公衆衛生医師は、地域全体の健康と医療体制を整える行政の医師です
「公衆衛生医師の働き方は?」
「公衆衛生医師の年収はどれくらい? 」
「公衆衛生医師は激務なの?」
本記事では、公衆衛生医師の仕事内容・年収・激務の実態・向いている人の特徴に加え、辞めたい場合の選択肢まで解説します。
公衆衛生医師は高い責任能力が求められる一方で、地域の医療に広く関われる仕事です。魅力がある仕事であるため、ぜひ本記事を最後までチェックしてください。
公衆衛生医師とは?仕事内容と役割
公衆衛生医師は、個人の患者を診る臨床医とは異なり、地域住民全体の健康や医療体制を整える行政医師です。
自治体や保健所、都道府県庁などで勤務し、地域社会の健康課題を予防的・政策的に解決することが求められます。
主な仕事内容
- 感染症対策
感染症の発生状況を監視し、疫学調査や医療機関との調整を行います。流行期には地域住民への情報提供や二次感染予防策の策定など、迅速かつ正確な対応が必要です。 - 健康危機管理
自然災害や食中毒、重大インシデントが発生した際、緊急対応計画を立て、医療機関・行政・関係団体と連携して被害の拡大防止を行います。 - 母子保健・環境衛生・食品衛生
健康診断や予防接種、学校・保育施設の衛生管理など、日常的に地域の健康維持に関わります。また、食品衛生や水質管理、環境衛生に関する施策も実施します。 - 地域医療計画の策定
地域の医療資源の分布や医療ニーズを分析し、病院・診療所・救急体制などを含む医療計画を立案します。地域全体の医療アクセスを確保する役割も担います。 - 医療政策・制度の立案・整備
公衆衛生に関わる新制度やガイドラインの作成、施行のサポート、医療政策の改善提案など、住民の生活の質を向上させるための行政的業務も重要です。
日常業務のイメージ
公衆衛生医師の仕事は、資料作成や会議、関係機関との調整などデスクワークが多く、臨床医のような直接診療は少なめです。
しかし、政策や制度を通して地域全体の健康を守るというやりがいがあります。疫病流行期や災害時には現場対応が発生し、激務となる場合もあります。
公衆衛生医師の社会的意義
- 個人ではなく、地域全体の健康と安全を守る
- 制度や施策を通じて、長期的に地域医療を改善
- 災害・感染症・健康危機への対応で、多くの人命を守る
公衆衛生医師は、臨床医のスキルとは別の視点で社会に大きな影響を与える職種であり、医療と行政の橋渡し役として地域社会で重要な役割を果たしています。 あわせて読みたい
公衆衛生医師の年収はどれくらい?
公衆衛生医師の給与は、自治体の公務員給与体系をベースにして決まります。年齢や経験年数、管理職への昇進、勤務地の地域手当などにより大きく変動します。
年収のモデルケース
- 卒後5年目:650〜1,000万円前後
初任給や基本給に加え、地域手当や住宅手当などが含まれます。若手でも地域医療に関わる責任があるため、比較的高めの水準です。 - 卒後10年目:800〜1,200万円前後
経験を積むことで係長・課長クラスのポジションに昇進するケースもあり、役職手当が加算されます。専門分野での知識や行政経験も給与に反映されることがあります。 - 卒後15年目:950〜1,350万円前後
中堅〜管理職クラスになり、地域医療計画の策定や災害・感染症対応などで大きな裁量が与えられる時期です。給与も経験と役職に応じて上昇します。 - 経験20年前後:1,100〜1,500万円前後(管理職でさらに上振れ)
部長クラスや所長クラスに昇進すると基本給に加え管理職手当が支給されます。地域医療政策や災害対策などの責任が増えるため、給与も上昇します。
年収に影響する要素
- 勤務地(地域手当)
都市部と地方では手当の金額が異なります。へき地勤務や医師不足地域では手当が上乗せされることがあります。 - 役職・昇進
課長・部長クラスになると管理職手当が加わり、年収が大幅に増える場合があります。 - 経験年数・専門性
行政医療や公衆衛生の専門知識が豊富な医師は、評価されることで給与に反映されやすくなります。
臨床医との比較
臨床医は手術や当直、夜勤手当で収入を増やせる一方、勤務時間が長く激務になりがちです。
公衆衛生医師は激務は短期間のみで、平時は日勤中心。そのため年収は臨床医よりやや低めの傾向がありますが、長期的に安定して昇給する点が大きな特徴です。
将来的なキャリアパスと年収
公衆衛生医師として数年勤務すると、次のようなキャリアパスが考えられます。
- 自治体の管理職(課長・部長・所長)
- 大学や研究機関での公衆衛生研究職
- 医療コンサルティングや政策立案への転職
- 災害医療や国際保健に関わる専門職
管理職や専門職に進むことで、年収の上限も1,500万円前後まで見込めるケースがあります。
公衆衛生医師のメリットとやりがい
公衆衛生医師として働くメリットややりがいは以下の通りです。
- 地域医療に貢献できる
- 災害や感染症などによる健康被害の拡大防止に携われる
- システムや制度の確立に携われる
1.地域医療に貢献できる
公衆衛生医師は医療機関で働く医師とは異なり、直接患者と関わることは多くありません。 あわせて読みたい
一方で、疫病予防や保健対策などで、住民の健康に関わることはできます。
個人ではなく地域全体の医療に貢献ができるため、健康で活気が溢れる街を作りたいと考えている方にはおすすめの仕事です。
広範囲の医療に関われるのは、公衆衛生医師ならではのメリットでしょう。
2.災害や感染症などによる健康被害の拡大防止に携われる
災害や感染症は多くの人が亡くなってしまう可能性があります。 あわせて読みたい
公衆衛生医師は災害医療やへき地医療、食品や環境などに関する生活衛生、ワクチン接種や保診・保健指導などの幅広い取り組みを通じて、地域での健康被害拡大の防止に携われます。
より多くの人の命を守れる可能性がある仕事です。
医療機関で働いている医師にはできない経験ができるのは、公衆衛生医師ならではのメリットと言えるでしょう。
3.システムや制度の確立に携われる
公衆衛生医師は各自治体の感染症やがん、難病に関する制度を整えたり、システムを作ったりできます。 あわせて読みたい
直接、治療を行うわけではありませんが、システムや制度によって健康で安心して過ごせる社会を作れます。
実際に制度が原因で、つらい思いをしている住民は少なくありません。
そういった方の声を聞いて、住みやすい街を作れるのは公衆衛生医師ならではのメリットです。
公衆衛生医師のデメリット
公衆衛生医師は数多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 臨床現場から離れてしまう
- 募集枠が少ない
- 感染症の発生や自然災害などの緊急時対応がある
1.臨床現場から離れてしまう
公衆衛生医師になると、必然と臨床現場から離れてしまうことになります。 あわせて読みたい
転職をした後に現場で働きたいと思っても、ブランクの期間次第では戻りづらかったり、戻った後に業務に慣れるまでに時間がかかったりしてしまいます。
今まで蓄積してきた医師としてのスキルが、ブランクの期間によって失われてしまう可能性がある点はデメリットの一つです。
公衆衛生医師を目指す前に、自分がどのようにして医療に携わりたいのかよく考えておくことが重要です。
2.募集枠が少ない
公衆衛生医師の募集枠の定員は、自治体ごとに1名〜数名程度であることが多いです。 あわせて読みたい
そのため、公衆衛生医師になりたいと考えても、定員次第ではなれないかもしれません。臨床医と比べてなるのが難しい点も、公衆衛生医師のデメリットです。
希望している地域の公衆衛生医師の募集人数が少なく、なかなか就業が難しい場合は、別の地域で探すといいでしょう。
特にへき地であれば人手が不足している傾向にあるため、公衆衛生医師になりやすいかもしれません。
3.感染症の発生や自然災害などの緊急時対応がある
公衆衛生医師は感染症が流行した場合、疫学調査や二次感染予防指導など、通常よりも激務になる場合があります。自然災害が発生した際は、緊急で対応しなければいけないケースもあります。 あわせて読みたい
勤務する地区によって業務内容は異なりますが、有事の際に稼働しなければいけない点はデメリットと言えるでしょう。高い責任感が求められる仕事です。
公衆衛生医師になるには?求められる条件や素質
公衆衛生医師は全国で統一された資格があるわけではありません。
募集する都道府県の試験に合格することで、公衆衛生医師としての採用が決まります。試験の際は、以下の能力がチェックされるケースが多いです。
- 公衆衛生や医学に関する知識とセンス
- 行政職員としての自覚と責任
- コミュニケーション能力と危機管理能力
1.公衆衛生や医学に関する知識とセンス
臨床医としての知識だけではなく、公衆衛生医師になるためには、公衆衛生に関する知識が求められます。
公衆衛生に関する知識は時代やエリアによって異なるため、健康課題を敏感に感じとるセンスが必要になります。
2.行政職員としての自覚と責任
公衆衛生医師は行政職員であるため、自覚と責任を持って働かなければいけません。
税金によって自分の給料が賄われているという認識を持ち、地域の人々に還元していく必要があります。
行政職員であるため、予算調整や議会対応、報道対応などの能力も求められます。
医学に関する知識が充実していれば、必ずしも公衆衛生医師になれるわけではありません。
3.コミュニケーション能力と危機管理能力
公衆衛生医師は地域のさまざまな機関や団体と連携して働く機会が多いです。そのため、地域の人々と円滑にコミュニケーションを取る能力は不可欠と言えます。 あわせて読みたい
また、感染症や食中毒などが起こった際、速やかに対応できる危機管理能力も求められるスキルの一つです。
公衆衛生医師はこんな人におすすめ
公衆衛生は以下のような人におすすめの仕事です。
- ワークライフバランスを大事にしたい人
- 安定してキャリアアップを図りたい人
- 他職種と連携しながら大きな仕事を成し遂げたい人
1.ワークライフバランスを大事にしたい人
臨床医は激務になるケースも少なくありません。残業が多く、悩んでいる方もいるでしょう。 あわせて読みたい
公衆衛生医師は待遇や福利厚生が一般職の公務員と同じであるため、休暇制度を利用しやすく、ワークライフバランスを整えやすい点が特徴です。
勤務時間は臨床医と比べると少ない傾向で、プライベートの時間を確保したいと考えている方にはおすすめの仕事です。
新型コロナウイルスのような感染症や疫病が流行した場合を除き、当直やオンコールもありません。
医師という職業の中では、ワークライフバランスが充実している部類であるのは間違いありません。医療に関わりつつ、自分の時間も大切にしたい方におすすめの仕事です。
2.安定してキャリアアップを図りたい人
公衆衛生医師は公務員としての身分が保証されており、安定的にキャリアアップを図れる点がメリットです。
公衆衛生医師になった後のキャリアは人によって異なりますが、経験や年数に応じて徐々に上がっていくのが一般的です。
自分のキャリアを少しずつ積み上げていきたいと考えている方には、おすすめの仕事と言えるでしょう。
参照:公衆衛生医師 キャリアパスや待遇|厚生労働省
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3.他職種と連携しながら大きな仕事を成し遂げたい人
先ほども述べたように、公衆衛生医師は地域の人々や企業と連携して業務に取り組む機会も多い仕事です。 あわせて読みたい
他の職種と連携をしなければいけないケースもあります。他職種と連携を取りながら、大きな仕事を成し遂げたいと考えている方には、おすすめの仕事です。
他職種とも関わる中で、公衆衛生に関する仕組み作りや制度の確立など、自分だけでは難しい大きな仕事も成し遂げられるでしょう。
成し遂げられた際のやりがいも大きいため、仕事に充実感を求めている方にも向いている職業と言えます。
公衆衛生医師は激務?落ち着いて働ける時期との違い
公衆衛生医師は自治体・部署・時期によって差がありますが、通常、平日日勤が中心で当直・オンコールはほぼ無しです。
このため、普段は比較的落ち着いた働き方ができます。
ただし、以下のような有事には激務になりやすい点は把握しておく必要があります。
- 感染症の大規模流行(調査・調整・住民対応が増える)
- 災害発生時(避難所衛生、医療連携対応が急増)
- 食中毒や重大な健康被害が発生したとき
- 行政発表・記者対応が必要なケース
平時は安定、有事は一時的に負荷が跳ね上がるという特性があります。
公衆衛生医師を辞めたい場合の選択肢と理由
公衆衛生医師として働く中で、「辞めたい」と感じるケースも少なくありません。理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 臨床から離れたことでスキル維持が難しい
臨床医の経験が長い医師ほど、診療スキルが衰えてしまうことを不安に感じる場合があります。 - 仕事内容の大半が調整業務で、臨床のような達成感を得にくい
会議や行政書類作成、他機関との調整が中心のため、直接患者を救う臨床医のような満足感を得にくいことがあります。 - 激務になる時期の精神的プレッシャーが大きい
感染症の大規模流行や災害時などは急な対応が求められ、通常時よりも負荷が高くなります。 - 異動やキャリアの選択肢が限られやすい
勤務先の自治体内での異動が基本のため、自分の希望するポジションや地域で働けない場合があります。 - 組織の意思決定が遅く、医師としての裁量が小さいと感じる
行政組織特有のフローや承認待ちにより、自分の判断で即座に動けないことがストレスになる場合があります。
辞めたい場合の具体的な選択肢
公衆衛生医師としての経験は、医療・行政・政策の幅広い知識と調整力として評価されます。そのため、辞めたいと感じた場合でも、キャリアの幅は意外と広いです。
重要なのは、「辞めたい」と思った時点でキャリアの幅を狭めず、柔軟に選択肢を検討することです。
- 病院やクリニックへの転職
行政経験を活かして、感染症対策や医療連携に関わるポジションを得ることが可能です。 - 大学や研究機関での研究職・教育職
公衆衛生や疫学に関する専門知識を活かして、教育や研究に従事する道があります。 - 医療コンサルティングや政策関連企業への転職
行政医師として培った医療制度や政策の知識を、コンサルタントや民間企業での医療戦略立案に活かすことができます。 - 国際保健・NGO・災害支援などの専門職
災害医療や国際保健に特化した職種で、公衆衛生医師の経験が即戦力として評価されます。
働き方に悩んだら医師専門の転職エージェント「メッドアイ」
公衆衛生医師は魅力的な仕事の一つです。
しかし、中には医師としての働き方に迷いが生じている方もいるでしょう。また、今の年収に満足していない方もいるかもしれません。そういった方は、医師専門の転職エージェントである「メッドアイ」をぜひご利用ください。
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公衆衛生医師以外にも自分にあった働き方が見つかるかもしれません。ぜひ、メッドアイで新たな人生の一歩を踏み出してください。
まとめ(公衆衛生医師の年収はどれくらい?)
公衆衛生医師は臨床医と比べて、業務内容が大きく異なります。
行政職員であるため、安定しているというメリットがある一方で、高い責任能力が求められる側面もあります。
地域の方々に医療を届けたい、街全体を健康にしたいと考えているのであれば、公衆衛生医師はおすすめの仕事です。
しかし、公衆衛生医師としての働き方に悩んだ場合は一人で抱え込まず、ぜひ転職エージェント「メッドアイ」に相談してください。




















