医師免許を持つと、さまざまな専門分野でのキャリアチョイスが可能になります。

  • 医師免許があることで取れる資格は何か知りたい
  • 医師免許を幅広く活かせる方法が知りたい

このように思っている方に向けて、本記事では医師免許を持つ方々が取得できる主な資格について解説します。
それぞれの資格が持つメリットや将来のキャリアに与える影響についても掘り下げています。将来の選択肢を増やすためにも、ぜひ最後までお読みください。

「医師免許」という資格の立ち位置

医師免許は医師としての業務、名称、必置の3つの要素を独占する資格です。

  • 医師でなければ医業を行うことができない(業務独占)
  • 医師免許がなければ医師と名乗ってはいけない(名称独占)
  • 医療法上、医師がいないと病院を運営できない(必置)

ということを意味します。
医師免許は医療の基盤となる重要な資格であり、医師免許を持っているだけで多くの業務ができるようになります。

しかし医師免許を持っているからといって、すべての医療行為ができるわけではありません。例えば麻酔科の標榜医や精神科の指定医などは、医師免許に上乗せで取得する必要がある資格です。

医師免許があると取れる主な資格

医師免許を持つことで取得できる主な資格について紹介します。

1.各専門医資格

医師免許があると取れる主な資格の1つは、各専門医資格です。

専門医資格とは特定の診療科や領域において、高度な知識や技能を有することを示す資格です。
専門医資格は各学会が独自に認定する民間資格であり、国家資格ではありません。そのため専門医資格を持っていても、診療科や領域の業務を独占できるわけではありません。

しかし専門医資格は、医療の質の向上や患者の信頼の獲得に寄与するとともに、就職や開業、集患などにおいてもメリットがあると考えられます。

2.母体保護法指定医

母体保護法指定医は母体保護法に基づき、不妊の手術や人工妊娠中絶を行う資格を持つ医師のことです。
母体保護法は母性の生命と健康を保護するために定められた法律であり、1996年に優生保護法から改正されました。

母体保護法を持つ医師は人工妊娠中絶が必要と判断された場合に手術を行えます。
母体保護法指定医として指定されるには医師の人格や技能、病院の設備が審査され、産婦人科の専門知識や手術技術を修得し、一定の研修期間を経なければなりません。
また
医師免許取得後5年以上の経験や産婦人科の研修3年以上の経験が必要です。

母体保護法指定医の資格を持たない者が人工妊娠中絶を行うと刑法に触れる可能性があります。

3.精神保健指定医

精神保健指定医は重度の精神障害者の治療やケアに携わる精神科医の中でも、特に強制入院や身体拘束などの重大な決定を行う役割を果たす専門家です。

医療従事者としての役割と公務員としての役割を兼ね備えており、患者の人権を尊重しながら適切な医療を提供し、家族や行政とのコミュニケーションを行います。

医師免許取得後、最短5年で資格申請が可能であり、臨床経験や研修、口頭試験などの条件を満たす必要があります。資格取得後は5年ごとに研修を受け、専門性を維持することが必要です。

精神保健指定医の年収は精神科医の平均年収よりも高く、キャリアアップによってさらなる収入向上の可能性があります。

4.産業医系の資格

産業医とは企業や事業所において、従業員の健康管理や労働環境の改善に関わる医師のことです。
産業医になるには医師免許に加えて、産業医学基礎研修や産業医学基本講座などの研修を修了するか、労働衛生コンサルタント試験に合格する必要があります。

産業医は非常勤の割合が高く、ワークライフバランスを保ちながら掛け持ちをする人が多いです。
産業医は病気になる前の未病の段階から介入できる仕事で、医学以外の幅広い知識やコミュニケーションスキルも身につけられます。

5.麻酔科標榜医

麻酔科標榜医とは手術や検査などで患者に麻酔を施す医師の資格であり、麻酔科を開業するには必須の資格です。

医師免許取得後、初期臨床研修(2年間)を修了した後、厚生労働大臣の許可を得る必要があります。
許可を得るためには麻酔科の研修を受けたことを証明する書類や、麻酔科医の推薦書などが必要です。

麻酔科標榜医は、麻酔科の専門家として認められた麻酔科専門医とは異なります。
麻酔科専門医は専門研修期間を経て学会が行う試験に合格し、麻酔科関連の業務に専従することを条件としています。
麻酔科専門医は麻酔科標榜医の資格を持っていますが、麻酔科標榜医が麻酔科専門医の資格を持っているとは限りません。

持っていることで有利になる専門医資格

診療報酬に影響したり、その資格でしかできない業務がある資格について紹介します。

1.放射線科診断専門医

放射線科診断専門医資格はレントゲンやCT、MRIなどの画像診断に関する高度な知識と技術を持つ医師のことです。
放射線科専門医の資格を取得した後、さらに2年以上の研修を受けて認定試験に合格すると資格を得られます。

専門医資格を持つことで診療報酬点数表における画像診断管理加算という診療報酬の加算が受けられます。また遠隔読影の仕事にも必要です。

2.神経内科専門医・脳神経外科専門医

神経内科専門医や脳神経外科専門医の資格を持つと、神経学的検査としての加算が受けられます。
加算は神経診察や神経チャートの埋めるなどの神経学的検査を行った際に、診療報酬に500点のポイントが付与されるものです。

専門医でなくても経験があれば加算を受けることが可能ですが、専門医のほうが有利とされています。
このような加算は珍しい措置であり、日本神経学会のHPには「悲願」とまで書かれているほどの重要な施策となっています。しかし加算は相当な時間を要する上、加算額が5,000円という点から、自ら開業する場合でないとメリットが限定されると考えられます。

3.精神科専門医

精神科専門医の資格を持つと、依存性のある薬や特殊な薬の処方が可能となります。
例えば
リタリンやコンサータ、ビバンセなどの依存性の高い薬や、クロザリルなどの特殊な薬が処方可能です。

またベンゾジアゼピン系薬の処方に関しては、種類や期間によっては診療報酬が減額される場合がありますが、eラーニングを受けると減額を回避できます。

4.認知症専門医

認知症専門医は認知症の診断・治療・ケアに関する知識や技能を持ち、認知症関連の診療において役割を果たす医師のことです。
認知症専門医になるには、日本認知症学会の教育施設で3年以上の研修を修了し、筆記試験や症例報告書の審査に合格する必要があります。

認知症疾患医療センターという施設では、認知症専門医あるいは認知症高度専門医の配置が必要とされています。
認知症疾患医療センターに所属する医師が認知症専門医の資格を持っていると、認知症関連の診療報酬の加算を受けることが可能です。

その他医師免許と相性のいい資格

医師免許を持つ医師は医療現場だけでなく、さまざまな職場や分野で活躍できます。

1.労働衛生コンサルタント

産業医として働く場合、労働衛生コンサルタントの資格は有益です。
産業医は労働者の健康診断や面接指導、ストレスチェックなどの健康管理を行いますが、労働衛生コンサルタントは
事業所の安全衛生診断や指導、労働安全衛生マネジメントシステムの監査・評価などの衛生管理を行えます。

両方の資格を持てば、労働者の健康と安全の両面からサポートが可能です。
産業医は労働衛生コンサルタントの試験に合格すると、日本医師会認定産業医の更新が不要になるというメリットもあります。

また労働衛生コンサルタントの資格は、産業医の業務に直接関係するだけでなく、中災防の講師の要件となることもあります。

2.社会保険労務士

社会保険労務士とは社会保険や労働法に関する専門家を指します。産業医と社会保険労務士資格は相性が抜群です。

なぜなら産業医は労働安全衛生法の専門家として、労働者の安全と健康を確保することが求められますが、法律は労働基準法と密接に関係しているからです。
労働基準法の知識があると、労働者の権利や義務、休職や復職の手続き、社会保障の制度などを理解できます。その上で、労務管理や人事労務と連携して、労働者をサポートすることができるでしょう。

また治療と仕事の両立支援のガイドラインでは、社会保険労務士は両立支援コーディネーターの役割を果たせるとされています。

3.医療経営士

医療経営士とは医療機関の経営に関する知識やスキルを持つ資格です。医療経営士協会が認定する民間資格であり、医療経営士1級、2級、3級の3段階があります。

現在、約12,500人の医療経営士が活躍しており、そのうち1級の合格者は110名ほどです。
1級合格者のうち、病院勤務者は約4割を占めていますが、残りの多くは医療機器や医薬品会社、金融機関などの医療関連企業や非医療業界の人材です。

 医療経営士の資格を持つと、医療機関の経営戦略やマネジメント、財務や人事などの分野で活躍できます。

4.医業経営コンサルタント

医業経営コンサルタントは、医療・介護施設の経営に関する知識とスキルを持つ専門家の資格です。
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会が認定する資格で、現在約3,000人の資格取得者がいます。

資格取得方法は、協会主催の指定講座を受講し、一次試験(筆記試験)と二次試験(論文審査)に合格した後、協会の正会員となることで認定登録が完了します。

また、医業経営コンサルタント協会が実施している「一般公開 医業経営実務講座」は、医療機関勤務の事務部門や看護部門・コメディカルの方が対象です。「医業経営管理能力検定」は、大学生などを対象としています。

5.病院経営管理士

病院経営管理士は病院の経営戦略や組織運営、人材育成などに役立つ資格です。
一般社団法人日本病院会が認定する資格で、病院の事務長育成を目的に1951年に設立されました。
現在、1,110名の認定登録者がいます。日本病院会の「病院経営管理士通信教育」の卒業生を対象にしており、医師に限らず病院経営に携わる全職種が対象です。

通信教育のカリキュラムは、医療に関する科目や経営管理に関する科目、経営管理演習など幅広く展開されており、講師陣も各分野で活躍する病院理事長や医師、大学教授などが務めています。
受講期間は2年間で、39科目の修了が条件となります。修了後は、日本病院会認定の病院経営管理士として登録されます。

医師免許はさまざまな現場で活用できる

医師免許は医療現場以外でも多岐にわたる仕事で活用できます。
例えば、メディカルドクターや保険会社の社医として、製薬企業や医療機器メーカーで新薬開発や健康情報提供に取り組むことも可能です。

また、医系技官として厚生労働省で国家公務員として働く道もあります。
医師免許は医療現場だけでなく、社会全体の健康と福祉に貢献するための重要なツールであることがわかります。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

医師としてのキャリアを築く上で、時には働き方に悩むこともあるでしょう。
医師免許を活かした働き方を模索する際には、医師専門の転職エージェントに相談することをおすすめします。
医師の転職エージェント「メッドアイ」は、豊富な経験とネットワークを持つ専門家が在籍し、医師のキャリア相談や転職支援を行っています。

メッドアイでは、無料の相談サービスや非公開求人案件の提供など、さまざまなサポートを行っています。少しでも転職を検討しているなら、まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ(医師免許で取れる資格とは?)

今回は、医師免許を持つことで取得できる資格と有利性について解説しました。
医師免許は医療の基盤であり、さまざまな専門医資格や母体保護法指定医、精神保健指定医など、さまざまな分野で活躍できます。
また、産業医系の資格や労働衛生コンサルタント、社会保険労務士、医療経営士など、医師免許と相性の良い資格も紹介しました。

医師免許を持つと、医療現場だけでなく、社会全体の健康と福祉に貢献するための幅広いキャリアパスが開けます。
そんな中、自身のキャリアを見つめ直したり、新たな選択肢を模索する際には、メッドアイのような専門の転職エージェントに相談すると最適な選択ができるかもしれません。

医師免許を持つ方々が自身のキャリアに関する悩みを解決し、より充実した働き方を見つけるためには、医師専門の転職エージェントを利用してみるといいでしょう。