医師としてのキャリアを歩む中で、転職を考えることは決して珍しくありません。
しかし、「転職回数の多さが不利になるのでは?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

医師として望ましい働き方を見つけるには、勤務先の体制や契約内容に注意しながら、自身の価値観やライフプランに適切な環境を見極める必要があります。

この記事では、医師の平均転職回数や、採用担当者が持つ印象、転職回数が増えすぎないための対策、そしてそれでも転職を重ねる必要がある場合の対応策についても詳しく解説します。

<この記事を読んでわかること>

  • 医師の平均転職回数
  • 過去の転職回数を採用担当者はどう見るのか
  • 転職回数を増やさないための方法



医師の平均転職回数は?

医師の転職回数は、勤務形態やライフステージによって差がありますが、40代〜50代の医師では平均して4〜5回程度といわれています。これは他業種と比較してもやや多めです。

勤務先別の傾向

勤務先傾向
大学病院勤務の医師転職回数は少なめ(1〜2回程度)
(医局人事異動は含まない)
民間病院・クリニック勤務3〜5回以上も珍しくない
非常勤・スポット勤務の医師職歴が多くなりやすい

大学病院などの一部の医療機関では、定年まで勤め上げる医師もいますが、多くの医師はライフステージやスキルの変化に応じて柔軟に転職を行っています。

特に20代〜30代前半では、初期研修・後期研修の終了後に初めて本格的な転職を経験することが多く、年齢を重ねるごとに転職経験が蓄積されていきます。

また、医師は研修中に多様な業務内容や症例に触れることで、自らの適性を見極めていきます。その過程で、専門分野や働く場所に対する希望が明確になることがあり、結果として新たな職場を求めることになります。

令和6年に厚生労働省より発表されたデータでは、医療福祉業界の平均勤続年数は9.3〜9.7年とされていました。平均勤続年数が10年を超える業界も多いことから、比較的転職回数が多い業界だといえるでしょう。
参考:令和6年賃金構造基本統計調査

医師の転職回数が多くなる3つの理由

医師の転職回数が他業種に比べて多くなる背景には、医師不足という社会的要因や、医療機関の構造的な特性が深く関わっています。

1. 医師は売り手市場で需要が高い

厚生労働省が発表した医師需給推計によると、医師の需要は供給を上回っており、2029年~2032年ごろに需給が均衡すると推測されています 。
参考:令和2年医師需給推計の結果|厚生労働省

特に地方や人口減少地域では慢性的な医師不足が続いており、医師にとっては“売り手市場”の状況が続いています。これにより、希望の勤務条件に合った職場へ転職しやすくなっているのが現状です。

2. ライフステージに応じて柔軟に働き方を選べる

医師の転職回数が多くなる背景には、ライフステージの変化に応じて働き方を柔軟に選択しやすいという特性もあります。

結婚や出産、育児、さらには親の介護など、人生の節目に応じて勤務形態や職場環境を見直すケースは少なくありません。
たとえば、「夜勤が少ない職場に移りたい」「在宅医療に関心があるので、地域密着型の医療機関に転職したい」「子育てと両立するために非常勤勤務に切り替えたい」といったニーズが生じた際、それに合わせて転職という選択をする医師は多く見られます。

このように、医師という職業は一般的な職種と比べて比較的多様な働き方が可能であり、それが転職を通じて実現しやすい環境にあります。
結果として、ライフイベントと仕事を両立させるための転職が積み重なり、転職回数が増える傾向につながっているのです。

3. キャリア形成において転職が前提となっている

医師の転職回数が多くなる理由のひとつに、そもそも医師のキャリア形成において「病院を移ること」が一般的となっているという点が挙げられます。
医学部を卒業した後、まずは初期研修医として2年間の臨床研修を行い、その後は専攻医として専門性を深めていきますが、この過程で研修先の病院を変えることは珍しくありません。

さらに、専門医資格の取得を目指す際には、より多くの症例数や高度な医療機器を求めて、別の病院での勤務を選択する医師も多いでしょう。

また、医局に所属している場合は、人事異動として複数の関連病院に派遣されることも多く、そのたびに「転職」という形式がとられます。

こうした制度的な仕組みや文化により、医師にとって転職はキャリアの一部であり、特別なことではないという認識が浸透しています。
そのため、転職回数が多いからといって、それだけでネガティブな評価を受けることは少なく、むしろ経験の幅を広げるための前向きな選択として受け入れられているというのが転職回数が多くなる理由の一つでしょう。

過去の転職回数で採用担当者はどう思う?

医師の平均転職回数は4〜5回と比較的多い傾向にあります。そのため数回の転職経験があったとしても、採用担当者からネガティブな印象を持たれることは少ないでしょう。

しかし採用担当者によっては、「あまりに短期間で職場を変えている」「理由が曖昧」な場合などをマイナス要素と判断することもあります。

採用側がチェックしているポイント

  • 転職理由に一貫性があるか
  • 短期間で辞めた理由は説明できるか
  • 次の職場では長く働く意志があるか
  • どんなスキル・実績を積んできたか

たとえば、以下のようなケースではマイナス評価になりやすいです:

ケース採用側の懸念
1年未満での退職を複数回繰り返している忍耐力や協調性が不安視される
キャリアの方向性がバラバラ計画性のなさ・適応力への疑念
トラブルによる退職が多い周囲との人間関係に課題があるのではないかという懸念

ただし、転職の目的が明確であれば、回数が多くても好意的に捉えられることもあります。
例:「専門医取得のために特定の科に集中したい」「家庭の事情で勤務地を変える必要があった」など

医師が転職回数を増やさないための5つの方法

今後の転職回数を抑えつつ、自分に合った職場で長く働くには、以下の対策が有効です。

  • 自己分析を徹底する
  • キャリアプランを長期的に考える
  • 転職の目的や条件を明確化する
  • 転職先の情報収集を徹底する
  • 信頼できる医師専門エージェントを利用する

ここでは、転職回数を増やさないために重要な上記5つのポイントについて、詳しく解説します。

1. 自己分析を徹底する

自分にとっての働きやすさとは何かを明確にすることが、転職を繰り返さない第一歩です。
勤務時間、通勤距離、診療科、チーム体制、ワークライフバランスなど、譲れない条件をリストアップし、自分の価値観やライフスタイル、何を重視しているのかをきちんと理解しましょう。

2. キャリアプランを長期的に考える

転職を検討する際は、目先の不満や条件だけで判断せず、5年後・10年後のキャリアを見据えて考えることが重要です。

将来どんな医師になりたいか、どんな働き方を実現したいかを明確にし、それに必要な経験やスキルを積める職場を選ぶことで、着実にキャリアを構築できます。
長期的な視野を持つことで、戦略的で意義ある転職が可能になります。

3. 転職の目的や条件を明確化する

先ほどの自己分析で把握した自身の価値観などから「給与を上げたい」「勤務時間を減らしたい」「新しい領域に挑戦したい」など、転職で実現したいことを明確にすることが大切です。

目的や優先順位があいまいなままだと、求人選びの軸がぶれ、結局またミスマッチを繰り返す可能性があります。転職はキャリアの転機であるからこそ、自分にとって何が重要なのかを言語化しておくことが成功の鍵になります。

4. 転職先の情報収集を徹底する

求人票に書かれている条件だけでは、その職場が本当に自分に合っているかどうかは分かりません。
「退職金制度の有無」や「当直の回数」、「転勤の可能性」など、自分や家族の生活にも関わる条件は事前に明確にしておくことが肝要です。将来的な生活設計にも関わるため、こうした条件を事前に確認しておくことで、不安要素を取り除くことができます。

また、実際に働いている医師の声や、離職率、スタッフ間の雰囲気、業務の実態など、できるだけリアルな情報を集めましょう。過去の職場で不満だった点を振り返り、同じような環境を避ける意識を持つことも大切です。
納得感をもって転職先を選ぶことで、長期的な定着につながります。

5. 信頼できる医師専門エージェントを利用する

医師専門の転職エージェントは、医療業界の知識が豊富で、求人情報も一般には出回らない非公開案件を多数扱っています。
エージェントは単なる求人紹介だけでなく、希望条件に合った職場の選定、面接対策、条件交渉、入職後のフォローまで一貫してサポートしてくれます。第三者の視点を取り入れることで、自分では気づかなかったミスマッチを防げる点も大きなメリットです。

医師専門の転職エージェント「メッドアイ」では、採用担当者との交渉を専門のコンサルタントが代行します。
また、履歴書や職務経歴書の作成に関するアドバイスをはじめ、忙しい医師に代わって転職先の内部事情などの情報収集もサポートしてくれます。
現在の職場で多忙を極め、なかなか転職活動に時間を割けない方は、ぜひ「メッドアイ」の利用を検討してみてください。

転職回数が多い医師が選ばれるためにできる3つの工夫

医師としての転職回数が多い場合でも、選ばれる医師になるために工夫できるポイントがあります。採用側が不安を感じやすい点を先回りして対処することで、印象を大きく改善できます。

1. 職務経歴書で「転職の軸」を一貫させる

転職理由をただ並べるのではなく、「一貫したキャリアビジョン」に基づいて職場を選んできたことを明確にしましょう。


「地域医療に携わる経験を積むため、複数の中小病院を経験し、現在は訪問診療を中心に活動」
など、戦略的な転職だったことを伝えることで説得力が増します。

2. 面接では「定着意欲」と「貢献意欲」を具体的に伝える

転職回数が多い場合、「すぐ辞めてしまうのでは」と懸念されやすいため、次の職場では長く働く意志があることを明言しましょう。

  • 今後の5年・10年のビジョンを語る
  • 具体的に職場でどう貢献したいかを話す

これにより、「今回は定着しそうだ」と安心感を与えることができます。

3. 転職理由をポジティブに変換する

ネガティブな退職理由も、「よりよい医療を提供したい」「自分の専門性を活かしたい」といった前向きな言葉に言い換えることで、印象は大きく変わります。

まとめ(医師の転職回数が多い場合の印象)

今回は、医師の転職回数に関するさまざまな疑問について解説しました。
医師の転職回数は4〜5回と比較的多いため、転職が多い業界と判断できます。そのため、転職回数よりも転職の理由が重要視されるといえるでしょう。
前向きな理由での転職であれば問題ないものの、忍耐力や協調性を疑われるような理由だと、転職しづらくなるかもしれません。
もし後ろ向きな理由で転職した過去がある場合は
「なぜそうなったのか」という根本的な理由からしっかりと準備し、戦略的に行動することが求められます。

医師の転職には、それぞれの職場の特徴や個々のキャリア志向に大きく左右される側面があります。たとえば、過重な業務負担に見合わない待遇、複雑な人間関係などに悩みを持つ医師は少なくありません。
そうした背景から、比較的勤務時間が安定し、ストレスが少ないとされる産業医などの職種に転職するケースも増加傾向にあります。

一方、臨床現場から離れることによるやりがいやスキル面の不安を感じる医師もおり、転職先選びには慎重な判断が求められます。
また、年収の金額だけに目を向けるのではなく、ライフスタイルや働き方のバランスを重視する姿勢も重要です。

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今回の記事を参考に、転職回数が今後の動きにどう影響するかを理解したうえで、ご自身が望む将来のビジョンに進んでください。