医師不足の深刻さは、社会の急速な高齢化などを背景に、加速していると言われています。
地域や診療科によってもその度合いにはばらつきがあり、医師が働き方を考える上でも影響を受けることです。
「医師不足と言われているが現状が気になる」
「医師不足の現状が転職に影響するのか知りたい」
この記事では、医師不足の現状や理由として考えられるポイントについてご紹介します。
医師不足が叫ばれる中で、より良い環境を目指して転職を考える場合に気をつけたいポイントについても解説しますので、参考にしてください。
現状医師不足だと言われている5つの理由
医師数の不足が起こる原因には、いくつかの要因が複雑に絡み合っているという背景があります。
それらの理由の中から、主に医師不足に直結しているものを5つピックアップしてご紹介します。
1.世界的に見て日本の医師数が少ないから
まずは数値でわかる実態として、世界との比較があります。
日医総研がまとめたデータによれば、日本の人口1,000人あたりの医師数は2.4人です。
これを世界と比較するとかなり少ない部類に入り、多い国では1,000人あたり5〜6人という国もあります。
さらにOECD(経済協力開発機構18カ国)平均値が3.5人となっていて、その平均値も下回っています。
日本の場合地域による偏在などもあり、すべての地域で医師が不足しているというわけではありません。
しかし全体的に見ると、国際的にもかなり医師数が少ない国という認識になってしまいます。
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2.新制度の増設で医局派遣が減っているから
2004年から導入された新臨床研修制度により、研修医は必ずしも大学病院を選択しなくても良くなりました。
このことから、医局に所属する医師が減少しています。
医局員が減ったことにより、これまで大学病院医局が担っていた医療過疎地への医師派遣が滞ることになっているのです。
結果として、研修に必要な環境が充実した医療機関に若手医師が集まる傾向が起き、医師の地域偏在につながっています。
働く医師の側から見れば、医局人事は望まない転勤などもあり、辛く感じることもあるでしょう。 あわせて読みたい
しかしその医局人事が、医師の地域偏在の解消に一役買っていたことは間違いない事実です。
昨今では各都道府県の医師確保計画によって、民間病院でも医師派遣を行うことでインセンティブを出すなどの施策が取られています。
3.医師に求められるニーズが増加しているから
医師は常に新しい技術の習得や知識の吸収に努めていくことが欠かせない職業です。
医療業界の仕組みや制度についても頻繁に改正が行われています。
さらには、AIやIT化も進められていて、医師にも高いITリテラシーが必要になってきています。
こうした変化に対応するための労力が医師の負担になっていることも、医師不足が加速する要因の1つです。
さらに、高齢化社会の到来で、医療が必要な高齢者が増えていることも、医師のニーズを膨らませています。 あわせて読みたい
医師に求められるニーズが増えれば増えるほど、対応していく医師の負担は増え、働き続けることが辛くなるという人も少なくありません。
働きやすい環境を求めて転職したり、医師そのものを辞めてしまったりする人が出てくることで、医師不足や地域偏在が加速してしまいます。
4.労働条件が悪く改善されにくいから
医師がハードな職業であることは知られていますが、それが改善されないことも医師不足を招く理由と言えるでしょう。
診療科や医師数の状況にもよりますが、当直回数が多かったり、オンコール待機などの時間外労働が当たり前になっていたりする現場はたくさんあります。
こうした状況は身体的にも精神的にも負担が大きいため、耐えられなくなって現場を離れてしまう医師や医療スタッフが多いのが現状です。
いよいよ2024年から医師の時間外労働時間を制限する「働き方改革」が医療業界にも適用されます。 あわせて読みたい
しかしながら、対応する医療機関の準備が進んでいないというところも見受けられ、すぐさま改善につながるかどうかは未知数であるという見方もあります。
5.増加する女性医師への受け入れ態勢が整っていないから
医師の世界は長らく「男社会」である向きが強かったと言えます。
診療科によっては昔から女性医師が活躍する現場もあるものの、そうでないところでは未だ女性医師の受け入れ態勢があまり整っていないところが多いです。
このため、女性医師が増えてきても、結婚や出産を機に離職してしまう人が少なくありません。
ただでさえ、医師は一人前になるまでに時間を要する上、その間は収入も芳しくない時期が続くことから、ライフプランを立てにくいという側面があります。 あわせて読みたい
女性医師が研修期間中に出産しても、産後に復帰しやすいサポートが整った環境があれば、引き続き研鑽を続けていくことができるでしょう。
そういった環境づくりが進めば、医師数の不足に歯止めをかけることが期待できます。
環境によっても医師不足の状況は異なる
日本の医師不足は、先にも触れた通り、地域や診療科別といった環境によっても異なってきます。
ここからは、医師偏在の状況について詳しく見ていきましょう。
診療科による医師数の偏り
診療科の違いによる医師数の偏りには、忙しさや責任の重さなどが影響しているような傾向が見られます。
時間外の急患対応が多くなりがちな外科や、時間を問わずに対応が必要な産科などの医師が少なくなっているのです。
また、こうした診療科は小さなミスが命に直結するケースもあり、訴訟リスクが高いという認識もあるため、離職率が高いと言われています。
厚生労働省が発表しているデータから、医師数の多い診療科と少ない診療科をまとめました。
医師数の多い診療科 | 医師数 | 医師数の少ない診療科 | 医師数 |
---|---|---|---|
総数(調査母数) | 323,700人 | ||
内科 | 61,514人 | 産婦人科 | 108人 |
気管食道科 | 22,520人 | 神経科 | 169人 |
整形外科 | 17,997人 | 眼科 | 456人 |
形成外科 | 16,490人 | 麻酔科 | 459人 |
消化器科(胃腸科) | 15,432人 | 外科 | 594人 |
(厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」を参考に作成)
地域による医師数の偏り
地域による医師数の偏りについても、厚生労働省がデータを発表しています。
それによれば、人口10万人あたりの医師数は、全国平均で256.6人です。
これを都道府県別に見ると、一番多いのが徳島県で10万人あたり338.4人、一番少ないのが埼玉県の177.8人となっています。
医師数の少ない都道府県としては、他に千葉県や埼玉県など関東圏の都道府県が上がっています。
これは、東京への通勤ができるため、仕事を東京でしている医師が多いということも要因にあるでしょう。
さらに、各都道府県内でも医師数にばらつきがあるのが現状です。 あわせて読みたい
例えば東京都は人口10万人あたりの医師数が320.9人となっていますが、23区では367.8人であることに対して、八王子市では193.7人と平均を下回っています。
医師不足による現場の3つの課題
医師不足が起こってしまっている医療機関では、懸念される課題がいくつかあります。
その中でも、働いていく上でデメリットになることが多い3つの点についてご紹介します。
1.離職率の増加
医師不足が起こってしまっている現場では、離職率も高くなる傾向があります。
もともと人手が足りないため、医師一人当たりの業務負担が増えることもあり、耐えられなくなった医師が転職などでその現場を離れてしまうのです。
病院側も人手がないことで、医師へのフォローがうまくやりきれないケースも出てきます。
例えば、女性医師を受け入れる体制が整っていないため、新たに採用したくても女性医師だと採用しづらくなってしまう病院もたくさんあります。
こうした病院が女性医師が働きやすい環境を作ることができれば、採用の選択肢も増え、人手不足解消につながるでしょう。
2.労働環境の悪化
人手が足りない現場では、当直回数が増えたり、時間外労働が多くなったりなどの問題が出てきます。 あわせて読みたい
また、医師や医療スタッフの負担を減らすためにIT化を進めても、現場にいるスタッフのITリテラシーが低いと、かえって負担が増すケースもあるでしょう。
業務が効率良く進められないストレスは大きいもので、とくに医師の場合は労働時間が長くなることで体力的な負担も増えてしまいます。
人が足りないことで起こる悪循環をどのように解消するかが課題解決のポイントです。
3.サービスの質の低下
人手不足による労働環境の悪化が引き起こすリスクとして、医療事故が起きやすくなるという点が挙げられます。
また、手が回らないことから一部の診療科を閉鎖したり、外来受付日を減らすなどの対応を強いられている医療機関もあるのが実情です。
患者側からしても、待ち時間が長くなってしまうなどの不利益が出てきます。
これにより、必要な時に医療が受けにくくなったり、待ち時間に対するクレームが起こりやすくなったりなどの悪影響が懸念されます。 あわせて読みたい
病院側にとっても、診療行為に制限が加えられると、利益減少や経営悪化につながる恐れがあるのです。
医師不足の現状を踏まえた転職3つのポイント
医師は転職が珍しくない職業の1つです。
そして人手不足の業界であることから、求人情報ならいくらでもあると言っていいでしょう。
しかし、医師が現役を続けていくためには、常に新たな情報を吸収したり技術を磨いたりする研鑽が欠かせません。
それができる職場への転職でないと、モチベーションが維持できないという方もいるでしょう。
ここからは、医師が転職する上で、医師不足であるという現状をどのように考えるべきかをご紹介します。
1.自身のキャリアについてよく考える
医師が転職を考える場合、まずは自分自身が描いたキャリアプランを見つめ直してみることが大切です。
人手不足の現場で働く場合、労働条件は過酷になりがちですし、場合によっては給与が低くなるなどのデメリットも考えられます。
しかし、一人当たりが受け持つ診療数が増えるということは、それだけ多くの経験を積むことができるチャンスでもあります。
自分はどのようなキャリアプランを描いていて、今現在キャリアパスのどのくらいの位置にいるのかを考えると、今後の働き方が見えてきます。 あわせて読みたい
まだまだこれからたくさんの技術を磨くつもりなのであれば、もちろん体力や気力との兼ね合いもありますが、あえて人手不足の現場に身を置くという選択肢もあります。
逆に、プライベートを優先し、ワークライフバランスを整えたいのであれば、こうした現場は極力避けるべきでしょう。
2.転職希望先の情報収集は入念に行う
転職活動では、求人情報をチェックして、労働条件や待遇などを確認します。
しかし、実際の職場の雰囲気などは、求人情報から読み取ることは難しいと言えるでしょう。
さらに、その病院でどのような症例が見られるのかや、設備の整い具合はどうかなど、事前に知っておきたいことは山ほどあります。
求人情報だけを見て決めてしまうと、いざ働き始めてから「こんなはずではなかった」ということにもなりかねません。
とくに医師が不足している病院では、とにかく医師を集めたいという思いから、高待遇を提示しているところもあります。 あわせて読みたい
収入アップが目標で、そのためには多少のハードさには耐えられるという自信があれば、医師不足の現場で働いてみることも検討してみるのもいいかもしれません。
3.医師専門の転職エージェントを活用する
医師の転職に必要な情報は、前述の通りたくさんあります。
しかし、知り合いがいるなどの事情がなければ、求人情報以外のことについては、調べるのも容易ではありません。
現在仕事をしていて、その傍らで転職活動をするとなると、時間や手間をかけにくいという事情もあるでしょう。
医師が転職を考えるのであれば、初めから専門家である転職エージェントを頼るのがおすすめです。
転職エージェントは表向きの求人情報だけでなく、その病院の雰囲気や実情に精通しているため、より多くの情報を得ることができます。
医師専門の転職エージェントなら「メッドアイ」
医師の転職活動に欠かせないのが、転職エージェントの存在です。
医師の転職に特化したエージェントであれば、転職の失敗リスクを下げ、転職活動をスムーズに進める助けになります。
メッドアイでは、医師一人ひとりのキャリアプランや悩みに寄り添い、最適解に導くノウハウを豊富に持っています。
無料での相談も実施していますので、「転職したほうがいいのかな?」というモヤッとした悩みの段階でも気軽に利用することが可能です。
キャリアプランに迷った場合も、まず相談してみることで、転職すべきかそうでないかも判断しやすくなるでしょう。
ライフスタイルに合わせた非常勤の求人や、非公開求人もご紹介できるため、より多くの選択肢からその医師にあった求人をマッチングできます。
キャリア形成で悩みを持ってしまったり、今の職場を続けるのが辛いと感じたら、その思いから相談を始めてみてください。
まとめ(医師不足の現状とは?)
医師不足という現象は、人々が安心して医療を受けることができなくなるという不安を持つのと同時に、働く医師にとっても大きな影響を与えます。
医師不足が原因で病院の安定経営が難しくなると、医師の労働環境が過酷になったり、給与が下がってしまうなどのリスクも出てくるでしょう。
この状況を解消するためにはさまざまな課題がありますが、それでも力を入れて課題解決に努めている病院もたくさんあります。
自分のキャリアプランを考えながら、最も力を発揮できる場所で働きたいと思うのであれば、同じ人手不足でもそうした努力をしている病院を選ぶことで、モチベーションアップにつながるでしょう。
自分に合った病院を見つけることは大変ですが、転職エージェントに相談することで、より多くの選択肢から探すことが可能になります。
また、即座に転職すると決めなくても、一度転職エージェントに相談しておくと、自分の現時点での市場価値もわかりますし、今後の考え方や判断も決めやすくなるでしょう。
迷ったら、気軽に医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談してみることをおすすめします。