医師としてのキャリアを考える際、専門医としての道を極めるか、新たな働き方を模索するかは、大きな選択肢の一つです。
「このまま今の診療科で働き続けるべきか、それとも別の道を考えるべきか迷っている」
「ホスピタリストという職業があるみたいだけど、自分にあっている働き方かな?」
このような悩みを抱える医師にとって、新たな選択肢として「ホスピタリスト(病院総合医)」が注目されています。
ホスピタリストの役割は、特定の診療科に縛られずに患者の疾患や心理面にも配慮し総合的に診療することです。
本記事では、ホスピタリストの定義や仕事内容、総合診療医との違い、必要なスキルを詳しく解説します。
メリット・デメリットや年収、ホスピタリストとして活躍するために必要なことまで説明するため、キャリアの幅を広げたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
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ホスピタリスト(病院総合医)とは?
ホスピタリスト(病院総合医)とは、臓器別の専門医ではなく複数の疾患を同時に管理できる医師を指します。
総合診療医(さまざまな疾患などを総合的に診療できる医師)の中でも病院内で勤務する医師で、近年日本の医療現場でも注目される存在です。
ホスピタリストは1996年にアメリカの医学雑誌で紹介され急速に広まりました。アメリカでは病棟専属の内科医として入院患者のみを対象とし、基本的に外来患者は担当しません。
一方で、日本のホスピタリストは入院患者の管理だけでなく外来診療も役割に含まれます。
病院総合医の認定を行っている日本病院会は、次のように表現しています。
「病院総合医」とは、高い倫理観、人間性、社会性をもって総合的な医療を展開する医師を指します。
引用:日本病院会「日本病院会認定病院総合医育成事業」
近年、日本の医療現場では高齢化の進行にともない、複数の疾患を抱える患者が増えています。そのため、臓器別にわかれた専門医だけでは対応に限界があり、ホスピタリストの役割が重要視されるようになりました。
また、ホスピタリストは入院するに至った疾患のみに医療を提供するのではなく、複数の疾患や患者の退院後の生活まで見据えた地域包括ケアの役割も持ち合わせます。
たとえば、高齢の患者が退院後に自宅へ帰れるのか、特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設を利用するのかまで考慮し、再入院を見据えて施設と情報共有するケースがあります。
病院内の患者の診療を受け持つ存在ではありながら、退院後まで踏まえた医療を提供する点がホスピタリストの特徴です。
日本での役割
日本でのホスピタリストは、患者中心の医療を提供する役割を担います。
医療技術の高度化や手技を磨くことを重視する専門医がいる一方で、患者の他疾患や心理面にも配慮し総合的に診療する「総合医」としてホスピタリストがあります。
アメリカと違う点は、対象とする範囲です。アメリカのホスピタリストは入院患者のみを対象としますが、日本では救急外来や初診外来も担当します。
そのため初期診療から入院中の患者の身体的・精神的なサポート、退院支援まで幅広い知識が求められます。
総合診療医・総合内科医との違い
ホスピタリストと総合診療医、総合内科医はいずれも幅広い診療能力を持つ医師ですが、診療対象や範囲、役割には違いがあります。
それぞれの役割を表で解説します。
項目 | ホスピタリスト | 総合診療医 | 総合内科医 |
---|---|---|---|
主な診療対象 | 入院患者、外来患者全般 | すべての患者 | 内科疾患の患者 |
診療範囲 | 入院患者の総合診療 | プライマリ・ケア全般 | 内科全般 |
勤務場所 | 病院全体(病棟、外来) | 病院、クリニック 診療所、在宅医療 | 内科病棟、内科医院・クリニック |
特徴 | 病院内で働く総合診療医 各診療科との調整役を担う | 地域密着型の診療 家庭医としての役割も担う | 内科診療に特化 各科との連携を図る |
役割 | 入院患者の診療 外来・救急外来の受け入れ 病棟・病院の管理 | 患者の生活背景も含め包括的に支える | 内科疾患の診断・治療を主導する |
前提として、総合診療医という大枠の中に総合内科医とホスピタリストが含まれます。
総合診療医は、外来や在宅医療など地域医療の第一線でプライマリ・ケア(身近な健康問題に対して総合的・継続的に対応する医療)を提供しますが、病院で勤務する場合もあり活躍の場が広いです。
厚生労働省は総合診療医について「疾病や傷害そのものだけでなく予防や保健福祉など継続した医療を提供する医師」と位置付けています。
一方で、総合内科医は内科領域に特化し、内科全般の救急や感染症などを担当する存在です。
日本内科学会によると「総合内科医は内科的疾患に対し、診断や治療において総合的に判断できるレベルの高い専門医」であると説明されています。
ホスピタリストは総合診療医のうち、勤務場所が病院に限られた存在です。内科的問題を扱う場合も多いため、総合内科医と呼ばれる場合もあります。
異なる診療科の専門医と連携を図り、複雑な症例にも対応する役割を担います。
ホスピタリストの概念も含まれる総合診療医については、下記の記事も参考にしてください。
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ホスピタリストが求められる3つの理由
日本の医療現場では、以下の理由によりホスピタリストの役割が重要視されています。
本章では、ホスピタリストが求められる理由を3つ解説します。
- 医師不足を解消するため
- 医療コストの削減につなげるため
- 高齢化社会に対応するため
ホスピタリストがなぜ日本の医療現場で必要とされているかを知り、働き方を検討する際の参考にしてみてください。
1.医師不足を解消するため
厚生労働省によると令和4年12月末での国内の医師数は約34万人と過去最高ですが、人口に対する医師数は先進国と比較すると少ない傾向にあります。
実際に、2019年の日医総研のデータでは、人口1,000人に対する医師数がOECD(先進国が加盟する国際機関)加盟38ヵ国中ワースト5位でした。
さらに国内で見ると、地域や診療科によって医師不足が深刻なケースがあり、複数の疾患を包括的に診療できるホスピタリストは重要な存在です。
地域に根ざした医療を提供することで患者の健康を支えるだけでなく、ホスピタリストの働き方が注目されるきっかけにもなります。
その結果、ホスピタリストを志す医師が増え、医師の都市部集中を緩和される可能性があります。
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2.医療コストの削減につなげるため
ホスピタリストの存在により、医療コストを削減できると期待されています。
厚生労働省の「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」によると、令和4年度の国民医療費は46兆6,967億円でした。前年度に比較し3.7%増加しており、医療コストが増大していることがわかります。
医療費の高騰は日本の財政を圧迫する大きな要因であり、不要な検査や医療処置が行われている可能性が指摘されています。
そこで、幅広い知識による診察で患者に本当に必要な検査や処置を選択し、医療コスト削減につながるホスピタリストが求められています。
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3.高齢化社会に対応するため
ホスピタリストは、幅広い診療能力を活かすことで高齢化社会に対応した総合的な医療を提供します。
内閣府の「令和6年版 高齢社会白書」によると、日本の高齢者(65歳以上)の人口は約3,623人、総人口1億2,435万人に占める割合は29.1%と報告されています。(令和5年10月1日時点)
総人口の減少にともない、今後の高齢化率も増加し続けると推測され、2045年の高齢化率は36.3%に上る見込みです。
高齢者は複数の疾患を抱える場合が多く、臓器ごとの専門医だけでは対応が難しいケースが増えています。
しかし、ホスピタリストが患者の生活背景や社会的要因も考慮したケアを行うと、適切な医療が実現可能です。
加えてホスピタリストは、地域包括ケアシステムの一環として、病院と地域医療の橋渡しを担う役割も期待されています。そのため、高齢化が進む社会で地域に根差した存在として重要視されるでしょう。
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ホスピタリストとして働くメリット
ホスピタリストとして勤務するメリットは、幅広い臨床経験を積める点です。
ホスピタリストは特定の診療科に属さず、多様な疾患を診るため、総合的な診療スキルが身につきます。
認知症と糖尿病を発症する患者のケースを例に説明します。
各専門医による診療では「認知症によって食事の摂取量が減り低栄養状態にも関わらず、糖尿病管理のために厳格な食事制限を設けられる」という矛盾が生じる可能性があります。
ホスピタリストが担当すると、看護師や栄養士などと連携し低栄養にならない範囲で糖尿病管理の方針を立てられます。
他疾患や背景まで踏まえた治療方針を立てることで、患者の全身状態の改善が可能です。
上記の例からわかるように、ホスピタリストとして働くと、ジェネラリストとして成長できるでしょう。
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ホスピタリストとして働くデメリット
総合診療医として働くデメリットとして、専門性を深められない点が懸念されています。ホスピタリストは総合診療医の一部であるため、同様のデメリットを持ちます。
日本の医療が高度化・専門化している状況は先述しましたが「特定の領域における高い専門性」が優先されがちで、総合診療医やホスピタリストの役割が十分に認知されていないことも一因です。
しかし、複数の疾患を持つ患者に対する診療として、幅広い知識に対応できる医師は現代でも重要な役割を持ちます。実際に、患者は「どこの科を受診したらよいかわからない」と悩むことも少なくありません。
ホスピタリストは専門外がないとも言え、このような状況にこそ活躍します。
どのような疾患でも的確に総合的に診療できるホスピタリストは専門性が深められないのでなく、総合診療のスペシャリストとしてスキルを深められます。
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ホスピタリストの仕事内容
ホスピタリストの主な仕事は、病院を受診した患者のあらゆる疾患・病態の診断と治療を行うことです。
主要な症状だけでなく患者を取り巻く生活環境や家族関係、経済状況などもあわせて情報収集して、患者に本当に必要な治療やサポートを提供する必要があります。
診断だけにとどまらず、専門医との調整や専門領域の治療などもホスピタリストの仕事です。
そうした幅広い知識と経験を活かして、臨床研究や疫学的研究に取り組むこともあります。
また、研修医や若手医師の教育を担当する場合があり、医療の質向上や次世代の育成に貢献する機会もあります。
専門医とは異なる幅広い分野で医療に携われるのが魅力です。
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ホスピタリストに必要な3つのスキル
ホスピタリストは特定の診療科に属さず、患者全体を診る立場だからこそ、総合的な視点が必要です。
本章では、ホスピタリストに不可欠な以下の3つのスキルを解説します。
- 臨床判断力と幅広い疾患への対応力
- 入院から退院までのマネジメント能力
- チーム医療を支えるコミュニケーション能力
ホスピタリストとして求められるスキルを理解すると、自身の適性を照らし合わせて見極められるでしょう。
1.臨床判断力と幅広い疾患への対応力
ホスピタリストは、内科・外科を問わず、多岐にわたる症状から病気を推測し、迅速かつ的確に診断する必要があります。たとえば発熱が続く患者の場合、単なる感染症だけでなく、関節リウマチといった自己免疫系の病気や悪性腫瘍の可能性も考慮しなければなりません。
しかしすべての専門医が即座に対応できるわけではないため、ホスピタリストが初期対応を行うことが求められるケースがあります。
そのため、各科の基本的な診療知識に加え、判断能力も必要となります。
さらに、ホスピタリストは入院患者の全身管理を行うことが多く、一つの疾患にとどまらず、全身の状態を常に把握しながら診療を進めなければなりません。
複数の疾患が絡み合うケースでは、最適な診療方針を決定する臨床判断力がホスピタリストに求められます。
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2.入院から退院までのマネジメント能力
ホスピタリストは病棟管理だけでなく、退院までの流れを管理し、医療の効率化に貢献する役割を担います。
例を挙げると、脳卒中で入院した患者が自宅復帰を希望する場合、リハビリ計画を立て、回復までの方針を決めることが必要です。リハビリ科や看護師、ソーシャルワーカーと連携して、退院支援を行います。
このように、入院患者の治療だけでなく、入院から退院、退院後のケアまでを見据えたマネジメント力が求められます。
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3.チーム医療を支えるコミュニケーション能力
ホスピタリストは、病院内の多職種と連携しながら入院患者の診療を統括する役割を担います。
医師だけでなく看護師・薬剤師・リハビリスタッフなどのスタッフと協力し、治療方針の共有や意思決定を円滑に進めるコミュニケーション能力が求められます。
たとえば高齢の肺炎患者のケースでは、単なる抗菌薬の投与だけでなく、栄養管理やリハビリ計画、退院後の生活支援が必要です。その際、ホスピタリストが各職種と調整しながら治療の方向性を決め、役割分担するため、カンファレンスへの積極的な参加も求められます。
また、他科の専門医と意見を調整し最適な診療方針を決定する力も求められるため、ホスピタリストには多職種とのコミュニケーション能力が必要です。
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ホスピタリストの年収・待遇
ホスピタリストの年収や待遇は、勤務する医療機関の規模や所在地、経験年数、勤務形態によって大きく異なります。
年収に関するデータは限られていますが、ホスピタリストを含む総合診療医の平均年収は、全国平均約1,617万円で、全診療科目の平均(約1,596万円)をやや上回る水準です。
地方の医師不足を補うため、都市部よりも地方の給与が高いなどの地域差もあります。
経験年数や役職によっても収入は変動し、管理職やリーダーポジションを担うことで昇給のチャンスが増えるのが一般的です。
さらに、福利厚生の充実度も勤務先によって異なります。ホスピタリストとして働く際は年収の他に、キャリアアップや福利厚生などを総合的に判断しましょう。
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ホスピタリストとして活躍するために必要な2つのこと
本章では、ホスピタリストとして活躍するために必要なことを解説します。
- 病院総合医認定を受ける
- 病院総合診療専門医の資格を取得する
日本の制度では、ホスピタリストになるための必須資格は設定されていませんが、活躍するための資格が用意されています。
運営母体が異なり研修施設も限られるため、自分に合ったものを選びましょう。
1.病院総合医認定を受ける
病院総合医認定を受けるには、日本病院会が実施する「病院総合医育成事業」の認定プログラムに参加する必要があります。
病院総合医育成事業の対象は卒後6年目以降の医師です。
研修では、以下の5つのスキル習得を目指します。
習得を目指すスキル | 内容 |
---|---|
インテグレーションスキル | 包括的な医療によって多様な病態に対応できる |
コンサルテーションスキル | 適切な初期対応と、必要時には然るべき専門診療科への相談・依頼ができる |
コーディネートスキル | すべてのスタッフとの連携、かつ調整役を担える |
ファシリテーションスキル | 他職種とも共同し、チーム医療を実践できる |
マネジメントスキル | 地域包括ケアシステムや日本の医療を考慮した病院運営ができる |
参考:一般社団法人日本病院会「日本病院会 病院総合医」
原則2年間の研修によって、5つのスキルを習得しなければなりません。
ただし、到達目標の達成状況によっては1年間の研修で認められる場合もあります。
2.病院総合診療専門医の資格を取得する
ホスピタリストに関連する資格として日本病院総合診療医学会が認定する「病院総合診療専門医」が挙げられます。
申請には申請願書が必要で、審査を経て「病院総合診療専門医」の修了判定がされます。
研修プログラムには急性期病棟や地域包括ケアなどが含まれ、ホスピタリストとして求められるスキルを習得します。
また、学会や研究会での症例報告もしくは研究発表、論文執筆も必要です。
病院総合医認定や病院総合診療専門医の資格取得は必須ではありませんが、ホスピタリストとしての専門性と信頼性を高める大切な要素です。
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本記事では、ホスピタリストの定義や役割、メリット・デメリット、必要なスキルを解説しました。
ホスピタリストは、専門科に縛られない柔軟な働き方が可能ですが、日本ではまだ認知度が低く、病院ごとに業務内容や待遇が異なるため、転職活動では慎重に情報収集しましょう。
特に、給与・勤務形態・キャリアの方向性を見極めながら、自分に合った職場を選んでください。
とはいえ、日々業務が忙しい医師の方は転職活動に必要な情報をえる時間が限られているでしょう。
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