専門医の資格が転職にどのような影響をもたらすのか、知りたいと考えている医師の方も多いのではないでしょうか。
突出した知識や技術を保有している証明にもなる専門医の資格は、転職に有効活用したいと考えるのが自然です。
「専門医の資格が転職で優遇されることはあるのか?」
「専門医の資格が条件の職場はあるのか?」
「専門医の資格を保有しているかどうかが影響しない職場はあるのか?」
本記事では、専門医の資格を保有している医師が転職するうえで知っておきたい観点を解説します。
専門医資格に関する概要に触れながら、専門医資格の有無による優遇や有利性を解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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現在転職を考えている専門医の方はもちろん、将来的なキャリアプランを検討中の方も、ぜひ本記事を参考に、理想の転職を実現してください。
医師の専門医資格とは
医師の専門医資格は、特定の診療科の高度な知識や技術、経験を持つことを証明するものです。
厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会報告書」をもとに設立された日本専門医機構により制定されています。厳格な基準をクリアした医師のみに与えられる資格なため、転職に有利といわれています。
また、診療科での高度な技術を持っている医師を「学会認定専門医」と呼ぶこともあります。
専門医資格は、日本専門医機構から認定を受けることで取得可能です。
取得までの流れは以下のとおりです。
- 医学部を卒業
- 臨床研修を2年間受ける
- 19ある基本領域から取得したい専門領域を選択する
- 選択した専門領域に関するプログラムを3年以上修める
- プログラム終了後に認定試験を受ける
また、専門医資格は、取得後5年ごとの更新が必要になることに注意してください。 あわせて読みたい
専門医資格が転職で有利になる5つの理由
専門医資格は、転職市場で高く評価され、下記のようなメリットをもたらします。
- 専門性をアピールできる
- 患者からの信頼獲得につながる
- 給与交渉で有利になる
- 指導医資格保持に向けた経験を積める
- 転職先の選択肢が増える
本章では、専門医資格が転職で有利になる理由を5つ紹介します。
1.専門性をアピールできる
専門医資格は、履歴書や面接だけでは伝えきれない、高度な専門知識や技術、経験を客観的に証明する資格です。
特に、大規模病院や急性期病院など、高度な専門性が求められる職場への転職を希望する場合、他の応募者との差別化を図れます。
また、豊富な臨床経験や最新医療の知識・技術、継続的な学習意欲の証明でもあります。それにより、専門性と同時に、多種多様な経験を持ち、自己研鑽を怠らない信頼できる医師という印象を抱かれるでしょう。 あわせて読みたい
2. 患者からの信頼獲得につながる
専門医資格を持つ医師は、患者からの信頼獲得につながります。
専門医資格は、特定の診療分野において、厳しい研修と試験をクリアした高い専門知識と技術を持つ証明だからです。日本専門医機構や各学会が認定する専門医は、その分野の高度な医療を提供できる能力があると認められています。
また、医療機関は、厚生労働省の定める「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」にもとづき、専門医が在籍していることを広告でアピールできます。
信頼できる機関からの客観的な証明があり、外部に示せることから、患者から信頼できる医師だと思われやすいでしょう。 あわせて読みたい
3.給与交渉で有利になる
専門医資格を保有していると、一定水準以上の能力を持つ医師だとアピールができ、給与面の待遇を交渉しやすくなります。
現状では、専門医資格保有者のインセンティブなどは設定されていませんが、待遇が良くなった医師もいます。
専門医資格と関連付けられた年俸制が2020年に埼玉県で導入されたことを受け、将来的には給与面でより恵まれた状況になることが予想されます。当直の可否や地域によって、給与面の条件が変わる可能性もあるでしょう。
転職の成功には、自身の強みを最大限アピールすることが重要です。医師としての質を保証する専門医資格は、給与面を含めた待遇を決定する要素になるでしょう。 あわせて読みたい
4.指導医資格保持に向けた経験を積める
指導医資格とは、専門医を目指す医師を指導・育成するための資格です。専門医資格を取得すると、若手医師の指導に関わる機会が増え、指導医資格の取得に必要な経験を積みやすくなります。
指導医資格の取得には、専門医資格の保有に加え、一定の臨床経験や教育・指導実績が求められます。診療科ごとに要件が異なるため、事前の確認が必要です。
専門医として若手指導に携わることは、自身の指導スキル向上につながり、指導医資格の取得にもつながります。さらに指導経験を積むことで、マネジメントもできるとされ市場価値も高まるでしょう。 あわせて読みたい
5.転職先の選択肢が増える
専門医資格の有無は、転職先の決定にも大きく影響します。
特定分野の治療・検査に特化した病院やクリニックなど、専門性を重視する医療機関においては、専門医資格が必須とされる場合が多いと考えられます。
したがって、資格の有無が、応募できる求人の数を大きく左右します。
専門医資格の保有そのものが採用で有利になる可能性があるため、保有していない方は求職活動のために取得するのもおすすめです。
また、転職や就職だけでなく、開業時にも専門医資格が有利になります。
ただし、中小規模の病院や介護施設などの医療現場は、重視されない傾向です。常勤か非常勤か、勤務形態によっても選択肢は変化します。 あわせて読みたい
専門医資格が優遇される職場3選
本章では、専門医資格が特に優遇される職場を3つ紹介します。
- 総合病院など大規模な職場
- 急性期病院
- 専門医資格取得の研究施設が整った病院
取得した専門医資格を活かすためにも、どのような職場があるのかチェックしてみてください。
1.総合病院など大規模な職場
総合病院や大学病院などの大規模な医療機関では、高度な知識や経験、技術が求められるため、専門医資格を持つ医師は即戦力として優遇されます。
大規模な病院では、診療科が細かくわかれており、医師はそれぞれの専門分野を担当します。高度な専門性が重視される環境のため、専門医資格があると能力を示しやすいでしょう。
また、さまざまな症例も経験できるため、専門医としてのスキルをさらに向上できます。最新の医療設備や技術に触れる機会も多く、常に最先端の医療を学べて専門医としてのスキルをさらに高められます。 あわせて読みたい
2. 急性期病院
急性期病院は、発症後間もない重症患者に対し、24時間体制で高度な治療を提供する医療機関であり、専門医資格が重視される職場です。
急性期は、病気の発症後14日以内を目安とする期間であり、医師は患者の回復に向けて、迅速かつ的確に医療処置をしなければなりません。
したがって、限られた時間の中で、高度な専門知識と技術にもとづいた判断が求められるため、専門医資格が特に必要です。
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3. 専門医資格取得の研究施設が整った病院
専門医資格取得のための研究施設が整った病院は、専門医資格を持つ医師を積極的に採用しています。
専門医育成のための研修プログラムの質を向上させ、維持するためには、高度な知識や技術、指導力を持つ専門医の存在が不可欠だからです。
研修体制の強化をするために、専門医を積極的に採用する必要があるため、専門医が求められます。 あわせて読みたい
専門医のキャリアプランの例
専門医資格を取得した後のキャリアプランは、個人の志向や専門分野、ライフステージによって多岐にわたります。本章では、下記の年代別のキャリアプランの例を説明します。
- 20代~30代中盤
- 30代後半~40代
- 50代以降
年代に合わせて、最適なキャリアプランを検討しましょう。
20代~30代中盤
20代は、医師としての基礎を築き、専門性を高めるための重要な準備期間です。医学部卒業後、初期臨床研修で幅広い診療科を経験し、医師としての基本的な臨床能力を身につけましょう。
その後、後期研修を経て専攻医となり、専門医資格取得を目指して、各病院の専門医プログラムに参加し、3〜5年程度の実践的な経験を積みます。また、博士号取得や専門分野の方向性を決定する時期でもあります。
そして、30代での専門医資格取得は、医師としてのキャリアを次のレベルへと押し上げるでしょう。今後のキャリアは、専門性を深める道と、転科・転職で新分野に挑戦する道があります。 あわせて読みたい
30代後半~40代
30代後半から40代は、医師としての経験も豊富になり、複数の専門医資格を持つ方も増え、キャリアの分岐点を迎える時期です。専門医として、患者の診療だけでなく、若手医師の指導・育成、チームマネジメントなど、リーダーシップを発揮する場面も多くなるでしょう。
一方で、子どもの独立や両親の介護など、プライベートでの変化も生じやすく、自身のライフスタイルを見つめ直す機会が増える時期でもあります。
医局に残って専門性を追求するのか、あるいは開業医として新たな一歩を踏み出すのかなど、今後のキャリアプランを具体的に検討し、決断する必要があります。
もし、転科や転職を考えているのであれば、40代までに行動に移すことが望ましいでしょう。50代以降の環境変化は、心身への負担が大きくなる可能性があります。 あわせて読みたい
50代以降
50代は、長年培ってきた知識と経験を活かし、責任あるポジションで活躍する一方、加齢による変化を実感し始める時期でもあります。
外科や救急など体力負担の大きい診療科では、パフォーマンス維持が難しくなる可能性があり、定年までのキャリアプランの見直しが必要かもしれません。
この時期には、開業を検討する医師も多くいます。経営者として後進の育成に力を入れる道もあれば、専門医としての知識や経験を活かし、診療科目によっては定年まで現役を続けることも可能です。
専門医も含めた医師のキャリアプランについて気になる方は、下記の記事を参考にしてください。 あわせて読みたい
専門医資格なしでも転職しやすい職場や働き方4選
専門医資格がなくても、経験やスキルを活かせる職場は数多く存在します。本章では、専門医資格が必須ではないあるいは、資格がなくても転職しやすい職場を4つ紹介します。
- クリニックなどの小規模施設
- 介護施設
- 健診医
- 非常勤医師・フリーランス医
上記の職場では、専門医資格よりも、実務経験やコミュニケーション能力、患者に寄り添う姿勢などが重視される傾向にあります。以下の項で詳しく解説します。
1. クリニックなどの小規模施設
クリニックのような小規模な医療機関では、専門医資格の有無よりも、幅広い診療科に対応できる総合的な診療能力が重視される傾向にあります。
地域密着型のクリニックでは、さまざまな症例を訴える患者が来院するため、専門分野に加え、幅広い疾患に対応できる知識と経験が求められます。
専門医資格がなくても、これまでの臨床経験で培った総合的な診療スキルを活かし、地域住民の健康を支える「かかりつけ医」として活躍できるでしょう。
患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供すると、地域からの信頼を得られたり、やりがいを感じられるはずです。 あわせて読みたい
2. 介護施設
介護施設では、専門医資格よりも、高齢者医療に関する幅広い知識と経験が求められます。複数の慢性疾患を抱える高齢の患者が多く、特定の疾患の専門知識だけでなく、全身状態を総合的に管理する能力が重要です。
日々の健康管理や急変時の対応、リハビリテーションなど、業務内容は多岐にわたります。専門医資格がなくても、高齢者医療に携わってきた経験や患者や家族に寄り添う姿勢があれば、十分に活躍できるでしょう。 あわせて読みたい
3. 健診医
健診医は、定期健診や特定健診などを行い患者を診察する医師で、専門医資格よりも幅広い医学知識とコミュニケーション能力が必要です。
健診では、限られた時間の中でさまざまな検査結果を総合的に判断し、受診者一人ひとりに合わせたアドバイスを提供する必要があります。
専門医資格がなくても、これまでの臨床経験で培った知識や生活習慣病予防に関する知識などを活かせます。
また、人間ドック健診専門医の資格があれば、より専門的な立場として、健診の質の向上に貢献できるため、採用において優遇されるでしょう。
4. 非常勤医師・フリーランス医
非常勤・フリーランス医は柔軟な働き方が可能で、専門医資格の有無より、多様な現場への適応力や即戦力としての経験が重視される傾向です。
非常勤の働き方は、週1回の勤務や、複数の医療機関をかけ持ちするなど、さまざまです。
専門医資格が必須でない求人も多く、これまでの臨床経験を活かして、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択できます。
たとえば、子育てや介護と両立しながら、医師としてのキャリアを継続したい際や特定の曜日や時間帯だけ働きたい場合に適しているでしょう。 あわせて読みたい
2018年度開始の新専門医制度も確認しましょう
新専門医制度は、専門医資格の認定基準を統一し、質の高い医療提供を目指すための制度です。2018年度に開始され、専門医の転職市場に影響を与えています。
これまでは、各学会が独自に専門医を認定していたため、専門医の質にばらつきがあり、患者が医師を選ぶ際の基準も曖昧でした。
しかし、新専門医制度では、日本専門医機構と各学会が作成したプログラムにより、明確で統一された基準で認定されます。第三者機関が認定するため、医療機関からの信頼度が高く、転職時に有利に働く可能性が高いでしょう。 あわせて読みたい
専門医の転職なら医師転職特化エージェントの「メッドアイ」
専門医資格は、大規模病院や急性期病院など、高度な医療を提供する医療機関への転職で特に有利に働きます。また、給与面で優遇される可能性が高まります。
しかし、医療機関が医師を採用する際には、専門医資格だけでなく、これまでの臨床経験、患者や医療スタッフとのコミュニケーション能力など、総合的な要素が考慮されます。
採用選考では、どのような点が評価されるか予測が難しいため、あらゆる角度から入念な準備をしましょう。
しかし、これから取得を目指す方にとって、日々の業務と並行しての転職活動は、決して簡単ではありません。
そのため、医師転職特化型エージェント「メッドアイ」に登録し、専門コンサルタントのサポートを受けるのがおすすめです。
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