2024年4月に本格施行された「医師の働き方改革(改正医療法)」。 医療業界における「2024年問題」として大きな話題となり、制度導入から時間が経過した現在も、現場の過重労働や疲弊に悩む医師は少なくありません。

「働き方改革が始まったのに、なぜ勤務医は疲弊したままなのか?」
「制度施行後の現場のポイントは?」
「自分自身で働き方改革(環境改善)を進めるには?」

この記事では、医師の働き方改革の現状や過重労働・疲弊のポイントについて、転職エージェントの視点でわかりやすく解説します。 勤務先での労働環境や働き方に疑問や限界を感じている方の参考になれば幸いです。

医師が疲弊する理由は?

医師が職場で疲弊してしまう理由にはいくつかあります。
その中でも多いのが、以下の3つと言えるでしょう。

  • 長時間労働
  • 当直勤務による長時間拘束
  • 医療行為以外の業務の多さ

一つずつ、詳しく解説します。

基本的に長時間労働

第一に、医師の労働時間が長いことが疲弊の原因として挙げられるでしょう。
厚生労働省が調査した、「医師の勤務実態について」では、常勤で勤務する医師の労働時間が、週あたり平均で男性57時間35分、女性52時間46分という結果になりました。
また、年代別に見ると、若い医師の労働時間が長くなる傾向があり、20代の男性医師で61時間34分、30代男性医師が64時間54分と最も多くなっています。
週あたりの労働時間が60時間を超えているのは、過労死を警告されてもおかしくないレベルです。
こうした長時間労働が起こってしまう背景には、医療業界の慢性的な人手不足があります。

また、医師一人当たりの病床数も多く、患者1,000人につき医師数が13人程度となっているのです。
これは世界的に見ても医師一人の負担が最も多い状態であり、日本の医師の過酷さがよくわかる数字だと言えるでしょう。

医師の長時間労働については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

当直勤務による長時間拘束

医師が長時間労働になってしまう要因の一つに、当直勤務があります。
病院が当直を置かなくてはならないのは、法律で決まっているということもありますが、なにより入院患者に時間は関係ないということがあるでしょう。
当直勤務で医師が担う仕事は、病院によって違いがあります。
救急外来に対応する場合や、入院患者の不足の事態に対応する場合があり、その日の状況によっては仮眠も取れないという日も出てきてしまうのです。

そして医療業界が特殊と言えることに、この当直に入る前や当直明けが休みにならないという働き方があります。
他業種でも夜を徹して働く職種はありますが、大抵は夜勤が明けると次の勤務までは休みとなります。
ところが医師の場合、当直明けでそのまま日勤に入るのが当たり前となってしまっているのです。
さらに、医師数が足りていない病院では、当直が回ってくる回数も多くなり、その分医師の労働時間が増していく事態になってしまっています。

意外と多い医療行為以外の業務

一般的には医師の仕事は医療行為だけと思われがちですが、実際はそうではありません。
事務的な仕事や単純作業などが意外と多く、こうした雑務が医師の労働時間を長引かせている側面があります。
さらに学会や研修といった、診療業務以外の予定も入ってくるので、その準備などにも時間を割かなければならないという方もいるでしょう。

働き方改革が叫ばれ始めてからは、カルテ処理などの事務仕事を医事職員に任せるなど、タスクの移動が行われてきています。
しかしまだ、医師による処理を迫られるケースもあり、タスクシフティングの進捗は、病院によりまちまちであると言えるのです。

2024年4月施行後に表面化した「新たな疲弊」のリアル

2024年4月に「医師の働き方改革」が本格施行されたものの、現場で働く勤務医からは「かえって状況が悪化した」「別のアプローチで疲弊が増した」という声も多く聞かれます。
制度の開始に伴い、現場では以下のような新たな課題や過重労働の実態が表面化しています。

1. 外勤(バイト)制限や残業規制による「収入減少」と不満

時間外労働の上限規制(A/B/C水準)が導入されたことで、常勤先・外勤先の通算労働時間が厳格に管理されるようになりました。
その結果、「当直や外勤バイトのコマ数を減らさざるを得なくなり、年収が数百万単位で下がった」「常勤先の残業代が抑制されただけで業務量は減っていない」といった
経済的な疲弊・モチベーションの低下を引き起こしています。

2. 「自己研鑽」扱いによる持ち帰り仕事・隠れ過重労働の横行

労働時間の上限を形式上クリアするために、書類作成や研究、学会準備などが「労働時間(業務)」ではなく「自己研鑽」として処理されるケースが後を絶ちません。
タイムカード上の退勤打刻を強要され、
「打刻後に残ってサービス残業をする」「自宅に仕事を持ち帰って対応する」といった見えにくい形での長時間労働が常態化しており、精神的な負担を増大させています。

3. 「勤務間インターバル」や当直明け休みの形骸化

努力義務や義務として設定された「勤務間インターバル(勤務と勤務の間に一定の休日・休息時間を挟むルール)」も、慢性的な人手不足に悩む病院では形骸化しがちです。
当直明けの即時帰宅が推奨されつつも、「代わりの医師がいない」「引き継ぎがうまくいかない」といった理由から、結局そのまま日勤帯の診療や手術に入らざるを得ない現場が数多く存在します。

医師の働き方改革・長時間労働の改善は?

改正医療法の施行で改善を目指しているのは、医師の時間外労働の短縮です。
厚生労働省の「医師の働き方改革について」を見てみると、医師の職種や労働環境に応じて、3つの水準に分けて、時間外労働の上限時間を定めています。

上限時間は3つの水準に分けられており、原則すべての医師はA水準として最も少ない上限時間となっていますが、救急医療や地域医療に対応する医師と、研修中の医師についてB水準、C水準と別の規定を設けています。
まとめると以下の通りです。

A水準(原則すべての医師)年間960時間/月100時間未満
B水準(救急医療や地域医療に従事する医師)年1,860時間/月100時間未満
C水準(研修医や専攻医など)年1,860時間/月100時間未満(2035年目処にさらに縮減)

さらに、これらの労働時間上限を超過してしまった場合の措置として、面接指導や勤務間インターバルの設置などの義務が課せられます。

医師の働き方改革・4つのポイント

改正医療法に批准し、医師の働き方改革を進めていくためには、以下の4つのポイントが重要です。

  1. 労働時間の把握と管理
  2. 36(サブロク)協定の点検
  3. タスクシフティング
  4. 女性医師の支援

それぞれを詳細に見ていきましょう。

1.労働時間の把握と管理

「働き方改革」実現のために大切なのは、労働時間の把握や管理が徹底されることです。
例えば、一般企業ではタイムカードなどで出退勤を記録していて、これを人事や総務が管理する仕組みが整っています。
しかし病院については、医事スタッフなどではできていても、医師については管理されていないというところも珍しくありません。
勤務時間が把握できていなければ、時間外労働の時間も可視化されませんので、働き方を見直すための施策を打てなくなってしまいます。

オンコール待機中の医師が呼び出されたり、手が足りずに休みの医師を招集したりすることもあり、その都度の管理が難しいという側面はあるでしょう。
しかし、まずはどの程度の長時間労働が発生しているのかを数値化して把握することが重要です。

2.36(サブロク)協定の点検

36(サブロク)協定とは通称で、労働基準法第36条で定められている「時間外労働・休日労働に関する協定」を指します。
具体的には、事業者が雇用している労働者に休日出勤や残業をさせる場合に、労働基準監督署に届け出ることを義務付けているものです。
36(サブロク)協定がきちんと締結されているかどうか、医師自らも確認してみることをおすすめします。
自分の労働時間をきちんと把握し、さらに職場が法に準じているかもチェックすることで、より自分ごととして考えられるのではないでしょうか。

3.タスクシフティング

カルテ処理や患者さんに渡す書類準備などを事務スタッフに任せたり、点滴や注射処置を看護師に割り当てたりといった、タスクシフティングも進められています。
これにより、医師の業務負荷を軽減させることが狙いです。

医師の業務の一部は、放射線技師や薬剤師などのコメディカルスタッフでも分担が可能なものが多くあります。
さらに、医師の事務仕事を補助する医療クラークの設置を進めている病院も増えていて、業務の分担を助ける存在となっているのです。
こうしたさまざまな職種のスタッフとの分業化を進めていくことで、医師の負担軽減のみならず、チーム医療の連携力を高める効果も期待されています。

4.女性医師の支援

女性医師の働き方に対する支援や仕組みづくりも進めていく必要があります。
出産ではどうしても一旦職場を離れることになりますし、多くの女性医師がそのまま育児の負担を抱えているのが現状です。
ライフステージに応じた時短勤務や出勤日数の調整は、必ず必要になってくる対応と言えるでしょう。
出産や育児で第一線を離れることで、女性医師のキャリアアップのチャンスを奪うことがないような環境づくりが求められています。

自分で行う「働き方改革」

働き方改革を職場任せにせず、自分から動くことも、疲弊から逃れる方法です。
自ら職場に働きかけることで、職場の改革スピードが早まることも期待できます。
しかし、人員不足から思ったようにいかなかったり、あまり働き方改革に積極的ではなかったりする病院もあるでしょう。

自分自身が過重労働で辛い思いをしていて、限界を感じるようであれば、転職を検討するのも一つの「働き方改革」と言えるのではないでしょうか。
キャリアプラン的に問題がなければ、非常勤で働くことを選んだり、今より労働時間を短くできる職場を探したりすることで、長時間労働をしなくてもいい環境を自ら選び取るのです。

医師の転職には、環境や待遇だけでなく、診られる症例や患者数など、知っておきたい情報がたくさんあります。
このため、自分だけで転職活動をすることは、忙しい業務の最中に行うのは難しいと感じる方もいるかと思います。
そんな時にぜひ活用してほしいのが、転職エージェントです。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」なら、情報量も豊富ですし、医師一人ひとりの悩みに寄り添って、最適解をたくさん見つけてきた実績があります。
転職によって長時間労働を減らしたい、という目的のもとで、自身のキャリアプランに合った病院を探す方にとって、エージェントの存在はとても頼り甲斐があるものです。

医師の疲弊に関するよくある質問(FAQ)

Q 医師が疲弊してしまう一番の原因は何ですか?

最も大きな原因は長時間労働と人手不足です。
医師一人あたりの業務量が多く、診療以外にもカルテ処理・書類対応・学会準備などが重なり、慢性的な過労状態に陥りやすいのが現状です。
特に若手医師ほど勤務時間が長く、週60時間を超える勤務が当たり前になっているケースもあります。

Q 医師の疲弊を防ぐには、どんな対策がありますか?

制度面では、2024年4月からの労働時間上限規制の運用やタスクシフティングの推進が進められています。
一方で、医師個人ができる対策としては、
・自分の勤務時間を数値化して把握する
・業務の優先順位をつける
・休息時間を意識的に確保する
・職場に改善を提案する
といった工夫も重要です。
それでも改善が見込めない場合は、環境を変える(転職)ことも有効な選択肢です。

Q 医師の疲弊はメンタル面にも影響しますか?

はい。医師の疲弊は、身体的な疲労だけでなくメンタルヘルスにも深刻な影響を与えます。
過労による睡眠不足やストレスの蓄積は、集中力の低下や判断ミスを引き起こす可能性があり、結果的に医療の質を下げてしまう危険もあります。
厚生労働省の調査でも、医師の約4割が「強いストレスを感じている」と回答しており、早期のケアや環境改善が欠かせません。

Q 疲弊しにくい職場を選ぶにはどうすればいいですか?

求人票だけでは分かりにくいため、勤務医の働き方に詳しい転職エージェントに相談するのが効果的です。
面接前に実際の残業時間・当直回数・人員体制を把握できるほか、「タスクシフティングが進んでいるか」「当直明けの休息が取れるか」といった内部情報を確認できます。
疲弊しにくい職場を選ぶことは、キャリアを長く続けるための最も現実的な“働き方改革”と言えるでしょう。

まとめ(医師の疲弊と働き方改革について)

2024年4月に医師の働き方改革が本格施行され、各医療機関での労務管理やタスクシフティングといった取り組みが進められています。 まずは一度、ご自身が勤めている病院での対応状況に関心を持ち、自身の実際の労働時間や時間外勤務がどれくらいになっているかを数字で客観的に把握してみることをおすすめします。

若手医師などで「体力があるから長時間労働でもまだ平気」という方もいるかもしれません。 しかし、無理な働き方を長年続けることで疲労やストレスは蓄積され、結果として医師としての現役期間を縮めてしまう危険もあります。

勤務先での改善が期待できない場合や、すでに身体的・精神的に限界を感じている場合は、「転職で環境を変える」というのも非常に有効な選択肢です。
医師の転職は珍しいことではありませんし、大変な転職活動も、転職エージェント「メッドアイ」に頼ることでスムーズに進めることができます。
自分に合った環境を選び取り、持続可能な働き方を実現することも立派な「働き方改革」と言えます。