ほとんどの医師が一度は経験するオンコール対応。
自宅でゆっくり過ごせる反面、呼び出しがあればすぐに対応せねばならず、休日のようには行かないと感じるのではないでしょうか。

「オンコールにおける過ごし方とは?」
「オンコールの時に手当は付くのか?」
「オンコールが少ない働き方や職場は?」

本記事では、医師のオンコールの基本的な仕組み、待機中の過ごし方、支給される手当・報酬の相場、さらにオンコールが少ない働き方の選択肢について解説します。

医師のオンコールとは

オンコール対応は医師だけでなく、オペ室担当の看護師や救急を担当するスタッフなどにも課される勤務体系です。
勤務時間外であっても、オンコール対応時間中は、勤務先の病院での患者急変時や救急搬送などがあった場合に電話で呼び出されます。
オンコールがかかった場合、患者の状態によっては電話の口頭指示だけで対応が済むこともありますが、実際に病院まで駆けつけなくてはならないケースもあります。

オンコール対応中の医師は、いつ電話があっても応対できるよう、入浴中であれば聞こえる場所に携帯電話を置いておくなどの待機状態を維持しなくてはなりません。
また、呼び出し後、規定の時間内に病院に駆けつけられるよう、自宅や勤務先から必要以上に離れるような外出も難しくなります。

医師の数が多い現場では、交代制などで月に数回オンコールの日がある程度ですみますが、医師の数が少ないと頻度も上がってしまいます。
休日が常にオンコール待機状態であるようなケースも見受けられ、担当する医師にとっては常に緊張感を強いられる、負担の大きい業務と言えるでしょう。

オンコールの過ごし方と注意点

一応は自宅でゆったりと過ごすことができるオンコール対応時間ですが、必要が生じると出勤しなくてはならないため、完全に自由とはいかないのが実情です。
そんなオンコール対応中の過ごし方には、医療機関ごとにルールが定められています。
細かい違いはあるものの概ね同じようなルールを敷いているところが多いので、以下にまとめてご紹介します。

規定を守れば自由

オンコール対応中は、勤務先で定められたルールを逸脱しない限りは、基本的に自由に過ごせます。
自宅でゆっくり映画を見たり、駆けつけられる範囲内で外出したりすることも問題ありません。
いつでも電話に出られ、電話があった際に規定時間内に病院に着くことができれば大丈夫です。

電話には必ず出られるよう注意

オンコール中に一番気をつけなければならないのが、「いつでも電話に出られる」状態をキープすることです。
医師はただでさえプライベートの時間が少ない人が多く、電話さえ鳴らなければオンコール中は貴重なリラックスタイムとも言えます。
しかし、ゆったりとお風呂に入っている時や、それこそトイレ中でも電話が鳴れば出なければなりません。
このため、お風呂やトイレに携帯電話を持ち込んだりするのは当たり前になっています。

遠出や飲酒は厳禁

オンコール中に呼び出しがあった場合、必要があれば規定時間内に病院に行き、診療などの対応をしなくてはなりません。
このため、オンコール中はいくらリラックスしたくても、飲酒などは厳禁です。

また、駆け付けの時間についても多くの病院は30分以内とするところが主流です。
他には距離で病院から5km以内というパターンもあります。
勤務先から自宅までが遠い場合、オンコール中は自宅に居られないケースも出てきます。
この場合、リラックスできつつ病院にも近い居場所を確保しなくてはなりません。
中にはオンコール対応用に待機場所を設けている病院もあります。

オンコールを担当した時の報酬は?

オンコールを担当した場合、報酬はどのくらい出るのが相場なのでしょうか。
一般的には当直勤務よりは少なくなるようで、割に合わないと考える医師も多いです。
ここからは、オンコール勤務の報酬や、報酬を巡ったトラブルなどをご紹介します。

手当や報酬は職場によって異なる

オンコール対応で支払われる報酬は、病院によってさまざまです。
よく見られるパターンとしては、オンコール対応1回につき「待機料」として数千円程度の手当が出るものです。

またこれとは別に、オンコール待機中に実際に呼び出しがあった場合、呼び出し対応1回につき1〜3万円程度の手当を支給しているという病院も見られます。
このように、オンコール対応の報酬額は、待機中の対応の有無や回数によって変わってきますので、一概にどのくらいという目安は示しにくいと言えます。

しかし、呼び出しがないまま待機した時間については、1日完全に心休まることがなくても、特に時給換算などをされることはほとんどありません。

オンコールは手当不要という判例もある

オンコール中の手当ては、今では多くの医療機関で何らかの報酬がついています。
しかし、中にはオンコール待機を業務時間とはカウントせず、実働がない限りは報酬を支払わない医療機関もあります。
オンコール対応の報酬を巡っては、医師と医療機関の間で裁判になったこともあり、最高裁判所で「自宅待機のオンコールは原則として労働時間に含まれない」という判決も出ています。
平成22年(行ウ)第22号時間外手当請求事件

医師としては気の休まらない1日を過ごさざるを得ないのに、そこに対する手当がないということが不満の種になるのは仕方ないのかもしれません。
そのため、転職活動の際には「オンコール待機中に手当が支給されるか」「呼び出し対応時の報酬はどの程度か」を必ず確認することが重要です。

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オンコールでストレスを抱える原因

医師がオンコール対応でストレスを感じるのには、いくつかの要因があります。
「自宅で待機しているだけ」とは言っても、呼び出しに備えた緊張感や自由が制限されることなど、さまざまな負担が重なっています。

1. 不確実性と緊張感

  • いつ呼び出されるかわからない状況は、精神的な緊張を常に維持させます。
  • 特に休日や夜間にリラックスしている最中でも、呼び出しの可能性があるため、完全に気を抜けません。

2. 長時間の待機と睡眠リズムの乱れ

  • 夜間や休日のオンコール待機は、日常生活や睡眠リズムを崩す原因になります。
  • 特に呼び出し後に診療対応が発生すると、休息時間がさらに削られ、疲労が蓄積します。

3. 身体的負担

  • 呼び出しで急いで病院に駆けつける場合、移動や診療対応による身体的な疲労が伴います。
  • 短時間で対応を求められることが多いため、心身の回復が追いつかないこともあります。

4. 責任感と心理的プレッシャー

  • 急患対応や患者急変時の判断は、医師に大きな責任感を伴います。
  • たとえ待機中であっても、「電話が鳴ったらすぐに最善の対応をしなければならない」というプレッシャーがストレスを増幅させます。

5. 報酬や評価とのギャップ

  • オンコール対応の手当が少なかったり、待機時間が労働時間として評価されないケースでは、心理的な不満が蓄積します。
  • 「精神的には休めないのに報酬が少ない」という状況は、ストレスを強く感じる要因のひとつです。

オンコールでのストレス対策・心身ケア

オンコール対応は、常に呼び出しの可能性があるため、精神的・身体的な負担が大きくなりがちです。

特に休日や夜間に緊張感を維持し続けることは、長期的には疲労やストレスの蓄積につながります。ここでは、オンコール中でも心身の負担を軽減するための対策をご紹介します。

1. 待機中の過ごし方を工夫する

  • 自宅での待機中は、映画や読書などリラックスできる時間を確保する
  • 散歩や軽いストレッチなど、体をほぐす運動を取り入れる
  • 食事や水分補給をしっかり行い、呼び出し時に対応できる体調を保つ

2. 呼び出し時の動線を最適化

  • 携帯電話や必要物品の置き場所をあらかじめ決めておく
  • 自宅から病院までのルートや時間を把握しておく

3. ストレスを軽減する工夫

  • 同僚や上司とオンコールシフトや負担の分散について相談する
  • 趣味やリラックス法を取り入れて、待機時間中の緊張を緩和する

4. 専門家や制度の活用

  • 長期的に負担が大きい場合は、メンタルヘルス相談窓口や医師向けカウンセリングを活用
  • 職場での働き方改革やシフト調整制度を確認し、無理のない勤務体制を検討

オンコールは完全に自由な時間ではありませんが、待機中の過ごし方やストレス対策を工夫することで、負担を軽減しつつ業務に対応することが可能です。

オンコール以外の勤務の特徴は?

長時間労働を強いられることが多い医療業界では、今働き方改革が進められています。
医師の労働時間が長くなる要因として、オンコール勤務の他にも以下の業務があります。

当直勤務

夜間の入院患者への対応や救急搬送の対応を担う当直や、休診日に発生する対応を担当する日直は、併せて日当直とか一括りに当直業務などと呼ばれます。
特に夜間を担当する当直業務は、前日や翌日の通常勤務と連続で行われることが多く、長時間労働の大きな原因となっているのは周知の通りです。
人員の少ない病院では、当直の機会が多くなり、医師の負担もかなり増しています。

また、若手医師や研修医のアルバイトとしても知られていて、自分の勤め先で当直を担当するよりは、外部病院でアルバイト当直をした方が報酬がいいことがほとんどです。
当直勤務については、こちらの記事で詳しく解説しています。

時間外勤務

医師の仕事はどうしても患者さんの状態が最優先となります。
このため、担当する患者さんの容態が急変したり、急患が入ったりした場合などに残業をせざるを得なくなることもしばしばなのです。
また、医局に属して教授の仕事を手伝ったり、論文の作成をしたりするなど、通常業務以外でも仕事が山積み状態という医師も大勢います。

こうした医師の長時間労働は問題視されていて、2024年までに労働時間の上限を定めたり、2023年までに超過分に対する残業代の支払いの規定を批准できるよう、働き方改革が進められています。
施行が間近に迫った医師の働き方改革は「2024年問題」などと言われ、業界内で対応が急がれているのです。
医師の長時間労働や働き方改革については、こちらの記事で詳しく触れていますので参考にしてください。

オンコールが少ない診療科や職場、働き方は3パターン

オンコール対応の多さは、職場や診療科によっても変わってきます。
オンコールが少ない職場で仕事をしたいと考える医師に合うのはどういった職場なのでしょうか。
オンコール対応をなるべくしたくない場合、考えられる働き方は以下の3パターンです。

  • 急患対応が少ない診療科で働く
  • 医師の人数が多い職場で働く
  • 非常勤や担当患者を持たない職場で働く

それぞれ詳しくご紹介します。

1.急患対応が少ない診療科

オンコールで呼び出される理由の多くは、急患対応や入院患者の急変です。
そうした機会の比較的少ない慢性期病院や内科、神経科などはオンコールでの出動頻度が少な目の傾向があると言えます。
また、急患対応を行っていない小規模クリニックなども、オンコール対応とは無縁の職場です。
その他、産業医や美容関連、健診医であればオンコール対応を受け持つことはほぼないと言えるでしょう。

2.急患数が少なく医師が多い施設

外科などで緊急手術などを請け負うような病院の場合は、オンコール自体は日々誰かが担当しなくてはなりません。
しかし、そこで働く医師数が多ければ当番制となり、結果としてオンコールの頻度が少なくなる可能性もあります。
また、急患対応が日常的になっている救急科などでは、医師数を確保して当直やオンコールを上手に分散させている病院も多くなってきています。

逆に日常的に急患を受ける機会が少ない病院や診療科でも、所属している医師が少ないと、結果としてオンコール頻度が上がってしまうのです。
転職先探しでオンコールが少ないかどうかを気にする場合は、転職エージェントにはっきり希望点として伝えておくと安心です。

3.非常勤や担当患者がいない医師

非常勤やパート勤務で働く場合も、オンコールを課されない病院が見受けられます。
また、担当患者さんを持たない働き方をしている場合もオンコール対応の対象から外れるケースがあります。
ただし、この辺りは病院によってまちまちですし、前述の通り医師数の少ない医療機関であれば、非常勤でもオンコールに駆り出されることはあり得るでしょう。
医師としてキャリアプラン自体をオンコールの有無で決めることはないと思いますので、勤務先を選ぶ際にオンコール回数を気にする方は、しっかりチェックしておく必要がありそうです。

医師のオンコールに関するFAQ

Q オンコール中は自宅にいてもいいですか?

基本的には自宅待機で問題ありません。ただし「病院から30分以内」や「5km以内」など、病院ごとの規定を守る必要があります。呼び出しに備えて、遠出や飲酒は避けることが必須です。

Q オンコール対応に手当は必ず付きますか?

病院によって異なります。待機料として数千円程度の手当が出るケースもあれば、呼び出し時のみ1〜3万円が支払われるケースもあります。ただし、待機時間そのものに報酬が発生しない職場もあるので注意が必要です。

Q オンコールと当直はどう違うのですか?

当直は病院に泊まり込みで待機し、急患や入院患者に対応する勤務です。一方オンコールは、自宅など院外で待機し、呼び出しがあった場合のみ出動します。

Q オンコールが少ない診療科はありますか?

急患対応が少ない内科・神経科・慢性期病院、美容医療、健診、産業医などではオンコールの頻度は少なめです。外科や救急などはオンコールが発生しやすい傾向にあります。

Q オンコール待機中に呼び出されなかった場合でも疲れます。どう対策すればいいですか?

「いつ呼ばれるか分からない」という不確実性が大きなストレス要因です。リラックスできる趣味を持つ、仲間と情報交換する、睡眠環境を整えるなど、心身ケアを意識することが大切です。

Q 転職の際にオンコールの有無は確認できますか?

求人票だけでは分からないことが多いです。医師専門の転職エージェントに相談すると、オンコール回数や待機手当の実態まで確認できるので安心です。

まとめ(医師のオンコールの過ごし方について)

オンコール対応は、患者さんの急変や救急搬送などに対応していくためにはどうしても必要な業務と言えます。
しかし、対応する医師の側としては、休日のように取り扱われるのにもかかわらず、完全に自由には過ごせないストレスを抱えることになり、負担となっているのも事実です。
オンコール待機に対する報酬で裁判にまでなったケースもあり、その結果待機時間の報酬は支払われないという判例も出てしまっています。
このため、できればあまり受け持ちたくないと考える医師が多いのも仕方のないことだと言えるでしょう。

オンコールがなるべく少ない職場で働きたい場合、急患対応が少ない内科や神経科や、医師の数が多くロングスパンで当番シフトを組んでくれるような病院を選ぶことをおすすめします。
各病院での詳しい労働環境は、求人情報だけではわかりづらいことも、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談することで情報を得やすくなります。
オンコールの有無だけでなく、働きやすさやキャリア形成も含めてアドバイスをもらえるので、ぜひ利用してみてください。