開業やスキルアップなどを理由に転職を考える医師は少なくありません。
その中でも特に多いのが「医局を辞めるのは何年目が良いのか?」という疑問です。
医局はキャリア形成の基盤でもあるため、辞める時期を誤ると転職先の選択肢が狭まったり、不利になる可能性もあります。
一般的には【専門医取得後の5~10年目】に辞める医師が多く、キャリアや待遇の幅が広がりやすい時期といわれています。ただし、早期退局するケースや10年以上勤務してから辞めるケースもあり、一概に正解はありません。
この記事では、勤続年数ごとのメリット・デメリット、辞める際の注意点を整理し、後悔しない判断ができるよう解説します。
医局を辞めるベストな時期は「何年目」?
医師は専門医資格を取得することで、その分野における知識と技術を証明できます。
ただし、専門医は必須資格ではなく、取得するかどうかはキャリアの方向性によります。
ここからは、年次ごとの辞め時とメリット・デメリットを見ていきましょう。
①専門医を取得しないで辞める場合(勤続3〜5年)
医師としての経験が浅い3〜5年目で、専門医を取得せずに辞めるのは不安に感じる方もいるでしょう。
しかし、実際にこのタイミングで退職する医師は一定数います。将来の方向性によっては、早期退局も選択肢になり得ます。
<専門医を取得しないで辞めた場合のメリット>
- 時間とお金の面で医局に縛られなくなる
- 雑用や関連病院などでの長時間労働から解放される
- 低賃金・過重労働の環境を早期に脱却できる
専門医の取得を判断する基準は『将来何をやるか』です。
専門医しかできない業務を行いたい場合や、専門医の資格があると有利になる道に進みたい場合は、専門医を取得する必要があります。
しかし、専門医がなくても将来やりたい業務に支障がなければ、取得しないことも選択のひとつです。
以下が専門医を取得せずに辞める主な理由です。
- 将来、やりたいことに必要なスキルはすでに身についた
- 別の診療科に進む
- 医師として働かない
専門医を取得する・しないは、あくまで自分の判断です。本当に後悔しないか見極めましょう。 あわせて読みたい
<専門医を取得しないで辞めた場合のデメリット>
- 専門医がないと能力を証明できず、転職で不利になる
- 希望の求人に応募できない可能性がある
専門医を取得せずに辞めると、転職先を探す時、知識と技術があっても証明できなければ不利になります。
求人内容によっては専門医でないがために、希望する働き方ができなくなる可能性もあるでしょう。
「自分のスキルが市場で通用するか」を客観的に確認することが重要です。 あわせて読みたい
転職エージェントに相談すると、現時点で応募できる求人や評価されるスキルを把握できます。
医師専門転職エージェントの「メッドアイ」では、無料でさまざまなサポートを実施しています。
②専門医を取得してから辞める場合(勤続5年~)
勤続5年目以降で専門医を取得してから辞める医師も多くいます。
専門医を持っているかどうかで転職先の選択肢や条件に大きな差が出るため、このタイミングでの退局は有力な選択肢となります。
<専門医を取得して辞めた場合のメリット>
- 専門医があると転職の選択肢が広がる
- 採用側からの評価が上がり、年収・ポストに有利
専門医の取得に必要な年数の目安は5年前後です。実際、多くの医師が「専門医を取得してから辞めよう」と考えています。 あわせて読みたい
専門医は「最低限度の知識と技術の証明」として、採用側の判断材料になる点も大きなメリットです。
<専門医を取得して辞めた場合のデメリット>
- 専門医が不要な転職先では意味を持たない
- 資格の更新が必要
専門医を必要としない職場に転職する場合、それまでに費やした時間が活かせない可能性があります。 あわせて読みたい
また専門医の資格は更新する必要があり、更新には取得した専門科目に従事し続けていることが条件です。
転科などで科目が変わった場合は、更新ができなく失効してしまうデメリットもあります。
③専門医取得後にある程度経験を積んでから辞める場合(勤続10年~)
専門医を取得した後、さらに数年間の実務経験を積んでから退局するケースです。
経験や実績を持った状態で転職活動に臨めるため、安定したキャリア形成を望む医師に選ばれることが多いタイミングです。
<経験を積んでから辞めた場合のメリット>
- 臨床経験が豊富なため、転職市場で高く評価されやすい
- 管理職ポストの求人にも応募可能
- 専門医としてだけでなく、チームマネジメント経験や後輩指導経験も評価対象になる
- 開業を視野に入れる場合も、診療・経営の基盤を築きやすい
経験を積んだ状態で辞めることで、専門医資格に加え、実務経験やマネジメント経験がアピールポイントとなります。そのため、希望条件に沿った転職先を見つけやすい点が大きな強みです。 あわせて読みたい
<経験を積んでから辞めた場合のデメリット>
- キャリアチェンジが難しくなる場合がある
- 年齢が上がるにつれ、ポストや地域によっては求人が限られることもある
- 医局内で役職や責任が増えるため、辞めにくくなるリスクがある
ある程度経験を積んでから辞める場合は、メリットが大きい反面、「年齢」と「タイミング」が重要になります。 あわせて読みたい
転職市場での需要が高いうちに動けるかどうかが成功の分かれ目になるでしょう。
医局を辞める前にやっておくべき3つのポイント
医局を辞める前に、さまざまな不安を解消しておくことが大切です。
ここでは、医局を辞める前にやっておくべき3つのポイントをご紹介します。
- 転職先を決めておく
- 円満退職を目指す
- 既に退局した医師から情報収集する
①転職先を決めておく
転職を考える理由は人それぞれですが、「辞めたい」という気持ちだけで退職してしまうのは危険です。
次の勤務先が決まらないまま辞めると、収入が途切れて不安な時期を過ごすことになりかねません。
また、一度退職を申し出た後に「やはり撤回したい」となるのは避けたいところです。そうした事態を防ぐためにも、必ず転職先を確保してから退職の意思を伝えるようにしましょう。 あわせて読みたい
②円満退職を目指す
退職理由が医局への不満であっても、そのまま伝えるのは得策ではありません。
医療業界は狭い世界で、噂や評価は転職先に伝わることがあります。トラブルを避け、今後のキャリアにも悪影響を残さないために、円満退職を目指すことが重要です。
退職時に意識したいポイントは以下の2つです。
- 退職理由はポジティブに伝える
- 退職の意思は半年以上前に伝える
退職理由は「家族の事情」「ライフプラン」「現職では叶えられないキャリア目標」など前向きな内容にしましょう。また、半年以上の余裕をもって伝えれば、医局側も後任探しや引継ぎをスムーズに進めることができ、あなた自身も円滑に次の職場へ移ることができます。
円満退職をしておけば、後々スポット勤務の依頼や紹介を受けやすいというメリットもあります。 あわせて読みたい
③既に退局した医師から情報収集する
退職理由や伝えるタイミングに悩むときは、すでに医局を辞めた医師から経験談を聞くのも有効です。
実際に退局した人の話からは「うまく円満退職できたケース」と「トラブルになったケース」の両方がわかります。 あわせて読みたい
そうした生の情報を参考にすることで、自分にとって最適な退職の進め方がイメージしやすくなります。
医局を円満に辞めるための具体的ステップ
医局を辞めるタイミングを決意した後は、辞め方や手続きの流れを押さえておくことが重要です。
退局の準備や書類の扱い方、伝え方のコツを理解しておくと、トラブルを避けつつスムーズに次のステップに進めます。
- 医局内のルール(就業規則など)を確認
- 直属の上司(指導医や医局長)に口頭または退職願にて意思表示
- 教授への報告タイミングを相談
- 教授に直接面談で退職意思を伝える(秘書を通じて日程調整)
- 必要書類(退職願・退職届)の提出
- 引き継ぎ・退職手続きに移行
- 最終勤務日と挨拶まわりを終えて退職
より詳しい手順や具体例は、以下の記事でわかりやすくまとめています。 あわせて読みたい
医局からの退職はトラブルになることも
どれだけ綿密に準備しても、退職時のトラブルを完全に避けられるとは限りません。
医局特有の人間関係やしがらみが影響するためです。ここでは、よくある問題とその対策を紹介します。
退職時によくある3つのトラブル
- 退職届をすぐに受理してもらえない
- 強く引き留められる
- 退職が決まった途端に人間関係が悪化する
もっとも重要なのは「退職する強い意志」を示すことです。
引き留められても退職日をあらかじめ決め、その期日を守って辞める姿勢を貫きましょう。曖昧な態度を取ると、引き延ばされてしまう可能性があります。 あわせて読みたい
退職の悩みはプロの転職エージェントに相談するのがおすすめ
「もう辞めたい」と思っても、実際の転職活動は仕事と並行して行う必要があり、途中で挫折しそうになることもあります。さらに医局からの圧力に押され、退職をあきらめてしまうケースも少なくありません。
そんな時は、医師専門の転職エージェントを活用するのがおすすめです。
転職エージェントは数多くの医師の退職・転職をサポートしてきた実績があるため、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスをしてくれます。
医師専門の転職支援に特化した「メッドアイ」 は、ノウハウが豊富でキャリアプランに合った提案が可能です。無料で利用できるため、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
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まとめ(医局を辞めるベストな時期)
医師が転職する時は、転職の意思を伝えるタイミングや転職の理由などが大切です。
転職したいと思っていても、踏み切れないこともあるでしょう。
医局を辞めるベストな時期は、専門医の取得有無やキャリアプランによって変わってきます。
そして、医局を辞めるときは辞める前に下記の3つをやっておきましょう。
- 転職先を決めておく
- 円満退職を目指す
- 既に退局した医師から情報収集する
辞めることに関して悩んでいる時は、医師専門転職エージェントに相談をすることも方法のひとつです。 あわせて読みたい
一人で悩まずに、経験豊富な転職エージェントに話を聞いてもらいましょう。