医師の長時間労働や激務が社会問題となるなか、「フリーランス医師」という新しい働き方が注目を集めています。自由な時間の調整や働く場所の選択が可能な一方で、安定性の問題や税務手続きなど、フリーランスならではの課題も存在します。

  • 医師がフリーランスになるには?
  • フリーランスになりやすい科は?
  • 医師がフリーランスになるメリットデメリットとは?

今回は上記のような悩みを持っている医師に向けて、医師がフリーランスとして選べる勤務形態や働き方の例、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

フリーランス医師という働き方が注目される理由とは?

近年、特定の医療機関に縛られずに働く医師が増えている背景には、社会や医療現場の状況変化が深く関係しています。
たとえば、急な人手不足や一時的な診療科強化など、医療機関側の需要に応じて働くことができるフリーランス医師は、柔軟な労働力として重宝されています。

一方、働く医師にとっても、自分の都合に合わせて勤務日や時間を調整しやすくなることは大きなメリットです。
また、フリーランスでの働き方は「時給制」が基本であることが多く、時間外労働に対しても適切に報酬が支払われる傾向があります。これは、一般的な常勤契約と比べて収入効率の面で有利な点といえるでしょう。

ただし、フリーランスとして勤務し続けるには、日々の求人情報を自らチェックし、医療機関との契約を個別に結ぶ必要があります。
こうした契約関係は、労働契約とは異なり、業務委託契約として結び直す形になることもあります。そのため、契約内容の知識やリスク管理も欠かせません。

また、医師としてのキャリアを考えるうえで、学会活動や研修などに参加することも重要です。フリーランスで働くと、組織的な支援を受けづらくなることから、これまで以上に可能性の広がる活動を自分の責任で選び取る必要があります。

このように、フリーランス医師の働き方は多様である反面、明確な定義が存在するわけではありません。
各自が置かれた状況やキャリアの目的に応じて、自分なりの働き方を模索する姿勢が求められます。

今後、医師の働き方改革が進むなかで、こうした柔軟な働き方を選ぶ医師がさらに増えることが予想されます。

医師フリーランスの代表的な働き方5選

ここでは、フリーランスの医師の働き方を5つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。

(1) 定期非常勤

週に1〜3日など決まった曜日・時間に、同じ医療機関で継続的に勤務するスタイルです。
業務内容は外来、病棟管理、訪問診療などさまざまで、担当する分野も自分の専門に合わせて選びやすいのが特徴です。

収入が安定しやすく、将来的な開業や育児・介護との両立もしやすいため、フリーランスの基盤として人気があります。

(2) スポットバイト

1日単位または数日単位で入る短期の勤務形態で、救急外来、当直、健康診断、ワクチン接種など多岐にわたります。

日程や勤務内容を自分で選べるため、非常に柔軟性が高く、空いた時間を有効活用できます。
収入効率も良い案件が多く、旅行や学習など自分の時間を大切にしたい医師に向いています。

(3) 定期非常勤とスポットバイトの組み合わせ

定期非常勤で一定の収入とスケジュールの安定を確保しつつ、スポットバイトで自由な働き方を実現するスタイルです。

繁忙期や自分の生活に応じて勤務量を増減できるため、無理のないペースで収入アップも目指せます。
専門を活かしつつ新たな診療領域に挑戦する機会もあり、成長志向のフリーランス医師に好まれます。

(4) 臨床以外や柔軟なスタイルのアルバイト・パート勤務

産業医、医療監修、医療系ライター、講師、治験業務、企業との共同プロジェクトなど、臨床以外で医師免許を活かす選択肢も増えています。

また、比較的軽い外来業務で開業医をサポートするなど、臨床に関わりながらも負担の少ない働き方を選ぶことも可能です。
専門性を活かしながら、精神的にも余裕を持った生活を送りたい医師に適しています。

(5) 医師以外の仕事の掛け持ち

医療の枠を超えて、異業種に挑戦する医師も増えています。

起業、医療スタートアップ参画、ビジネスコンサルティング、出版、メディア出演、SNS発信、医療教育コンテンツの制作など、活動の幅は広がる一方です。
医師としての経験や信頼性を軸に、複数の収入源を持つことで、将来の不安やリスクを分散するというメリットもあります。

フリーランス医師になりやすい診療科は?麻酔科医のリアル

フリーランスとして働きやすい診療科としてよく挙げられるのが麻酔科です。手術ごとのスポット勤務が多く、短時間で高時給の案件が豊富にあるため、柔軟に働きたい医師に人気があります。

ただし、現在では麻酔科専門医の更新条件として「同じ施設で週3日以上勤務すること」が求められるため、複数施設を自由に回るような完全なフリーランススタイルは難しくなっています。

そのため、多くの麻酔科医は常勤や非常勤を一部確保しながら、空いた日に他院で働く「半フリーランス」の形を取るのが現実的です。

医師がフリーランスになる3つのメリット

ここまで医師がフリーランスとして働き方についてお話してきました。
ここからは医師がフリーランスになる3つのメリットについて解説します。

  1. 年収アップの期待
  2. 休日や働く時間を自由に調節できる
  3. 人間関係のトラブルから解放される

①年収アップの期待

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(※1)によると、10人以上の事業所に勤務する常勤医師の平均的な月収(所定内給与)は約95万円で、月あたりの所定内労働時間は164時間であり、これを時給換算すると、およそ5,793円程度です。

一方で、同調査の「短時間労働者編」によると、非常勤やパート勤務などの医師は、1時間あたりの給与が平均で12,225円と、常勤医師の約2倍の時給水準となっています。

これは、非常勤医師には社会保険や福利厚生などの雇用負担が発生しにくく、病院側が人材確保のために時給を高く設定する傾向があるためと考えられます。

つまり、仮に短時間勤務の医師が週2〜3回のスポットバイトを行った場合でも、月収ベースで常勤医と同等以上の収入を得ることも十分可能です。

特に手術麻酔や救急対応など専門性の高い診療科や医師不足が深刻な地域では1日数時間の勤務でも週40万円以上の高収入を得ることも珍しくありません。収入アップを狙いたい医師にとっては、こうしたスポット勤務の活用も有効です。
(※1)出典元:「令和5年 賃金構造基本統計調査」/「令和5年 賃金構造基本統計調査(短時間労働者)」

②休日や働く時間を自由に調節できる

フリーランス医師として働く場合、複数の医療機関で勤務することが一般的です。

曜日ごとに勤務先が異なるケースも多く、自身のライフスタイルや家庭の事情に合わせて柔軟に勤務時間を確保できる点が大きな利点です。例えば、子育て中の医師は学校行事や家族の予定に合わせて勤務日を調整できます。
育児や介護との両立を考える医師にとって、空いた時間を活用した非常勤勤務は有効な選択肢となります。

自由度が高い働き方はQOL(生活の質)の向上にも直結し、ストレス軽減にも繋がります。

③人間関係のトラブルから解放される

常勤医師が抱えやすい職場の上下関係や派閥、嫌がらせなどの人間関係トラブルが少なくなります。
フリーランスは契約ベースの関係となるため、長期間の関係を強制されることが少なく、気軽に働けるのが魅力です。

医師がフリーランスになるデメリット

ここからは医師がフリーランスとして働くことのデメリットについて解説します。

①仕事が不安定になる

定期非常勤として務めていても、病院が定勤の医師を雇うことにより解雇されるケースもあります

またスポットバイトも案件は多いですが、不定期であることに変わりはありません。
本当に働きたいタイミング、希望の内容で働けるかはその時になってみないとわからない場合が多いことはデメリットの一つとなるでしょう。

②税金や保険料、年金などの手続き

常勤勤務と比べると福利厚生や社会保障制度には差があります。
多くの場合、フリーランス医師は雇用契約を結ばず、個人事業主として医療機関と契約を交わします。

そのため、社会保険や厚生年金に加入しない場合もあり、退職金の支給も基本的に発生しません。この点は働き方を選ぶ上での重要な注意点です。

また、フリーランスは、自分で確定申告や税務業務をしなくてはいけません。
さらに家や車などの大きな買い物をする際も、信用問題の観点から銀行から融資が通らないことがあります。カードローンを組めないケースもあるでしょう。

自分にあった働き方を探す

フリーランスや非常勤医師として働く際には、医療機関ごとの運営母体の方針によって雇用契約の内容が異なるため、事前にしっかりと調査・比較を行いましょう。
費用や社会保障の負担をどこが担うのか、オンコールや夜勤の有無なども確認すべきポイントです。

また、フリーランスという選択は「自由=すべて自己責任」であることを意味します。
勤務先を自力で探す必要があるほか、条件交渉や契約内容の精査も自身で行わなければなりません。
こうした課題を踏まえたうえで、正社員としての安定と、自由度の高い働き方の違いを理解し、どちらが自分に合っているかを見極めることが重要です。

医師がフリーランスになる前に注意するべきこと

フリーランスとして安定した収入を得るには、一定の経験や専門医資格など、医師としてのスキルが求められます。

医師がフリーランスになるとキャリア形成の面で、大学医局や組織に所属せず働くことの影響は無視できません。
専門医の取得や研究活動を重視する場合には、どのような形で経験を積んでいくか、長期的な視点で計画する必要があります。

もし今の働き方に疑問を感じているなら、自分の市場価値や選択肢を客観的に把握する意味でも、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談してみてはいかがでしょうか。

メッドアイでは、医師のQOL向上を重視し、フリーランスを含む多様な働き方にも丁寧にサポート。勤務先探しはもちろん、条件交渉や契約内容の確認も専門のコンシェルジュが代行してくれます。
まだ迷っている段階でも、将来に向けたヒントが得られるはずです。

まとめ(フリーランス医師の働き方)

今回は、フリーランスを目指す医師に向けた内容を紹介しました。

医師がフリーランスになるのはメリットもあれば、当然デメリットも存在します。
今回紹介したおすすめの働き方を参考に、フリーランスとしての進路を具体化してみてはいかがでしょうか。

とはいえ、いきなりフリーランスを目指すことに不安を覚える方もいるでしょう。
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