医療の舞台は多様化し、老健(介護老人保健施設)での医師の役割も注目されています。
高齢者が自立した生活を送るための支援を行う施設である老健で働く医師の仕事内容とは、どのようなものか関心がある方も多いのではないでしょうか。

  • 老健に勤める医師の業務内容はどのようなものか知りたい
  • 老健に勤める医師の年収はどれくらいか知りたい
  • 医師が老健で働くメリットや注意点は何か知りたい

このように思っている方に向けて、老健医師の日常業務や施設運営における役割、年収の相場についてご紹介します。
老健の医師の仕事について詳しく知り、キャリアや働き方についての新たな視点を得るために、ぜひ最後までお読みください。

老健(介護老人保健施設)での医師の役割とは

老健(介護老人保健施設)は、病院から退院した高齢者が在宅復帰を目的とする施設です。
高齢者が老健に入所するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 年齢:65歳以上
  • 要介護度:要介護1以上
  • 入所期間:3カ月~6カ月(終身利用は不可)

医師は施設長を兼務することが一般的です。老健では、医師の配置は介護保険法に基づき、施設全体の収容定員が100名の場合、必ず1名の常勤医師が担当します。

老健の医師は、本格的な医療行為は行いません。
利用者の健康管理や健康指導が主な業務です。具体的には、リハビリスタッフや介護スタッフに対して適切な指示を出し、患者の在宅復帰をサポートします。
そのため、医療スキルよりもコミュニケーション能力や人間関係の構築が大切とされています。

老健での医師の主な5つの業務

老健での医師の主な業務には、どのようなものがあるでしょうか?
医師の役割は施設長兼務から利用者の健康管理まで多岐にわたります。
以下では、老健での医師業務について詳しく解説していきます。

1.入所者の健康管理を行う

老健での医師の主な業務の中で中心的な役割は利用者の健康管理です。

老健の利用者は、病院での専門的な治療を終えた後、まだ自宅での生活に戻るほどの回復を遂げていない高齢者です。医師は、このような利用者の健康を維持し、生活の質を向上させるために日常的な健康管理を行います。

老健では、医師が本格的な治療を行うことは少なく、主に健康管理が中心となります。もし利用者が本格的な治療を必要とする場合、医師はその手配を行い、適切な医療機関に紹介します。

2.入居者への健康指導を行う

老健に入居する高齢者は、病院での治療は終えていますが、自宅での生活にはまだ不安がある方が多いです。
そこで
医師は利用者の心身の状態を観察し、在宅復帰に向けたアドバイスをします。
例えば、食事や運動、服薬などの生活習慣の改善や、病気の予防や早期発見の方法などです。

さらに利用者の不安や悩みにも耳を傾け、精神的なサポートも行います。利用者とのコミュニケーションを通して、信頼関係を築き、健康的な生活を送れるように助けるのが、老健医師の役割です。

3.各職員の配置の取り決めを行う

老健施設は医療法人によって運営され、その理事長は通常、病院に在籍しており、施設の日常的な経営は施設長である医師に委ねられています。

医師は施設長として、老健で働く職員の人材管理に携わります。
施設の運営を円滑に進めるために、配置基準に基づいて施設内の職員を適切に配置し、管理を行うのです。

職員の配置においては、介護スタッフやリハビリスタッフなどさまざまな専門職の存在があり、医師はそれぞれの職種を把握し連携し合いながら、利用者の健康と生活の質を向上させる体制を築きます。
医師は単なる業務の統括だけでなく、チーム全体が協力し合いながら利用者の生活の質を向上させる役割を果たすのです。

4.老健施設の財務管理を行う

老健で働く医師は、施設長としての役割も担い、財務管理を行います。
老健では、入居者一人あたりの月間売上が約20万円となり、もし150人の入居者がいるとしたら1カ月で約3,000万円相当です。

光熱費、オムツ代、食費、人件費など多岐にわたる経費も発生します。老健の医師は大きな金額を適切に管理し、老健施設全体の経済的な健全性を維持しなければなりません。
老健の医師の業務は医療だけでなく、施設運営全体を支える役割も果たしています。

5.施設入居者の受け入れの審議を行う

老健での医師の主な業務には、施設入居者の受け入れの審議が含まれます。
老健への入居は、高齢者であっても特定の条件をクリアしなければなりません。
医療と介護のバランスが求められ、入居希望者は面談や施設見学を経て入居判定会議が行われます。


会議には医師だけでなく、介護・看護・リハビリの管理職や事務長も参加し、入居者の受け入れ審議が行われますが、最終判断は医師に委ねられます。

老健医師の業務の中で入居者の受け入れにおいては、事務長や看護師管理職がサポートをし、医師の専門領域が厳密に問われることは少ないです。

老健で働く医師の年収や待遇は?

老健で働く医師の年収と待遇について、エリアによる変動はありますが、一般的な相場は年収1,200万~1,400万円程度です。
一般の医療機関に比べやや低めではありますが、その代わりに勤務の負担が軽減されることが魅力とされています。
老健施設は「負担の少ないセカンドキャリアの場」として医師に認識されており、働きやすさから希望者も多いです。

老健勤務は「病院と自宅の橋渡し」を担う重要な役割を果たしています。QOL(生活の質)を重視する医師や「患者とじっくり向き合いたい」という志向性を持つベテラン医師にとって適した職場と言えます。

老健の医師で働く4つのメリット

老健での医師業務には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
老健の医師として働くメリットには、自由な勤務ペースや患者と深い関わり、定年後も働ける柔軟性、少ない負担などが、魅力的な点として挙げられます。
以下では老健の医師として働く4つのメリットについて詳しく紹介します。

1.自由なペースで勤務ができる

老健で働く医師にとって、自由なペースでの勤務は魅力的なポイントです。
医師が施設長として勤務することが一般的であり、勤務時間などは医師自身の裁量で決められることが多いです。

また、医師が施設長として活動する際には、患者の健康管理やスタッフの指導など幅広い業務が求められますが、その分、自身の理念やアプローチを反映させた理想の職場を築くことが可能でしょう。

2.定年を過ぎても働くことができる

老健での医師の魅力の1つは、定年を過ぎても働ける柔軟性です。
通常の医療機関では多くが65歳を定年としていますが、老健では定年を定めていない施設が多いのが特徴です。

また、老健の医師は専門的な医療対応や救急対応が不要で心身の負担が少ないため、定年を迎えた後でもセカンドキャリアの活動の場として、働きやすい職場と言えます。
老健での勤務は医療スキルよりも経験や対人スキルを重視するため、医師が長期間にわたって働くことが可能です。

3.患者一人ひとりと深く向き合うことができる

老健の医師は、一般的な病院の医師とは異なり、利用者の健康管理と健康指導が日常的に行われ、医師が利用者の居室を訪れることも多いです。
患者一人ひとりと深く向き合う時間を持つことができ、それが老健の医師の魅力となっています。

4.当直がないことが多い

老健では高齢者の介護度が軽いこともあり、医師は比較的ゆるやかなスケジュールで業務を進められるため、仕事とプライベートの調和が取りやすい環境となっています。

また、老健医師は基本的に残業がなく定時で帰宅できるため、体力的な負担が比較的少ないです。
当直もオンコールもない老健がほとんどで、夜中に緊急電話を受けた医師が出勤する必要はありません。土日祝日に休みを取ることも可能です。

老健の医師として働く3つの注意点

老健での医師業務には、多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点もあります。
以下では、老健の医師として働く際の3つの注意点について紹介します。

注意点について理解すると、老健での医師業務をより円滑に行えるでしょう。

1.医療行為のスキルアップは望めない

老健での医師勤務には、「物足りなさ」と言えるデメリットがあります。
老健では原則として医師は医療行為を行わず、患者に治療や施術を提供することが許されません。
医師が行う医療行為が増えると老健の経営に負担がかかり、運営が難しくなるためです。

老健の医師が患者の病状に「もっと治療が必要だ」と感じた場合でも、自ら治療を行うことはできず、医療機関への転送が求められます。
このような制約により、病院勤務と比較すると老健での医師はスキルアップや医療技術の向上は期待できません。

2.高いコミュニケーション能力が求められる

老健の医師には、異なる職種やバックグラウンドを持つスタッフとの円滑なコミュニケーションが求められ、高いコミュニケーション能力が必要です。

老健では医療スタッフだけでなく、介護スタッフ、リハビリスタッフ、薬剤師、管理栄養士などさまざまな職種が協力して業務を行います。
スタッフは、それぞれ異なる賃金や勤務形態、学歴、経歴を持っており、サービス提供に対する思いや立場もさまざまです。

多様性から、スタッフ間での認識のずれや意見の対立が生じやすく、コミュニケーションが難しくなる場面も考えられます。
解決が難しい場合には、医師が施設長として介入し、調整します。

3.求人の競争が激しい

老健での医師のポジションは、原則として1つの施設に一人であるため、求人の数は限られています。
また、老健医師は自身の健康が維持される限り、長期間にわたり勤務可能であり、医師のポジションがいつ開くかは予測が難しいです。

老健での医師募集は条件が魅力的であるため、希望者が殺到することを避けるため、求人は非公開で扱われることがあります。
この激しい競争状況のため、老健で活躍する医師を目指す人は、非公開求人にも注目する必要があります。

キャリアに悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

医師としてのキャリアに悩んだ場合、医師専門の転職エージェントがおすすめです。
特に、老健での医師募集は非公開が多く、一般的には見つけにくいものです。そこで、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」が役立ちます。

メッドアイは、医師の転職をサポートする専門のエージェントで、無料相談や非公開求人の提供など、医師のキャリア支援に幅広く対応しています。
少しでも転職を検討しているなら、まずは相談してみることをおすすめします。

まとめ(老健施設での医師の仕事内容とは?)

今回は、老健での医師の仕事内容について解説しました。
老健の医師は、患者の健康管理と施設運営に関与し、チームとの連携が求められます。
自分のペースで働ける環境とストレスの少なさが魅力で、患者との深い関わりから、医師としての充実感を得られます。

年収は約1,200万円から1,400万円であり、定年後も勤務可能です。
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