皮膚科医は他の診療科に比べて、業務内容が比較的楽な割に高収入というイメージがあります。
では、実際に皮膚科への転職によって年収アップを図ることは可能なのでしょうか?
「皮膚科医としての転職を考えているが失敗したくない」
「皮膚科への転職を考えており、大病院とクリニックではどちらが良いか知りたい」
「忙しい病院から落ち着いていそうなクリニックなどに転職したいが、年収はどれぐらい変わるのか知りたい」
今回はこのような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが、皮膚科医に転職して年収を上げる方法や、就職先の候補などについて詳しく解説します。
転職に役立つ情報もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
皮膚科医が年収を上げるにはどんな方法がある?
皮膚科医が年収を上げる方法としては、以下の3つが挙げられます。
- 開業する
- アルバイトを掛け持ちする
- 転職する
開業する
1つ目は、クリニックを開業することです。
自身で開業したクリニックであれば、治療内容や勤務形態などを自由に設定できます。
また、施術内容を自由診療に特化すれば、料金設定もすべて個人の裁量で決定することが可能です。
高単価なメニューが多い美容皮膚科クリニックなどで上位顧客の獲得ができれば、診療時間や患者数を増やすことなく高収入を得ることも期待できます。
ただし、大幅な年収アップが見込める分、開業には不動産や設備・内装工事、医療機器、広告などの莫大な初期費用がかかります。
運営する上でも経営スキルが求められ、日々のマーケティングや資金繰りなど、あらゆるトラブルやリスクに個人で対処する必要があるのです。
加えて、勤務医の場合は収入が「給与」ですが、開業医の場合は「事業収入」(収入-経費+事業借入の返済額)になるため、経費や借入返済額によっては勤務医よりも収入が少なくなることもあり得ます。
開業ではこれらのメリット・デメリットを総合的に判断し、慎重に計画を立てることが推奨されます。 あわせて読みたい
アルバイトを掛け持ちする
2つ目は、アルバイトを掛け持ちすることです。
非常勤のアルバイトであれば、本業の合間に好きなタイミングでシフトを組むことができます。
求人も幅広く数も多いため取り組むまでのハードルが低く、即効性・確実性の高い選択肢となります。
ただし、当然のことながらプライベートの時間が削られることになるので、本業や私生活には支障をきたさないように注意しましょう。 あわせて読みたい
自分で自由にシフトを組むことができる分、無理のない労働計画を立てることや十分な睡眠時間を確保することなど、自己管理が必須になります。
転職する
3つ目は、転職することです。
皮膚科医は勤務先により大幅に年収が変わるため、転職先次第で大きな年収アップが見込めます。
医師は全体として慢性的に不足の傾向にあり、とくに地方では医師不足が深刻化し、売り手市場が続いているため、転職自体は比較的容易です。
一般的なサラリーマンの場合、転職回数が多いことは心証が悪くなる要因となりますが、医師の場合はあまりデメリットにはなりません。
むしろ、多くの病院に在籍したという事実から、症例経験が多くあると判断されます。
認定医や専門医などの資格・スキル面が重視される現場であることからも、医師の転職回数は他の職種に比べて多い傾向にあります。
大学病院や国立病院の勤務医はあまり転職しない傾向にありますが、市中病院などでは転職経験者が多いです。
転職回数を重視される場合でも、転職理由が明確であれば問題なく、専門医の取得や症例を経験するためなどの理由付けが大切になります。
ただし、短い期間での転職を繰り返すと退職金は少なくなるので、その点はご注意ください。 あわせて読みたい
皮膚科医としての就職先はどこがある?
皮膚科医としての主な就職先は、以下の3つが候補になります。
- 総合病院などの大病院
- クリニック
- 美容皮膚科
一般的な傾向としては、年収の高さは、美容皮膚科>クリニック>大病院の順になります。
総合病院などの大病院
1つ目は、総合病院などの大病院です。
大病院とは、特定機能病院、療養型病床群を有する病院及び老人病院以外の一般病院で、病床規模が500床以上の病院を指します。
参考:厚生労働省 分析の概要
大病院では基本的に時間外労働や当直・オンコール対応をこなすことになるので、労働環境としてはハードな部類になります。
美容皮膚科やクリニックに比べて平均収入は低い傾向にありますが、各種手当がつくため自身の頑張りによっては小中病院以上の年収を稼ぎ出すことも可能です。
設備が充実している、先進的な医療を学べる、診療経験を多数積めることから、医師としてのスキルアップにもつながります。
福利厚生が手厚い場合も多いので、その点を重視する方にとってはおすすめの勤務先となります。
ただし、施設の規模が大きいということで人間関係のトラブルも多くなりがちなので、その点はご注意ください。 あわせて読みたい
クリニック
2つ目はクリニック(診療所)です。
クリニックとは、無床もしくは「19床以下の入院施設を持つ医療機関」を指します。(医療法第1条の5第2項)
つまり、入院患者のベッド数が19以下の、比較的規模の小さい医療機関のことです。
対して、病床数が20床以上の大きなものは「病院」と定義されます。
参考:厚生労働省 医療施設の類型
また、クリニックという名称は「診療所」や「医院」等と一緒で、名称の定義はとくになく、自由につけることができます。
ただし、ほとんどの皮膚科の場合、クリニックは入院ベッドを持たない無床診療所です。
医療設備や労働力に限りがあるため、慢性疾患の管理や病気の初期治療、専門病院への振り分け施設としての機能を担っています。
クリニックの勤務医は日勤のみで診療日・診療時間が固定、夜勤や当直、オンコールがないところが多いです。
病院勤務と比べて残業が少なくゆとりがある傾向にあり、プライベートの時間が確保しやすいというメリットがあります。 あわせて読みたい
施設にもよりますが、収入も比較的高めに設定されているため、ライフワークバランスを重視したい方にとってはおすすめの勤務先です。
美容皮膚科
3つ目は、美容皮膚科です。
皮膚科医の就職先の中で、一番収入アップが期待できるのが美容皮膚科です。
美容皮膚科は、主にシワやシミ、くすみ、たるみ、肌荒れなどの肌トラブルを医学的に治療する診療科になります。
一般的な皮膚科との違いは、より審美的な観点から治療を行う点にあります。
メインとなる治療は自由診療のものが多く、レーザーやピーリングなど保険適用外の施術が基本になります。
そのため値段設定が自由で、患者一人当たりの単価が高いのが特徴です。
マーケティング手法も自由なので、例えば富裕層に向けて広告を打ち、リピーターを多く獲得できれば、高い収益を安定的に上げ続けることが可能となります。
利益率の高い施設であれば、勤務医へも多く還元されるようになるので、保険診療を行う医師に比べて収入がかなり高くなる傾向にあります。
加えて、自分で開業するわけではないので、先述した設備投資にかかる費用やリスクがないことも大きな強みです。
基本的に美容皮膚科では日勤のみとなり、当直やオンコールはありません。
しかし、夜間までの診療を行うことで高水準の報酬を提示するケースもあるので、事前に勤務先の条件を確認するようにしましょう。 あわせて読みたい
勤務先で異なる皮膚科医の年収事情
皮膚科医の年収は、勤務先によっても異なります。
以下の4つの勤務先における、それぞれの年収事情を見ていきましょう。
- 国公立の大病院
- 民間の大病院
- クリニック
- 美容皮膚科
国公立の大病院
国公立の大病院は、1,400万~2,000万円未満の年収層がもっとも多く、54%を占めます。
残りの半数弱は、600万円未満、600万~1,000万円未満、1,000万~1,400万円未満がそれぞれ同率で15%です。
国公立の病院は、国の援助によって運営している機関になります。 あわせて読みたい
年収層は後述する施設に比べて低めに分布しています。
参考:リクルートドクターズキャリア 感覚器・皮膚科の年収事情
民間の大病院
民間の大病院は、1,000万~1,400万円未満と1,400万~2,000万円未満の年収層がそれぞれ33%ずつで、この2つが全体の3分の2の割合を占めています。
次点で、2,000万円以上の25%が続き、600万~1,000万円未満が8%と少数派です。
民間の病院は、経営の自由度が高い医療機関となります。
国公立の大病院と比較すると、年収層は高めに位置付けられていることが分かります。
4分の1が2,000万円以上で、転職先の候補としても上位にあがってきます。
参考:リクルートドクターズキャリア 感覚器・皮膚科の年収事情
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クリニック
クリニックは、1,400万~2,000万円未満の年収層が42%ともっとも多く、次点で1,000万~1,400万円未満の25%となります。
上記2つの年収層が全体の3分の2の割合を占め、600万~1,000万円未満と、2,000万円以上がそれぞれ同率の17%で残る3分の1の割合を占めています。
こちらも、国公立の大病院と比べると年収層が高めで、2,000万円以上も視野に入ってきます。
参考:リクルートドクターズキャリア 感覚器・皮膚科の年収事情
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美容皮膚科
美容皮膚科は年収層がピンキリで一概には言えませんが、平均しても2,000万円を超える人が多いとされています。
美容医療の世界では、執刀医の腕や信頼性がクリニックの評価に直結するため、名高い皮膚科医の待遇や収入は他の診療科とは比べものにならない程アップすることもあります。
国公立の大病院や民間の大病院、クリニックと比較しても、一番高収入が見込める勤務先です。 あわせて読みたい
皮膚科医が転職で年収をアップさせる5つの方法
皮膚科医が転職で年収をアップさせる方法は、以下の5つになります。
- クリニックや美容皮膚科への転職をする
- エリアから転職先を検討する
- 皮膚科専門医の資格を取得する
- 転職を機にアルバイトを掛け持ちする
- 医療専門の転職エージェントを活用する
クリニックや美容皮膚科への転職をする
1つ目は、クリニックや美容皮膚科への転職をすることです。
前項で解説したとおり、クリニックや美容皮膚科は皮膚科医の勤務先の中でも年収層が高めの傾向にあります。
転職理由が年収への不満にある場合、これらの選択肢が第一候補となるでしょう。
厳密にいえば、クリニックよりも美容皮膚科のほうが年収が高い傾向にありますが、営業やコミュニケーションスキルもなども必要になってくるため、自身の適性と照らし合わせながら総合的に判断することが肝要です。
エリアから転職先を検討する
2つ目は、エリアから転職先を検討することです。
皮膚科の年収を地域ごとに見ると、1,000万から2,000万円未満の年収層が多いです。
北海道・東北、九州・沖縄では1,000万~1,400万円未満、その他の地域では1,400万~2,000万円未満がもっとも多い年収層となっています。
地方都市のほうが全体的な年収が高めの傾向にあり、人手不足のため比較的転職先も見つけやすいです。
エリアから転職先を絞る際には、希望する年収額と地域ニーズのバランスを見極めることが大切です。
参考:リクルートドクターズキャリア 感覚器・皮膚科の年収事情
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皮膚科専門医の資格を取得する
3つ目は、皮膚科専門医の資格を取得することです。
皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医)とは、皮膚科の診察領域(水虫、皮膚がん、アトピー性皮膚炎など)における十分な知識・スキル・経験を有していると日本皮膚科学会が認定した皮膚科医のことを指します。
皮膚の症状は見た目での診断が難しい場合がありますが、皮膚科専門医になればより高度な知見からの診療が可能になるため、医師としての需要も高まるのです。
皮膚科医はこの資格を取得し、経験を積むことで、40代から年収が大きく上がる傾向にあります。
皮膚科専門医を取得するためには、2年間の初期臨床試験と5年以上の皮膚科臨床研修を修了し、認定試験に合格する必要があります。
皮膚科専門医を取得するための申請資格
- 我が国の医師免許を持っていること。
- 5年間以上引き続いて日本皮膚科学会正会員であることを要します。なお、何かの事情で会員資格が途切れた時は、再び5年間の継続を必要としますので、ご注意ください。
- 所定の研修実績を修了していること。
- 所定の前実績単位を取得していること。
- 実際に皮膚科の診療に従事していること。
転職先へのアピールポイントにもなりますので、皮膚科医としてさらなるキャリアアップを目指したいという方は、ぜひとも取得されることをおすすめします。 あわせて読みたい
転職を機にアルバイトを掛け持ちする
4つ目は、転職を機にアルバイトを掛け持ちすることです。
先述したとおり、非常勤でのアルバイトは年収を上げたい医師にとって即効性と確実性がある方法になります。
ただ、多忙な本業をこなすかたわら、同時にアルバイトを始めることは大変難しいです。
しかし、転職のタイミングであれば勤務体系を新しく構築することが可能になるので、アルバイトのシフトも無理なく組み込むことができます。 あわせて読みたい
近年はアルバイトを掛け持ちしている医師も多いので、こちらも有用な選択肢となります。
医療専門の転職エージェントを活用する
5つ目は、医師専門の転職エージェントを活用することです。
医師専門の転職エージェントでは、非公開求人や業界内部の情報を得られたり、履歴書・職務経歴書の添削や面接対策、企業の人事への推薦なども行ってもらえたりします。
企業との日程調整や交渉の代行など、転職活動における煩雑な業務の手助けも依頼することが可能です。
転職の成功率を上げるためにも、こうしたプロの手を借りることが推奨されます。
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まとめ(皮膚科医の転職&年収アップ方法)
今回は、皮膚科医の年収をあげる方法や転職のポイントなどについて解説しました。
- 年収を上げる方法は開業・アルバイト・転職などが考えられる
- 主な就職先は大病院・クリニック・美容皮膚科などがある
- 勤務先における年収は美容皮膚科が最も高い
- 皮膚科専門医を取得することによってキャリアアップが可能
- 転職エージェントを活用して待遇や年収を高めることができる
皮膚科医が主に担当する皮膚疾患は、直接命にかかわることは少ないですが、痛みや痒み、外見上の問題にともなう精神的苦痛、集中力の低下、睡眠障害など、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく左右します。
そのため、新生児から高齢者まで幅広くニーズが高く、働き方や勤務先によっては安定的に高収入を得られる可能性を秘めている診療科です。
好条件な職場にうまく転職することができれば、より高度なキャリアプランを築くこともできるでしょう。
そのためにも、転職の際には転職エージェントなどを活用し、自身の希望に沿った条件の雇用先を探し出されることをおすすめします。
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