットとデメリットが想定できます。

<メリット>

  • 煩わしい人間関係がリセットできる
  • 激務から解放される
  • 新しい環境で刺激を受けられる
  • プレッシャーから逃れ、穏やかに働ける

<デメリット>

  • 人脈形成がしづらくなる可能性がある
  • 収入が大幅ダウンする可能性がある
  • 再び臨床医師に戻ることが難しい
  • 転職や独立で失敗する危険性がある

医師を辞めたいと思ったら、まずどうして辞めたいのかを冷静に考えてみる必要があるのではないでしょうか。
「長時間労働がつらいだけで、医師の仕事そのものにはやりがいを感じている」というのであれば、勤務環境を変えれば解決できることもあります。
また待遇の不満が理由であれば、まず待遇の良い職場を探してみるのも良いでしょう。

本当に医師としての経験を手放してしまって良いのかを熟考してみてください。

医師は一度ブランクを持ってしまうと、再び臨床の現場に戻ることが難しいと言われています。
医療の現場は日進月歩で進化しており、常に現場で最新の情報を吸収していないといけないからです。

医者を辞めた場合の7つの選択肢

医者を辞めることを選ぶとなると、その後の道を考えなくてはなりません。
その道は、環境を変えて医療の世界に関わり続けるのか、完全に医師を辞めてしまうのかによっても異なります。
ここからは、医師が今の職場を辞めたあとの選択肢について代表的な7つの道をご紹介します。

1.診療科を転科する

度重なる当直業務や1つの方法です。
またやりがいを感じられずにいるのであれば、まったく経験のない分野に転科して、刺激を感じてみるのもいいのではないでしょうか。

そこから新たなキャリアプランが見えてくるかもしれません。
医師の転科については、こちらの記事も参考にしてください。

2.非常勤やスポット勤務にする

長時間労働がつらいものの、転科はしたくないという場合は、一旦常勤医を辞めて、スポット勤務や非常勤で働くのも解決法となるでしょう。
また出産後の女医の方でも、ブランク明けのステップとして活用している方が多くいます。
日勤帯での非常勤やスポット勤務の場合は、当直がなく、勤務時間もきっちり決まっているケースがよくあります。
体力的に無理のない範囲で働くことができ、診療科を変える負担もなく、勤め先によってはスキルアップも目指すことができるでしょう。

3.別の医療機関に転職する

給与や福利厚生などの待遇に不満がある場合は、転職で解決できるケースがよくあります。
医療業界は人手不足ですので、勤務エリアを変えるなどの工夫で、より良い条件で働ける職場を見つけることは難しくありません。
自分一人で探すとなると大変ですので、転職エージェントを利用してキャリアプランに合った転職先探しをすることが近道です。

4.開業をする

辞めたいと感じた時点で、勤務医として十分な経験が積めている状態であれば、開業を目指すという方法もあります。
開業医であれば、人間関係やハラスメントといった勤務医特有の煩わしさを感じずに働くことが可能です。
ただし開業には準備期間が必要ですし、資金も膨大になってきます。
また開業後は一国一城の主として、経営手腕も問われるため、簡単な方法ではない覚悟をする必要があります。

5.臨床医以外に転職する

臨床現場でのプレッシャーが辞める理由であれば、臨床現場以外にも医師が働く場所はたくさんあります。
産業医や健診医などは医師の転職先としても人気があり、それでいて臨床現場で患者と向き合う業務が発生しません。
また一般企業で働くことになるため、時間の制約もしっかりしていて、当直などの長時間労働もなくなるというメリットがあります。
一般的には医師をしている時より収入は落ちる傾向にありますが、それでもコンサルティング業界や医療機器メーカーなど、それなりに収入が高い職種も見受けられます。

6.医師免許が活かせる他業種に転職する

製薬会社のメディカルドクターや保険会社の社医や、医師免許を活かした他業種への転身など色々な選択肢があります。
研究職として医療技術の発展を支えるのもいいですし、医師の経験を活かしたブログや医療系ベンチャー企業での記事執筆や記事監修といった仕事もおすすめです。
臨床の現場を離れるにしても、せっかく積んだ医師としての経験は、大きな価値があることを知っておいてください。

7.別の業種や業界で働く

医師として働いていた段階である程度実績を積んでいたのであれば、病院スタッフや後輩医師などのマネジメントを経験した方もいるでしょう。
そうしたマネジメント経験を活かした働き方をしてみるのもいいかもしれません。
医師向けのコンサルタントや、転職エージェントなどでも医師として働いた経験や、医者の仕事がつらかった思いを糧にすることができます。
また医師をしている間の収入がそれなりに貯まっているのであれば、それを元手にした不動産や株式への投資などで生計を立てるといった選択肢もあります。

すぐに医師を辞めたほうが良い3つのパターン

仕事がつらくて辞めたいと思っても、一旦熟考したほうがいいのは前述の通りです。
しかし以下のようなケースの場合は、まず自分の身を守るためにも一度立ち止まるのがいいでしょう。

  • 体調が悪化している場合
  • 勤務時間と報酬が極端に見合わない場合
  • ハラスメントや強いストレスを感じている場合

それぞれ詳しくご紹介します。

1.体調が悪化している場合

もしも激務やストレスなどが原因で心身の不調をすでに感じている場合は、キャリアプランを考える前に一度自分自身をリセットしましょう。
職場によっては時短勤務に変更してもらえることもあるかもしれません。
すぐ相談し、必要に応じて自分自身が治療を受けたり療養をしたりするようにしてください。
医師を辞めるつもりがなくても、健康な体があってこそのキャリア形成です。
少しぐらいの無理のつもりでも、積み重なると深刻なダメージを受けることも考えられます。
「医者の不養生」を身をもって体現しないように気をつけましょう。

2.報酬が見合わない場合

勤める医療機関によっては、当直回数が多い割には手当が少ないこともあるでしょう。
あまりにも勤務時間と報酬が見合っていない場合は、転職を考えることも1つの選択肢です。
研修医の場合は研修プログラムの都合もありますので、転職は難しいかもしれません。
しかし勤務医であればそれなりの収入が確保できる職場を探すべきです。

こうした長時間勤務のある仕事をしていると、転職活動をする時間が取れないと考える方もいるかもしれません。
そんな時は、転職エージェントを有効活用してください。
情報豊富な転職エージェントなら、キャリアアップと収入アップを同時に叶える職場を探すことも不可能ではありません。

3.人間関係に強いストレスを感じている場合

派閥争いや難しい人間関係のある職場でパワハラに遭ってしまったら、そのストレスは並大抵のものではありません。
我慢し続けることで、心身の不調をきたす危険性もあるでしょう。
また意に介さないという性格の方であっても、人間関係のこじれやハラスメントの影響で、仕事を割り振ってもらえないといった実害を被ることもあるかもしれません。
(むしろメンタル的にこたえないと思われれば、こうした実害の可能性は上がるとも言えます)

面倒臭い争いごとの渦中に居続けるのは、居心地だけでなく、スキルアップやキャリア形成の面からもデメリットにしかなりません。
職場でこうした事態に巻き込まれてしまったら、潔く転職してしまうことをおすすめします。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談を

医者を辞めようかと悩んだ時、すでに心身に不調をきたしているような場合を除いては、一度その理由を熟考してみるべきでしょう。
活動のフィールドを変えることで何が得られ、何を失うのかまで考えた上で判断したほうが賢明です。

働き方に悩みを抱えてしまった時におすすめしたいのが、転職エージェントの利用です。
医師の転職に特化したエージェントであれば、医師特有の仕事上の悩みや解決方法に関する知識が豊富で、ノウハウもたくさん持っています。
メッドアイでも無料でできる相談を通じて、キャリアプランの見直しのお手伝いにも寄り添うことが可能です。
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悩みを明確化し、解決策を考え、その条件を満たす職場が見つかれば、引き続き医師として輝き続けることができるでしょう。

まとめ(医師をやめたい時)

長時間労働や患者の命を預かるプレッシャーから、医師を辞めたいと考えたことがあるという人は、半数以上にものぼるのが実情です。

それほどにつらい医師の仕事を、志を持って続けていくか、辞めてしまうかはあくまでも当人の自由ではあります。

心身の不調を押してまで無理を続けなくてはいけないわけではないので、つらいと思ったら辞めようかと考えてみることも時には必要です。

しかし、なぜ辞めたいと思ったのか、そしてその原因を解消できれば医師の仕事を続けられるのかは一度冷静に考えてみてください。
今医師をしている人は、長い道のりをかけてやっとここまで辿り着いたのではないでしょうか。

もし職場を変えたり、人間関係をリセットしたりすることで解決できる問題なのであれば、思い切って転職してしまうことをおすすめします。
当直が多くて休みが取れず、転職先探しをする余力がないというのであれば、ぜひ医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談してみてください。

キャリアプランをそのまま伝えて、今の悩みもそのまま伝えることで、プロのエージェントがきっとあなたに合う医療機関を見つける助けになるでしょう。