医師はキャリアプランをうまく組み立てることで、生涯現役で活躍できる職業です。
しかし、日々の激務で体力や気力が消耗していては、長い間医師として活躍するのは困難でしょう。
医師としてのやりがいや十分な収入だけでなく、プライベートも充実していないと続けていく意欲も湧いてきません。

「医師はワークライフバランスが取れている職業なのか?」
「医師のワークライフバランスについて、理想と現実のギャップはどのくらいなの?」
「ワークライフバランスを整えるためにはどうしたらいい?」
このように、自分の働き方や将来について、不安に感じている医師も多いのではないでしょうか。

本記事では、医師のワークライフバランスの現状と、理想に近づけるための5つの方法について、転職エージェントの視点から解説します。


医師はどのくらいワークライフバランスに悩んでいる?

まずは、どのくらいの医師がワークライフバランスに悩んでいるのかを見ていきます。

リクルートドクターズキャリアが実施したアンケートでは、ワークライフバランスが保てていないと感じている医師は全体の4割近くに達しているという結果が出ています。
収入と労働時間、そして休日の取得状況が納得できない現状を紐解いてみましょう。

アンケート結果から見る理想と現実のギャップ

ワークライフバランスがうまく取れているかどうかを判断するには、まず労働時間が適正なのか考えてみましょう。

理想的な労働時間は、人によって変わってきます。
そこで、前述のアンケート結果を参考に、理想と現実の間にどれくらい乖離があるかを確認してみましょう。

 現在理想
1日の就労時間10時間8.3時間
当直の回数(月)4.2回2.2回
オンコールの回数(月)6.6回2.2回

リクルートドクターズキャリア「医師がワークライフバランスを保つ方法」より一部引用

年代や診療科によってばらつきはあるものの、平均すると多くの医師が「働きすぎている」という実感を持っていることがわかります。
また、拘束時間を増やす要因となる当直やオンコール待機についても、理想とする回数を大幅に上回る現実が見えてきました。
リクルートドクターズキャリア「医師がワークライフバランスを保つ方法」をもとに作成

休日の日数も、理想が週あたり2.2日に対して、2日にすら届いていない医師が半数を超えています。
特に、週あたりの休日が1日取れない医師が全体の3割近くに及んでいるのです。
ほとんど休めず、長時間労働を続けざるを得ない現実が浮き彫りになる結果になっています。

「ワークライフバランスが適正ではない」と言う悩みは、医師の誰もが持ちうる悩みだと言っていいでしょう。

特に女性医師がワークライフバランスについて悩んでいる

単純に業務にまつわる拘束時間だけを見ても、医師のワークライフバランスは整っていない現状がわかります。
その上、女性医師の場合は、さらにワークライフバランスを整えることが困難であると言われています。
その大きな要因が、「出産」です。

一般的な出産適齢期は20代と言われていますが、医師の20代は研修医や医局勤務などでスキルを磨いている時期に当たります。
いわば、医師としてはまだ独り立ちしきれていない状態です。
そのようなタイミングで、妊娠や出産に踏み切ることができる女性医師はあまりいないのではないでしょうか。

また、出産後の子育てにかかる時間を考えると、医師の仕事を継続できるのかという悩みもあります。
出産・育児に対する職場の理解や協力的な環境は、医師に限らずこの国の働く女性にとって大きな問題です。

それでも、少しずつではありますが、出産後の女性医師の復職支援制度も広がり始めています。
院内に保育施設があったり、時短制度を設けたりしている病院を選んで働くことができれば、ワークライフバランス向上につながるでしょう。
また、生活面でも育児や家事の分担など、夫婦でしっかり相談しておくことも大切です。

ワークライフバランスを整えるための3つの視点

激務に悩む医師にとっては、ワークライフバランスを考える暇もないかもしれません。
しかし、理想的な働き方や生き方を求めるのは当たり前のことです。

そこで実践してみていただきたいのが「現状を知る」ことです。
今の時点でどのくらい激務か、客観的に整理してみてください。
そして、自分にとってベストなバランスの状態を考えてみてほしいのです。

ワークライフバランスを考える時、次の3つのポイントを考える必要があります。

  • 医師としてのやりがい
  • プライベートの充実
  • 報酬

たとえば、研修医期間中の医師や、専門医を目指して研鑽を重ねている医師であれば、体力と気力の許す範囲で仕事を最優先するでしょう。
結婚し、子供がいる医師であれば、子育ての時間を捻出しなくてはなりません。
また、開業資金を貯めるなど、報酬をメインとしている医師もいるでしょう。

上記3つのポイントの優先順位をしっかりつけることで、今の状態からどう変われば理想的なワークライフバランスになるかを知ることができます。
そして、現時点での最適なバランスが把握できたら、将来のことも考えてみてください。
医師としていつまで現役を続けるか、将来的に開業をするのかなどで、目指すワークライフバランスも変わってくるからです。

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医師がワークライフバランスを改善する5つの方法

目指すワークライフバランスが把握できたら、どうやって実現するかを検討していきます。
労働時間を減らしたいのか、報酬を増やしたいのかなど、人それぞれに整える方法は違ってきます。

ここからは、労働時間ややりがい、報酬アップなど、ワークライフバランスを整えていくための方法を見ていきましょう。

方法向いている人の特徴主な改善効果注意点・デメリット
上司・同僚に相談する現職への不満はあるが、環境そのものは大きく変えたくない人業務量の調整、当直・時間の見直し組織の体制や文化により改善が難しいケースも
転科する今の診療科ではやりがいを感じられない人、新しい専門領域に挑戦したい人やりがいの再発見、働き方の見直し専門を一から学び直す覚悟と時間が必要
転職する労働時間や報酬、働き方を根本的に変えたい人労働環境改善、収入アップ、キャリア拡充情報収集や目的の明確化が成功の鍵
開業する自由な働き方や収入を目指す人、経営に関心がある人働き方の自由、報酬アップ経営スキルが求められる、失敗リスクあり
雇用形態を変える体力的・精神的に余裕がなくなっている人、育児や介護などで時間に制限がある人労働負荷の軽減、時間の確保報酬やキャリア形成に一時的な制限が生じる場合がある

(1) 上司や同僚に相談する

「今の労働時間が過剰なので、プライベートに時間が割けない」
「給与額に不満がある」
といった職場の問題を改善したい場合、まずは一番身近なところに相談してみるのも一つの方法です。

たとえば勤務時間や当直などの管理や調整を相談してみるのもいいでしょう。
それと同時に、自分でも業務の効率化策を考え、上司に提案してみるのも有効です。

もちろん相談すれば全てが解決するわけではありません。
しかし、同じ職場の仲間が同様の問題意識を持つことで、解決の糸口が見える可能性もあります。
相談できる環境であれば、まずは身の回りでの改善を図っていくのは有効な方法だと言えます。

(2) 転科する

「今の仕事で達成感ややりがいが感じられない」と思っている場合は、どんな医療をしていくことが自分にとってのやりがいかをまず考えてみてください。

その上で、もっとやりがいを感じられる状態を目指すため転科するという方法もあります。
研究職から臨床に転身するのも、やりがいを求める医師に多く見られる選択肢です。

しかし、転科には、今までのキャリアを一旦忘れて学び直す覚悟が必要です。
ワークライフバランスで改善したいのが、労働時間や人間関係という場合には向いていません。

(3) より良い職場に転職する

ワークライフバランスを整えるために転職する医師はとても多いです。
労働時間の改善、収入アップ、やりがいを求めるための転科などは、転職することで叶えられる可能性があります。
また、転科せず今の診療科で経験を深めたいという医師にも転職は有効です。

実際のところ、医師の転職回数は平均すると4回〜5回とも言われています。
医師にとって転職は珍しいことではないのです。
転職してより多くの患者や症例を経験することで、医師としての力量を増やしていくことができます。

しかし、医師の転職を成功させるためには多大な情報収集が必要となってきます。
情報を集め、「なぜ転職するのか」という目的を明確にしておくことが、失敗を防ぐポイントです。

(4) 開業する

勤務医の場合、労働時間や給与額は改善が難しいケースもあります。
その点、開業医であれば、営業時間や休日は自分で決めることができ、ワークライフバランスを整えやすいと言えるでしょう。

また、報酬も勤務医よりアップできることが期待できます。
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査報告 P.298、306によると、平均年収は勤務医が1,461万円に対し、開業医は2,636万円と倍近い差があります。

しかし、忘れてはならないのは、ワークライフバランスが整えられる開業医は「経営がうまくいっている」ことが条件となります。
開業までにはさまざまな準備が必要ですし、開業後も順調に経営していくための手腕が問われることを忘れてはいけません。

(5) 雇用形態を変える

激務による過労に悩んでいる場合は、職場の上司に相談したり、業務効率化を考えるなどの工夫も一つの解決法です。
しかし、人員が足りないなどの理由でうまくいかないこともあるかもしれません。

そんな時は、一旦非常勤やアルバイトなどの雇用形態に変更するという方法も検討してみるといいでしょう。
今勤めている病院で変更するか、もしくは転職の際に非常勤を選ぶ方法があります。
非常勤なら過重労働からは逃れられるため、一旦プライベートの時間を整えるのには有効です。

また、キャリアプランを考え直したいが、余力がないと考えている医師にもメリットがあります。
一度非常勤として時間にゆとりを持った働き方に身を置くことで、今後のキャリアプランなどをじっくり考える時間が持てるでしょう。
出産・育児のステージを迎えた女性医師にも、非常勤で仕事を続けながら育児をする医師が多くいます。

ワークライフバランスを整えるための「働き方」選択肢

「医師=激務」は過去の常識になりつつあります。
最近では、勤務医という枠にとらわれず、多様な働き方を選ぶ医師が増えてきました。
ここでは、ワークライフバランス改善につながる代表的な5つの働き方を一覧でご紹介します。

働き方特徴メリット向いている人
訪問診療高齢者宅・施設を訪問時間のコントロールがしやすくQOL◎外来や手術に縛られたくない人
産業医企業での健康管理業務夜勤なし・デスクワーク中心安定志向・定時退勤を重視する人
オンライン診療遠隔で診察・投薬指導在宅勤務も可能/副業にしやすい自由な働き方を望む人
非常勤勤務(スポット)短時間・単発での勤務時間も場所も選べる柔軟性子育て中・ダブルワーク希望者
美容クリニック勤務自由診療・予約制中心定時退勤/体力的負担が少ない医療接遇が得意な人

それぞれの働き方には向き不向きがあるため、自分のライフステージや価値観に合った働き方を選ぶことが大切です。以下では、各働き方の特徴を詳しく解説していきます。

訪問診療

訪問診療は、患者の自宅や高齢者施設などを訪問し、定期的に診察を行う働き方です。外来のような突発対応が少なく、スケジュールに余裕が持てる点が魅力です。近年ではニーズが高まり、専門クリニックも増加しています。

産業医

産業医は企業に勤務し、従業員の健康管理や面談指導を行います。夜勤や当直がなく、業務も定時で終わることがほとんどです。臨床現場から一線を引きつつ、安定した環境で長く働きたい医師に適しています。

オンライン診療

オンライン診療は、ビデオ通話などを通じて診察や薬の処方を行うスタイルです。在宅勤務が可能で、副業として取り入れている医師も多数います。働く場所を問わないため、時間や生活スタイルを重視する人に向いています。

非常勤勤務(スポット)

スポット勤務は、短期間・単発で医療機関に勤務する働き方です。平日の数時間だけ勤務したり、週末のみ働いたりと、非常に柔軟なスケジュールを組めます。子育てや副業と両立したい医師に人気があります。

美容クリニック勤務

美容医療は、自由診療が中心で、完全予約制のクリニックがほとんどです。時間通りに終わることが多く、体力的負担も軽めです。患者との丁寧なコミュニケーションや接遇が得意な人に向いています。

理想の働き方には落とし穴も?判断ミスを防ぐために

どの働き方にも、必ずメリットとデメリットが存在します。
「自由そう」「収入が高そう」といった理想だけで飛びついてしまうと、後から「思っていたのと違った」と後悔することにもなりかねません。

重要なのは、自分にとって何が優先順位の高い価値観なのかを明確にすることです。
「働き方を変えたい」と思った時こそ、冷静な視点で状況を整理することが求められます。

医師専門の転職支援を行う「メッドアイ」では、キャリアの選択肢や働き方の希望を丁寧にアリングし、あなたに合った医療機関や働き方を一緒に考えてくれます。
自分に合った働き方を模索している方は、一度メッドアイに相談してみましょう。
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まとめ(医師のワークライフバランス)

医師のワークライフバランスは、整っているとはいえない現状があります。
4割もの医師が、ワークライフバランスの理想と現実のギャップに悩んでいるのです。


医師として充実し、長く活躍するためにも、ワークライフバランスを整えることはとても重要なことだといえます。
今の働き方ではバランスが良くないと感じたら、早め早めの軌道修正や解決策を講じるべきでしょう。
労働時間の改善や収入アップ、やりがいを見出すための転科や転職など、解決方法は必ずあります。

しかし、実際に転職や転科をする決断をしても、今の仕事が忙しいと転職活動をするのも大変です。
そんな時、適切にサポートしてくれるのが転職エージェントです。
ワークライフバランスを考えて、働き方を変えていく必要があると感じたら、まずは転職エージェントに相談してみてください。

医師専門の転職エージェントなら、医師一人一人の悩みに寄り添い、解決の糸口を示してもらえます。