老健(介護老人保健施設)には医師が必ず必要なのでしょうか? 医師が不在の時間帯はあるのか、またどのように対応しているのか、疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

  • 老健には医師が必ず必要なのか、不在の所はないのか知りたい
  • 老健での医師不在時の対応について知りたい

このように思っている方に向けて、本記事では不在時の具体的な対応方法や老健における医師の必要性について詳しく解説します。

人員配置基準とは

人員配置基準は、介護施設において「適切な介護・医療」を確保するために、一定数以上の専門資格を持つスタッフ(医師、介護士、看護師など)の配置を法的に義務付けた制度です。
介護施設の種類によって必要な人数は異なり、法律によって具体的な基準が規定されています。

人員配置基準に違反すると、指定の取消しや営業停止といった厳しい処分が科せられる可能性があります。
介護施設は、人員配置基準を遵守することで、利用者の安全と健康を守りながら、適切な介護を提供する法的責務を果たすことが求められているのです。

老健における人員配置基準

老健の人員配置基準について、職種別に確認していきましょう。
老健の配置基準は「前年度の入所者数をもとにした常勤換算による人員数」で定められています。

医師については、

  • 最低1名の医師配置が必須
  • さらに入所者数100人につき、常勤換算1名以上の医師を置くこと

が求められています。

そのため、入所者数が増える施設では、その人数に応じて常勤換算の医師数を増やす必要があります。

職種法令上の配置基準(常勤換算)備考
医師入所者数 ÷ 100 以上最低1名の配置が必要
看護職員
介護職員
入所者 3:1看護:介護=2:5が標準
支援相談員1名以上(100人超は追加)100人を超えた部分を100で割った人数を追加
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
入所者数 ÷ 100 以上リハビリ専門職
栄養士(管理栄養士)定員100以上で1名以上100未満は義務なし
介護支援専門員1名以上(標準:100人に1名)ケアマネ
薬剤師実情に応じた適当数具体数の規定なし
調理員・事務員等実情に応じた適当数

出典:e-Gov 法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(令和6年4月1日 施行)

老健の人員配置基準は、在宅復帰支援を行うために、医療・介護・リハビリの専門職を一定数配置するよう定められています。
各職種がそれぞれの専門性を生かしながら連携し、利用者の健康状態の維持と生活の質の向上を図る体制が必要とされています。

夜間の医師不在時は主に看護師が対応

老健では、医師が常駐しているのは日中が基本で、夜間は医師が不在となる施設が一般的です。
そのため、夜間帯は看護職員が配置され、利用者の状態観察や医療的な対応を行います。

夜間に急変があった場合は、まず看護職員が状況を判断し、必要な応急対応を行います。
そのうえで、医師への連絡が必要と判断されれば速やかに連絡し、医師の指示を受けながら処置を進めます。入院が必要と判断されるケースでは、協力医療機関への搬送を調整します。

老健で医師が不在でも運営できる理由

介護老人保健施設(老健)では、「常勤医師の配置」は義務づけられていますが、夜間や休日に医師が施設内に常駐する必要はありません
そのため、多くの老健では、日中は常勤医が対応し、
夜間・休日は看護師による対応+必要時のオンコール体制で運営されています。

老健で医師不在の時間帯でも安全に運営が可能なのは、以下の仕組みが制度・運営面で整備されているためです。

1. 近隣医療機関との協力体制が確立されている

老健は「医療提供の中心となる施設」ではなく、リハビリ・在宅復帰支援を主目的とした介護施設です。
そのため、急性期医療が必要な場合は、あらかじめ定められた協力病院に迅速に搬送できる体制が整っています。

2. 看護師が配置され、応急対応が可能

老健には看護職員の配置基準があり、夜間も看護師が入所者の観察・バイタル管理・投薬管理を行います。
医師の指示の範囲で対応できる軽度の医療的ケアは、看護師がその場で処置可能です。

3. 必要な場面では医師がオンコール対応

夜間・休日は、看護師が状態変化を察知した際に医師へ連絡し、電話で指示を仰げるオンコール体制をとる老健が一般的です。
緊急性が高い場合は、看護師が医師と連携しつつ救急搬送につなげます。

4. 地域の救急医療体制との連携

老健は、重篤な症状への迅速な対応を前提に、地域の救急医療・協力病院と連携しています。
高度な医療が必要なケースは、医療機関で適切な治療を受けられるよう仕組みが整備されています。

老健における医師の役割

老健における医師の業務内容は、一般的には多く知られていません。ここでは、老健で医師が担う役割を、制度上の位置づけに沿って説明します。

勤務時間について

老健の医師は、法令で「常勤医師を1名以上配置すること」が定められています。
勤務時間は施設によって多少違いがありますが、一般的には 日中の勤務(例:9時〜17時) が中心です。

夜間に医師が常駐していない施設は多く、急変が起きた場合はまず看護職員が対応し、必要に応じて医師に連絡して指示を受けます。入院が必要と判断された際は、協力医療機関へ搬送します。

病院のような当直や長時間勤務はほとんどなく、残業も少ないため、医師にとって負担の小さい働き方ができる職場であることが一般的です。

業務内容について

老健の医師は、医療サービスの提供だけでなく、施設運営に関わる役割を担っています。主な業務は以下の通りです。

1. 利用者の健康管理

  • 入所時の健康診断・診察
  • 日々の診察、処方
  • 状態悪化時の評価と対応
  • 必要があれば協力医療機関への紹介
  • 栄養・リハビリ計画への医療的助言
  • 看取りに対応する施設では看取り医療を実施

老健は「在宅復帰支援」が目的の施設であるため、医学的視点から利用者の状態を評価し、リハビリの方針に関わることも重要な業務です。

2. スタッフへの指示・連携

老健では多職種協働が基本で、医師は以下の職種と連携します。

  • 看護師
  • 介護職員
  • リハビリ職(PT/OT/ST)
  • 支援相談員
  • 管理栄養士
  • 介護支援専門員 など

医師は必要に応じて診療上の指示を行い、医療的リスクに関する判断を担います。

3. 施設長を兼任する場合の運営管理

老健では医師が管理者(施設長)を兼務するケースが多いとされています。
この場合、以下のような運営面にも関与します。

  • 施設運営方針の策定
  • 職員体制の管理
  • 医療安全の管理
  • 行政への報告業務
  • 運営上の会議出席

※ただし、すべての老健医が経営管理まで担うわけではなく、組織体制により範囲は異なります。

老健の医師として働くことがおすすめな人

老健での勤務は、病院勤務とは大きく特徴が異なります。
どのような働き方を望む医師に向いているのか、ポイントを整理して紹介します。

ワークライフバランスを保ちたい人

老健では夜勤や当直がなく、日中勤務が中心です。
夜間は看護職員が対応するため、医師が施設内に常駐する必要はありません。残業も少ない傾向があり、定時で帰宅できる環境が整っている施設が多くあります。

そのため、家族との時間を大切にしたい人や、研究・学習・趣味の時間を確保したい人にとって、老健の働き方は適しています。
土日祝が休みの施設も多く、規則的な生活がしやすい点も特徴です。

利用者とじっくり向き合いたい人

老健は「在宅復帰」を目的とした施設で、状態の安定した利用者が中心です。
急性期のような慌ただしさは少なく、利用者の健康状態を継続的に見守る時間があります。

  • 一人ひとりと落ち着いて向き合いたい
  • 生活機能の回復や在宅復帰を支援したい
  • 長期的な関わりの中で利用者の変化を見届けたい

といった働き方を望む医師には大きなやりがいがあります。

また、入退所が定期的に発生するため、無事に在宅へ戻っていく利用者を送り出すことに達成感を感じる医師も多くいます。

老健の医師に向いている人の3つの特徴

医療の世界は多様で、それぞれの役割が求められます。
老健の医師として働くことは、高齢者の健康と生活の質を向上させる重要な役割を果たしますが、誰にでも適しているわけではありません。

以下では、老健の医師に向いている人の特徴を、詳しく解説していきます。

1.コミュニケーション能力の高い人

老健の医師に向いている人の1つの特徴は、コミュニケーション能力の高さです。
老健での医師は、施設のリーダーシップを担い、さまざまな職種や経験を持つスタッフをまとめる重要な立場にあります。
リハビリ、介護、医療など異なる専門領域を有するスタッフと円滑に協力し、患者をサポートするためには、優れたコミュニケーションスキルが不可欠です。

さらに、利用者との信頼関係を築くためにも、コミュニケーションは欠かせません。患者の状態を適切に把握し、彼らとの信頼を築くことが、高品質な医療・介護サービスにつながります。

2.プライマリ・ケアの経験が豊富な人

老健の医師に向いている人の2つ目の特徴は、プライマリ・ケアの経験が豊富な医師です。プライマリ・ケアとは、患者が病気や怪我を負った際に、最初に受ける医療のことを指します。

老健は利用者の心身の健康維持のために予防医療が大切であり、プライマリ・ケアのスキルが活かされます。
難しい疾患の治療ではなく、利用者の健康状態の予測や維持が求められるため総合的な医療経験が重要です。
プライマリ・ケアの経験豊富な医師は、豊富な問診、触診、視診などの身体検査経験を通じて、利用者と深い信頼関係を築きやすく、総合的なアプローチで利用者の健康をサポートできるでしょう。

3.医師としてのキャリアが豊富な人

老健の医師に向いている人の3つ目の特徴は、医師としてのキャリアが豊富な人です
さまざまな職員がいる中で中立の立場を保ち、コミュニケーションを円滑に図る人間力も不可欠です。老健スタッフには介護未経験のメンバーもいるため、柔軟かつ的確な対応が求められます。

本格的な医療行為はないものの、原則一人での勤務が基本なので、あらゆる状況に対応できる知識やスキルが必要です。

また、老健施設は定年を定めていないことが多く、定年を過ぎても長く働ける環境が整っています。ベテラン医師の経験と細やかな気配りが求められ、キャリアが豊富な医師は老健で歓迎されるでしょう。

老健医についてのよくある質問

Q 老健では医師が24時間常駐していますか?

法令では常勤医師1名以上の配置が求められますが、夜間の医師常駐は義務ではありません。実務的には日中が医師勤務の中心で、夜間は看護職が対応し、必要時は医師へ連絡する体制が多く見られます。

Q 夜間に急変が起きた場合はどうなりますか?

看護師が初期対応を行い、状況に応じて医師へ電話で報告します。医師の指示に従い、必要であれば救急搬送を行う流れです。

Q 老健で働く医師はどんな業務をしていますか?

利用者の健康管理、処方、診察、リハビリ指示、家族対応、スタッフ指導、入退所判定など、施設全体の医療面の管理を担います。

Q 老健医は当直がありますか?

病院のような医師常駐の当直が義務づけられているわけではありません。多くの老健では夜間対応は看護師が担い、医師はオンコール等で対応する仕組みをとっています。ただし施設ごとに体制は異なります。

Q 老健の医師は残業が多いですか?

一般的に当直が少なく日中勤務中心のため残業は比較的少ない傾向にあります。ただし、施設長業務や兼務の内容によっては残業が発生する場合があります。

Q 老健医に向いているのはどんな医師ですか?

プライマリ・ケア経験のある医師、総合的な診療が得意な医師、コミュニケーション力が高い医師、キャリア豊富で柔軟な判断ができる医師が向いています。

Q 老健の医師は看取りも行いますか?

施設によりますが、看取りに対応している老健もあります。家族の意向や利用者の状態を踏まえて判断されます。

Q 老健医の求人はどのように探すのが良いですか?

老健医の求人は病院と比べると数が限られており、施設ごとに勤務条件(オンコールの有無、業務範囲、施設長兼務の可否など)が大きく異なります。そのため、一般的な求人サイトだけでは十分な情報が揃わないことがあります。
勤務体制や実際の業務内容まで把握したい場合は、老健の募集に詳しい医師専門の転職エージェントを活用する方が確実です。

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キャリアに悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

医師の働き方には多様性があり、特に老健でのキャリアに迷うことはよくあることです。
老健では高齢者向けの総合的な医療が求められ、医師にとっては新たなスキルやアプローチが必要です。そんな時、医師専門の転職エージェントが頼りになります。

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まとめ(老健は医師が不在の時がある?)

老健施設の医師は、日中の勤務が基本で、夜間は看護師が対応します。
人員配置は法律により定められ、医師の業務は健康管理から診断・処方、リハビリ指示まで多岐にわたります。

土日祝が休日の施設が多く残業が少ないため、ワークライフバランスが取りやすいです。

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