耳鼻科(耳鼻咽喉科)は、耳・鼻・咽頭・喉頭・頭頸部の疾患を扱う診療科です。アレルギーや花粉症で馴染みのある科ですが、専門領域が広く、幅広い知識が求められます。
「耳鼻科医の平均年収は?」
「耳鼻科医と他の科の年収の違いは?」
「耳鼻科医が年収をアップするには?」
今回の記事では、耳鼻科医の年収事情や働き方について、プロの転職エージェントが解説します。
耳鼻科医は医師の中でも人数が少ないことでも知られていて、年齢層も高めという特徴があることから、マイナーな診療科と思う方もいるかもしれません。
そうした耳鼻科医の豆知識についてもご紹介しますので参考にしてください。
耳鼻科医の平均年収と年収分布
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を見ると、耳鼻科医の平均年収は1,078万円でした。
そして、年収額別にまとめると以下のようになります。
労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(P30)を参考に作成
眼科、泌尿器科、皮膚科との合算集計のため、耳鼻科医単独での状況が見えづらいですが、平均額を超える医師が6割程度となっています。
耳鼻科医と他診療科の平均年収を比較
耳鼻科医の年収は他の診療科と比べるとどのくらい違うのか、以下にランキング形式でご紹介します。
| 順位 | 診療科 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 1位 | 脳神経外科 | 1,480.3万円 |
| 2位 | 産科・婦人科 | 1,466.3万円 |
| 3位 | 外科 | 1,374.2万円 |
| 4位 | 麻酔科 | 1,335.2万円 |
| 5位 | 整形外科 | 1,289.9万円 |
| 6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2万円 |
| 7位 | 内科 | 1,247.4万円 |
| 8位 | 精神科 | 1,230.2万円 |
| 9位 | 小児科 | 1,220.5万円 |
| 10位 | 救急科 | 1,215.3万円 |
| 11位 | その他 | 1,171.5万円 |
| 12位 | 放射線科 | 1,103.3万円 |
| 13位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7万円 |
労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(P30)を参考に作成
耳鼻科医の平均年収は他の診療科と比べて低めの水準です。とはいえ、すべての耳鼻科医の年収が低いわけではなく、特に若手医師や勤務先・働き方次第では、収入の低さを実感するケースがあると言えます。
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耳鼻科医が年収を上げる3つの方法
耳鼻科医が年収アップを目指すためにできることとしては、次の通りです。
- 開業医になる
- アルバイトをする
- 転職する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①開業医になる
耳鼻咽喉科医が開業した場合、1施設あたりの損益差額(院長報酬の目安)は 約2,502万円というデータがあります。診療科別で見ると、耳鼻科は損益率が高く、全体の中でも上位に位置しています。
参考:厚生労働省「第24回医療経済実態調査」
この高収益の背景には、花粉症などのアレルギー患者の多さや、高齢化に伴う難聴やめまいなどの症状を持つ患者の増加が挙げられます。今後も高齢化が進むことで、耳鼻科への需要はさらに高まると考えられます。
また、耳鼻咽喉科は対応できる症状の範囲が広いため、特定の分野に絞って専門性を高めることで、他のクリニックとの差別化を図りやすくなります。都市部では睡眠時無呼吸症候群やポリープ除去など若年層のニーズに対応すると強みになりますし、地方では高齢者に多い難聴や嚥下障害に特化することも有効です。
開業にかかる費用は設備投資の規模によって異なりますが、一般的には 5,000万〜1億円程度 が目安です。最初は設備投資を抑え、アレルギー対応など初期投資が少ない診療から始め、徐々に設備を増やしていくことで、無理なく開業を進めることができます。
開業医の年収事情については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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②アルバイトをする
勤務医として耳鼻科で働く場合、年収は他診療科より低めになる傾向がありますが、勤務先によっては長時間労働が少なく、働きやすい環境が得られる可能性があります。
特に、無床のクリニックなどでは手術対応が予約制で行われることが多く、緊急対応で呼び出されることが少ないのが特徴です。
そのため、スケジュール管理がしやすく、アルバイトで収入を補う医師も少なくありません。開業を視野に入れたスキルアップを目的にアルバイトを選ぶことで、目先の収入を増やしながら将来のキャリア形成にもつなげることができます。
アルバイト先を探す際には、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用するのがおすすめです。求人情報だけでは分かりにくい職場の雰囲気や忙しさの程度も、エージェントを通じて詳細に確認できます。 あわせて読みたい
③転職する
収入を増やすために転職するのは、決して珍しいことではありません。
現在の収入に不満がある場合、アルバイトで補う方法もありますが、そもそも給与水準の高い病院へ転職できれば、無理にアルバイトを増やす必要はなくなります。
耳鼻科医の平均年収はやや低めですが、人手不足の病院では相場より高めの報酬で募集を行っているケースもあります。
ただし、条件だけで判断するのは注意が必要です。人員不足で高額報酬を提示していても、実際に入職すると一人診療部長として休みが取りづらいといった状況もあり得ます。
こうしたリスクを避けるためにも、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用するのが効率的です。
メッドアイはこれまで多くの医師の転職やキャリア相談に対応しており、給与や勤務条件だけでなく、将来のキャリアプランに関する相談も可能です。まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
耳鼻科医の働き方や人口についての豆知識
耳鼻科医は働き方を選ぶことによって、ワークライフバランスを良好に保てるというメリットがあります。
耳鼻科医の数は医師の中でも少ないため、仕事を探すことに苦労をすることは比較的少ないのも特徴です。
ここからは、耳鼻科医のおすすめの働き方や、耳鼻科医の数が少ない理由など、耳鼻科医に関する豆知識をご紹介します。
勤務先によってはワークライフバランス重視で働ける
子育て中などでワークライフバランスを重視したいという耳鼻科医は、クリニックで働くことで時間管理がしやすくなる傾向があります。
規模の小さいクリニックであれば、アレルギー性疾患や副鼻腔炎など、軽度な症例を扱うことがメインとなってきます。
緊急対応や手術などがないことがほとんどなので、定時で帰れる環境が多く、休日出勤などもほとんどありません。
クリニック勤務の場合、給与水準は勤め先によってさまざまですが、大病院と比べると低めのところが多い印象です。 あわせて読みたい
しかし、そのクリニックが求めるスキルを十分に持っていれば、高待遇で働くことができるケースもあります。
耳鼻咽喉科の仕事内容とは
冒頭でも少し触れましたが、耳鼻咽喉科では、症状や部位によって領域が細分化されています。
部位としては主に以下の5つに分かれます。
- 耳
- 鼻
- 咽頭
- 喉頭
- 頭頸部
さらに、症例に応じて耳科や平衡神経科など、診療科自体を細分化している病院もあります。そのため、医師ごとに専門分野や得意分野が異なるケースが多く見られます。
耳鼻咽喉科の担当範囲は首から上で、目・脳・歯を除くほぼ全ての部位をカバーします。診る症状も多岐にわたり、めまい、難聴、花粉症などのアレルギー、味覚や嚥下の異常、睡眠時無呼吸症候群などが含まれます。また、これらの部位に発生したがんなどについては、内科医や外科医と連携して治療にあたります。 あわせて読みたい
耳鼻科医が少ない理由は
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、医師全体に占める耳鼻科医の割合は3%未満にとどまります。
| 調査年度 | 2010年 | 2012年 | 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | 2022年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 耳鼻咽喉科医師数 | 9,032人 | 9,087人 | 9,211人 | 9,272人 | 9,288人 | 9,598人 | 9,381人 |
| 医師・総数 | 280,431人 | 288,850人 | 296,845人 | 304,759人 | 311,963人 | 323,700人 | 327,444人 |
| 割合 | 3.22% | 3.15% | 3.10% | 3.04% | 2.98% | 2.96% | 2.86% |
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計 」を参考に作成
また、同資料では耳鼻科医の平均年齢は52.8歳となり、医師全体の平均年齢50.3歳よりも高めです。
新人医師が増えていないため、耳鼻科医の高齢化が進行しています。
この背景には、耳鼻科が外科的なアプローチを中心とする診療科であることが影響しています。耳鼻科で扱う症例の多くは命に直結する危険性が低いものの、頭頸部のがん手術など重篤なケースでは8時間を超える大手術になることもあります。
アレルギーに特化したクリニックでは経験する機会が少ないかもしれませんが、総合病院など規模の大きな施設では、当直がなくても勤務は決して楽ではありません。さらに人手不足の影響で、一人で診療科を回す「一人診療部長」の状態となり、十分な休みが取れない医師も存在します。 あわせて読みたい
まとめ(耳鼻科医の年収について)
耳鼻科医の年収は他の診療科に比べると低めの水準です。
しかし、外科的な領域に属する診療科としては珍しく、病院勤務でも当直がないケースが多く見られます。加えて、アレルギーや副鼻腔炎などの軽症例を専門とするクリニックでは、ワークライフバランスを保ちながら働くことが可能です。こうしたクリニックは、設備投資や運営コストも比較的抑えられるため、集患が順調であれば高い年収を得ることも可能です。
そのため、軽症例を扱うクリニック開業によって高収入を狙える一方、より外科的スキルを磨く大規模病院での勤務医が不足する傾向も見られます。 あわせて読みたい
耳鼻科医が年収アップを目指す場合は、勤務環境を活かしてアルバイトを行ったり、前述のように開業する方法があります。人手不足の影響で、転職によって条件の良い職場を見つけやすい状況でもあります。医師のアルバイト探しや転職活動では、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用するのがおすすめです。
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