2018年から導入された新専門医制度。
従来制度からの変更点は色々ありますが、最大の違いがサブスペシャリティ制度です。
「サブスペシャリティとはどんな分野?」
「サブスペシャリティはどうやって決めるの?」
「サブスペシャリティの研修は?」
この記事では、新専門医制度で始まったサブスペシャリティ制度について解説します。
これから専攻医になる方や、サブスペシャリティ領域を迷っている方などの参考になれば幸いです。
新専門医制度は二階建て構造
まずは、新専門医制度の概要を簡単に紹介します。
新専門医制度は2018年4月から導入された制度で、医師の質を一定に保つことや、地域や診療科による医師の数の偏りを是正する狙いがあります。
従来は各医師学会が独自に決めていた専門医の認定基準を、日本専門医機構が一元管理することになりました。研修ができる病院も日本専門医機構の認定を受けた基幹病院が請け負います。
新専門医制度では、初期臨床研修を終えた医師は専攻医として「基本領域」と呼ばれる19の診療科から一つを選んで研修プログラムを履修します。
プログラム修了後に日本専門医機構の認定を受けることで専門医となりますが、その後にさらに「サブスペシャリティ領域」と呼ばれる、診療科ごとに細分化された研修を受けることが可能です。
サブスペシャリティ領域の研修を終え認定を受けると、こちらも専門医としての資格を得ることができます。
基本領域とサブスペシャリティ領域との二階建て構造が、新専門医制度の従来との大きな変更点です。 あわせて読みたい
例えば、内科の基本領域では、一般内科の専門医として必要な分野を広く学びます。
基本領域を終了した後は、サブスペシャリティでさらに循環器や小児内科など、自分が進みたい道に特化した診療科の専門医資格を得ることができるようになります。
サブスペシャリティは29領域
サブスペシャリティ領域について細かく見ていきましょう。
2025年時点では29の領域が設定され、修了した基本領域に関連する領域が選択可能です。
代表的な内科と外科の基本領域の準診療科となる関連領域も併せてご紹介します。
サブスペシャリティ一覧表
以下が29あるサブスペシャリティ領域の一覧です。
研修方式 | 領域名 |
---|---|
連動研修を行い得る領域 (連動研修方式または通常研修方式) | 消化器内科 |
循環器内科 | |
呼吸器内科 | |
血液 | |
内分泌代謝、糖尿病内科 | |
脳神経内科 | |
腎臓 | |
膠原病、リウマチ内科 | |
消化器外科 | |
呼吸器外科 | |
心臓血管外科 | |
小児外科 | |
乳腺外科 | |
放射線診断 | |
放射線治療 | |
連動研修を行わない領域 (通常研修方式) | アレルギー |
感染症 | |
老年科 | |
腫瘍内科 | |
内分泌外科 | |
少なくとも1つのサブスペ領域を習得した後に研修を行い得る領域 (補完研修方式) | 肝臓内科 |
消化器内視鏡 | |
内分泌代謝内科 | |
糖尿病内科 | |
放射線カテーテル治療 | |
連動研修を行わない領域 (通常研修方式) | 集中治療科 |
脊椎脊髄外科 | |
新生児 | |
小児循環器 |
*日本専門医機構のHPを参考に作成
一覧表の研修形式が「連動研修または通常研修」となっているものは、時間短縮のための連動研修が選択できるケースがあります。
「通常研修」は、基本領域修了後に新たに研修を受けることになる領域です。
連動研修が可能な領域でも、通常研修を選択することは可能です。
「補完研修」の領域は、関連する別のサブスペシャリティ領域を1つ以上履修した後で研修が受けられるようになります。 あわせて読みたい
補完研修まで取得したい場合は、基本領域選択時にサブスペシャリティ領域の1つ目もあらかじめ決めてしまい、連動研修で進めることが最短ルートとなるでしょう。
内科系の準基本診療科
サブスペシャリティ領域のうち、内科の準基本診療科にあたるのが以下の13領域です。
消化器内科・循環器内科・呼吸器内科・血液内科・内分泌代謝、糖尿病内科・脳神経内科・腎臓内科・膠原病、リウマチ内科・アレルギー・感染症・老年科・腫瘍内科・肝臓内科 |
このうち、連動研修が選択できるのは以下の8領域となっています。
循環器内科・呼吸器内科・血液内科・内分泌代謝、糖尿病内科・脳神経内科・消化器内科・腎臓内科・膠原病、リウマチ内科 |
より専門性の高い以下の診療科については、補完研修でのみ履修が可能です。
肝臓内科・内分泌代謝内科・糖尿病内科・消化器内視鏡 |
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外科系の準基本診療科
外科の基本領域を終了した後は、以下のサブスペシャリティ領域を履修できるようになります。
消化器外科・呼吸器外科・心臓血管外科・小児外科・乳腺外科・内分泌外科・消化器内視鏡 |
このうち、内分泌外科のみが通常研修で、後は連動研修が選択可能です。 あわせて読みたい
その他の細分化診療領域
外科と内科に関連するサブスペシャリティ領域以外にも、以下の領域が設定されています。
放射線診断・放射線治療 |
消化器内視鏡は関連したサブスペシャリティ領域取得後に履修が可能な補完研修形式で、それ以外は連動研修が選択可能となっています。 あわせて読みたい
サブスペシャリティ選びで押さえるべき8つのポイント
基本領域選択時に履修可能なサブスペシャリティを必ず確認する
基本領域によって履修できるサブスペシャリティは限定されます。事前に希望分野の関連性を必ず確認しましょう。 あわせて読みたい
キャリアプランに沿って計画的に選択する
大学病院での研究、地域医療、開業医など将来像を描き、必要な専門性や研修期間を踏まえて決めましょう。 あわせて読みたい
連動研修を活用して研修期間短縮を目指す
連動研修は研修期間の短縮や効率化につながるため、選択できる領域なら積極的に検討すべきです。
研修内容や労働環境も考慮する
手術頻度や当直の多さ、ワークライフバランスを理解し、自身の適性に合った領域を選びましょう。
将来的な需要や将来性も確認する
高齢化や医療ニーズの変化で需要は変わります。安定性と専門性のバランスを見極めましょう。
変更・再取得の難易度を理解する
サブスペシャリティの変更は時間や労力がかかります。関連分野であれば比較的スムーズです。 あわせて読みたい
合わない場合は転職や転科も視野に
希望に合わない場合、転職や転科を検討。関連分野を選べば負担軽減も可能です。 あわせて読みたい
最新の制度動向を常にチェックする
制度変更が頻繁なため、日本専門医機構HPや基幹病院情報を定期的に確認しましょう。 あわせて読みたい
今の職場でうまくいっていないのなら転職も
あわせて読みたいキャリアプランを熟考し、サブスペシャリティ領域を決めることは非常に重要です。
しかし、思い描いた通りに研修を進めたとしても、自分に合わないと感じることもあるかもしれません。
医師の仕事が自分に合っていないと悩んだ場合、解決策としては医師以外の職業に転職するか、医師として方向転換するかに分かれます。
医師として方向転換をする場合は、転科やより良い環境を求めて転職することが選択肢となるでしょう。
転科を選ぶ場合は、新たな診療科での専門医資格やサブスペシャリティ領域の修得などが必要となり、一見するとハードルは高く感じられます。
しかし、関連性のある科を選ぶなどして工夫すれば、不可能ではありません。
医師が転職や転科を考えるなら、転職エージェントの活用がおすすめです。
医師の転職に特化したエージェント「メッドアイ」は、さまざまな医師の悩みを見てきているため、解決策も複数持っています。
また、転職先を探すにあたっても、非公開求人なども含めた豊富な情報から選ぶことが可能です。
まとめ(新専門医制度のサブスペシャリティとは)
新専門医制度では、望むキャリアプランに合わせた基本領域とサブスペシャリティ領域の組み合わせを選ぶことが重要です。
新専門医制度には、地域や診療科による医師数の偏在を防ぐ目的もあります。人気の高い診療科や都市部の基幹病院では、専攻医として研修プログラムを受けられない可能性も出てきます。
常に最新の情報を得ながら、コースを慎重に決める必要があるのです。
また、望んだコースで受講ができない場合や、働き始めてから自分に合っていないと感じた場合などは、転職や転科を考えるのも一つの方法です。
医師が転職や転科を希望する場合、情報収集が鍵となってきます。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を上手に利用して、キャリアプランそのものから相談して情報を得るのもおすすめの方法です。
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