医療業界は、いわゆる「いじめ」や「嫌がらせ」が起こりやすいという話を耳にしたことがあるでしょうか。
あるいは、実際に嫌がらせに悩んでいる医師の方もいるかもしれません。
「医療業界でいじめが問題になるのはなぜか？」
「医療業界ではどのような嫌がらせの事例がある？」
「嫌がらせを受けた時の対処法は？」
上記のように職場での嫌がらせに悩む医師に、転職エージェントの視点で解決方法を提案します。
あってはならない職場でのいじめが散見されるのは、ミスが許されない仕事であるが故の厳しさやストレスが関係していると言われています。
実際の事例や、自分がいじめに遭ってしまった場合の対処について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
医局ならではの“構造的な問題”が嫌がらせを生む理由
医局でいじめや嫌がらせが発生しやすい背景には、医療現場のストレスだけでなく、「医局制度そのものが持つ構造的な問題」があります。
医局は他職種に比べて縦社会の色が極めて強く、役職やポジション、評価権限が一部の上層部に集中しやすい仕組みになっています。この構造が、トラブルを生みやすい土壌になっていると言われています。
① 序列が固定化され、関係性が硬直しやすい
医局は教授・准教授・講師・医局員といった序列が明確で、上下関係を前提とした運営になっています。
一度パワーバランスが固まると、異議を唱えにくく、改善要望が通りにくい環境になりがちです。
この「逆らいづらさ」は、上層部の態度が強硬だった場合に、そのまま嫌がらせにつながるケースもあります。
② 評価・進路決定の権限が上層部に集中している
医局は、
- 人事異動
- 専門医研修の振り分け
- 学会推薦
- 大学病院でのポジション
など、多くのキャリア要素が教授や指導医の一存で決まることが珍しくありません。
つまり、「機嫌を損ねると不利益を受ける可能性がある」構造になっており、これが不合理な命令や嫌がらせを黙認させやすくしています。
③ 外部のチェックがほとんど働きにくい
企業の場合は総務や人事があり、外部的な監査も入りますが、医局は閉じたコミュニティで運営されており、外部の監視が弱いという特徴があります。
- 内部で完結してしまう
- 不正や不適切な態度が表に出にくい
- 被害者が声を上げても通りにくい
こういった構造が、嫌がらせの発生に対してブレーキがかかりにくい要因となっています。
④ 役割が曖昧で、指導とパワハラの境界線が曖昧
医局は「教育」と「業務」が混在しているため、指導の名目で強い態度が正当化されやすい環境です。
教育・研修体制が明文化されていない医局も多く、“厳しい指導”と“パワハラ的言動”の境界線が曖昧なケースが少なくありません。
結果、上司が意図せず嫌がらせのような行為をしてしまう場合や、逆に「指導だから仕方ない」と問題行動が放置される場合があります。
⑤ 医局内の人手不足・業務過多が人間関係を悪化させる
医局は慢性的な人手不足であることが多く、
- 過重労働
- 役割の偏り
- 特定の医師への負荷集中
などが発生しやすい構造です。
余裕のなさはコミュニケーションを荒れさせ、結果的に人間関係のトラブルが増える一因になります。
医局の嫌がらせ・いじめの典型的な事例7選
ここからは、医局制度の下で起こりやすいいじめの事例をご紹介します。
- 上司によるパワハラ
- 女性同士の嫌がらせ
- 退職に追い込む嫌がらせ
- 大勢の前で批判する・バカにする嫌がらせ
- 管理の行き過ぎ
- 仕事・情報を与えない
- プライバシーの侵害
①上司によるパワハラ
職場でのいじめの代表的なパターンが、「上司によるパワハラ」です。
最初は厳しく指導をしているだけなのかもしれませんが、いつの間にかそれが普通となってしまい、常に部下にキツく当たる上司もいるのです。
また、部下が思い通りに動いてくれないなどの理由から、無視したり雑用ばかり撒かせたりといった「嫌がらせ」に発展することもあります。
いじめられる側も「自分が未熟だから」と負い目を感じるため、自分で抱え込んだ結果メンタルの不調をきたしてしまうこともあります。
パワーハラスメントの典型例として、以下のような項目が挙げられています。
・身体的な攻撃（暴行・障害）
・精神的な攻撃（脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言）
・人間関係からの切り離し（隔離・仲間外し・無視）
・過大な要求（業務上明らかに不要なことや遂行 不可能なことの強制・仕事の妨害）
・過小な要求（業務上の合理性なく能力や経験 とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや 仕事を与えないこと）
・個の侵害（私的なことに過度に立ち入ること）
厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」より引用
②女性同士の嫌がらせ
女性医師の場合、同性間のいじめや嫌がらせもよく聞かれます。
産休や育休などを取得したことがきっかけとなったり、性格や考え方が合わないことから嫌がらせやいじめに発展したりするケースです。
出産・育児後も仕事を続ける女性医師が増えて、必然的にトラブルが発生しやすくなってきていると言えるでしょう。
③退職に追い込む嫌がらせ
上司からのパワハラと似通ったところがありますが、組織ぐるみで労働者を退職に追い込むための嫌がらせが行われているケースもあります。
自主退職を促すために、過去には「追い出し部屋」に移動させて雑用だけをさせるといった事例も報道されました。
近年ではそこまで露骨な事例を聞く機会は少ないですが、ゼロではないようです。
従業員に対しての「退職勧奨（退職を促す行為）」自体は違法ではありません。 あわせて読みたい
しかし、従業員側にも選択の自由があることが前提です。
組織ぐるみで退職を強要する嫌がらせは、違法行為とされます。
④大勢の前で批判する・バカにする嫌がらせ
他のスタッフもいるところでわざと批判や嫌がらせをする行為もよく聞かれます。
嫌がらせを受けた方は、自信を失ったり、名誉を傷つけられたりします。
同僚同士でのトラブルや、上司からのパワハラとして行われることもあるようです。
特に上司からの場合は、大きなダメージを受けて自信喪失につながります。
同僚同士であれば、うまくかわすスキルを持つことで対処できる場合もあるでしょう。
⑤管理の行き過ぎ
上司や先輩など、職場の上の立場の人間が必要以上に管理する嫌がらせです。
例えば、ミスの多いスタッフにトイレに行く時間まで逐一報告させるようなケースです。
いわゆるやりすぎな管理のことで、パワハラの一種と言えるでしょう。
管理しきれない量の仕事を押し付けて残業させたり、言うことを聞かない部下を必要以上に責めたりするケースもあります。
⑥仕事・情報を与えない
仕事の情報や、そもそも仕事自体を与えないのも嫌がらせの典型的な例です。
③の退職に追い込むためにも使われるケースでもあります。
仕事に関する最新情報がないと、スムーズな仕事ができません。
そもそも仕事自体を与えないのは、その人の存在自体を否定する行為です。
職場内で与えられた仕事を全うすることで、スキルやキャリアをアップするので、成長の機会すら奪われることになってしまいます。
⑦プライバシーの侵害
有給休暇の取得理由を執拗に聞いたり、休日の過ごし方などを根掘り葉掘り問いただしたりといった行為はプライバシーの侵害と言えるでしょう。
その他にも下記のことはプライバシーの侵害と言えます。
- 思想や宗教などで区別する
- 不利益を与える
- 時間外に強引に飲み会に誘う
- 休日にイベントなどで無理やり駆り出す
- 家族や恋人について詳しく聞く
医局で嫌がらせ・いじめに遭った時の対処法
もし自分が医局内で嫌がらせやいじめに遭ったら、どう対処したらいいのでしょうか？
基本的には、焦らず落ち着いて対応することが大切です。
対処法としては、以下の3つが挙げられます。
- 気にしないで無視する
- 嫌がらせをする人と距離を置く
- 病院内・外部の相談窓口を活用する
それぞれの対処法を詳しく解説していきます。
気にしないで無視する
医局で嫌がらせを受けた場合、最も大切なのは過剰に反応しないことです。
場合によっては、あえて無視するくらいのスルースキルを身につけることも有効です。
嫌がらせに毎回真剣に反応していると、相手がますますエスカレートする恐れがあります。
たとえ大勢の前で批判されたとしても、「そうですか」と軽く受け流すくらいの気持ちで問題ありません。
その場さえやり過ごせば、あとは深く考え込む必要はないのです。
そもそも、嫌がらせにはほとんど根拠がありません。
「もしかすると自分にも非があるかも」と考える必要はなく、相手の理不尽さを受け止めすぎないことが重要です。
嫌がらせをする人と距離を置く
嫌がらせやいじめを受けた場合は、まずは受け流し、その後は相手との距離を意識的に取ることが大切です。
業務上どうしても関わらなければならない相手であっても、必要な会話にとどめ、雑談やプライベートな話は極力控えましょう。
相手から「避けられている」と指摘されることがあるかもしれませんが、気にする必要はありません。
そもそも距離を置かれているのは、嫌がらせをしている側の行動が原因です。
相手がそのことに気づけば、態度が柔らかくなる可能性もあります。
また、「相手にかまっても無駄」と判断されれば、嫌がらせ自体が自然に収まることもあります。
病院内・外部の相談窓口を活用する
組織ぐるみの嫌がらせや、度を越した嫌がらせを受け、仕事やプライベートに影響が出てしまう場合は、無視だけでは限界があります。
そんな時は、毅然と戦う姿勢を見せるのも選択肢の一つです。
まず試せるのは病院内の相談窓口の活用です。
多くの病院では、以下のような相談窓口が設置されています。
- コンプライアンス窓口
- ハラスメント相談窓口（セクハラ・パワハラなど）
これらの窓口に相談すると、病院内での調査や改善指導が行われる場合があります。
また、相談内容が公式に記録として残るため、後の法的対応や転職時の証拠としても役立つことがあります。
もし病院内の窓口が機能していない、または対応が不十分な場合は、外部機関に相談することも選択肢の一つです。
- 労働局（ハラスメントや労働条件の相談窓口）
- 弁護士（労働法・医療ハラスメントに詳しい専門家）
外部相談を行う場合も、嫌がらせを受けた日時・場所・内容・居合わせた人などを正確に記録しておくと、スムーズに相談や対応が進みます。 あわせて読みたい
それでも解決しない時は転職を検討する
医局で理不尽な嫌がらせを受けた場合、まずはスルーして受け流すことが重要です。
しかし、嫌がらせがしつこかったり悪質すぎたりする場合は、その職場を辞めることも選択肢の一つです。
根拠のないいじめを無理に解決するより、円満退職の理由を用意して転職する方が、早く安心できる環境を手に入れられます。
医局の雰囲気は病院や地域によって異なりますので、完全にストレスのない環境を求めるのは難しいかもしれません。
本当に働きやすい環境を手に入れるには、現在の状況を冷静に分析し、退局のタイミングを見極めることが大切です。
また、関連病院への異動が可能かどうかを上司に確認することも一つの方法です。
近年、医師の転職市場は活発化しており、求人数も豊富です。
一般的な病院勤務だけでなく、非常勤やバイト勤務も選択肢に入れることで、自分に合った働き方を見つけることができます。
職場によって患者への向き合い方や医療提供のスタイルが大きく異なるため、転職先の情報をしっかり確認し、自分のキャリアに合った環境を選ぶことが重要です。
「医局を辞めるのは簡単ではない」と言われた経験がある先生もいるかもしれません。
しかし、キャリアの選択肢は一つではありません。豊富な求人の中から、自分に最適な職場を見つけることで、より良い医師人生を築くことができます。
嫌がらせやいじめを受けた場合は、まずスルーして様子を見ることが大切です。
それでも改善が見られない場合は、転職エージェントに相談するのも有効な手段です。
転職エージェントは現在の職場の人間関係を直接改善することはできませんが、転職という選択肢を通じて人間関係をリセットすることが可能です。
自分のキャリアプランも含めて相談することで、多くの選択肢の中から最適な病院を見つけられます。
職場でのいじめに悩んでいる場合、転職するかどうかは別として、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。 あわせて読みたい あわせて読みたい あわせて読みたい
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」では、あなたの希望やキャリアに合った病院を丁寧に紹介してくれます。
人間関係のストレスをリセットして、新しい環境で安心して働きたい先生は、ぜひ一度相談してみてください。
医局の嫌がらせに関するよくある質問（FAQ）
Q 医局で受けた嫌がらせはどこに相談すべき？
病院内の「コンプライアンス窓口」「ハラスメント相談窓口」があればまずはそこに相談できます。大学病院の場合は大学本部が窓口を設けていることもあります。相談窓口が機能していない場合は、労働局や弁護士など外部に相談する方法もあります。
Q 医局を辞めると医師としてのキャリアに不利になる？
医局を辞めても致命的にキャリアが閉ざされることはありません。近年は医局外で働く医師が増えており、転職市場も活発です。むしろ専門性を活かした働き方ができるケースも多く、キャリア形成の選択肢は広がっています。
Q 嫌がらせの加害者に直接言い返すべき？
基本的には推奨されません。感情的な対立がエスカレートし、職場環境がさらに悪化する可能性があります。まずは受け流す・距離を置く・証拠や記録を取るなど、リスクの少ない方法で対応する方が結果的に自分を守れます。
Q 医局内の人間関係がつらいだけで退局してもいい？
問題ありません。退局の理由は個人が自由に選択できますし、「合わない環境から離れる」という判断は十分に合理的です。働き方の選択肢は豊富で、より良い環境を選ぶ医師が増えています。
Q 医局の雰囲気が悪い病院と良い病院の見分け方は？
以下のポイントが参考になります：
・離職率（若手がすぐ辞める医局は要注意）
・当直や業務量の偏り
・若手の症例確保の状況
・指導医の人数と指導体制の明確さ
・外部からの口コミ（研修医・派遣医師の声）
転職エージェントが把握している内部情報が役立つことも多いです。
まとめ（医局を嫌がらせで辞める）
残念ながら医療業界は、パワハラや理不尽な嫌がらせが起きやすいと言えます。
もしも嫌がらせを受けてしまった場合は、基本的には受け流す「スルースキル」が大切です。
そして、嫌がらせをする相手とはなるべく距離を置き、関わらないようにすることで落ち着く場合もあります。
しかし、しばらく経っても沈静化する兆しがない場合は、無理に戦うよりは転職で人間関係をリセットした方が得策です。
もちろん、今いる医局に入局したのには理由があるとは思います。
しかし、その医局でなくても目的が達成できるなら、転職した方が心身ともに健康でいられるのではないでしょうか。
医師の転職理由は、こちらの記事でも解説していますので参考にしてください。
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