医師が病状や治療方針を患者に説明するインフォームドコンセント。
実際に説明する際に、どういった点を意識すればいいのかが気になっているという方も多いのではないでしょうか。
患者側にきちんと伝わっているか、不安になっていないかと気を配るのが難しいと思っている方もいるかもしれません。

「医者のどんな対応に患者は不安を感じる?」
「インフォームドコンセントの目的は?」
「インフォームドコンセントのポイントは?」

今回は、インフォームドコンセントのポイントや、患者さんが不安に感じやすいケースなどをご紹介します。
説明がうまく伝わらないと医師の側も不安になってしまいがちです。
あらためて基本を押さえて解説しますので、実際の対応の時の参考にしてください。


患者が医師に不安を感じるケース

まずは、患者さん側が医師の説明を理解しづらかったり、不安に感じたりするのはどういう場面なのかを見ていきましょう。
普段行っている自分の説明に当てはまる点がないかどうかを考えてみてください。

ケース1:医師によって異なる見解

担当医師が変更になった際に、医師の見解や説明がこれまでと異なっていると、患者さん側は不安や不信を抱いてしまうことがあります。
担当医が変わるので、人によって見方が違うということは当然にあり得ることで、ある程度仕方がないとも言えることです。
しかし、唐突にこれまでと違うことを言われてしまうと、患者さんは混乱してしまうということを気にかけておく必要があります。

もしも担当医変更の際に治療方針を変更する場合は、以前の医師の見解もきちんと踏まえた説明を心がけると良いでしょう。
今説明している治療方針がこれまでと違う理由や、変更することで期待できる効果を、経緯も含めて説明することで、患者さん側の不安を減らすことにつながります。

ケース2:医師の話し方や態度の問題

説明する医師の態度の問題もあります。
医師からの説明が高圧的に感じたり、病状を大げさに言うといったものや、逆に説明してくれないと感じられるような大雑把な説明には、不安を感じられたりするケースがあります。
また、若い医者なのに、妙に上から目線に感じる「ドクハラ」のような感じ方をされてしまうケースもあるようです。
こうした感じ方をされてしまうと、患者さんサイドには不信感や怖いといった思いが先行してしまい、意志との信頼関係を築くのが難しくなります。

意外かもしれませんが、その要因の一つに、態度そのものではなく医師の見た目もあるかもしれないと考えて見てはどうでしょうか。
医師といえば大抵は白衣を着ていますが、この白衣や術衣の見た目の印象が、相手に圧迫感を与える要素の一つと言われているのです。
白衣高血圧などの症例があることからも、あながち外れてはいないと考えられます。
したがって、最初からマイナス要素があるという前提で物腰や言い回しを気をつけることで、印象を和らげる工夫を心がけてみることをおすすめします。

ケース3:医師の説明が難解

柔らかい物腰や丁寧な説明を心がけていても、患者さんが不安に感じるケースは出てきます。
その一つが専門用語です。
診療で使用する専門用語は、医師でもはっきりわかるいわゆる「業界用語」のような高度なものであれば、意識してわかりやすい言葉に言い換えることができます。
しかし気をつけたいのが、もう少し基本的な病気や体に関する言葉の説明です。

例えば、人体のどの位置にどんな臓器があるのかや、その臓器の各部位の名称などは、医師にとっては当たり前すぎる基本知識です。
しかし患者さん側にとってはまったくそうではありません。
膵臓はどこにあるかと聞かれて、「みぞおちの下部で胃の裏側です」と即答できる患者さんは、そんなにたくさんはいないのです。
こうした、「業界用語ではないから大丈夫だろう」という基本的な部分についても、しっかり相手に理解されているかを考えながら話すことが求められます。

治療の説明「インフォームドコンセント」とは

インフォームドコンセントでは、単純に治療方法を説明すれば良いと言うものではありません。
確かに、業務上の定義としては、説明をして患者さんの理解を得た上で、治療方針の承諾を取ることがインフォームドコンセントです。
しかし、適正なインフォームドコンセントを行うためには、医師と患者さんの信頼関係を構築できているかが重要となってきます。

時には、救急外来などで初めて会った患者さんや家族に行う場面も出てきます。
初対面で信頼関係が作れるかどうかは難しい問題です。
こういった場面でも、患者さんの状態を的確にわかりやすく伝えることに徹することができれば、医師の姿勢を感じ取ってもらえ、短期で信頼を得る助けになります。
そして、しっかりと患者さん側に理解してもらった上で、治療方針や期待される効果、リスクを隠すことなく説明することで、患者さん側も安心して医師に治療を委ねることができるのです。
そして、インフォームドコンセントは一人の患者さん側に一度きりということはあまりありません。
治療のプロセスで、その都度状態を把握し説明していくことになります。
この積み重ねも信頼関係の強化につながり、治療への理解も得やすくなるのです。

また、ちょっとした風邪や軽い怪我など、軽い症状の場合は、インフォームドコンセントを簡単に済ませてしまうケースもあるでしょう。
こうした時でも、患者さん側には聞く権利がありますので、求められたら都度対応する柔軟さが求められます。
その際にも、患者さん側に医学的な知識がないとわかりづらいような話し方は避け、わかりやすく説明することが大切です。
そして、自分でわかりやすく説明したつもりでも、相手に伝わっていないと始まりませんので、時々は質問返しなどを試みて、理解度を測ってみるなどの工夫も必要です。

インフォームドコンセント・3つのポイント

医師と患者の相互理解が必要なインフォームドコンセントをスムーズに行うためには、押さえておくべきポイントがあります。

  • 患者が自己決定できるようにする
  • 不安感をなくして治療効果を高める
  • インフォームドコンセントが困難な場合の対応

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

患者が自己決定できるようにする

インフォームドコンセントにおいて、医師が担う責任は、「患者が自己決定できるような理解を与えること」にあります。
したがって、専門的な知識を持つ医師と、持たない患者とで認識の相違が起こらないような配慮が必要です。

例えば治療方法が複数ある場合、その患者に対してどの治療法を適用すれば一番効果が得られるのかを考え、優先順位をつけるのはどの医師も行うことでしょう。
それを患者さん側に説明する際に、優先順位づけの根拠や副作用などのリスクも詳しくかつわかりやすく伝えることが大切です。
患者さんが優先順位を理解し、医師の提示した治療法を受けるのか拒否するのかを冷静に判断できるまで、何度でも説明するくらいの気持ちが必要となります。

また、当たり前のことではありますが、医師には治療方法を検討する際、単純に病気を治せるかどうかだけでなく、治療後の患者さんの生活まで慮る力が求められます。
そのためには、その患者さんの普段の生活や考え方、できれば価値観まで把握しておくと、どの治療法が一番適しているのかを判断する助けにもなるでしょう。
そしてそうした関係づくりは、最初からうまくいくとは限りません。
何度も会話を重ね、その都度自分の説明が理解されているかを尋ねたり推し量りながら、信頼関係を築き上げていく努力が大切です。

不安感をなくして治療効果を高める

インフォームドコンセントがうまくいかなかったり、そもそも省いてしまったりすると、患者さんは今なぜ自分がその治療を受けているのかを理解していない状態になってしまいます。
そうなると、例えば処方した内服薬の必要性が理解されず、自己判断で服薬をやめてしまう可能性もでてきます。
そうなると、結果として治療効果を落としてしまうことになるのです。

インフォームドコンセントで相互理解ができていれば、患者さんも自分がなぜこの薬を飲んでいるのかを把握することになります。
さらに、飲んだ結果状態がどうなったかについてや、今後の治療方針についても、話が飲み込みやすくなるのです。
適切なインフォームドコンセントが行われることは、治療効果を高めることにつながります。
それと同時に、患者さんの不安感を軽減することにもなり、心身両面からのアプローチがスムーズになるのです。

インフォームドコンセントが困難な場合もある

インフォームドコンセントは医師と患者さん側との間で行われるのが基本です。
しかし、それが困難なケースもあり、その都度臨機応変な対応が求められます。
例えば患者が未成年や幼い子どもの場合や、意識障害がある状態で本人が意思確認できる状態でないこともあるでしょう。
患者さん本人にインフォームドコンセントが行えない場合は、付き添った家族などの代理人に説明して同意を得る方法を取ったり、まず治療を優先させて、本人との意思疎通ができるようになってから事後説明したりすることになります。

また、一昔前まではがんの告知などの場合に、家族のみに告知を行うケースもよく見られました。
今でも先に家族に告知して、本人への告知をどうするか確認する医師もいます。
これも、患者さんの家族へ向けた立派なインフォームドコンセントです。
ただし、がんについては、最近では直接本人に病名を伝える例も増えてきています。
それでも病状や本人の人柄、精神状態や家族の理解など、広範囲にわたっての配慮が欠かせないことには変わりありません。

まとめ(医師の不安について)

医師が患者に病状や治療方針を伝えるインフォームドコンセントは、相互理解が最も重要です。
患者さん側としても、説明が理解できなかったり、医師の態度に萎縮してしまい思ったことが言えないとなると、不安や不信を抱くことになってしまいます。
しかし、医師の側としても、患者にうまく伝わっているかや、患者の判断に寄り添えているかを不安に感じてしまうことがあるのではないでしょうか。


インフォームドコンセントをスムーズに行うには、普段からの心がけだけでなく、こまめなコミュニケーションや、さまざまな患者さんと向き合う経験も必要です。
今の環境で患者さんと向き合える機会が少ないと感じている医師の方は、転職を検討するのも一つの選択肢です。
医師が転職を希望する場合、転職エージェント「メッドアイ」の利用がおすすめです。
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