医師としてキャリアを築いていく道のりの中で、ブランクを経験することもあるのではないでしょうか。
例えば、女性医師の出産や子育てというライフイベントや、体調を崩してしまったなどの理由で一度仕事を辞めざるを得なかったといったケースです。

体調が戻ったり子育てが一段落したりで、中断していたキャリア形成を再びスタートしたいと考える医師もいるでしょう。

「医師がブランクから復帰するのは難しいの?」
「ブランクがあっても復帰したいけど、どうしたらいい?」
「復帰のための支援制度にはどんなものがあるの?」

この記事では、ブランクから復帰したい医師のために、転職エージェントの視点から医師のブランク復帰について解説します。

医療技術は毎日進化しているといっても過言ではありません。
ブランクからの復帰を考えると、ハードルは決して低くないという覚悟が必要です。
しかし、ブランクを受け入れてくれる医療機関を探したり、非常勤など負担の少ない仕事から始めたりするという解決策はあります。
ブランクから復帰して、もう一度医師の道を歩みたいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。


医師がブランクから復帰するのは難しいのか?

ブランクのある医師が復帰しようとするのは難しいことなのでしょうか?
結論から言ってしまうと、ハードルは高いと言わざるを得ません。

理由としては以下の3点が挙げられます。

  • 最新の情報や知識の吸収が困難
  • 手術などの手技や勘の衰え
  • 働ける病院の選択肢が狭まる

医療の技術や情報は常に更新されています。
新たな論文や新技術の発表はもちろんのこと、新たな感染症の流行への対応も必要です。
ブランク期間中に現場にいなかった分だけ、最新知識を吸収するための努力をしなければなりません。

また、外科手術などの手技を伴う場合、ブランクが空いてしまうことによって勘が鈍るなどの悪影響もあります。
こうした理由から、ブランク明けの医師は即戦力として最前線に立つのは困難です。

病院側も、ブランクのある医師を採用するとなると、指導医をつけるなどのサポートが必要となります。
このため、医師不足とはいえどもブランクのある医師を採用してくれる病院は限定的です。
目指すキャリアプランがあっても、希望通りの医療機関に就職できないこともあるでしょう。

ブランクの長さや、ブランク期間中に非常勤やアルバイトで少しでも現場に関わっていたかなど、状況によって違いはあります。
しかしながら、全般的には医師のブランク復帰は難しいという認識を持っておくことが必要でしょう。

ブランク復帰を成功させるためのポイント3つ

医師がブランクから復帰するのは困難ですが、まったく無理というわけではありません。
復帰のためのプランをしっかりと考えて臨めば、うまく復帰することもできるでしょう。

ブランク復帰を成功させるポイントとしては、以下の3点があげられます。

  • 復職条件の優先順位を決める
  • 非常勤やスポット勤務などからスタートする
  • ブランクOKの求人を探す

それぞれのポイントについて詳しくご紹介します。

①復職条件の優先順位を決める

いざ仕事に復帰しようと仕事探しを始めると、気になるのは条件面です。
もちろん、自分が希望する条件が揃っているのがベストですが、すべてを満たすのは難しいということを頭においておきましょう。

これはブランク明けに限った話ではありませんが、仕事を始める前には「希望する条件の優先順位をつけておく」ことが成功の鍵となります。

例えば、家計のために仕事を再開するなら給与をしっかりチェックするでしょう。
育児後のブランク明けであれば、子供のことも考慮して時短勤務が譲れない条件になるのではないでしょうか。
復帰後はバリバリと働いて、早く元のキャリアパスに戻りたいということであれば、症例がしっかり見られて忙しく働ける病院を希望することでしょう。

こうした条件を一度洗い出して、絶対に譲れないものと、状況に応じて譲歩できるものとに分けてみてください。
そうすることで仕事探しがスムーズになり、失敗のリスクも減らすことができます。

条件の優先順位をつける場合、逆に「どうしてもできないこと」も確認しておきましょう。
例えば、以下のようなケースです。

  • 長時間労働は無理(1日あたり何時間なら勤務可能か)
  • 転勤は無理
  • 休日が固定の曜日でないと無理
  • 宿直は無理

こうしたポイントは、仕事探しの段階や面接時にはっきり確認しておかないと、復帰後に思わぬトラブルの元となってしまいます。

②非常勤やスポット勤務などからスタートする

特に出産・育児後の復帰を目指す時は、最初からフルタイムで働くことが難しい場合もあるでしょう。
療養などでブランクができてしまった場合も同様で、常勤医として復帰してしまうと、忙しい環境に慣れるまでの間に疲れやストレスを溜めてしまうかもしれません。

焦らずにゆっくりとブランクを埋めていく方法として、非常勤やスポットなどの仕事を探すことも選択肢の一つです。
非常勤やスポットなら勤務時間も短くできますし、重い症例などを担当することも少ないでしょう。

このため、心身の負担が少なくすむというメリットがあります。

少しずつ現場に馴染みながら勘を取り戻したり、最新知識を吸収したりすることで、復帰に向けての準備が整えられる方法です。

③ブランクOKの求人を探す

求人を探すと「ブランクOK」と記載されているものを見つけることができます。
どの程度のブランクをよしとしてくれるかは病院によって様々ですが、受け入れる意思があると示されていれば、ブランク明けでも就職しやすいでしょう。
転職サイトなどでもこうした求人条件を見つけることは可能です。

しかし、受け入れ態勢がどの程度なのかや、自分の希望条件と合致するのかなどは、面接で聞くなどしないとわからないという難点もあります。
医師の就職や転職は、求人元の病院の状態を知ることが成功の鍵となりますので、ネット上の情報だけで就職活動をするのは危険です。

そこで、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。

下記のことをエージェントに伝え、希望する復帰条件で就職できる病院を探してもらうことが可能です。

  • ブランク期間
  • ブランク前の診療科
  • 実績やスキル

転職エージェントは求人元の病院の情報が豊富で、さらにネット上で公開していない求人の情報もあるため、選択肢の幅が広がります。

復職支援プログラムや再研修の利用もおすすめ

事情はどうあれ、一度ブランクを経験してしまうと復帰を目指すには不安を感じるという方もいるのではないでしょうか。

復帰の不安を解消するためには、職場復帰支援のプログラムを活用してみてもいいでしょう。
復帰支援プログラムには様々な種類があり、厚生労働省や企業、業界団体や大学病院などの医療機関で行われています。
ここでは、一般的な「復職支援プログラム」と医師向けの「臨床再研修」をご紹介します。

復職支援プログラムとは?

復職支援プログラム(リワーク)とは、主にメンタルヘルスの悪化によりブランクを余儀なくされてしまった労働者がスムーズに職場に戻れるように行われるものです。

プログラムには主に以下の3種類があります。

  • 医療リワーク
  • 職リハリワーク
  • 職場リワーク

「医療リワーク」は、医学的リハビリテーションも含めた治療が主体となります。保険が適用されるものの、利用者にも費用負担が発生する仕組みです。

「職リハリワーク」は、地域障害者職業センターが行なっているプログラムです。
休職者と雇用主、主治医のチームで行われるため、既に職場を辞めてしまっている場合は利用できません。

「職場リワーク」も企業内で休職している社員のために行われるものです。
厚生労働省のガイドラインに則り、産業医や提携医の協力を得て、お試し出勤や企業独自のプログラムで復職までのサポートを行います。

臨床再研修とは?

復職支援プログラムとは別に、臨床再研修プログラムを用意している病院もあります。
臨床再研修プログラムは、ブランク明けの医師はもちろんのこと、転職や転科、開業準備などで総合的な学習をし直したい医師にも利用されているものです。

提供する病院によって内容は様々ですが、ジェネラリストとして総合的なスキルを身につけられるようなものが多くなっています。
主な内容としては、初診外来でのOJTやカンファレンスを主体にしているところが多く、担当指導医のもとで勘を取り戻すことが可能です。

復帰に関する相談はエージェントがおすすめ

「ブランク期間ができてしまったが、医師として復帰したい」と考えて動き出すなら、自分で就職先を探すより転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。

転職エージェントには、様々な悩みを持った医師に寄り添ってきた実績があります。
転職に関する情報が豊富で、ネット上では公開されていない求人情報も持っています。各病院の内情にも精通しているので、利用しない手はないと言っても過言ではありません。
もちろん、ブランクからの復帰を目指す医師にもおすすめです。

前述もしましたが、ブランク期間やブランク前の実績、復帰後に希望するキャリアプランなどを伝えて相談することで、あなたに合った病院を紹介してもらえます。
復職への道は険しいことは確かですが、転職エージェントの力を借りることで、厳しくとも成功できる道筋を選ぶことができるでしょう。

まとめ(医師のブランクからの復帰)

出産・育児や療養などでブランクが空いてしまった場合、復帰を目指すのは厳しい道のりです。しかし、まったく方法がないというわけではありません。

根気よく探せば、ブランクのある医師を受け入れてくれる病院もあります。
職場復帰支援のプログラムや再研修制度といったサポートプログラムもありますので、うまく活用することが復帰成功の鍵となるでしょう。
非常勤やスポット勤務などで、徐々に心身を慣らしながらスロースタートしてみるのも選択肢の一つです。

ブランクからの復帰を目指す場合、病院探しが一番の課題です。
病院の情報を豊富に持ち、医師の様々な悩みとも向き合っている転職エージェントに相談することで、失敗のリスクを減らすことができます。
転職や就職で失敗しないためにはいくつかのコツがあります。
こちらの記事でも詳しく触れていますので参考にしてみてください。