長年病院で勤務する中で、クリニックへの転職を検討する医師が増えています。

これまでは、医師の転職といえば病院から病院への異動が主流でした。しかし近年では、働き方の多様化や価値観の変化により、病院からクリニックへ転職するケースも珍しくありません。

求人数も年々増加しており、「クリニックへの転職」は今やごく一般的的な選択肢のひとつとなっています。

「クリニックに転職して働くメリットとデメリットは?」
「病院とクリニック、自分にはどちらが向いている?」
「病院とクリニックでどのくらい給与に差があるの?」
病院からクリニックへの転職を検討している方は、このような不安を感じるのではないでしょうか。

今回は、医師が病院からクリニックに転職するメリット・デメリットについて解説します。

病院とクリニックとの違いや、クリニックへの転職に向いている医師の特徴についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

働くうえでの病院とクリニックの違い

働くうえでの病院とクリニックの違いは以下の通りです。

項目病院勤務クリニック勤務
勤務時間長時間、夜勤・当直あり日勤中心、夜勤なし
休日不定期、土日勤務あり決まった診療日、連休あり
教育体制充実限られる
給与水準(目安)1,200〜1,500万円、部長で1,700万円超900~1,200万円(科や立場により変動)

病院とクリニックの大きな違いに、労働時間や勤務日が挙げられます。

勤務地や診療科にもよりますが、病院は夜勤や土日の出勤が求められることもあります。
緊急呼び出しが入ることもあるため、プライベートの時間が確保しづらいこともあるでしょう。

対してほとんどのクリニックは診療時間や診療日が決まっており、入院設備もないため勤務は日勤のみです。
ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、大型連休にまとまった休みをもらえるのもクリニック勤務ならではのメリットといえます。

ただし、病院には、クリニックにはない教育体制が整っているのが一般的です。
たとえば若手医師や中途入職の医師に対しては、指導医や先輩医師が一定期間マンツーマンで業務をサポートする体制があり、段階的にスキルを習得できるよう配慮されている場合が多くあります。
こうした教育制度は、一定数の医師やスタッフが在籍してはじめて成立するものであり、人材が集まりやすい病院の方が教育面では優れているといえます。

また勤務先によって変動するものの、一般的に病院と比べて給与が下がる傾向にあるのもクリニックの特徴です。

病院勤務の給与水準は1,200〜1,500万円、部長クラスにまで到達すると1,700万円を超える場合もあります。
対して時間外勤務や当直のないクリニックの場合、1,000万円を下回る場合もあります。
ただし、診療科や地域、担当する業務量によってはクリニックでも高年収を得られることがあり、必ずしも一概には比較できません。

とはいえ、1日の勤務時間が長くなりやすい病院と比較すると、時間給の観点ではクリニックの方が働きやすいといえるでしょう。
自分自身が今後の働き方に望むものを基準に、病院とクリニックどちらで働くかを決めましょう。

クリニックに転職するメリット

病院からクリニックに転職する主なメリットは、以下の3点が挙げられます。

  • 勤務時間の自由度
  • 病院に引けを取らない収入
  • 特定の分野の医療を究められる
  • 開業を見据えた実践的な経験が積める

ここでは、クリニックへの転職で得られるメリットについて詳しく解説します。

勤務時間の自由度

クリニックの勤務は、病院勤務と比較するとプライベートの時間が確保しやすいといえるでしょう。

入院設備がないため夜勤や当直がなく、緊急呼び出しもほとんどないのがクリニックの大きな特徴です。
診療時間や診療日が決まっていることも多いため、イレギュラーな勤務時間に振り回されることもほとんどありません。
育児や家事との両立もしやすいため、結婚や出産を機に病院からクリニックへの転職を考える方も多いでしょう。

オンコールや当直など勤務時間が安定しない勤務環境は心身に負担がかかります。
生活リズムの整いやすい環境で働きたい方はクリニックへの転職がおすすめです。

病院に引けを取らない収入

勤務するクリニックによっては、病院勤務と同等、もしくはそれ以上の収入を得られる場合もあります。

一般的には、病院勤務の医師の方が給与水準は高い傾向にありますが、クリニックでも条件によって収入に差が出るのが実情です。
有床クリニックや、オンコール対応のある施設、特定の診療科(美容皮膚科、自由診療など)では、高収入を得られるケースも珍しくありません。

また、患者数の多い人気クリニックや、自由診療中心のクリニックでは、高い売上が見込める分、給与水準も病院に引けを取らないことがあります。

このように、クリニックの収入は一律に低いわけではなく、勤務先の規模や診療内容によって大きく異なります。

特定の分野の医療を究められる

クリニックへの転職には、自分自身が究めたい分野の医療に特化した環境に身を置けるメリットがあります。
精神科や美容クリニック、眼科や皮膚科など、一点に特化した医療を究めたい方には、クリニックへの転職もおすすめです。

専門的な分野に特化したクリニックであれば、診療時間や診療日の自由度も高いため、プライベートの充実にも直結するでしょう。
また美容整形やレーシック手術など、専門スキルを要するクリニックの場合、病院勤務以上の収入を実現できる可能性があります。

開業を見据えた実践的な経験が積める

将来的に開業を目指している医師にとって、クリニック勤務は貴重な経験を積む機会にもなります。

病院ではあまり関わることのない経営面や集患施策、スタッフマネジメントなどを間近で学べるため、開業準備の一環としてクリニックへの転職を選ぶ医師も少なくありません。

実際に、開業前にクリニック勤務を経験することで、「現場の流れ」や「経営者視点」での意思決定に触れられ、独立後の失敗リスクを減らせるというメリットがあります。

クリニックに転職するデメリット

医師が病院からクリニックへ転職するうえでは、以下のデメリットも把握しておかなければなりません。

  • 高度な医療に携われない
  • 最新の医療情報に触れにくい
  • 非常勤での勤務形態になると、収入が減る
以下では、クリニックの転職に関するデメリットについて解説します。

高度な医療に携われない

高度な領域の診療・治療は、クリニックで対応しきれません。

一般的なクリニックは病院と異なり、地域のかかりつけ医という立ち位置になることがほとんどです。
そのため身近な疾病での受診が多くなり、いわゆる重症患者は病院への紹介という形を取ることになります。
クリニックは一点特化の診療が多いため、複数の診療科で診察を受ける必要のある患者も大きな病院に紹介しなければなりません。

必然的に高度な医療技術に触れる機会が少なくなるため、最先端の技術・知識をインプットし続けたい方は病院勤務が好ましいでしょう。
担当する患者数が減少することもあり、病院勤務以上のスキルアップを望む場合はクリニックへの転職は適していません

最新の医療情報に触れにくい

クリニックは病院とは大きく異なり、他の専門科目で従事する医師との交流が激減します。
他科目の知見を持つ医師との交流は、自分自身の領域を広げるうえで必須です。

しかしクリニックのほとんどは、診療科目に対応した知見のみで運営できてしまいます。
同じ科目の知見を持つ方とばかり交流することになるため、最新の医療について触れる機会がなくなります。
また、クリニックは1人で運営することもあるため、医療について意見を交わすこと自体がなくなる可能性もあるでしょう。

自身の専門科目ではない医療情報も貪欲に吸収し、常にアップデートを繰り返したいという方は病院での勤務をおすすめします。

非常勤での勤務形態になると収入が減る

クリニックのほとんどは診療時間・診療日が決まっており、無床クリニックの場合、夜勤や当直、緊急呼び出しはありません。
プライベートの時間を確保しやすいというメリットではあるものの、病院よりも収入が減る可能性は高くなります。

またクリニックは非常勤での勤務形態もあります
非常勤だと週に3~4日ほどの勤務になることもあるため、単純に労働時間の減少で収入に影響が出るでしょう。

患者数も多く、専門的な診察や手術を行っているクリニックでない限りは、病院勤務以上の収入を望むのは難しいかもしれません。

クリニックで働くのに適している医師

病院からクリニックへの転職が適している医師の特徴は下記です。

  • 安定した休日が欲しい
  • 勤務時間のイレギュラーを避けたい
  • 育児・家事・子供の進学などを優先したい
  • 特定の分野を究めた管理医師になりたい
  • 地域密着で高い技術の医療を提供したい
クリニックへの転職には、勤務時間に関するストレスが軽減できるというメリットがあります。
そのため、病院勤務での安定しない生活リズムを変えたい方は、クリニックへの転職がおすすめだといえるでしょう。

夜勤と日勤が交互にくる勤務形態は、多少慣れることはあっても一般的な勤務時間より負担がかかります。
自覚もなくストレスを抱えてしまうことがある反面、自分をケアする時間を確保しにくいジレンマもあるでしょう。
一般的な無床クリニックであれば勤務形態は一般企業と変わらないため、心身ともに健康的な生活を実現できるでしょう。

休日を確保しやすく勤務時間のイレギュラーもないことから、育児や家事を優先したい医師にもクリニックへの転職はおすすめです。
特に出産を予定している女性医師や、お子さまの進学を理由に仕事をセーブしたい方は、クリニックへの転職もひとつの方法でしょう。

ただし、たとえクリニックでも管理医師のポジションに就いてしまうと、往診や緊急時に対応する可能性もあります。
休日や勤務時間の安定を視野に入れてクリニックに転職する場合は、管理医師への昇格はじっくり検討したうえで決定しましょう。

一方で管理医師になることは、自身が学びたい医療に触れる時間が長くなることにもつながります。
そのため、特定の分野を究めたいという観点でクリニックに転職したい医師にとってはメリットです。

病院勤務で培ってきた経験やスキルを一点に特化した環境で活かしたいと考えている医師は、クリニックへの転職が適しています。
また、地域に根ざした医療を提供したいという熱意を持つ医師も、クリニックへの転職がおすすめです。

ここまで触れてきた内容を参考に、自身が病院とクリニックどちらに適しているのか考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ(医師がクリニックに転職するメリット・デメリット)

今回は、医師が病院からクリニックに転職するうえで把握しておきたいメリットやデメリットについて解説しました。
クリニックへの転職はいくつかデメリットはあるものの、今後の生活やキャリアに好影響のあるメリットも十分といえます。
今勤めている病院への不満がある場合は、思い切ってクリニックへの転職を検討してみてはいかがでしょうか。

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