高い技術が要求され、医師の花形診療科と言われることもあるのが外科です。
しかし、その一方でハードワークであることも知られています。
「外科医として働いているがこのまま外科医を続けるか悩んでいる」
「外科医からのキャリアチェンジについて悩んでいる」
この記事では、外科医としての働き方に悩む医師のために、転職エージェントの視点から外科医の転職事情をご紹介します。
外科医からキャリアチェンジする場合の例や、外科医が転職で注意すべきポイントについても解説しますので参考にしてください。
外科医が転職を考える主な理由3選
外科医がキャリアチェンジや転職を考えるタイミングとして多いのは、仕事の忙しさや大変さに限界を感じた時です。
今の仕事を辛く感じるポイントは人それぞれですが、大きく分けると以下の3つになります。
- 激務でワークライフバランスが保てない
- 訴訟リスクが怖い
- 体力や視力に衰えを感じる
それぞれの理由について解説します。
1.激務でワークライフバランスが保てないため
勤め先の環境によって違いはあるものの、外科医の仕事は総じてハードワークであることが特徴です。
外科医は、自分が執刀した患者のアフターケアも担当するため、手術そのものだけでなくその前後の業務量も増えます。
また、予定手術だけでなく緊急手術が発生すると、想定以上の患者数を受け持つことも珍しくありません。
担当する患者数が増えるほど、病棟管理業務も増え、休日であっても呼び出しがかかることが多くなります。
プライベートを犠牲にして働くことが日常茶飯事で、ワークライフバランスを整えるのが難しいと、今の仕事から離れたいと感じてしまうのも無理はないでしょう。 あわせて読みたい
2.訴訟リスクが怖いため
以前と比べると、医療ミスや事故を起因とする訴訟は一般的になってきました。
特に外科医は直接患者の体にメスを入れる立場ですので、こうした訴訟リスクが高い傾向にあります。
病気を治すために最善を尽くしていても、人である以上、ミスや事故を100%防ぐことはできません。
しかし患者側からみれば、事故やミスが原因で症状が悪化したり、命を落としたりするようなことになれば、医療側の責任を追求するのは自然なことでもあります。
最善の治療を行いたい気持ちと、ミスを恐れる気持ちの板挟みは、外科医が悩みやすい要素の1つです。 あわせて読みたい
訴訟リスクやミスを恐れる気持ちが勝ってしまうと、転職やキャリアチェンジを考えるきっかけになりやすいでしょう。
3.体力や視力に衰えを感じるため
外科医の仕事で重きを占める手術では、手先の器用さや集中力が求められます。
それと同時に、精密な手技を行うには視力も重要です。
日々の勤務時間の長さやハードワークで体力に自信がなくなったり、加齢や疲労が原因で視力に影響が出てきたりしてしまうと、外科医として働き続けるのが難しくなります。
体力の衰えを抱えながら仕事を続けることで、医療ミスのリスクも上がりますし、自分自身の健康を損ねるリスクも出てきます。 あわせて読みたい
体力が原因で続けることが難しいと感じ、セカンドキャリアを模索するタイミングも、外科医から別の道に転職を考えるきっかけの1つです。
転職するなら外科医か転科か?
外科医が働き方に悩み転職を考える時、外科医として別の職場に転職する場合と、外科以外の診療科に転職する場合に分かれます。
どちらを選ぶかは転職したい理由によりますが、ここでは、外科医として転職するケースと転科するケースとでの転職事情をご紹介します。
外科医を続ける場合
医局を出て民間病院を目指すケースでは、自分が技術を磨きたい分野に精通した病院を選ぶ必要があります。 あわせて読みたい
特に新たに専門外の分野に挑戦したい場合は、転職先で研鑽する期間を考慮すれば、40代のうちには転職しておいたほうが有利です。
また、チーム医療の体制ができている病院を選ぶ場合は、転職先の医師の年代層を知っておくのがおすすめです。
医師の世界では年次を重要視する傾向が強いため、上司が自分より年下の職場では、やりにくいと感じる可能性があります。
転科を選ぶ場合
続いては、外科医の転科事情を見てみます。
「外科医の仕事が自分に合っていない」「ハードワークが辛い」などの事情で、転科を考える医師は一定数います。
株式会社メディウェルが行ったアンケートによると、転科を考えたことがある医師は全体では4割ほどでした。外科医は以下の結果で、脳神経外科が41%と最も高い割合です。
診療科 | 転科したいと思ったことがある(過去・現在とも) | 転科したいと思ったことはない |
---|---|---|
一般外科 | 38% | 62% |
消化器外科 | 36% | 64% |
脳神経外科 | 41% | 59% |
整形外科 | 34% | 66% |
形成外科 | 33% | 67% |
転科先として人気が高い診療科のランキングは以下の通りです。
画像引用:https://www.dr-10.com/lab/change-departments/ あわせて読みたい
外科医のキャリアチェンジ例5選
外科で働くことに限界を感じて転科すると決断したら、どの診療科に移ればいいでしょうか。
ここからは、外科医が転科しやすい領域で代表的な例を5つご紹介します。
1.外科と同領域の内科へ転職をする
外科医がスムーズにキャリアチェンジしやすいと言われるのが内科です。
特に、外科で専門にしていた領域と同じ分野の内科へ移行すれば、これまでの知識や経験を活かして働くことができます。
例えば消化器外科医が消化器内科へ転科したり、心臓血管系の外科医が循環器内科に転科するといった具合です。
また、一般内科への転向も人気があります。どちらも患者としっかり向き合うことができ、外科とは違ったやりがいを感じられるでしょう。 あわせて読みたい
外科医と同レベルの収入を担保するのが難しいケースもありますが、医局から民間病院への転職であれば年収アップも期待できます。
2.緩和ケア領域へ転身をする
緩和ケア領域への転科も人気があります。
外科医の場合、がん治療の最前線で手術やその後のケアに携わり、緩和ケアの必要性をよく知っていることが強みです。
新たに学ぶべき要素は多いですが、夜間呼び出しや時間外勤務が少ない職場もあり、ワークライフバランスを保ちながら働くことができます。
ただし、専門的な緩和ケア病棟を設けている医療機関があまり多くないことや、外科以外の医師にも転科先として人気があるため、門戸が狭いのが難点です。 あわせて読みたい
3.老人保健施設などの施設へ転職をする
外科医として長く活躍した後のセカンドキャリアとして転科を考える場合は、老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)も選択肢の1つです。
特に専門性を問われずに転職でき、当直やオンコールなどからも解放されます。
臨床医として外来や急性期病棟で働いていた時とは勝手が異なるため、慣れるまでは大変かもしれませんが、生涯現役をゆったりと貫ける働き方です。 あわせて読みたい
こちらも求人数が潤沢ではなくやや門戸が狭いので、早めに求職を始めてじっくり探すことをおすすめします。
4.産業医や社医として民間企業へ転職をする
外科医に限らず多くの医師のキャリアチェンジ先として人気があるのが産業医や社医などの一般企業への転身です。
基本的に定時勤務となり、休日も企業カレンダーに則って取得できるため、ワークライフバランスを向上させられます。
ただし、募集が少なく、メンタル疾患に精通した医師や産業医経験者が有利なため、外科医にはやや不利かもしれません。 あわせて読みたい
一方で社医であれば、がんや脳疾患などの外科医としての経験が役に立つため、外科医でもチャレンジしやすいでしょう。
5.在宅・訪問診療医へ転職をする
外科医が求められる精密さやプレッシャーが辛いと感じる場合は、訪問診療や在宅医療の領域への転身もおすすめできます。
在宅医療分野は需要が増えていて、求人も見つけやすくなっています。
内科医のほうが有利と思われがちですが、高齢で寝たきりの患者には胃瘻や褥瘡の対応もあり、外科医のスキルも十分活かせる職場です。 あわせて読みたい
また、夜間呼び出しや休日対応など、フットワークの軽さも求められるため、外科医としてハードワークに明け暮れた胆力も活かせます。
外科医が転職する時に気をつける3つのポイント
転職は医師にとって珍しいことではありません。
キャリア形成のため経験の積める病院への転職や、収入アップのために転職など理由はさまざまです。
転職を考え、実際に転職した医師は全体の4割~半数にも上るというデータもあります。
ここからは、外科医が転職を考える際に気をつけておきたいポイントを解説します。
大切なのは以下の3点です。
- 転職目的を明確にする
- 余裕を持って円満退社する
- 転職エージェントを活用する
1.転職目的を明確にする
「なぜ転職したいのか」「転職で何を叶えたいのか」という目的は明確に持っておきましょう。
転職したい理由はさまざまだと思います。
転職理由のトップ10は以下の通りです。
順位 | 転職理由 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 家庭事情(転居・育児・介護など) | 18.0% |
2位 | 人間関係の不満を解消したい | 16.6% |
3位 | 加齢による勤務内容の変更 | 15.3% |
4位 | QOLをよくしたい | 14.5% |
5位 | 過剰な業務負荷の軽減 | 11.5% |
6位 | 年収アップ | 9.8% |
7位 | より多くの経験を積みたい | 9.4% |
8位 | 勤務先の将来性に不安 | 7.6% |
9位 | 職場復帰 | 5.8% |
10位 | 独立開業の準備をしたい | 5.4% |
*エムスリーキャリア「【2020年版】医師7,000人の転職理由ランキング」より一部抜粋して引用
どのような理由であれ、転職を考える際には一度振り返って整理してみることをおすすめします。
キャリアアップのために転職したいのであれば、具体的にどのようなスキルや経験が足りないのかをリストアップしてみましょう。
それが次の職場で求める条件にそのままつながります。
漠然と転職先を探すのではなく、目的を持って探すことで、転職で失敗してしまうリスクを減らすことが可能です。
また、転職先で叶えたい条件が全て解決するとは限りません。
転職の条件をリストアップしたら、その中で優先順位をつけておくとよいでしょう。
理由が明確だと転職先探しもスムーズになり、途中で目的を見失って目移りしてしまうといったことも避けられます。 あわせて読みたい
2.余裕を持って円満退社する
転職に向けて活動を開始したら、今の職場の退職も慎重に検討しましょう。
人手不足の医療業界は、急に退職を申し出ても引き止められてしまうことがよくあります。
後任の先生への引き継ぎなども十分に行う必要があるため、辞める半年前くらいには退職の意思を伝えられるとベストです。
転職先が決まったら、早めに申し出るようにしてください。
この時に気をつけたいのが、感謝の気持ちを忘れないことです。
感謝を示すことで、退職までの残り期間も気持ち良く働くことができ、病院側の印象も変わりますので、円満に退職することができるでしょう。
円満に退職することは、次の職場での評判にもつながります。 あわせて読みたい
医療業界は思っているより狭いので、前の職場で印象の悪い辞め方をしていると伝わってしまうこともあるためです。
転職後のことまで考えて、期間にゆとりを持って円満に退職できるよう気をつけることが大切です。
3.転職エージェントを活用する
医者の転職は情報収集に労力を必要とします。
自分の転職動機から導き出した転職先に求める条件が、求人情報を見ただけではわからないことが多いためです。
例えば、経験を積むためにさまざまな症例が診られる病院を探している場合、求人情報に載っている業務内容や、病院の診療科案内だけでは詳細がわからないこともしばしばです。
知りたい情報を人伝てや口コミなどから探すことになり、勤務条件以外にも調べることが多くなります。
また、常勤先での人間関係が原因で転職先を探している場合は、求人情報から職場の雰囲気を読み解くことは難しいでしょう。
このような時、頼りになるのが転職エージェントの存在です。
特に医者の転職に特化したエージェントであれば、病院内のスタッフの雰囲気などにも精通しています。
また、ネット上で公開されていない求人情報なども持っているため、より多くの情報を手軽に知ることが可能です。
希望の職場を探すために、1つでも多くの候補から選べるというのは心強いものです。
そして、転職情報を見ていくことで、求められる人材を知り、自分の市場価値も把握できるというメリットがあります。 あわせて読みたい
転職を検討している段階でも、キャリアプランをエージェントに気軽に相談してみるのがおすすめです。
医師専門の転職エージェントならメッドアイ
外科医の働き方に悩んだら、何に対して悩んでいるのかを明確にしましょう。
悩みを可視化することで、外科医としてより良い環境を探すのか、それともキャリアチェンジしたほうが良いのかを判断しやすくなります。
客観的に判断した結果、外科医として転職するにせよ、キャリアチェンジを模索するにせよ、一度専門家に相談することをおすすめします。
メッドアイは医師専門の転職エージェントとして、医師一人ひとりの状況や悩みに寄り添った提案を心がけています。
無料相談を通じ、非公開求人を含む豊富な情報を提供できるだけでなく、転職先への条件交渉や、今後のキャリアプランづくりのお手伝いも可能です。
今すぐに転職するわけではなくても、悩んだ時点で早めの相談がおすすめです。
まとめ(外科医の転職)
外科医の仕事の醍醐味として、手術があります。
しかし、緊急手術や術後の対応など、その手術がハードワークを招く要因になりやすいのも事実です。
常に精密な手技を行う緊張感や、訴訟リスクへのプレッシャーなど、やりがいやモチベーションだけでカバーしきれない辛さを感じたら、キャリアプランの見直しが必要かもしれません。
外科医としてさらに良い環境を探したり、思い切ってキャリアチェンジを考えたりする場合に助けになるのが、医師専門の転職エージェントです。
働き方に悩んだら、転職するかどうかはさておいて、一度医師専門の転職エージェントメッドアイに相談してください。