管理医師は「高収入でリスクが低い働き方」と言われることがある一方で、勤務日数や法的責任などを正しく理解せずに引き受けると、トラブルにつながる可能性もあるポジションです。
実際には、週32時間以上の勤務が求められる常勤要件や、医療機関の管理者としての責任など、事前に把握しておくべき条件が複数あります。
また、開業医や院長との違いが分かりづらく、働き方やリスクを誤解したまま検討してしまうケースも少なくありません。
「管理医師の勤務日数や働き方はどの程度なのか」
「どこまで責任を負うのか、リスクはあるのか」
「開業医や院長とは何が違うのか」
本記事では、管理医師の基本的な役割から、勤務条件・年収・リスク、そして開業医や院長との違いまで、実態ベースでわかりやすく解説します。管理医師をキャリアの選択肢として検討している方は、ぜひ参考にしてください。
管理医師(雇われ院長)とは
管理医師とは医療機関の管理を行っている医師のことです。
一般的には、院長が管理医師の役割を担うことが多いです。雇われ院長という呼ばれ方をする場合もあります。
すでに存在している医療機関の管理を行うため、自分で医療機関を開業するコストをかけずに経営について学べる点が特徴です。
一般的な医師と比べると、医療機関の管理者として、労務管理や業者との交渉などを行わなければならず、対応しなければいけない業務の範囲が広いと言えるでしょう。
管理医師と院長との違い
管理医師と院長は混同されやすいですが、意味や役割は異なります。
管理医師とは、医療法で定められた「医療機関の管理者」であり、診療体制や安全管理体制の整備などについて責任を負う立場です。
一方で院長は、医療機関における役職名の一つであり、必ずしも法律上の定義があるわけではありません。そのため、院長であっても法人の代表者とは限らず、あくまで現場責任者として位置付けられているケースもあります。
また、いわゆる「雇われ院長」と呼ばれるケースでは、院長が管理医師を兼ねていることが一般的です(特に診療所では両者が同一であるケースが多い傾向にあります)。ただし、すべての院長が管理医師であるとは限らず、医療機関によって役割の分担が異なる場合もあります。
このように、管理医師は法律上の責任を持つポジションであるのに対し、院長はあくまで役職名であり、両者は必ずしも一致するものではありません。
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管理医師と開業医との違い
管理医師と開業医は、立場やリスクの大きさが大きく異なります。
管理医師は医療機関に雇われる立場であり、経営リスクを負わずに診療や管理業務に携われる点が特徴です。
一方で開業医は、自ら医療機関を開設・運営する立場であり、収益や経営判断の責任をすべて負う必要があります。
そのため、開業医は自由度が高い反面、設備投資や人件費などのコスト負担や、経営が安定しないリスクも伴います。一方で管理医師は、経営面の負担を抑えながら一定の収入を得られる点がメリットですが、経営に関する裁量は限定される場合が多いです。
管理医師の働き方について
管理医師は一般的な勤務医と比べて働き方が異なります。ここでは管理医師が具体的にどのような働き方をしているのか解説します。
管理医師の仕事内容
管理医師の大事な業務が外来患者の診療です。
先ほど管理医師は医療機関の管理を行っている医師と説明しました。もちろん医療機関の管理は業務の一つではあるのですが、それだけを行っているわけではありません。
普段は一般的な勤務医と同様に、外来患者の診療を行います。そのため勤務医と同じ業務を対応することも多いです。
しかしスタッフの労務管理や業者との交渉など、診療以外の業務が発生する場合もあります。勤務先によって業務内容は異なりますが、一般的には勤務医と比べて多くの仕事に対応しなければいけません。
管理医師の年収相場
管理医師の年収相場は1,500万〜2,000万円ほどであり、勤務医の年収相場の1,000万〜1,500万円と比較すると高めになっています。 あわせて読みたい
管理医師には院長手当や施設管理者手当が付くからです。管理医師はこれらの手当によって、勤務医よりも給料が高くなりやすい傾向にあります。
しかし勤務先によって給料は異なります。
管理医師として働いているから、必ずしも勤務医と比べて給料が高くなるとは限りません。
特にクリニックの経営状況が悪く、投資した金額を回収しきれていない場合は、給料が下がりやすい傾向にあるため注意しましょう。
管理医師の条件や勤務日数
管理医師は原則として常勤でなければならず、厚生労働省の定義では「週32時間以上勤務」が基準とされています。
ただし、この32時間はあくまで最低ラインであり、実際の現場では週4〜5日勤務、週40時間前後のフルタイム勤務が求められるケースが一般的です。
特に外来中心のクリニックでは、診療時間に合わせて勤務する必要があるため、勤務医と同等、もしくはそれ以上の拘束時間になることも少なくありません。
また「週32時間を満たせばよい=週4日勤務が可能」といった柔軟な働き方ができるかどうかは医療機関ごとに異なり、実際にはフルタイム勤務を前提とした求人が多いのが実情です。
そのため、管理医師になれば勤務時間が大きく減るというわけではなく、むしろ責任や業務範囲の広がりによって負担が増えるケースもある点には注意が必要です。 あわせて読みたい
参考:常勤医師等の取扱いについて|厚生労働省
管理医師の兼任は可能?
原則として管理医師になった医師は、他の病院や診療所の管理者にはなれません。
しかし2カ所を管理しないと地域の医療需要が満たせない場合や、施設の規模や診療時間から2カ所を管理しても問題ないと判断された場合は、管理医師の兼任が認められます。
そのため1つの医療機関で管理医師として働き、もう1つの医療機関でアルバイトをすることも可能です。
兼任を検討している方は、無理をせずに自分の体の許す範囲で行うようにしましょう。
管理医師不在では診療できない
管理医師は医療機関を管理している存在であるため、不在の場合は診療が行えません。
管理医師が不在になった場合は、保健所に休止届を出す必要があります。
ただし管理ができる状態であれば、オンラインによる在宅勤務は認められています。
しかし診療所にほとんど不在の状態となってしまうと「管理業務が行えるのか」「適切な診療の提供が可能か」という問題が出てきます。
適切な勤務ができる状態でなくなった場合は、別の方に管理医師になってもらう、医療機関を休止するといった対応が必要でしょう。
管理医師の3つのメリット
管理医師になるメリットは、主に3つあります。
- 費用をかけずに医院経営に関われる
- 安定的な待遇・勤務医よりも高給になる
- 運営に関することは本部や事務長などに対応してもらえる
1.費用をかけずに医院経営に関われる
管理医師のメリットは医院経営に関われるため、経営について費用をかけずに学べる点です。
医院経営を行う上で最もネックになるのが開業費用です。実際に開業しても集患に苦しみ、赤字で倒産してしまうケースも少なくありません。
開業というハードルがなく、勤務医では学ぶのが難しい集患やスタッフのマネジメントについて学べるのは、管理医師ならではのメリットです。
2.安定的な待遇・勤務医よりも高給になる
一般的には勤務医よりも管理医師のほうが高給になる傾向にあります。厚労省が発表している第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告によると、勤務医の平均年収は約1,400万円、院長は約2,600万円となっており、管理医師を含む院長のほうが年収が高いことがわかります。
ただし上記の統計は管理医師と開業医の区別がされておらず、実際の管理医師の平均年収と比べると高い数値が出ているため、あくまでも参考としてください。
とはいえ一般的な勤務医と比べると、給与が高いことには間違いありません。
3.運営に関することは本部や事務長などに対応してもらえる
開業医は医療機関の経営を自分の采配で行わなければいけません。 あわせて読みたい
管理医師も医療機関の経営を行うという立場は変わりませんが、採用に関することや経営に関することは、本部が対応してくれるケースが多く、開業医と比べると負担が少ないです。
しかし勤務先によって管理医師の業務範囲や裁量権は異なります。
採用業務も可能な範囲で任される可能性があるため、勤務先を選ぶ際は注意しましょう。
求人情報に「経営については本部に任せることができます」などの記載があれば、管理医師の立場でありつつ経営面については本部にお任せできるため、診療業務に集中しやすいです。
管理医師の3つのデメリット
管理医師にはメリットがある一方で、デメリットもあります。
- 管理責任が発生する
- 管理職としての業務が増える
- 人事権や経営に関する権限がない場合がある
1.管理責任が発生する
管理医師には、安全管理体制の確保や従業者の監督など、医療法に基づく管理者としての責任が課されます。そのため、診療体制や管理体制に問題があった場合には、管理医師として責任を問われる可能性があります。
なお、医療機関の運営主体(法人など)にも経営責任はありますが、管理医師はあくまで「管理者」としての独自の責任を負う立場であり、すべての責任が運営母体に帰属するわけではない点には注意が必要です。
管理医師の主なリスク
管理医師として働くうえでは、以下のようなリスクがあります。
- 管理者としての実態が伴わない場合、医療法違反と判断される可能性がある
- 診療体制や安全管理体制に問題がある場合、行政指導や改善命令の対象となる可能性がある
- 管理体制の不備が原因でトラブルが発生した場合、監督責任を問われる可能性がある
- 実質的に管理業務を行っていない場合、「名ばかりの管理医師」とみなされるリスクがある
特に、実態として管理業務を行っていないにもかかわらず名義上のみ管理医師となっている場合は、法令上問題となる可能性があるため、勤務実態や業務範囲については事前に十分確認することが重要です。
2.管理職としての業務が増える
管理医師は勤務医とは異なり、管理職としての業務を行わなければいけません。 あわせて読みたい
定期的に理事会に参加したり、業者との商談や交渉を行ったりしなければいけない場合もあります。
法人によってどこまで対応するかは異なりますが、勤務医と比べると業務が多くなる点はデメリットと言えるでしょう。
また理事会に関しては、医療法人においては、管理者は理事に含めることが原則とされており、実務上は理事会に参加するケースが一般的です。
3.人事権や経営に関する権限がない場合がある
管理医師は経営する立場にあるものの、人事権や医療機器の導入などに関して権限が与えられないケースがあります。開業医と比べると自由度は低いです。 あわせて読みたい
しかし新規開院の際は相談が可能な場合もあります。そのため必ずしも意見を聞き入れてもらえないわけではありません。
管理医師に向いている人
管理医師に向いている人の特徴は、以下の通りです。
- 勤務医からキャリアアップを狙いたい人
- リスクを抑えつつ安定して高収入を得たい人
- 将来的な開業を視野に入れている人
1.勤務医からキャリアアップを狙いたい人
管理医師は勤務医と比べて、責任が重く業務量も増えます。 あわせて読みたい
キャリアとしては勤務医と比べて上になるため、キャリアアップを狙いたい人にはおすすめです。単純に高収入を目指している方にもおすすめの仕事です。
2.リスクを抑えつつ安定して高収入を得たい人
管理医師は勤務医と同様に雇われている立場にあります。 あわせて読みたい
開業医と比べると、経営に失敗して負債を抱えてしまうリスクはありません。リスクを抑えながら高収入を目指したい方にはおすすめの仕事です。
3.将来的な開業を視野に入れている人
勤務医として働いている方の中には、将来的な開業を視野に入れている方もいるでしょう。
管理医師になれば、経営の仕組みやマネジメントの知識を学べます。
いきなり開業をするのはリスクがあり、ハードルも高いです。
管理医師であれば、雇われながら経営について学べるため、開業をする準備としてはぴったりと言えるでしょう。
管理医師としての働き方や条件は医療機関ごとに大きく異なるため、具体的な求人条件を確認したい場合は、医師専門の転職エージェントを活用するのが効率的です。
特に管理医師求人は非公開で扱われることも多いため、自分だけで探すのは難しいのが実情です。 あわせて読みたい
自分の理想に合うキャリアプランを選択しよう
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管理医師や勤務医、開業医など、医師には様々な働き方があります。
どの働き方が正しいというのはありません。自身の価値観や理想としているライフスタイルなどから、最も合う働き方を検討していくことが大切です。
開業を考えていない方でも、高収入を目指したい方に管理医師はおすすめです。
ぜひ管理医師をキャリアアップの選択肢として考えてみてください。
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まとめ(管理医師とは?)

管理医師は、勤務医と開業医の中間的な立場にある働き方であり、一定の収入と安定性を確保しながら、医療機関の運営にも関われる点が特徴です。
ただし、勤務日数や責任範囲、経営への関与度は医療機関によって大きく異なるため、条件を十分に確認せずに引き受けると思わぬ負担につながる可能性もあります。
そのため、管理医師を検討する際は、勤務条件や業務範囲、責任の範囲を事前に把握したうえで、自身のキャリアプランに合っているかを見極めることが重要です。
また、管理医師の求人は一般公開されていないケースも多く、条件面も医療機関ごとに大きく異なるため、自分だけで比較・判断するのは難しいのが実情です。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」では、管理医師求人を含む非公開求人の紹介や、勤務条件・責任範囲の詳細な説明を受けることができるため、ミスマッチを防ぎながら転職活動を進めることが可能です。
管理医師としてのキャリアを具体的に検討したい方は、一度相談してみるとよいでしょう。

















