医師が今の診療科が合わないと感じたり、適性がないのではないかと悩んだりするケースは決して少なくありません。
診療科を決めるプロセスは人それぞれですが、必ずしも最初に目指した領域が自分に合っているとは限らないからです。

「他科への転職を考えているが、自分に向いている診療科はどこか悩んでいる」
「今の診療科は自分に合っていない気がしており、他に合いそうな診療科を見つけたい」

この記事では、研修医で診療科が決まらないと悩む方や、転科を検討する医師のために、転職エージェントの視点で各診療科に求められる適性を解説します。
自分に向いている診療科を判断するコツや、悩んだときの対処法についてもご紹介しますので、参考にしてください。

【診療科別】医師に求められる適性やスキル

医師の働き方や仕事内容は、診療科によって異なります。
それに伴い、それぞれの診療科が医師に求める適性やスキルにも違いがあります。
ここからは、代表的な10の診療科それぞれに必要な適性やスキルを解説します。

1.内科

<内科医に必要な適性やスキル>

  • 幅広い知識を積極的に吸収する意欲
  • 洞察力が高い
  • 応用力が高い
  • コミュニケーションが得意
  • 学習意欲が高い

内科では初診患者を診る機会が多く、初めて会う患者の愁訴を聞きながら状態や治療法を探る必要があります。
診察時に相手の訴えを引き出せるコミュニケーション力や、訴えから最適な治療法を判断する分析力や応用力は欠かせません。
分析力や応用力を高めるためには全人的な医療知識を常に磨いておくことも重要です。
体全体の疾患に対応し、循環器内科や消化器内科などサブスペシャリティ領域も数多い内科では、求められる知識の量も多くなります。
幅広い領域の情報を積極的に勉強する力も、内科医に必要な要素です。

2.外科

<外科医に必要な適性やスキル>

  • 注意力の高さ
  • 手先の器用さ
  • プレッシャーへの強さ
  • 根気よく練習を続けられる熱心さ
  • 臨機応変な判断や対応ができる力

外科の仕事では、手術や処置など手技を伴う治療が多くなります。
繊細で精密な手仕事には高い集中力や注意力が必要です。
手先が器用であることも、外科医として有利に働く要因となるでしょう。
しかしそれ以上に大切なのが、手技スキルを高めるため、愚直に研鑽を続けることができる根気です。

また、交通事故による大怪我や急な病気での手術といった、緊急対応時の判断力や、状況に応じて臨機応変に対応を考えられるバイタリティーも求められます。
外科医は手術現場や救急対応の場で他の診療科の医師やスタッフと連携して治療にあたるケースも多々あります。
チームワークを良好に保つことができるコミュニケーションスキルも必須です。

3.整形外科

<整形外科医に必要な適性やスキル>

  • 精神的、体力的なタフさ
  • 高いコミュニケーション能力
  • 手先の器用さ
  • スポーツへの関心の高さ
  • より専門性を極められる意欲

骨や筋肉などの運動機能を受け持つ整形外科では、一人の患者との付き合いが長くなる傾向があります。
また、患者層が老若男女に渡るため、年齢や性別を問わずに長く付き合っていけるコミュニケーションが築けるスキルが必要です。

身体全般が対象範囲になる一方で、扱う部位によって細分化もされているため、1つの領域を極めたいという方に向いています。
スポーツ障害に対応する場合においては、医学的知識だけでなく、対象のスポーツについても精通していることが望ましく、整形外科医にはスポーツ経験者が多いことも特徴です。
治療が長引いたときでも患者のモチベーションを継続させるため、メンタル面のケアができるスキルが求められる職場もあります。

4.小児科

<小児科医に必要な適性やスキル>

  • 子どもが好き
  • 洞察力の高さ
  • コミュニケーション能力や包容力の高さ
  • 忍耐力の強さ
  • フットワークの軽さ

小児科医が受け持つのは乳幼児から中学生ぐらいまでの年代の子どもです。
子どもが好きであることが望ましく、特別子ども好きでなくとも、子どもとしっかり向き合える包容力は必須と言えます。
子どもは年齢が低いほど、具合が悪いときの訴えをうまく言語化できません。
子どもの説明や当事者ではない親の説明から病状を読み解く必要があり、洞察力の高さも求められます。
また、小児科医は地域の学校の検診や養育指導などに駆り出されることもあるため、フットワークの軽さがある医師に向いています。

5.産科・婦人科

<産婦人科医に必要な適性やスキル>

  • 精神的、肉体的なタフさ
  • 命の誕生に向き合う気持ち
  • 女性への配慮や寄り添える共感力
  • 学習意欲の高さ

産婦人科医は産科と婦人科で仕事内容に違いが出てくるものの、どちらも女性のデリケートな領域を受け持つ診療科です。
婦人科であれば女性の生涯にわたる健康面で幅広い知識が求められます。
産科の場合は妊娠から出産、新生児のケアと長い期間を患者と向き合うことになり、その時々で必要な対応が異なってきます。
いずれにしても女性を専門に受け持つことから、女性への配慮や気配りができるスキルは必須です。
また、出産は時間を選ばないため、時間外労働や長時間労働がこなせる体力も必要です。
必ずしも幸せな出産だけでなく、流産や中絶といった患者のメンタル的なケアを伴うケースもあり、精神的なタフさも欠かせません。

6.精神科

<精神科医に必要な適性やスキル>

  • 冷静さを保つことができる
  • ストレス耐性やメンタルの強さ
  • 相手の話を聞く力や話を引き出せるコミュニケーション力
  • 内科の知見
  • 人当たりの良さ

統合失調症やうつ病など、精神的な疾患を領域とする精神科医に何より必要なのは、常に冷静でいられる自身のメンタルの強さです。
認知症や発達障害、依存症などによる身体合併の症例もあることから、ある程度内科の治験を持っていることも求められるケースがあります。
患者が精神的な辛さを抱えているため、問診の場でうまく会話がつながらないことも少なくない職場です。
どんな相手にも寄り添えて、会話を促せるコミュニケーションスキルを磨く必要があります。

7.眼科

<眼科医に必要な適性やスキル>

  • 手先の器用さ
  • 集中力の高さ
  • 一極集中で専門性を極める根気
  • 仕事をスムーズに進めるスピード感

眼科医の専門領域である目は小さい部位であることから、治療には非常に精密な技術が必要です。
細かい作業を得意とする方や、高い集中力が発揮できる方に適性があります。
その一方でメガネやコンタクトの処方といった気軽な来院も多いため、患者数が多いのが特徴です。
仕事量が多くなりがちなため、テキパキと仕事を進める能力も眼科医に必要なスキルです。
目やその周辺というマクロな範囲を専門とするため、一領域で専門性を極めたい方にも向いています。

8.耳鼻咽喉科

<耳鼻咽喉科医に必要な適性やスキル>

  • 手先の器用さ
  • 専門性と幅広い知識を同時に吸収する意欲
  • 高いコミュニケーション力
  • 仕事をスムーズに進めるスピード感

耳鼻咽喉科医も眼科医と同様に、耳・鼻・喉・神経といった細かい部位を専門とします。
投薬治療はもちろんのこと、外科的な処置や手術も行うため、細かい作業を集中して行える技術と集中力が必要です。
眼科同様に患者層が老若男女にわたり、疾患の種類も多くなる傾向があります。
患者数が多いことから、手際良く仕事を進めるスキルを持っているのが望ましいです。
担当領域ごとに細分化されたサブスペシャリティ資格がある一方で、内科的にも外科的にもアプローチが必要なことから、幅広い知見も求められます。

9.皮膚科

<皮膚科医に必要な適性やスキル>

  • 高いコミュニケーション能力
  • 美容への関心の高さ
  • 洞察力の高さ
  • 幅広い知識を吸収する意欲

皮膚科医は他の診療科と比べると、皮膚や爪全般の疾患を扱うため、一番対応範囲が広いのが特徴です。
皮膚の疾患は発症した位置によっては人の見た目に影響を与えることから、患者のメンタル面にも配慮できるコミュニケーション力が求められます。

また、皮膚の症状は原因が内臓疾患による場合も少なくないことから、内科系をはじめとした広範な知識が欠かせません。
美容系のクリニックで働く場合は、美容に関する知識も必要で、その時々の美容の流行などにもアンテナを張ることができると有利です。

10.救急科

<救急科医に必要な適性とスキル>

  • 高いマルチタスク能力
  • 高いコミュニケーション力
  • 素早い判断力
  • 精神的、肉体的なタフさ
  • 幅広い知識を吸収する意欲

救急搬送や救急外来で働く救急科医は、怪我や急病などさまざまな症状の対応にあたることから、幅広い知識が求められます。
緊急度が高い患者に対応するため、患者の状態を把握する力と必要な治療を素早く判断する力を鍛えることが大切です。
病院の救急外来で働く以外にも、災害派遣医療チームに加わり被災地に赴くなどのフットワークの軽さも必要になってきます。
救急科の仕事はチーム医療が基本なことと、必要に応じて関連する診療科と連携することから、コミュニケーションスキルが高いほうが適性があります。

医者として向いている科の診断方法

今働いている診療科からの転科を考えるときは、どんな診療科が自分に向いているのかを知っておくことが大切です。
ここからは、自分に向いている診療科を判断するコツやポイントをご紹介します。

1.診療科ごとの特徴を把握する

まずは気になっている診療科の特徴をきちんと把握しましょう。
学生時代の授業や研修医のときに得た経験から、各診療科が受け持つ領域は把握していても、具体的な仕事の進め方やその診療科ならではの特徴はわからないものです。
治療はどのようなアプローチで行うのが定石なのかといった技術的なことだけでなく、1日の業務の流れや診療科内の人間関係などもリサーチするのがおすすめです。
その診療科で働くイメージが掴めてから、自分に向いているのかどうかを考えましょう。

2.自身の強み・弱みや理想などを分析する

転科や転職を考えたり、これから働く診療科を選ぶ際には、キャリアプランをしっかり描く必要があります。
特に転科・転職の場合は、今までのプランを一旦白紙に戻して、新たに描き直す必要も出てくるでしょう。
目指す診療科の特徴を把握するのと同時に、自己分析もしっかりと行い、自分の強みや弱みを客観的に知っておくことが重要です。
これから先の仕事で何を目指すのか、その際に活かせる強みや克服すべき課題は何かを見極めることができれば、診療科の特徴と照らし合わせて、向き不向きを判断しやすくなります。

3.待遇などを考慮しながら働く診療科を決める

目指す診療科がある程度見極められてきたら、どんな職場で働くかも意識しましょう。
これから働いていく上でどんなゴールを目指すのか、また働く上で重要視したい要素は何かを整理し、その条件に合った働き方ができる勤務先を選ぶようにしてください。
ワークライフバランスを向上させたい場合と、なるべく早く技術を極めたい場合とでは、選ぶ職場条件は当然変わってきます。
また、給与面や福利厚生もチェックして、安心して身を任せられる職場かどうかを判断するのがおすすめです。

自分に合う診療科に悩んだ場合の対処法

自分に合う診療科選びは慎重に行いましょう。
しかし、慎重になり過ぎてしまうとなかなか決断ができないというケースもあります。
ここからは、診療科選びで迷ったり希望の診療科が自分に向いているか悩んだりした場合に、おすすめな対処法をご紹介します。

1.非常勤やアルバイトで働いてみる

目指す診療科のリサーチをしても、すぐに転職するのは不安と感じる場合は、非常勤やアルバイトの求人を探してみるのがおすすめです。
転科OKや未経験OKで求人を出している医療機関は結構あります。
その中で非常勤のものを見つけて、しばらくの間働いてみることで、自分に適性があるかをじっくり判断することが可能です。

2.他科の知り合いや先輩に相談してみる

身の回りに転科を経験している人や、目指す診療科で働く人がいる場合、相談するのも1つの解決策です。
働き方の特徴を詳しく教えてもらうのもいいですし、付き合いが長い友人であれば、自分に向いているかどうかをストレートに聞くのもいいでしょう。
経験者や先輩のアドバイスは、自分を客観的に分析することにも役立ちます。

3.専門家に相談してみる

周囲に目指す診療科について相談できる人がいない場合は、プロに相談するのがおすすめです。
医師の転職に特化している転職エージェントを活用すれば、キャリアプランづくりもスムーズですし、希望する診療科はもちろんそれ以外の診療科の情報も入手しやすくなります。
また、目指す診療科が決まったら、そのまま職場探しにもつなげられる点もメリットです。

医師専門の転職エージェントなら「メッドアイ」

自分に合っている診療科を探すのは、決して簡単なことではありません。
向いていると思って選択しても、働き出してしばらくしてから何かが違うと感じることもあり得ます。
診療科選びに悩んだり、今の診療科が向いていないと思ったら、一度冷静にキャリアプランを見つめ直してください。
その際におすすめなのが、医師専門の転職エージェントを利用することです。
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キャリアプランづくりや、自分の適性を見極めたいといった要望から、具体的な転職先探しまで、豊富なノウハウと非公開情報や非常勤アルバイトを含む多数の求人情報を活かしてサポートします。

まとめ(医師に求められる適性とは?)

医師が息の長い働き方をするなら、目標に向かって突き進む熱意も大切です。
しかしそれ以上に、自分らしく働ける、自分に合った環境を得ることも重要です。
職場の環境がそうではなかった場合は転職を考えるべきですし、仕事の内容が向いていないと感じたら転科も有効な選択肢となります。

医師が転科する場合は、キャリアプランを一旦リセットすることになりますが、転職エージェントに相談しながら新しいキャリアプランを考えるのもおすすめです。
客観的な視点と豊富なノウハウで、自分一人では解決できない悩みも解消できる可能性が高まります。
実際に転科・転職を決断するかどうかはさておき、今の働き方に悩んだら、一度気軽に相談してください。

メッドアイでは無料相談を通じて、医師一人ひとりの悩みに寄り添いながら、その人に合った最適解を導くお手伝いをしています。