医師は免許取得後に研修医として2年間の初期研修を終えると、いよいよ本格的な進路の選択を迫られます。
それが後期研修であり、専攻医として望む進路を歩み出すことになるのです。
このため、後期研修先選びには慎重になる方も多いでしょう。

「後期研修の研修先を選ぶポイントは?」
「後期研修医に人気のアルバイトは?」

この記事では、後期研修先選びに迷う方のために、転職エージェントの視点から、研修先選びのポイントについて解説します。
また、研修期間中の生活を支え、経験値を増やすためにおすすめのアルバイトについてもご紹介しますので、参考にしてください。

医師の研修制度の概要と目的

医師の研修は、初期研修と言われる2年間の臨床研修と、専攻医と呼ばれる後期研修に分かれます。
まずは、それぞれ研修の目的やかかる期間についておさらいしましょう。

医師の研修は初期と後期で合計5年

医師が研修に要する期間は、初期研修と後期研修を合わせると、最短でも5年かかります。
初期臨床研修では、基幹病院や協力施設(保健所や診療所などの研修協力機関)を回りながら、2年かけて医療現場のイロハを学んでいきます。
中には初期臨床研修の期間を3年間と定めている基幹病院もあります。

初期研修修了後は、新専門医制度に沿った専攻分野を選び、後期研修を修得することができるようになります。
後期研修にかかる年数は最短のコースで3年間です。
合わせると最短で5年の研修期間を費やして、臨床の現場に立てるスキルを身につけていくことになります
年齢的にはこの時点で29〜30歳ぐらいになっているため、独り立ちできるまでの期間は従来より長くなります。
このため、中には後期研修なしで就職先を探す医師もわずかながら見受けられるようです。

初期研修の目的とは?

初期臨床研修では、大学病院や総合病院など、国の指定を受けている研修実施病院に所属します。
そして実際の臨床現場で知識やスキルを身につけていきます。
研修期間は基本的に2年間で、初年度は内科、外科、救急・麻酔科などを回ります。
2年目は小児科、精神科、産婦人科などを回り、地域医療や各診療科の基礎を身につけたのち、希望する診療科を選び研修を続けることになります。

初期研修では、できるだけ多くの診療科を経験し、臨床現場にふれることで知識や診療に必要になるスキルを身につけていきます。
さらに、患者さんやその家族、病院内の看護師やコメディカルたちとのコミュニケーション術も学び、連携した医療を行うに足る基礎を養う目的があります。

後期研修の目的とは?

後期研修では、2018年から始まった新専門医制度に沿って、19ある基本領域から希望の領域を選択して専攻医として研修プログラムを履修します。
初期研修が医師としての基礎を広く学ぶことに対し、後期研修では決めた分野を深く学ぶことになり、選択した診療科のプロフェッショナルとなるための期間と言えます。
後期研修は3年から6年ほどの期間を要し、必要な期間は選択するコースや診療科によって変わってきます。
後期研修修了後に、日本専門医機構の認定を受けることで、その領域の専門医となることができるのです。

後期研修中は、研修先の病院で実際に業務をこなしながら研修を受けることになります。
業務上の責任も初期研修の頃とは違い大幅に増していき、初期研修の頃のように、困ったときには上級医に従うといったことも少なくなります。
診療現場でも専攻医が外来患者の診察に当たることもしばしばです。
また、基本領域を修了して専門医認定を受けたあとは、さらに技術や知識を深めるサブスペシャリティ領域の研修を受けることもできるようになります。


後期研修先の選び方・3つのポイント

後期研修を受ける際には、どの基本領域を選択するかというコースの選択の他に、どの病院で研修を受けるかということも考えなくてはなりません。
初期研修と違い、後期研修では研修先の病院の実務もこなしながら学んでいくことになります。
このため、研修先の病院選びでは、以下のポイントに気をつける必要があるのです。

  • 労働環境や教育体制
  • キャリアプランや専門医取得について
  • 専攻医へのフォロー体制

それぞれを以下に詳しく解説します。

1.労働環境と教育体制の充実度をチェック

後期研修先を選ぶ際には、労働条件や教育体制をしっかりチェックしておきたいものです。
その際に指標となるのが以下の3つのポイントです。

  • 指導医の人数
  • 研修医や専攻医の受け入れ実績数(数年間分チェックすると良い)
  • 年収や当直回数などの待遇や勤務条件

特に後期研修では研修先の病院の実務もこなしていくことになりますので、労働条件や環境はしっかりとチェックしておきましょう。
若手医師や研修医などは、当直回数が多く割り振られることもあります。
経験を積むためにはいい機会ではあるのですが、あまり当直回数が多いと体力的にも辛くなってしまいます。

さらに、直近の数年間でどのくらいの研修医や専攻医を受け入れているかも確認しておきましょう。
これは臨床研修病院の指標となっていて、研修医や専攻医を毎年一定数受け入れているということが、そのまま研修の安定性を判断する目安にもなります。
充実した研修が受けられるかどうかについては、指導医がどのくらいいて、受け入れた研修医がどのくらいいるかを知れば、ある程度の判断が可能となってくるでしょう。

2.キャリアプランと専門医取得についてチェック

後期研修をスタートするタイミングは、医師としてのキャリアプランを固めたり、方向転換を図ったりするのに丁度いい機会です。
まずは、自分の希望にあった研修プログラムを受けられるかどうかをしっかり確認しましょう。
さらに、人気のある診療科や都市部の研修病院などでは専攻医の採用人数に制限をかけていることもあります。
この場合は研修が受けられるかどうかは選考次第となるため、早めのアクションも必要です。

後期研修では、医局に所属して大学病院などで後期研修を行ったり、博士号の取得を目指して大学院に通いながら研修を受けることも可能です。
また、医局に所属せず民間病院での研修を選択する医師も増えてきています。
さらに、臨床以外の分野を目指すのであれば、研究職や技師、公衆衛生分野などでキャリアを磨く方もいるでしょう。
このように、初期臨床研修を終えたあとの進路は、後期研修の選択で変わってきます。
なるべく早いタイミングで、どのような分野で活躍するのかを検討し、キャリアプランを描いておくことが大切です。

3.フォロー体制があるかチェック

特に臨床現場での進路を選択する方の場合、研修先を選ぶ際には、研修が終わったあとのフォロー体制もチェックしておくことがおすすめです。
研修後に引き続き採用されるかどうかだけでなく、進路に応じて研修後に病院を去る意志がある場合に相談に乗ってもらえると心強いでしょう。
また、具体的な進路が決まっていないケースでも、進路の相談まで積極的に乗ってくれるような病院であれば、安心して研修に打ち込むこともできます。

まずは受けたい研修プログラムを決めたら、その対象の研修先病院を絞り込んでから確認すると、効率よく調べることができます。
こうしたフォロー体制が充実している病院の場合、もしも途中で転科や転職を検討する場合でも相談に乗ってもらえるかもしれません。

後期研修医は副業ができる! 人気のアルバイトは?

後期研修に入ると、初期臨床研修ではできなかったアルバイトや副業ができるようになります。
当然ながら本業や研修に支障がない範囲内で行う必要がありますし、まれに病院側で就業規則として禁止しているケースもあります。
アルバイトや副業をしたい場合は、まず本業の病院での決まりを確認するようにしましょう。

ここからは、生活費のためや経験値を上げるための医師のアルバイトで、人気があるものをいくつかご紹介します。
医師向けのアルバイトや副業は、ネットでもたくさん見つけることが可能です。
しかし、せっかくアルバイトをするなら、本業に役立つ経験を積みたいのではないでしょうか。
アルバイト先をこだわって探したいのであれば、キャリアプランから相談できる転職エージェント「メッドアイ」を利用するのがおすすめです。

当直バイト(救急なしの寝当直)

若手医師のアルバイトとしてよく知られているのが当直バイトです。
その中でも、慢性期病棟での当直は「寝当直」などと言われ、人気があります。
これは通常業務プラス院内の急変のみの対応となり、急変がなければ業務があまり発生せず、病院に居るだけで完結することもしばしばです。

1回の当直で3〜5万円程度の収入となり、病院内での待機時間を自身の学習にあてたりする方も多いようです。
当直アルバイトを探す際にチェックしたいのが、以下のポイントです。

  • 忙しさの度合い
  • 食事
  • 当直室の環境

仕事の忙しさだけでなく、働きやすい環境かどうかを確認しておくことで、仮眠などの休憩も快適に取ることができます。

往診・訪問診療

往診業務も副業としておすすめの仕事です。
メリットとしては訪問診療を専門としている病院で働くことで、往診のノウハウを得ることが可能です。
また、外部バイトの医師には状態が安定して対応が少ないケースを任せることが多いのです。
このため、比較的楽に業務に馴染むことができます。
往診にも日中の業務と当直業務があり、当直の場合は急変対応が増えるので、少し大変になります。

健診・ワクチン接種など

健診業務や予防接種などもアルバイトの中では人気があります。
どちらも基本的に健常な方が相手となるため、業務に難しさがないのが特徴です。

基本的にはどちらも流れ作業や同じ作業の繰り返しなどで、働き詰めになります。
時間はきっちり決まっているので、長時間労働にはならないものの、、寝当直のようなまとまった休憩時間は取れません。
また、給料も当直バイトと比べると低い傾向にあります。
その代わり、単発でできるので、スケジュールが空いたときに気軽に働くことが可能です。

まとめ(後期研修先の選び方について)

後期研修が始まるタイミングは、医師としての進路をある程度明確に決める時期でもあります。
医師としてどのような道を進みたいのか、キャリアプランをしっかり考え、それにあった研修プログラムを受けなければなりません。
2018年から始まった新専門医制度では、都市部の病院での研修や診療科によって人数制限がありますので、進路選択には早めのアクションがおすすめです。
後期研修先を選ぶ際には、研修先病院の労働条件や待遇だけでなく、進路相談などのフォロー体制も合わせてチェックしておきましょう。

また、後期研修に入ると、アルバイトや副業ができるようになります。
さまざまな経験を積みたい方や、生活のために収入をアップしたいといった理由で、本業に支障のない範囲でアルバイトをする医師はたくさんいます。
医師がアルバイトを探す場合、ネット上などでもたくさん探せますが、転職エージェント「メッドアイ」に相談するのがおすすめです。
エージェントを利用することで、本業と上手に兼ね合わせたアルバイトや、キャリアプランにあったアルバイトを多くの選択肢の中から選べるようになります。