医師が複数の病院を掛け持ちして働く光景は、特に珍しいものではありません。
医療業界全体が人手不足であることも手伝って、何ヶ所もの医療機関で働く人もいるほどです。
「医者が掛け持ちで働く理由は?」
「掛け持ちで働くパターンはどのようなものがある?」
「非常勤専門になるメリット・デメリットは?」
この記事では、医師の兼業や非常勤の働き方について、プロの転職エージェントが解説します。
非常勤勤務に興味がある方や、掛け持ち先を探したいという方は参考にしてください。
医師が非常勤(アルバイト)で働く理由トップ3
労働政策研究・研修機構の調査によると、複数の医療機関で働いたことがある医師が半数以上いるという結果が出ています。
3ヶ所以上の勤務先を掛け持ちしているという医師もいて、その割合は全体の3割強にものぼりました。
これらの医師がアルバイトや非常勤で掛け持ちする理由についても調査していて、トップには以下のような理由が挙げられました。
| 順位 | 理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 収入を増やしたい | 48.1% |
| 2 | 勤務先の指示による | 36.5% |
| 3 | ひとつの勤務先だけでは生活自体が営めない | 34.4% |
(参照:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」)
掛け持ちをする理由のトップは金銭面の理由でした。
特にまだ年収が高くない若手の医師がアルバイトで収入を増やし、生活を維持する助けにしていることがわかります。
1位と3位はどちらも金銭的な理由としてまとめたとすれば、4位には「不足している専門家の病院から要請があった(33.4%)」が入ります。
こちらは人手不足が要因ですが、2位に入った「勤務先の指示」にも似た側面があり得ると言えるでしょう。
医師が掛け持ちで働くパターン
掛け持ちで働く場合、掛け持ち先の働き方で、以下の3つのパターンに分かれます。
- 常勤と非常勤を掛け持ち
- 定期非常勤を掛け持ち
- 定期非常勤とスポットを掛け持ち
それぞれのケースを詳しく解説します。
また、非常勤医の働き方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。 あわせて読みたい
1.常勤と非常勤を掛け持ち
掛け持ちの組み合わせでよくみられるパターンは、本業である常勤先の他に、アルバイトとして別の医療機関の非常勤で働くスタイルです。
非常勤の仕事には2種類あり、以下の通りとなっています。
| 勤務形態 | 働き方 |
|---|---|
| 定期非常勤 | 週1日や2日など、日数や曜日が決まっていて定期的に勤務する |
| スポット勤務 | 業務が発生する日だけ勤務する(健康診断や予防接種など) |
収入を増やすための掛け持ちの場合、日数が決まっていて安定性のある定期非常勤を選択する方が多いようです。 あわせて読みたい
また、常勤先の休日が不安定な場合や、ゆとりのある時に少し働きたいという場合はスポット勤務が向いています。
2.定期非常勤を掛け持ち
働く日数や曜日が決まっている定期非常勤の仕事どうしを組み合わせる方法もあります。
こちらは開業準備の過程で、資金を貯めながら、さまざまな臨床経験を積みたいという方におすすめの方法の一つです。
定期非常勤は、スケジュール管理もしやすいため、掛け持ちも難しくないのが特徴です。 あわせて読みたい
この特徴を活かして、開業に必要な物件探しや申請書類の作成などの時間を捻出しながら働くこともできます。
また、フリーランスが肌に合っているという方もいて、複数の定期非常勤の仕事を渡り歩いて生計を立てる「フリーランス医」という働き方も知られるようになってきました。
3.定期非常勤とスポットを掛け持ち
同じ非常勤でも定期非常勤と、ちょうどいいタイミングで案件がある時だけ働けるスポット勤務の組み合わせで働く方法もあります。
本業の常勤と非常勤を組み合わせる方法と似ていますが、メインもサブも非常勤のため、自由度が高いのが特徴です。
2と同じく開業準備段階の医師や、ゆとりある働き方をしたいという医師に向いています。
時給がいい求人も多いため、バイトだけで生計を立てることも可能でしょう。
スポット勤務はその都度自分で求人を見つけて応募する手間が必要です。 あわせて読みたい
しかしあらかじめ転職エージェントに希望条件を伝えておいて、求人が出たら教えてもらうこともできるので、工夫次第で仕事探しの手間は軽減できます。
非常勤医師のメリット
副業であってもメインであっても、非常勤で働くことには、それなりにメリットがあります。
ここからは、非常勤医として働くメリットについてご紹介します。
心身に余裕が出る
非常勤医は働く時間帯がきっちり決まっているのが大きな利点です。
急な夜間の呼び出しや、オンコール対応がないため、体力的な負担を軽減することが可能になります。
体力面にゆとりを持てることで、精神的にも働きやすく、心身ともに安定した状態で働くことができるのです。
さらに、非常勤の仕事をうまく組み合わせれば、休日を増やすこともできます。 あわせて読みたい
休日をリフレッシュや自己研鑽に充てることで、充実した働き方を実現できるのも、非常勤医のメリットと言えるでしょう。
スケジュールが立てやすい
仕事の時間が定まっている定期非常勤医なら、スケジュール管理がしやすいこともメリットです。
例えば家庭の都合で時短で働きたいという場合でも、非常勤なら短時間勤務の仕事も探しやすくなります。
また、開業準備中の医師であれば、働きながら物件探しや設備の選定などの打ち合わせといった準備活動もしなくてはなりません。 あわせて読みたい
非常勤で働くことで、オンとオフの時間をキッパリと分けることができるため、準備活動もスムーズに進められます。
非常勤医師のデメリット
非常勤という働き方にはメリットはあるものの、デメリットも存在します。
両方をきちんと知って、非常勤で働くことが自分のライフスタイルに合っているのかを判断することが大切です。
ここからは、非常勤医のデメリットを詳しく解説します。
社会保険や福利厚生が適用されない
非常勤で働くということは、当然ながら勤め先での福利厚生を受けることができません。
また、社会保険や厚生年金にも加入できませんので、自分で国民健康保険と国民年金に加入しなくてはなりません。
常勤の本業を持っていればこの点は心配は要りませんが、非常勤の組み合わせで働く場合は、こうした支出があることも知っておきましょう。
そして、非常勤の勤務で得られた報酬は、確定申告が必要になります。
これは、常勤の本業を持っていても、非常勤のみで働いていても同じですので気をつけましょう。
常勤であれば年末調整や会計などは病院がやってくれますが、非常勤の場合は、自分自身で処理する手間がかかるのでこれもデメリットの一つと言えます。
あわせて読みたい

スキルアップは難しい
非常勤医のもう一つのデメリットとして、スキルアップが難しい環境であるという点があります。
基本的には、非常勤医師は常勤医師のサポート的な役割を求められることが多いです。
難しい症例の対応をするようなケースはあまりなく、経験の範囲内で対処できる外来などの業務を任されることがよくあります。
さらに、勤務時間が限られていて、その職場に毎日は居ないということも手伝って、継続性が必要な仕事や責任の大きい仕事は任されにくいと言えるでしょう。
非常勤は、新しい知識や技術を体得したい方や、患者さんにじっくり寄り添いたいという方にはあまり向いていない働き方でもあるのです。
あわせて読みたい

非常勤医師の求人を探す際のチェックポイント
非常勤勤務を検討する際には、給与条件だけでなく、働き方や契約条件をしっかり確認しておくことが重要です。
後から「思っていた条件と違った」とならないよう、以下のポイントを必ずチェックしておきましょう。
- 勤務日数・時間帯:週何日・何時間勤務なのか、残業やオンコールの有無も確認する
- 交通費や宿直手当の扱い:別途支給なのか、時給に含まれているのか
- 業務内容の明確化:外来・健診・当直など、想定される業務範囲を具体的に確認
- 契約期間と更新有無:短期契約の場合、更新条件を事前に把握しておく
- 勤務形態の柔軟性:曜日変更や休みの調整が可能かどうか
また、医師の非常勤求人は非公開案件も多く、人気の条件(週1勤務・高時給・駅チカなど)はすぐに募集が締め切られます。
効率よく情報を得るには、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用し、条件を伝えておくのがおすすめです。
非常勤(アルバイト)のよくある質問
非常勤での掛け持ちをしたいと思う方で、初めてアルバイトを探す場合によく聞かれる疑問としては、以下のようなものがあります。
- 医師何年目からアルバイトができるか
- 自分の専門外の診療科でもアルバイトはできるか
このような、アルバイトを探す際に疑問に思うポイントについて解説していきます。
Q 医師は何年目からアルバイトができる?
医師が非常勤(アルバイト)として勤務できるようになるのは、初期臨床研修を修了した3年目以降です。
ただし、「3年目になれば誰でも働ける」というわけではなく、本業の勤務先が副業を許可している場合に限られます。
多くの病院では「本業に支障が出ない範囲であれば副業可」としている一方で、就業規則でアルバイトを禁止している医療機関も一部存在します。
そのため、非常勤として働きたい場合は、まず所属先の病院で副業の可否を必ず確認しておきましょう。
Q 専門外の診療科でも非常勤勤務はできる?
非常勤アルバイトを探す際、多くの医師は自分の専門分野で求人を探す傾向があります。
その方が慣れた環境で働きやすく、採用側も安心して任せられるためです。
しかし、新しい経験を積みたい・異なる診療科を学びたいという目的で、専門外の診療科での非常勤勤務を希望する医師もいます。
実際、業務内容が明確で安全管理が整っていれば、専門外でも受け入れている医療機関もあります。
大切なのは、なぜ異なる診療科で働きたいのかという明確な目的を持つことです。
その意図をしっかり伝えれば、転職エージェントを通じて希望に沿った非常勤求人を紹介してもらえる可能性も高まります。
非公開求人を含めた豊富な情報をもつ医師専門エージェント「メッドアイ」に相談することで、
「学びながら働ける」「ライフスタイルに合った」非常勤先を効率よく見つけることができるでしょう。
あわせて読みたい あわせて読みたい

まとめ(医師の掛け持ち勤務について)
医師のほぼ半数は何かしら掛け持ちで仕事をしているという現状が示す通り、医師の副業やアルバイトは珍しいことではありません。
本業をしっかりと持っている医師であれば、非常勤で掛け持ちをする形になりますし、中には複数の非常勤を組み合わせて生計を立てる「フリーランス医」という働き方をする方もいます。
非常勤勤務は、時間や体力、気力をしっかり管理できるというメリットがあり、子育てや介護など、家庭と仕事を両立したい方にも向いた働き方です。
しかしその一方で、社会保険や福利厚生といった職場のサポートが受けられませんので、常勤先の本業を持っていない場合は注意が必要です。
また、非常勤医にはどうしてもサポート的な業務や、外来対応などの業務が充てられることが多いため、スキルアップを目指したい方にはあまり向いていません。
非常勤の仕事を探したいと思ったら、転職エージェント「メッドアイ」の利用がおすすめです。
メッドアイでは、どうして掛け持ちで働きたいのかや、非常勤で仕事を探したい理由をきちんとヒアリングした上で、医師一人一人の要望に沿った求人を見つけるお手伝いをします。



















