医師が活躍したり、医療の現場が舞台になるドラマは数多く作られています。
最近では2021年に「ナイト・ドクター」というドラマが放送され、話題になりました。
ドラマは当然ながらフィクションの設定ではありますが、似た制度として研修医のナイトフロート制度を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。

「ナイトドクター制度は実際にあるのか?」
「【ナイトフロート制度】の勤務時間や給料はどのようになっているのか?」

この記事では、ナイトフロート制度についてのメリットやデメリットを解説します。
医師の働き方改革が叫ばれている中で、ナイトフロート制度にはどのような効果が期待されているのでしょうか。
詳しくご紹介しますので、参考にしてください。


ナイトドクターとは? 実際に存在する?

フジテレビで放送されたドラマ「ナイト・ドクター」では、夜勤専門の若い救急救命医が切磋琢磨しながら成長していくという設定になっていました。
このドラマでは医師不足を解消するために、昼夜で完全にシフトが交代する制度を試験的に導入した病院が舞台となっています。
夜勤といえば当直の医師が当たるものですが、こうした勤務時間の完全入れ替えといった制度は実際に存在するのでしょうか?

ナイトドクター=夜勤専門医師

ネット上で「ナイトドクター」というキーワードで検索してみると、このフジテレビのドラマと、民間医療系企業が提供する夜間休日の救急往診サービスが表示されます。
後者の「ナイトドクター」サービスは、病院と連携しながら夜間や休日に往診を依頼できるもので、ドラマのような夜勤専門医師とは異なるということになります。
この記事では、ドラマの「ナイトドクター」のように夜勤のみを行う働き方の有無について、詳しく解説していきます。

ドラマのような働き方は現実では困難

結論から述べてしまうと、現状で夜勤専門で働くようなスタイルは存在しません。
そして、ドラマのような「昼夜完全入れ替え」という勤務形態を実現するのも難しいでしょう。
確かに救急科で働く場合、シフト制が導入されていることが多いので、ドラマの舞台が救急科であるというのはリアリティがあります。
しかし、ドラマのように日勤医師と夜勤医師を完全に分けてしまうと、同じ仕事をしているのに夜勤の方が給料が高額になるなどの問題点も出てくるでしょう。

また、救急科以外の診療科では、入院している担当患者の急変などにも対応せねばならず、当直やオンコールは避けて通れないと言えます。
さらに、医師不足が叫ばれて久しい現在の医療業界で、日勤医師と夜勤医師を別々に必要数揃えるというのもかなりハードルが高いのではないでしょうか。


医師の働き方改革・ナイトフロート制度とは?

実際の医療現場では、通常勤務から続けて当直(夜勤)に入る長時間労働が問題視されています。
そんな中で厚生労働省が「働き方改革」を推進し、2024年から医師の時間外労働の上限規制が導入されることは広く知られていることです。
特に当直業務が多く割り当てられることの多い研修医に対して導入されつつある「ナイトフロート制度」は、「ナイトドクター」の世界観に似ていると言えます。
どのような制度なのかを以下にご紹介します。

初期臨床研修医の夜間業務のための制度

「ナイトフロート制度」とは、初期臨床研修医が一定期間夜勤専門の期間を持ち、その間は日中の勤務を免除するという仕組みです。
夜勤担当期間は病院によっても異なりますが、1週間から1ヶ月程度までの間となることが多いようです。

現状、研修医の多くは日中勤務の後に続けて夜勤を担当したり、当直明けに続けて日中勤務をするなどの長時間労働をするのが常態化しています。
長時間労働が続くことで、集中力の低下や肉体疲労などが懸念され、ミスや研修の効率低下などのリスクを常に抱えているのです。

アメリカの制度を参考に誕生

この「ナイトフロート制度」は2003年にアメリカでスタートした制度です。
実際に長時間勤務を連続で行っていたアメリカの研修医が引き起こした医療事故がきっかけとなり、研修医の勤務時間の制限を定めるためのさまざまな議論や検討の結果として導入されるようになりました。
日本でも2014年ごろからこれに倣って制度を導入する病院が出始め、徐々に増えています。


ナイトフロート制度3つのメリット

研修医に対してナイトフロート制度を導入することで、以下のメリットが得られると期待されています。

  • 研修業務の集中度の向上
  • 研修医の負担軽減や満足度の向上
  • 研修医の技術の向上

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

研修業務の集中度向上

実際に制度を導入している病院では、ナイトフロート制度がもたらす効果として、集中力のアップをあげています。
夜間の勤務と日中の勤務を明確に分けると、それぞれの業務に対して一定期間集中することになります。
このことが、集中度を上げ、結果として研修の修練度や内容が充実するというのです。
制度の導入で集中して夜勤を行うことができ、研修医が記載するカルテ件数が倍になったという病院もあるようです。

研修医の負担軽減と満足度向上

ナイトフロート制度の導入で、一番期待できるのは、研修医の負担の軽減です。
日勤から夜勤への連続勤務がなくなることで、心身の疲労や負担を減らすことができます。
また、時間的なゆとりを持つことで、自己研鑽の時間を増やせたり、研修に集中できたりするため、研修医の満足度が上がるのです。

研修医本人だけでなく、受け入れている医療機関や指導医の満足度も上がりますし、医療事故などのリスク軽減という面では、患者さんから見ても大きなメリットと言えるでしょう。

研修医の技術向上

研修医に夜勤専門の期間を設け、夜間業務に集中させることによって、日中の業務では使う機会のないスキルが身につくというメリットもあります。
多くの急変や重症のケースに遭遇することになる夜間業務で経験を積むことは、医師としての大きな成長をもたらすものです。

ナイトフロート制度3つのデメリット

研修医の長時間労働を是正することでさまざまな効果が期待できるナイトフロート制度ですが、デメリットや課題も存在します。
主に以下の3点が考えられるでしょう。

  • 昼夜が逆転することの負担
  • 教育への支障
  • 受け入れる病院側の負担

一つずつ詳しく解説します。

昼夜逆転による負担

ナイトフロート制度を導入することで、研修医の労働時間を減らせる一方で、一定期間完全に昼夜逆転生活を強いることになってしまいます。
長期間の昼夜が逆転した生活は、心身の健康を損ねる可能性も指摘されていて、どの程度の期間を夜勤に充てるかは慎重に決める必要があるのです。

また、通常の宿直制度であれば、夜勤中に搬送され入院した患者さんを担当した場合、そのまま翌日の日勤でも同じ患者さんの管理を続けることとなります。
しかし、ナイトフロート制度では翌日の日勤は免除されるため、日勤の医師に都度引き継ぎを行う手間が発生するのです。
夜間対応で来院する患者数が多い病院の場合、この引き継ぎ件数も増え、日勤・夜勤両方の医師にとっての負担増となってしまいます。

教育への支障

夜勤期間中の研修医は、日中は休みとなるため、指導医と過ごす時間が取りづらいというデメリットもあげられます。
そして、研修医としての正規教育はどうしても日中が基本となるため、夜勤担当中の教育の遅れも懸念されるのです。

特に外科の手技指導などは、日中の診療時間帯に治療の場で学んでいきますので、夜勤期間中は指導を受けるチャンスがなくなります。
また、夜勤勤務中に指導医と一緒に過ごさないことも多く、ミスや誤った治療法が指摘できないというリスクも考えなくてはいけません。

病院の規模によっては困難

上記2つのデメリットを解決するためには、夜間の指導体制を整えたり、夜勤期間をあまり長く取らないようにするなど、病院側の工夫が必要となってきます。
しかしそれには、十分な医師の数が確保できなくてはいけません。
病院の規模が小さかったり、所属医師数が少ないと、指導面でのフォローができないのです。

それだけではなく、そもそも医師の数が足りていない医療機関では、夜勤だけに専念する期間を長く取ること自体が難しくなってきます。
少ない人数でナイトフロート制度を回そうとすると、日勤と夜勤を頻繁に交代せねばならず、かえって心身の負担が大きくなることになりかねません。


医師の働き方改革・導入される理由は?

長時間労働が問題視されているのは、研修医特有というわけでないことは、周知の事実だと思います。
当然ながら、指導医や先輩医師も当直やオンコール待機などによる長時間の勤務をしている人が多数を占めています。

そもそもの医師の過酷な労働状況を是正するために導入が進められているのが、「医師の働き方改革」です。
すべての労働者を対象にすでに始まっている制度ですが、医師については導入までの道筋をつけることが難しく、他の業種に遅れて2024年から導入が始まります。
具体的には、時間外労働時間に上限を設ける規制が掛かることとなり、対応が急がれる医療現場では「2024年問題」などと呼ばれています。

医師の働き方改革については、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてください。


まとめ(ナイトドクターについて)

ドラマのように格好良く夜の病院を守る「ナイトドクター」というものは存在しません。
しかし、似た制度として研修医を長時間労働から解放するための「ナイトフロート制度」という仕組みが徐々に浸透してきています。
ですがこの仕組みにも課題はあり、人員が確保できるある程度規模の大きい医療機関でないと導入するのは難しいと言えるでしょう。
また、現役医師にはこうした制度もないため、当直勤務で夜の病院を守っていくことになるのです。
このため、当直勤務が少ない診療科を目指したり、医師の数が多く当直の回数が少ない職場を探す医師も少なくありません。

ナイトフロート制度がない病院で研修していたり、研修医以外で当直が多い病院に勤めていると、転職を考えるということも時にはあるのではないでしょうか。
医師が転職を考える場合は、自分で探すよりは転職エージェントに相談した方が情報量も豊富で効率がいいでしょう。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を利用することで、当直回数が少なめという職場だけでなく、そもそもの医師としてのキャリア形成を考えた転職先を探す近道になります。